ハリー・ポッターと魅了の少女   作:栴檀若葉

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久々です。
ようやく忙しさから解放されました。

ペースをあげられるように頑張ります。


ギルデロイ・ロックハート

 

「まさか、列車に乗れなかったからって空飛ぶ車でホグワーツに来るなんて思わなかったよ。随分思い切ったことをしたよね。しかも、貴重な暴れ柳に激突しちゃうし。ヘドウィグを使えば良かったのに。」

 

「ルクスリア……もうその話はやめて……。」

 

ハリーが項垂れながら返事をしてきた。その隣にいるロンは、ついさっき吠えメールが来て散々ウィーズリーおばさんに怒られたばかりなので酷く落ち込んでいる。通り過ぎる生徒達もロンを見るとクスクス笑いながら去っていく。

 

「退学にならなかっただけ良かったじゃない。これに懲りたら落ち着いて行動することね。」

 

ハーマイオニーは呆れたように朝食のパンにマーマレードを塗りながら言った。

 

「この後罰則もあるなんて、嫌だなぁ。何より見てくれよ僕の杖を……。」

 

そう力なくロンが言い、ハリーとロンはガックリと肩を落とした。ロンの杖は暴れ柳に激突した時にポッキリと折れてしまって芯が見えてしまっていた。ウィーズリー家には新しく杖を買うお金も無く、ロンは泣く泣く折れた杖をテープでぐるぐる巻きにして使わざるをえないらしい。……ロックハートの教科書が無ければ買えたかもしれないね。

 

「ほらほら、ご飯食べて元気だしなよ。早く食べないと、授業始まっちゃうよ。」

 

そう言って二人を励ましつつも、私は久々のホグワーツの朝食を満喫した。

 

 

 

朝食を終え、最初の授業である薬草学を受けるために移動していると、突然後ろから大きな声がした。

 

「やあやあハリー、昨日はずいぶんと凄いことをしたね、いや、私は君に謝らなければならないと思いましてね、私は君に教えてしまったのですよ、有名になるという蜜の味を!分かります、分かりますよハリー、新聞に私と載ってその快感を覚えてしまったんでしょうね、えぇ、えぇ分かりますとも、ですが、ハリー、もう少し上手なやり方を取った方がいいですよ、まぁ私のように上手くやるのは難しいでしょうけどね!」

 

「ロックハート先生、僕、そんなつもりじゃありません!」

 

突然現れたのはロックハートだった。いや、ロックハート先生か。書店で会った時と同じように、ハリーに向かって早口で捲し立てている。

ハリーは反論したけど、

 

「恥ずかしがることはないんですよハリー、誰だって有名に成りたいと思っているものですよ、この私だってそうです、皆誰かに認められたいのですよ、おっと、私は授業の準備をしなければならないので失礼しますよ」

 

そう言って、ロックハート先生は言いたいだけ言ってさっさと去っていった。

 

 

 

薬草学の授業ではマンドレイクという植物(?)を育てるための授業が行われた。マンドレイクは回復薬の材料になるらしい。マンドレイクは引っこ抜くと悲鳴をあげるんだけど、この悲鳴を聞くと最悪死に至るらしい。今日の授業はマンドレイク

を大きめの鉢に移すのが課題だったからヘッドホンを着用して移した。

 

薬草学の授業が終わって廊下を歩いてると、グリフィンドール生が近づいてきた。とても小柄で見たことないし一年生かな?

 

そのグリフィンドール生はハリーの前に来ると、

 

「僕、コリン・クリービーって言います!ハリー、僕君の大ファンなんです!写真撮ってもいいですか⁉」

 

写真を大声でせがみ始めた。

 

「写真?写真だって?君は写真を配っているのかい、ポッター?おい皆、かのハリー・ポッター様が写真を配ってるらしいぞ。」

 

コリンの大声を聞きつけたのか、マルフォイがやって来てハリーを冷やかし始めた。

 

「僕は写真なん「写真ですって⁉」」

 

今日二度目の声が廊下に響き渡った。それにしても皆ハリーのところによく来るね。

 

ロックハート先生があの笑顔をはりつけ大股でハリーに近寄って肩を組始めた。

 

「さあさあ撮りたまえ、クリービー君!あのハリー・ポッターとこの私ギルデロイ・ロックハートのツーショットですよ!マルフォイ君もどうだい、遠慮することはないですよ、ん?、カメラを持っていないんですか、残念ですね、、、そうですね、クリービー君今度マルフォイ君に君が撮った写真をあげてください、いえ、いいんですよマルフォイ君、ファンの期待に応えるのも私の仕事ですからね、あぁ、ハリー、写真を配るのはとてもいい方法だと思いますよ、一見地味ですが有効な方法です、写真は何度も見れますし、一瞬を切り取るのですから色々とできますしね、いやしかし私は罪な男ですね、若い男の子に有名になるという快感を覚えさせてしまったんですからね!」

 

ロックハート先生はまたも一人捲し立て、コリンは水を得た魚のようにシャッターを押しまくっている。ハリーはなんとか逃げ出そうとしているけど、ロックハート先生にガッチリと肩を押さえられて動けないみたい。

 

マルフォイが流石に引いていた。

 

「かの有名なロックハート先生らしいよ、マルフォイ。貴方も書店で見たでしょ。会うたびにハリーがいつも被害にあってるの。」

 

「ポッターと仲良しな君は助けないのかい?」

 

「書店ではそうしたよ、私があの時ロックハート先生に怒りを感じてたしね。そのあともっと怒ったけど。でもそれはホグワーツの外だと守ってくれる人がいないからだったから。ホグワーツならダンブルドア先生がいるしハリーが本当に困るようなことは防いでくれると思うから、それにロックハート先生に絡まれることで命の危険は無いだろうしね。」

 

マルフォイは面白くなさそうに鼻をならして去っていった。

 

ハリーに視線を戻すとロックハート先生は既にそこにはおらず、満足そうなコリンとハリーが私達を恨めしそうに見ていた。

 

 

 

とうとう闇の魔術に対する防衛術の授業の時間になってしまった。教室を見てみると、ハーマイオニーのようにお熱の女子がいるようだ。私にはよく分からない。外見が整っているから好意を持つという感覚はどういうものなんだろう。

 

そんなことを考えていると、奥の小部屋からロックハート先生が現れ、既に見慣れたあの笑顔で授業を始めた。

 

 

 

こんなに酷いテストは初めてだ。むしろテストなのだろうか。なんで闇の魔術に対する防衛術の授業で、ロックハート先生についてのテストをするんだろうか。わけが分からない。

 

そして、二年生最初の授業にも関わらずいきなり実戦(?)形式の課題を出すと言った。それに対抗する呪文を教えずに。

 

「さあ、この邪悪な存在であるピクシー妖精に皆さんがどの様に対処するのか見させて頂きましょう!」

 

そう言って、ロックハート先生はピクシー妖精を解き放った。

 

ピクシー妖精は全身青紫色で背中に羽をはやし、ギョロっとした大きな目が特徴だった。彼らは教室を自由に飛び回り、生徒にイタズラをし始めた。

 

「どうするんだよ、これ!」

 

ロンが悲鳴をあげている。

 

「一体ずつやっててもキリがなさそうね。とりあえず全部停止させましょう。ルクスリアいける?」

 

「いけるよ!3カウントで一緒にかけよう、3、2、1、」

 

『『イモビラスー動くなー!』』

 

私とハーマイオニーが同時に停止の呪文をかけた。今まで散々暴れまわっていたピクシー妖精達が硬直し空中をフワフワと漂うだけになった。

 

「ロックハート先生、ピクシー妖精に対処できまし……先生はどこかしら?」

 

ハーマイオニーがロックハート先生に伝えてようとしたらロックハート先生は既に教室にいなかった。

 

「あいつならピクシー妖精に杖取られて奥の部屋に引っ込んだぜ。流石有名な魔法使いだよな。」

 

ロンがピクシー妖精に噛まれたところを擦りながら教えてくれた。

 

 

 

ようやく、新学期初日の授業が終わった。夕食を済ませ、談話室でくつろいでいる。談話室の隅ではコリンが今日撮ったハリーの写真を他の一年生に見せびらかし、欲しい子には配っている。その様子をハリーはロックハート先生に何度も絡まれたせいか疲れきった顔で見ていた。

 

「今日は災難だったね、ハリー。ロックハート先生の言うこと気にしない方がいいよ。私達はハリーが有名に成りたいとか思っていないの知ってるから。」

 

「ありがとう、ルクスリア。少しは気持ちが楽になったよ。」

 

「でもハリー、ロックハート先生は貴方を困らせようとしたわけではないはずよ。貴方の昨日の行動を先生なりに注意しただけよ、きっと。」

 

ハーマイオニーはロックハート先生をフォローした。なかなか熱は下がらないみたい。

 

今日の様子を見てると、思っていたよりもロックハート先生は優れた魔法使いではないのかもしれない。ピクシー妖精に杖を奪われるなんて、他のホグワーツの先生ならあり得ないだろう。

 

それに、なんだか私を見る目が他の生徒と違う気がする。でも、魔眼のせいでは無さそうだし、なんなんだろう?

 

 

 

新学期が始まってから初めての魔法薬学の授業の後、私はスネイプ先生に個人授業のお願いをするために教室に残っている。

 

「さて、それは勤勉な君は何を学びたいのだ?君が学びたいことを決めてくるということだったが、決まっているのかね?」

 

スネイプ先生は去年と変わらない調子で話を始めた。学びたいことについては夏休みの間にしっかりと考えてある。

 

「スネイプ先生、私に魔法での戦い方と魔眼について教えて下さい。」

 

「魔法での戦い方と魔眼についてか。」

 

そう、この二つについて私は学びたい。

 

「ふむ、まず何故戦い方を教えて欲しいのかね?」

 

「去年私は授業やスネイプ先生との個人授業のおかげで多くの魔法を使えるようになりました。でも、使えるだけではダメでした。クィレル先生と戦った時にあっさりと私は負けてしまいました。あの時、恐らく盾の呪文を使い続ければ私が傷つくことはほとんど無かったと思いますが、それだけでは大切なものを守ることはできませんでした。相手を無力化しなければ守れない時もあると思います。なので、戦い方を知りたいんです。」

 

私はあの時、クィレル先生の単純なフェイントにかかりあっさりと負けてしまった。クィレル先生も言っていたが、魔法が使えるだけなのだ。使えるだけではなく、使いこなせるようにならなければ、守りたいものを守れない。そんな気がする。

 

「なるほど、では、魔眼については何故かね?」

 

「私がホグワーツに来ようと思った理由の一つがこの魔眼の力をコントロールできるようになりたいからです。去年一年間は向き合うことをどこか恐れていて、調べたりできなかったんですけど、それじゃダメだと思って、だからまずは魔眼について勉強しようと思ったんです。」

 

去年は魔眼殺しのおかげで他の人とちゃんと接することができるようになったのが嬉しすぎて、向き合うことを避けてた。でも、孤児院の院長先生達みたいに呪いをかけてしまったままの人が何人もいる。もし可能であれば呪いをといてあげたい。そのためには魔眼について知らなきゃ。

 

「分かった。では、毎週この時間に行う。時間は限られているため、課題を多く出すが、出せなかった時は分かるな?如何なる事情があろうと考慮しない。さて、今日はここまでとする。課題は明日の朝までに決めておく。それでは、寮に帰りたまえ。」

 

こうして、新しい一年が始まった。

 

 

 

 


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