BanG Dream! 5人の幼なじみと1人の先輩   作:ELS@花園メルン

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書けば書くほどどんどん、構想が練られてきて楽しくなってきました。



とある休日

Side 真

 

 

オープンスクールが終わった翌週の土曜日。

週末の課題も少なかったのでさっさと済ませ、気晴らしに外出し、商店街に足を運んでみた。

 

 

(ついでに晩飯の食材も買って帰ろうか...何作ろう)

 

 

親が共働きでこの街を出ていき、丁度高校に進学する俺は一人暮らしに憧れていたので、無理を承知で家に残らせてほしいと頼んだら、思いのほか快く了承してくれた。

そのため、いまは家では俺ひとりが暮らしている。

ちなみにその為に料理の勉強もしたのできちんと自炊だって出来る。

家には、学生の頃に軽音部だった母とギターが趣味だった父のお陰でギター、ベース、ドラム、キーボードが揃っていた。

どうせ揃えるなら全部揃えようと言うことらしい。

その甲斐あってか、俺はどの楽器も弾けるようになったのである。

 

 

「おう!真坊じゃねぇか!

良かったら見ていかねぇか!」

 

 

魚屋の親父さんが俺に元気よく声をかけてきた。

 

 

「おじさん、こんちは。

今日のオススメは?」

 

「今日は活きの良いエビが入ってるぜ!」

 

「エビかぁ...。

よし、とりあえず3人前頂戴!

余ったら冷凍するから!」

 

 

俺は氷を入れてもらった袋にエビを入れてもらい、代金を払った。

 

 

「そういや、おまえさんの親はまだ仕事か?」

 

「まあ、そうですね。

年末には帰ってくると思うんですけど」

 

「懐かしいよなぁ。

お前さんが小学校の頃に楽器を弾き始めて親と3人でこの商店街でプチコンサートを開いてよぉ...」

 

「あ、あれはまだ小さかったからちょっと調子に乗ってただけだって!あんまし掘り返さないでよ、じゃあね!」

 

「おう!また来いよ!」

 

 

小さい頃、小学校入りたてくらいだったかな?

楽器を触り始めて、親に子供向けのギターを買ってもらったのを覚えてる。

譜面なんか気にしないで弾いて、さっきの魚屋の親父さんや商店街のおじいちゃんおばあちゃんに手書きの招待券みたいなのを書いて送って、プチコンサートなんかを開いたこともあった。

父さんと母さんも一緒に楽器を持ち出して家族3人でコンサートをして、俺は適当に弾いてたのに2人がサポートしてくれたから、きちんとした曲になってた。

その時の拍手がとても嬉しかったのは今でも覚えてる。

そこから、色々な楽器を試して今ではこんなになってたりする。

 

 

とりあえず昼でも食べようか…

折角だし、何処かいい所を...っと、羽沢珈琲店が近くにあったな、そこにしようか。

ん?羽沢?もしかして、羽沢つぐみの家だったりするのか?

 

 

そう考えながら、俺は店に入った。

 

 

「いらっしゃいませ~♪

あ!八城先輩!こんにちは!」

 

 

俺の考えは当たり、店には羽沢がおり、テーブルを拭いていた。

 

 

「よ、羽沢、オープンスクール以来だな。

ここは、君の家でいいのか?」

 

「ええ、そうですよ。

今日はバンドの練習も休みなんで家の手伝いをしてるんです。

あ、でももう少ししたら皆が遊びに来るんでそれからは休憩ですけど!」

 

「そうなのか、それじゃあホットサンドセットを頼もうかな。

それとブレンドコーヒーを食後に」

 

「はい!かしこまりました!」

 

 

羽沢はそう言うと奥へと駆けていく。

俺は少し店の中を見渡してみた。

 

 

(流石にそろそろバイトでもしようかな...)

 

 

と、考えながらバイトの張り紙とか無いかと探していると、

 

 

「はい、お水です。八城先輩、キョロキョロしてどうしたんですか?」

 

 

羽沢が水を持ってきてくれた。

 

 

「ん?ありがとう。

いゃ、そろそろバイトでもしようかなって思っててさ。

あ、そうだ、この店ってバイトの募集とかして無い?」

 

「してますよ?

良かったらお父さんに紹介しましょうか?」

 

 

と、再び奥へと羽沢は消えて行く。

しかし、すぐに戻ってきて、父親と一緒に俺の方へ来た。

 

 

「バイトしたいんだってね?

良かったらお試しで何日か入ってみないかい?」

 

「え?いいんですか?」

 

「ああ。別に大丈夫だよ。

君は娘が行こうとしてる高校に通ってるんだってね?

娘や娘の友達のことも気にかけてやってくれると助かるよ」

 

「ええ、是非。

あ、自分は八城 真と言います。

よろしくお願いします、羽沢さん」

 

「ああ、よろしく、八城君。

そうだ、つぐみ。八城君に仕事の内容を教えといてくれ。

今日からでも早速入ってもらおう」

 

「あ!すみません、入るのは構わないんですが、夕食の買い物をもう済ませてしまって、それを1度置いてきてからでもいいでしょうか?」

 

「そうかい。

なら、うちの冷蔵庫を使うといいよ。

まだ空いているからね」

 

 

羽沢さんのご行為に甘えさせてもらい、冷蔵庫をお借りし俺は羽沢珈琲店のエプロンを着用し、早速仕事を開始した。

あ、ちなみにホットサンドセットなんかの料金はちゃんと払ったからな。

 

 

「早速、仕事しましょう、八城先輩!

コーヒーの入れ方とかって分かりますか?」

 

 

最初にコーヒーの入れ方やブレンドの配分、挽いた時の豆の粗さなどを大体教えてもらい、店の料理のメニューの作り方なども教わった。

 

 

カランカラン

 

とドアベルの音が店に響く。

 

 

「「いらっしゃいませ!」」

 

 

俺が入ってから最初の客が来たので、俺と羽沢は元気よく挨拶した。

入ってきた客は青い着物に眼鏡を掛けた厳格そうな男性だった。

 

 

「おお、真君じゃないか、久しぶりだね」

 

 

しかし、男性は俺を見ると気さくに話しかけてきた。

 

 

「こんにちは、美竹さん。

お久しぶりです」

 

 

彼は美竹 哲馬さん。

100年もの伝統のある華道の家柄で、父さんの友人でもある。

何度か家にも足を運んでいたが、父さんたちが家を出てからはそういうことも無くなってしまった。

 

 

「真也たちの最近の調子はどうかね?」

 

 

と、美竹さんは聞いてきた。

真也とは俺の父さんの名前である。

 

 

「順調だって言うのは聞いてます。

何分、父も忙しいので基本そういう連絡は母としてるんで」

 

「そうか。

では、注文いいかね?」

 

「あ、はい!ご注文お伺いします」

 

「ブレンドコーヒーをホットでそれとこの抹茶ケーキを頼む」

 

「ブレンドコーヒーのホットと抹茶ケーキですね、かしこまりました」

 

 

俺は注文を受けると奥へ向かい、羽沢さんに

 

 

「注文、抹茶ケーキ1とブレンドコーヒーホット1です」

 

 

と、伝えると、冷蔵庫に入れてあるケーキの準備を始めだした。

俺はカウンターの方へ向かい、ブレンドコーヒーを作るために作業を始めた。

 

 

「や、八城先輩!あの人と知り合いなんですか!?

なんか、仲が良さそうでしたけど...」

 

 

と、羽沢がコソコソと聞いてきた。

 

 

「あの人は美竹 哲馬さん。

俺の父さんの友達だよ。

ん?美竹ってもしかして?」

 

「はい、あの人は蘭ちゃんのお父さんなんです...」

 

 

あの人が美竹の親父さんか...

羽沢の声から察するにあんまし仲が良くないのか?

 

すると、羽沢さんがケーキを持ってきたので、ブレンドコーヒーを注ぎ、カップとケーキを哲馬さんへお持ちした。

 

 

「お待たせしました。

抹茶ケーキとブレンドコーヒーホットになります」

 

「ああ、ありがとう。

うむ、いい香りだ。

...すまない真君、少し相談があるんだがいいかね?」

 

「?別に構いませんが」

 

 

羽沢にその事を説明し、軽く休憩を貰ったので、哲馬さんの向かいの席に座った。

 

 

「最近、娘との仲が余り良くなくてな...」

 

「娘と言いますと、蘭さんの事ですか?」

 

「知っているのか?」

 

「以前、僕が通っている高校へ見学に来てましたので」

 

「なら話が早いな。

最近の蘭は何処かフラフラとしているように思えてな。

私の家が華道の家であることは知っていると思うが、アイツは一人娘だからな。

いずれは跡を継がなくてはならん。

しかし、華道対して向き合おうとしないからと、

以前、『バンドのごっこ遊びなど止めてしまえ』と叱ったことがあるんだ。

それ以来のアイツは何処か私を避けていてな。

本当はアイツの好きな様にさせてやりたいのだが、如何せん、アイツの前だとつい厳格な態度でいてしまう。

このままだと、家族として、父親としてアイツに何もしてやれない気がしてな。

何かいい案は無いかね?」

 

 

うっ...なかなかヘビィな話だ...。

 

 

「やはり、それはお互いの本音を話し合うことが一番だと思います。

蘭さんにとって華道とはバンドとは何かをしっかり話した上でお互いの考えをぶつけることが一番だと思いますよ。

でも、今は止めておいた方がいいかもしれませんね。

少しずつでも会話をする機会を増やしてみてはいいんじゃないでしょうか?」

 

「...そうか、ありがとう。

気が楽になった気がしたよ。

それと、ご馳走さま、代金はいくらになる?」

 

「550円になります。

また、父さんたちが帰ってきたら家に来てくださいね」

 

「ああ、そうさせてもらおう。

真君もまた家族でもいいし、1人でもいいからうちに来なさい」

 

 

そう言って哲馬さんは店から出ていった。

 

休憩を終えて再び働き、時刻は16時を過ぎた。

すると、聞いたことある話し声が店の外から聞こえ、中に入ってきた。

 

 

「あぁ、ヤシロシンせんぱいだぁ〜」

 

「ホントだ!なんで、つぐの家にいるの!?」

 

「こんにちは、真先輩」

 

「...ども」

 

 

羽沢以外のAfterglowのメンバーだった。

 

 

「今、バイトのお試し期間でさ。

あ、羽沢、みんな来たぞ」

 

 

俺は奥にいた羽沢に呼びかける。

 

 

「あ、はい、すぐ行くんで部屋に上がるように言ってください!」

 

「部屋にあがってろってさ」

 

「はーい、お邪魔しまーす」

 

 

青葉が真っ先に上がっていくと、それに続き皆が上がって行った。

 

 

「あ、八城先輩!お父さんが来てくれって行ってました!」

 

 

羽沢も奥から出てきて、俺にそう伝えると自分の部屋へと向かっていった。

 

 

「ああ、八城君。

お疲れ様、今日はもうあがってくれても構わないよ。

それで、決めたかい?」

 

「はい。

今日、働いてみて色んな人と接することが出来るのはやっぱ新鮮だと思えたんですよ。

だから、これからも働きたいと思います」

 

「そうか、なら、これからもよろしく頼むよ。

日付は君の都合に合わせるから、頼んだよ」

 

 

そして、俺は正式に羽沢珈琲店のバイトになった。

 

 

「そうだ、このコーヒーとケーキをみんなに届けてもらえるかい?」

 

 

そこには、6つのカップと6皿のケーキがあった。

あれ?ひとつ多くないか?

 

 

「君も一緒に頂いてくるといいよ。

......5対1のハーレムだよ♪」

 

 

は!?な、何を言い出すんだこの人は!?

 

 

「ま、まあ、ありがたく頂きます...」

 

 

俺はケーキとコーヒの入ったトレイを持ち、羽沢家にお邪魔した。




そういえば、蘭の父親の名前が無かったと思うのでオリジナルで考えました。
今回は主人公の休日のお話です。
それと、蘭とお父さんの関係は主人公が入ったことで少しずつでも、いい展開に持っていけたらと思います

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