ハリー・ポッターと魅了の少女   作:栴檀若葉

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穢れた血

二年目のホグワーツでの生活が始まってから初めての休日。

なのに私は朝早く起きて大広間に向かってる。何でかと言うと、今日はグリフィンドールのクィディッチチームが今年度初練習で、選手であるハリー達を応援しに行こうとロンが誘ってくれたからハーマイオニーを加えた三人で見に行く。

私はスネイプ先生の課題があるから最後までは見れないけどね。

 

昨日の夜、クィディッチチームのキャプテンであるオリバー・ウッドは凄かった。去年あと一歩のところで優勝杯を逃したからか、他の選手に鬼気迫る勢いで朝練習の重要性を説いていた。

 

ハリー達他の選手は朝練習に乗り気じゃなかったみたいだけど、ウッドの説得に根負けしたみたい。

 

大広間に行くといつもよりずっと早くロンがいて、既に朝食を取っていた。本当にクィディッチが好きみたいだ。毎日クィディッチの朝練があればいいのに。

ロンにおはようと言い対面に座り、朝食に手を伸ばした。

 

ハーマイオニーは手こずってるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハーマイオニーが髪の毛と戦っていたせいで予定よりも遅くなってしまった。今度髪の毛をセットしてくれる呪文でも探してみよう。

 

急ぎ足でクィディッチの練習場に近づいていくと、なにやら紅と緑が向かい合い、一触即発の雰囲気を醸し出していた。

 

「なんで、スリザリンの連中がいるんだ?ウッドの奴、気合いだけ空回りして競技場の予約し忘れてたのか?」

 

「昨日ハリー達を説得するために、許可証を見せて逃げ道塞いでたからそんなことは無いと思うよ。たぶん、スリザリンが割り込んできたんじゃないかな?……ん?マルフォイがユニフォームを着て並んでるね」

 

「何であんな奴が選手に……なんてこった!スリザリンの奴らが持ってる箒は全部最新式のニンバス2001だ!マルフォイの奴、箒を買って選手になりやがったな‼」

 

私達は話し声が聞こえる距離まで近づいた。マルフォイが得意気に箒を見せびらかしながらグリフィンドールチームを挑発していた。

 

「君達の持っているような箒じゃこのニンバス2001には遠く及ばないさ。特にウィーズリー達の持っているその箒、なんだいそれは?骨董品かい?そんなもので、僕等に勝てる筈が無いんだから練習場を明け渡せ。何度も言うが、スネイプ先生から許可は頂いている。」

 

グリフィンドールチームは挑発にのり頭に血が上っていた。だけど、一番上っていたのは、

 

「グリフィンドールのメンバーはお金なんかじゃなくて、才能で選ばれているわ!」

 

ハーマイオニーだった。普段冷静なハーマイオニーが怒っている。正義感の強いハーマイオニーらしいね。

 

突然乱入してきたハーマイオニーに一瞬驚いたマルフォイ達だったけど、直ぐに意地悪い顔に戻り、

 

「外野は引っ込んでいてくれないか?この穢れた血め。」

 

 

 

一瞬でその場は静まり返った。そして、グリフィンドールの怒りが爆発した。さっきまでの練習場をめぐっての怒りの比ではなく、怒号が飛び交い始めた。

私は事態が飲み込めない。ハリーも同じみたいだ。

 

「なんてことを!」

「この野郎、ぶん殴ってやる!」

 

ハーマイオニーは口を真一文字の結び、何か堪えているような顔になった。

 

「言ってはいけないことを言いやがったな‼許さないぞマルフォイ‼」

 

我慢できなかったロンが杖を抜き呪いをマルフォイにかけようとしたが、折れた杖から呪いが逆噴射し、ロン自身に呪いがかかってしまった。

ロンは顔を真っ青にし、口から特大の蛞蝓を吐き出し始めた。

 

スリザリンはロンのその様子を見て大笑いし、それが更にグリフィンドールの神経を逆撫でした。

 

「ねえ、マルフォイ、『穢れた血』ってどういう意味なの?」

 

全員の視線が私に集まった。グリフィンドールの反応と言葉から良い意味ではないことは分かるけど、正しい意味は分からない。

 

マルフォイが誇るように話始めた。

 

「『穢れた血』というのは魔法族の血が流れていないマグル出身の魔法使いの事さ。僕らのように魔法族の血しか流れていない魔法使いを『純血』と言うんだよ。そこにいるウィーズリーの家系もそうさ!ウィーズリー家は『純血』でありながらマグルや『穢れた血』に近づこうとする恥知らずだがな。」

 

「俺達はたしかに『純血』だがそれを誇ったりはしない!」「マグル出身者や混血でも俺達より優秀な魔法使いはいくらでもいる!」

 

フレッドとジョージが一緒にするなとマルフォイに噛みついた。ロンも蛞蝓のせいで言葉を発する余裕がないけど、マルフォイを力強く睨み付けている。

 

でも、そうか。

見た目だけじゃないんだ。

流れてる血だけで人を見てしまう人もいるんだ。

それって、なんかむかつく。

 

「マルフォイ、もう一つ聞いてもいい?」

 

再び私に視線が集まった。マルフォイは「構わない」と促してきた。

 

「両親の顔も知らず、親戚も全く分からず、だけどホグワーツに入学し、一年間一緒に学んできた私を、貴方はどんな風に見ているの?」

 

スリザリンは私の言葉を聞き、再び笑い始めた。私の生い立ちについて笑ってるのかな?

ただ、マルフォイだけは普段から青白い顔から更に血の気が引いた。

 

「た、確かに君に流れている血は判らないかもしれないが、き、君はグリフィンドールにいるのが惜しいくらい優秀だか…………」

 

話始めたマルフォイだったけど、最後まで言葉が続かなかった。

 

私の言いたいことがわかったのかな?

わかったのならやっぱりマルフォイは悪い人じゃないんだろうな。

 

今日の事は許さないけど。

 

「今は言えないみたいだから今度教えてね。私はロンを連れていくから、またね。あっ、どっちが練習するかの話を邪魔してごめんね。」

 

私はハーマイオニーとロンを支え、その場から立ち去った。

 

マルフォイは視線を私とハーマイオニーに向け続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

競技場を後にした私達は、近くにあったハグリッドの所に来た。ハグリッドに事情を説明すると、

 

「我慢せずに吐いた方がええ。」

 

と言って、大きなバケツをロンにくれた。ロンがゲロゲロしてる間(蛞蝓だけど)、私とハーマイオニーにはお茶とロックケーキをくれた。

ロックケーキは少し固いけど美味しかった。ハーマイオニーは一口かじって食べるのやめちゃった。

 

3杯目のお茶が飲み終わったころ、ようやくロンは話ができるくらい落ち着いた。

 

「マルフォイのやつ、ハーマイオニーにあんなこと言いやがって‼でも、ルクスリアの言葉はスカッとしたよ。マルフォイのやつ何も言い返せなくなってさ‼」

 

「だって、『たったひとつの事でその人を判断するなんて‼』ってムカついちゃったんだもん。内面を見た方が絶対いいのにさ。見た目とか血筋とかそんなことどうでもいいのに。」

 

私の言葉にロンとハーマイオニーはその通りだと元気よく頷いてくれた。

 

でも、ハグリッドは少し困った顔をして

 

「ルクスリア、お前さんの言うことは最もだ。俺だって『穢れた血』なんて言う奴等はどうかしてると思う。大事なのは内面ていうのもよく分かる。だけどな、そいつらにとっては………いや、これは俺が言うことじゃねぇ。お前さんならそのうち気が付くだろう。すまん、忘れてくれ。」

 

と言って黙ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハグリッドの家を出た私は、落ち着いたロンを医務室に連れていき、スネイプ先生から出された課題のために図書館に来た。

 

ただ、いつもとは違って並んでいる本には目もくれず、図書館の奥へと進む。

 

奥には鍵のかかった扉があった。さっき借りた鍵を使い、扉を開け中に入る。

 

そこは、普段使っている図書館とは雰囲気が違った。なんとなく、空気が重い気がする。

 

 

 

「さて、魔眼について教えると言ったが、我輩であってもそこまで深い知識を持っているわけではない。魔眼とは希少で、また謎の多いものなのだ。生徒が普段見ることのできるものには記載などされていないだろう。だが、閲覧禁止の棚には置いてあるだろう。許可証を君に渡しておく。調べてきたまえ。ただし、中には見るだけでも危険な本もある。少しでも妖しいと思ったら見るのはやめろ。」

 

 

スネイプ先生の言葉を思い出しながら本棚を見ていく。

でも、スネイプ先生もよく知らないのは意外だったな。最初に会った時に直ぐに私の右眼が魔眼って気がついてたから知ってるのかと思ってた。

 

置いてある本はタイトルが読めないものや、逆に嫌でも想像して不快な気持ちになるようなものが並んでいる。

 

しばらく探したところでようやくそれっぽい本を見つけた。

 

『魔法界における希少例 ー捕獲して研究したいー 』

 

不穏なタイトルだった。生きてるかどうかは知らないけど、筆者には是非とも会いたくない。

安全かどうかを確認し大丈夫そうだったので、手に取り、本を開いた。

 

パラパラとめくり、魔眼に関するページを見つけた。

 

『魔眼とは、文字通り魔法の力を持った眼のことである。魔眼は多種多様であるが、大きく以下に分類できると考えられている。まず、常時発動型か任意発動型である。これらはその力をコントロールできるか否かの分類である。もう一つは種族固有のものなのか、それとも突然変異のものなのかである。これら二つの分類を組み合わせた4つのタイプが魔眼の区分といえる。しかし、サンプル数が少なく研究例が少ないためこれで正しいのか確かめるために、多くの研究が必要であり、是非とも捕獲して研究したい。』

 

この筆者は本音が駄々漏れすぎる気がする。他の全てのページを見ても最後に、『研究したい』『捕獲したい』『解剖したい』と書かれてるし。

 

内容的に私は、常時発動型の突然変異の魔眼と言ったところなのかな。

 

魔眼については書いてあったけど、タイトル通り情報が少なかったな。

 

とりあえず、今日はこれを書き写すことで終わりにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空飛ぶ車に乗ってきた罰則にハリーとロンが連れていかれた同じ時間に、私はスネイプ先生との個人授業に来ている。今期は週末に行うことになった。わざわざ休みの日に時間を作ってくれたようだ。

 

「ふむ、あの本を見つけたようだな。我輩が魔眼について知ったのはあの本だ。」

 

私が提出したレポートを見たスネイプ先生は、頷きながら話した。

 

「読んで分かったであろうが、魔眼とは希少なものなのだ。恐らく世界中探しても、魔眼を持っている人間は君を含め一人か二人だろう。」

 

それじゃあ研究したくもなるか。研究対象が一人か二人しかいないんだったら、あれほど欲求が漏れても仕方ないのかな。研究対象にされるのは嫌だけどね。

 

「君の魔眼はおそらく常時発動型の突然変異だろう。君が望むような、常時発動型から任意発動型になったという例は、恐らく無い。しかし、希少で例が少ないということはたまたまコントロールできるようになれなかった例しか見つかっていないということも考えられる。」

 

なんと、スネイプ先生が私を励ますようなことを言ってくれるとは!

 

そんなことを考えるとスネイプ先生が私をギロリと睨み、

 

「何か勘違いしているようだが、我輩は研究者という視点で判断したまでだ。…………まあいい、さて魔眼については引き続き調べてきたまえ。残りの時間で戦い方について教える。まず、基本として魔法使いの決闘を教える。杖を構えて下がりたまえ。」

 

言われた通りにし、スネイプ先生と向かい合う形になった。

 

 

 

「まずは御辞儀だ。次に杖を顔の前に掲げ下ろす……もっと機敏にやれ、それから後ろを向いて相手の足音に合わせながら5歩下がり、下がったら振り向き『エクスペリ・アームズー武器よされー』」

 

スネイプ先生から放たれた呪文は私には当たらず、顔の横を通りすぎた。

 

「このように呪文を撃ち合う。さて、やり方は分かったな?もう一度行うが、次は当てる。君も本気でやりたまえ。ただし、呪文は武装解除のみとする。」

 

「分かりました。やります。」

 

今度は本気だ。スネイプ先生の目を見ると、普段よりも更に鋭い目付きになっている。

 

フーッと息を吐き心を落ち着けた。そして、スネイプ先生の目を見た。

 

「……準備はできたのかね?では、始めよう。」

 

スネイプ先生の言葉を引き金に御辞儀をし、杖を構える。

杖を下ろし、後ろを向く。

一歩、二歩、三歩、四歩、五歩!

 

『『エクスペリアームズ!ー武器よされー』』

 

私とスネイプ先生はほぼ同時に呪文を放った。

 

しかし、

 

「うわ!」

 

私の手から杖が跳んでいった。スネイプ先生は呪文を放った構えのままで、杖もその手に残っている。

 

「……二年生でその速度で呪文を放てるとはな。しかし、どんなに強力な呪文を相手より速く放ったところで当たらなければ意味がない。先ずは狙った場所へ呪文を放てるようにならなければならないようだな。戦い方はその後だ。」

 

ぐぅの音もでなかった。戦い方を知ればいいと思ってたけどそれ以前の問題だったみたい。

 

思えば呪文をしっかりと当てた時は的が止まっているか大きい時が多かったような気がする。

 

「さて、残りの時間は我輩が作る的に呪文を当てる練習をする。これができるようにならなければ、その先は一切教えん。」

 

「分かりました。お願いします。」

 

 

 

その後1時間程訓練をし、スネイプ先生に合格を貰ったところで今週の個人授業は終わりとなった。

 

談話室に戻ったとき、ハリーとロンはまだ戻って来てなかった。

 

 


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