ダークブリングマスターの憂鬱(エリールート)   作:闘牙王

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第二十六話 「邂逅」

『ラーバリア』

 

ルカ大陸にある小さな都市。一見すれば穏やかな街並み。しかし普通の街ではあり得ないことがあった。それは街全体が地底に存在するということ。それに加えてもう一つ、ラーバリアには異名があった。

 

『結界都市』

 

その名の通り、ラーバリアは結界によって守られている。それにより外界の者は何人たりともラーバリアに踏み入ることは許されない。だがそれはラーバリアの住民が外界との繋がりを断つことを望んでいるからではない。ラーバリアは元々、ある一つの物を守るために造られたのだから。

 

『闘争のレイヴ』

 

かつてリーシャ・バレンタインが造り出した聖石レイヴ。そのうちの一つがここに眠っている。それを守ることこそがラーバリアの民の使命。そんな使命の最前線に立っているのが結界聖騎士団。文字通りここラーバリアにおける守りの要。

 

 

「よし……どうやら今日も問題ないようだな」

 

 

安堵の表情と共に一人の青年がそう呟く。一目で美青年、優男だと分かるような容姿。しかし彼がただの一般人ではない。その証拠にその手には十字型の剣が握られている。彼が紛れもない騎士であることの証。

 

『ソラシド・シャープナー』

 

それが彼の名前。結界聖騎士団の団長であり、ラーバリア最強の戦士。若くして団長を務めるに足る力を持った存在だった。

 

 

「油断はならんぞソラシド! いつまた魔人どもがやってくるか分からぬ。気を引き締めねば!」

 

 

そんなソラシドに向かって覇気を見せながらもう一人の男が姿を見せる。まるで侍のような風貌をした男。それを示すようにその両手には大きな剣が握られている。

 

『フーア』

 

ソラシドの補佐を任されている騎士団の団員であり二刀流の使い手。二人はそのまま再び街の警備、見回りを行っていく。それが結界騎士団の務めである最も重要な任務。本来であれば結界によって外界から侵入してくる者は皆無なのだがここ数年はその限りではない。僅かな結界の歪みから敵が侵入してくることがある。

 

『魔人』

 

その名の通り、この世界とは違う魔界と呼ばれる世界の住人。その刺客がここラーバリア、正確にはラーバリアで守られている闘争のレイヴを狙ってやってきている。それに備えていつでも戦えるようにしなければならない。逆を言えば今まで以上にラーバリアが危機的状況に置かれつつあることを肌で感じている故か、フーアはいつもより殺気立ってしまっている。

 

 

「少し休んだらどうだ、フーア。昨日からずっと休んでいないだろう?」

「心配無用! そっくりそのまま返させてもらうぞソラシド。お主こそ左腕の怪我はまだ完治しておらぬであろう? 心配せずとも魔人の十や二十、拙者だけで十分成敗してくれる!」

 

 

ガハハ、と豪快な笑いと共に胸を張っているフーアの姿に呆れながらも安堵しながらソラシドは自らの左腕に目を向ける。そこにはギプスに包帯を巻かれた負傷の跡。自らの不覚によって魔人から負ってしまったもの。それによってソラシドの力は半減してしまっている。それもあってフーアはいつも以上に気負ってしまっている。

 

 

(怪我のことを差し引いても、今の状況はマズいな……魔人が侵入してくる頻度が明らかに増している。やはり、クレア様の力が弱まってきているのか……?)

 

 

冷静に今の状況をソラシドは騎士団長として分析する。ここ数年の異変の原因が何であるかは考えるまでもない。結界の弱体化。蒼天四戦士の一人であり、レイヴの守り手でもあるクレア・マルチーズの力が弱まってしまっている。騎士団の誰もが直接口にはしないものの理解していた。同時にこの先に避けられないであろう魔人たちとの総力戦も。それに打ち勝つことができるのか。決して怖気づいているわけではない。だがこのまま戦っても勝機は薄いのもまた事実。袋小路になりつつある騎士団、ラーバリアの現状を前にソラシドが一層気を引き締めんとした瞬間

 

 

――――世界が斬り裂かれた。

 

 

「――――っ!? 何だ、何が起こったのだ!?」

「っ! 結界が……!?」

 

 

突如起きた考えられない異変にソラシドとフーアはただその場で呆然とするしかない。結界の歪み、綻びが起きること自体は珍しいことではない。だが目の前の光景はその比ではない。文字通りラーバリアの空が引き裂かれてしまっているのだから。

 

 

(結界だけではなく、空の幻覚(ビジョン)まで破壊されている……間違いなく人為的な物……!!)

 

 

弾けるようにフーアと共に現場に駆けながらソラシドはかつてないほどの緊張状態に陥っていた。知らず息を飲み、十字剣を握る手に力が籠る。だがそれは当然。ラーバリアは地底都市であり本来であれば空など存在しない。今見えている青空は幻覚(ビジョン)と呼ばれる幻。しかし今それが切り裂かれたように一部に本来の土、岩盤が露わになってしまっている。ラーバリアができてから五十年、あり得なかった事態。ただの魔人の襲撃ではあり得ない。そしてソラシド達の不安を具現したかのようにソレは現れた。

 

 

(あれは……人間……!?)

 

 

そこには一人の人間の姿。金髪に黒の甲冑を身に纏った少年。その背には身の丈ほどもあろうかという大剣。明らかに一般人ではない容姿。だが言ってしまえばそれだけ。ソラシドとフーアは人間とは比べ物にならない強さを持つ魔人たちと戦い続けてきた騎士。それだけで気圧されるなどあり得ない。しかし、ただ異常だった。少年が纏っている気配。本当にヒトなのか疑わしくなるほどの圧倒的な魔の気配。この世の不吉を含んでいるのではと思えるほどの闇がそこにはあった。

 

 

「――――」

 

 

二人はただその場に立っていることしかできない。いや、立つことができていると言った方が正しい。一般人ではそれにあてられただけで座り込み、気を失ってしまいかねない。二人は何とか動こうと、口を開こうとするが叶わない。できるのは息を飲むことだけ。蛇に睨まれた蛙そのもの。

 

 

(まさか……いや、間違いない!! こいつがゲイル……!!)

 

 

ソラシドの脳裏に浮かぶのはそれだけ。魔人の頭とされている男、ゲイル。それが目の前にいるのだと。少年の容姿など何の意味も持たない。魔人千人を優に超える強さを目の前の悪魔は持っている。戦士としての本能がソラシドに告げる。逃げろと。目の前の存在には敵わないと。だがそれに従うことはソラシドにはできない。

 

 

(すまないレミ……! お前だけでも生き伸びてくれ……!!)

 

 

脳裏の浮かぶのは自らの妹であるレミの姿。兄として、騎士団団長として逃げることなどあり得ない。それは隣にいるフーアもまた同じ。互いにここが最後の戦場なのだと覚悟を決める。それに合わせるように金髪の悪魔が動き出し、その両手を動かしていく。それが合図になったのか、ソラシドとフーアもまた己が武器を構える。いざ尋常に。そんな決死の覚悟を見せようとした瞬間

 

 

「――――え?」

 

 

まるで泡のように、それまでの全てが霧散してしまった。

 

 

ソラシドはまるで時間が止まってしまったように固まることしかできない。みっともなく口は開いたまま。フーアもそれはまた同じ。ある意味、闇の波動を感じた以上の衝撃。

 

 

悪の化身ともいえるような金髪の悪魔が非の打ちどころのない、完璧な土下座をかましている。そんなおよそ現実とは思えないような意味不明の事態。あり得ないはずなのに、それ以上にないほど絵になっている矛盾。

 

 

「…………すみません。話を聞いてください」

 

 

それが金髪の悪魔ことダークブリングマスターアキと結界聖騎士団のファーストコンタクトだった――――

 

 

 

(どうしてこうなった……?)

 

 

ただただそう嘆くしかない。こうするしかないと分かってはいたものの、実際やってみると心が挫けそうになる。これならまだマザーによる鬼畜の修行を受けるほうがマシかもしれない。絶賛土下座中の自分に心底呆れながらもやり遂げるしかない。世界を救うためとはいえヒモ生活に加えて今度は土下座行脚。一体何でこんなことになっているのか。

 

 

(でもこれしかもう方法がねえ!! まともに話そうとしても上手くいかないことはもう散々味わったし……これでダメならあきらめるしかない!)

 

 

額に感じる地面の冷たさに耐えながらも土下座のまま自分の事情を目の前にいる(であろう)ソラシドとフーアに説明する。そんな風になってしまっているのは間違いなく自分自身のせい。ダークブリングマスターとしての気配。マザー曰く自分の臭いはシンクレアの邪悪な気配に匹敵、凌駕するらしい。しかもそれは自分がダークブリングマスターとして成長すればするほど悪化していってしまう。もはや気配を隠すDBであるハイドを以てしても隠すことができないほどになってしまっている。そんな自分の話など誰も聞いてくれるはずもない。ゲイルさん、時の民、そして解放軍。その全てで誤解され、話がややこしくなってしまった。ましてや今回はレイヴを守っているラーバリアの民たち。もうどうなるかは火を見るより明らか。考えに考え抜いた末に辿り着いた苦肉の策。それがこのDOGEZAであった。

 

 

『ふむ……ヘタレもここまで極めると美しさすら感じるの。どうじゃ、そのまま裸にでもなればさらに情けなさが増すのではないか?』

『や、やかましいぞマザー!? こっちは命懸けでやってんだ!! 絶対にてめえは喋るんじゃねえぞ!?』

『頼まれんでも喋りはせん。こんな奴が主だと思われたくはないからの』

 

 

心底呆れ切っているマザーの言葉に怒りを覚えながらも再度喋らないよう釘を刺す。今のマザーは拡声器の役割を果たすDBによって自分以外と話すこともできる。ここで余計なことを喋られては自分の土下座も台無しになってしまう。一体誰のせいでこんな目に遭っているのかと小一時間説教してやりたいがそんな暇は今はない。全裸土下座に関しては実は案としてはあったのだが男の自分がしても酷いことにしかならないと没にしたのだが言わない方がいいだろう。

 

 

「ダークブリングマスター……確かに、筋は通っているが……」

「ソラシド、騙されてはならんぞ! 無抵抗を装って我らを謀ろうとしているに違いない! いまここで成敗するべきだ!」

 

(だよな……うん、俺も逆の立場だったらそうするべきだと思う……)

 

 

困惑しているソラシドと反発しているフーア。どっちももっともな反応。本当なら穏便にラーバリアに侵入したかったのだがダークブリングマスターの自分では結界に迎え入れてもらえるわけもない。苦肉の策として結界をほんのちょっとだけ封印剣で突かせてもらったが思ったよりも結界を傷つけてしまった。もうそれだけでギルティ。むしろまだ拘束されていないのが不思議なぐらい。流石は騎士団。無抵抗の相手をそのまま牢獄行きにするようなことはしないらしい。立ち位置的にはメガユニットに牢獄されても文句が言えないのだが。何にしてもこのままではこれまでの二の舞になってしまいかねない。もうこれは本気で全裸土下座しかないのかとあきらめかけた時

 

 

「あ、やっと見つけたアキ! もう、またあたしを置いて先に行っちゃうんだから! 探したんだからね!」

 

 

マザーに匹敵するトラブルメイカーエリーがやってくる。話がややこしくなるからと結界の外で待機するように言ったのに我慢できずに出てきてしまったらしい。自分の言うことを聞いてくれる仲間が欲しい。ここにはいないゲイルさんに思いを馳せながらももう遅い。流石にこれ以上ゲイルさんに迷惑をかけるわけにはいかない。

 

 

「? 何してるのアキ? 新しい遊び?」

「そんなわけねーだろ!? どこをどうみたらそうなる!? いいからお前も頭を下げろって!」

「……あ、そっか! ごめんなさい。アキは臭いけど悪い人じゃないので許してください」

「な、なんじゃそりゃ!? それじゃあ俺が臭いみたいじゃねえか!?」

「え? だっていつもみたいに臭くて嫌われてたんじゃないの? じゃあえっと……アキはヘタレさんでクズさんですけど許して下さい」

 

 

ぺこり、と深々とお辞儀しながら全てを悟ったようにエリーは二人に向かって謝罪をしている。ある意味間違ってはいないのだが言い方が酷すぎる。エリーが誰よりも自分のことを理解してくれていることに喜ぶべきなのに全然嬉しくないのは何故なのか。ツボにはまったのかマザーは笑い転げており収拾がつかない。

 

 

「わ、分かったからとにかく大人しくしとけって! どっからどうみても俺たち怪しいだろうが!?」

「えー? アキはそうかもしれないけど、あたしはそんなことないよ!」

「記憶喪失で魔導精霊力持ってたお前が怪しくなかったら何が怪しいんだ!? 俺だけ怪しいみたいに言うんじゃねえよ!」

「あ、ひどーい! あたしはもう記憶喪失じゃないもん! 記憶喪失なのはアキも似たようなものでしょ! あたしもびっくりしたんだから!」

『どっちもどっちじゃの』

 

 

間違いなくこの場で一番怪しい存在であるはずのマザーのやれやれと言わんばかりの態度に突っ込みたいがそんな余力はない。エリーも言いたいことがあったのかぷりぷりと怒ってしまっている。どうしたものかと途方に暮れていると

 

 

「あー、すまない。とりあえず、君たちには敵対する意思はない、ということでいいのかな?」

 

 

見るに見かねたのかソラシドがそう言いながらこっちに近づいてくる。幸か不幸か、どうやら自分とエリーのやり取りを見たことで幾分か警戒心は和らいでいるような気がする。もっとも気がする程度ではあるのだが自分にとっては胸をなでおろしたくなるほどの快挙。だというのに

 

 

「うん、あたしたちレイヴを手に入れるためにここに来ただけだから!」

「ぶっ――――!? お、お前何言って!?」

 

 

その全てをぶち壊してマイナスにする爆弾をエリーは投下する。もはやわざとやっているのではないかというレベル。確かにその通りなのだが言い方が悪すぎる。タイミングも最悪。

 

 

「レイヴだと……? なぜダークブリングマスターの君たちがレイヴを手に入れようとしている? やはりレイヴを奪うためにここに来たということか!?」

「っ!? そ、それは……」

「違うよ? 奪うんじゃなくて返してもらいに来たの」

 

 

どう言い訳したものかと右往左往するもそれよりも早くエリーはレイヴをあっけらかんとそう告げる。だがその意味が分からずソラシドとフーアは固まってしまう。無理もない。ある意味自分がダークブリングマスターである以上に信じがたい事実なのだから。

 

 

「返してもらう……? いったいどういう」

「だってレイヴを造ったのはあたしだもん。今はクレアが持ってるんでしょ? それを返してもらいに来たの」

「レイヴを造った……? ならお主は自分があのリーシャ・バレンタインだとでも言うのか!?」

「うん、あたしはリーシャだよ? あ、でも今はエリーなんだけど」

 

 

さらっと明かされる真実。本当ならレイヴを五つ集めて、過去に行くことでようやく明かされるはずだった事実だが今はこの通り。なんか色々と台無しだがしょうがない。しかしそれとこれとは話が別。ソラシドとフーアはますます疑惑の目でエリーを見つめている。

 

 

「確かに肖像画によく似てはいるが……あり得ない。なら君は五十歳以上だというのか?」

「その通りだ! まさか化けているなどとは言わぬだろうな!?」

「そんなことしてないもん! あたしはまだ十五歳なんだから! ね、アキ?」

 

 

心外だとばかりに自分に同意を求めてくるエリーに返す言葉がない。どうやらリーシャと信じてもらえないことよりも五十歳以上だと思われていることに怒っているらしい。自分の身体を氷漬けにして五十年の時を超えて来ているわけだから実年齢は六十五歳と言ってもおかしくはないが言わぬが華だろう。肉体年齢は十五歳以上、精神年齢は十五歳未満なのは間違いないが。

 

 

「とにかく、このまま君たちをレミ様に会わせるわけにはいかない。とりあえず抵抗の意志がないのであれば身に着けている武器を全て渡してもらおうか」

「もう、どうして信じてくれないの!? うー……あ、そうだ! 魔導精霊力見せれば信じてくれる?」

「マジで止めてくれ……ここが無くなっちまうから。とにかく言う通りにするんだ、エリー」

「むー」

 

 

納得いかないのか、頬を膨らませているエリーを宥めながらひとまずはソラシドの指示に従う。というか初めからそうすれば話は早かった。どうやら土下座ばかりに拘り過ぎていたらしい。そんな感慨に浸りながらも急いで自分が持っている武器、もといDBを差し出す。これでひとまずは大丈夫かと安心するもようやく気付く。明らかにソラシドとフーアが驚愕の表情と共に固まってしまっているのを。

 

 

「ど、どうかしたのか……? もうこれ以上は持っていないんだが……もしかして着ている物も全部脱がなきゃダメか?」

「い、いや……そうではなくて。本当にこれを全て君は扱えるのか……?」

「え……?」

 

 

やはり全裸土下座なのかと戦々恐々とするもどうやらそうではなかったらしい。なら何をそんなに気にしているのか。そもそも質問の意図が分からない。扱えないなら持っているはずがないのにどうしてそんな分かり切ったことを聞いてくるのか。だがしばらく顔を青くしている二人の姿を見ているうちにようやく悟る。

 

 

(そ、そうか……!! DBの数に驚いてるのか……!!)

 

 

二人が自分が差し出したDBの数に戦慄しているのだと。自分が今携帯しているDBはマザーに加えて六星DB、、デカログス、イリュージョン、ワープロード、ハイド、拡声機能を持ったものを含めれば全部で十二個。本来、DBは一人一つしか持つことができない。それが人間の限界。闇の頂点と言われるキングですら扱えるのは五つだった。ことDBの扱いに関しては恐らく自分はキングを超えている。加えて持っている内訳にはシンクレアに加えて六星DBも含まれている。どう考えても異常すぎる。ずっと修行漬けだったせいか自分の感覚もおかしくなってしまっていたらしい。これを警戒しないなんて人間ならあり得ない。予想通り、自分の持つダークブリングマスターセットを目の前にしてソラシドは言葉を失ってしまっている。だがソラシドだけではない。

 

 

「き、貴様……可愛い顔をしてなんてものを持っておる……!? 女子が銃器など……それにこの杖……もしやお主魔導士か!?」

「え? あ、そっか、あたし魔導士だったんだっけ。オジサン、その杖とガンズトンファー大事なものだから壊さないでね」

 

 

フーアもまたエリーの持ち物を前にして驚愕し、戦慄している。見た目可愛い少女であるはずのエリーがガンズトンファーなんて持っていることへの驚きもあったのだろうが一番の原因は時空の杖。魔導士ではないフーアでも感じ取れるほどの魔力が時空の杖には込められている。解放すればラーバリアなど跡形もなく消し飛ぶほどの魔力。

 

自分とエリーの持つ世界滅亡セットを前にして騎士団の二人は完全に臨戦態勢に入ってしまった。もはやこれまで。結局また力づくでのお話し合いになるしかないとあきらめかけた時

 

 

「止めてお兄ちゃん!」

 

 

そんな少女の声によってソラシドは動きを止める。そこにはソラシドとは髪も肌の色も違う少女の姿がある。

 

 

「レミっ!? お前がどうしてここに……!?」

 

『レミ・シャープナー』

 

ソラシドの妹であり、結界の巫女とされている少女。ラーバリアにおいてはクレア・マルチーズの孫であると偽り、外敵からレイヴを守る囮役を務めていた存在。本来ならこんなところにいてはいけないレミが現れたことでソラシドは動揺し我を忘れてしまう。フーアもまた状況が掴めていない。アキもまたどう動くべきか悩むも

 

 

「レミを責めないでやってくれ。全て私の決めたことだ」

 

 

そんなもう一人女性の声が響き渡る。褐色肌の女性。だが明らかに普通の人間ではない容姿と気配を纏っている存在。動物の鳥を模したかのような出で立ち。それが今の彼女のレイヴの守り手としての姿。

 

 

『蒼天四戦士クレア・マルチーズ』

 

 

それが五十年の時を超えたアキたちとクレアの邂逅だった―――― 

 

 

 


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