BanG Dream! 5人の幼なじみと1人の先輩   作:ELS@花園メルン

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今回でイベントストーリーは完結となります。


七人目のAfterglow

SIDE 真

 

 

階段での騒動から俺たちはゆっくりと歩いていた。

というか、それくらいの速度でないと、足が竦んでいる蘭、巴、ひまり達が付いてこれないから仕方がないんだが。

 

 

「うう...この静けさが何か出そうで怖いな...」

 

「も〜、静かにしてろって言ったのトモちんじゃ〜ん」

 

「し、しょうがないだろ!?

さっきみたいに声が聞こえるかもしれないんだし!」

 

「ま、まあ、2人とも!」

 

 

と、つぐみが間に入る。

 

 

「ねぇ、先輩?

この道で合ってるの?」

 

 

と、蘭が聞いてきた。

 

 

「合ってるぞ」

 

「そうだよ~蘭~聞こえない?

『こっちこっち~』って声が」

 

 

と、俺が答えた後にモカがそう言った。

 

 

「あーあー!!わーわー!!聞こえない!!何も聞こえてないぞ~!!」

 

 

巴がモカの言葉に反応して叫びだした。

 

 

「もう、モカ。

そういうこと言われたら本当に聞こえてきそうじゃん~!」

 

「…!」

 

 

ひまりがモカにそう言った後、蘭がモカを鋭い目つきで睨んでいた。

まるで、『次、変な事したら絞める…!』とでも言いたげな顔だ。

 

 

「…もうしません」

 

 

モカもそれを察してか、苦笑いして約束した。

 

 

「じゃあさ!皆で歌でも歌いながら移動したら怖さも少しは紛れるんじゃないかな?」

 

 

と、つぐみが提案した。

 

 

「確かに!それなら歌で他の音が聞こえなくなりそう!」

 

 

つぐみの提案に乗ったひまりが一番最初に歌いだした。

 

 

「むげんだ~いなゆめのあとの~」

 

「なにもない世の中じゃ~」

 

 

と、Afterglowがカバーで歌っている【Butter-fly】という曲を歌いだし、さっきまでのおびえた様子が嘘のように進んでいた。

 

 

「あ~でも、やっぱり歌だけだとリズムが取りずらいね!」

 

「確かになー。

何か、楽器でもあれば一気に歌いやすくなるんだけどな」

 

 

と、ひまり、巴が口にしたとき、そんな願いにこたえるかのように、ピアノの音が聞こえた。

 

 

「「「ヒィッ!?」」」

 

 

ひまり、巴、蘭の3人は急に立ちすくんでしまい、脚が震えていた。

今、俺たちがいるのは実習棟だから近くには当然、音楽室もある。

ピアノが聞こえるのも普通かもしれない。ただ、それは今が昼間の事だったらだ。

生憎と今は、真っ暗な夜である。学校も閉まっていて、俺たち以外いるはず無い。

 

でも、ピアノは鳴りやむことなくどんどん音を奏でている。

しかもそのメロディがAfterglowが歌っている【That Is How I Roll!】だった。

 

 

「もう嫌っ!無理無理無理!私、帰る!!」

 

「え?そのためにモカちゃんたちここまで来たんでしょ~?」

 

「おいっ!ピアノ!止まれよ!!」

 

「…それで止まるのか?」

 

 

蘭はいよいよ泣き出してしまい、巴は何かもう可笑しくなってピアノに怒鳴っていた。

 

 

「もう私こんなとこに居られないっ!ピアノの音聞いてたくない!」

 

 

と、蘭が走り出してしまい、巴、ひまりも蘭について逃げ出してしまった。

 

 

「あっ…3人とも!!」

 

「…今の蘭のセリフってなんか死亡フラグみたいだったよね~」

 

「おい、モカ。

流石にそんな不吉な言葉はやめろよ」

 

「…はい」

 

「って、あの3人懐中電灯私が持ってるから真っ暗な中移動することになっちゃうよ!?」

 

 

つぐみが慌てだした。

 

 

「とりあえず、追いかけよ~!

つぐ、先輩、ダッシュ~!」

 

 

と、俺たちは3人を追うために走り出した。

 

その途中で、モカが鏡の前でつぐみの後ろに変な人影が見えたと言ったせいでつぐみもどこかへ走り出してしまった。

 

 

「…モカ……」

 

「先輩と二人きりになっちゃった~。

でも、本当につぐとは別の人影が見えたんだよね~」

 

「【鏡に映る人】の七不思議か…。

って、ちょっと待てモカ。

今、お前の後ろにも」

 

「ぅぇ!?」

 

 

バッとモカは後ろに振り替えるがその時、モカの後ろに映った人影も動いた。

 

 

「?…あれ?」

 

 

ブンブンとモカは今度は腕を振った。

すると、その影も腕を振っていた。

だが、急にその姿が消えてしまった。

 

 

「あれ…先輩、これって~」

 

「月明りで出来た影、だろうな」

 

 

少しするとまた影が現れ、モカと同じようなしぐさをした。

 

 

「じゃあ、さっき見たのは・・・」

 

「別のって言うからには俺かモカの影じゃないのか?」

 

「な、な~んだ、本当に出ちゃったのかと思っちゃったよ~」

 

 

モカも少し動揺してたようだ。

俺は怖くはなかったが、多少の驚きはあった。

 

 

「とりあえず、4人を探さないとな。

どうする?手分けして探すか?」

 

「う~ん、モカちゃんたちもバラバラになったら合流が大変だから~!」

 

 

と、そう言いながらモカは俺の腕にしがみついてきた。

はぁ!?おま、何してんだよ!?

 

 

「何してんだよ!?」

 

「え~?はぐれない様にしてるだけ~!

あれ~?もしかして、先輩、ドキドキしてますか~?」

 

 

と、モカはからかってきた。

くそっ、なら俺だってお返しだ!

 

 

「当たり前だろ?モカみたいな可愛い後輩がこうして近づいてきてるんだしさ。

これで、ドキドキしない奴なんかいないだろ」

 

「ふぇ・・・!?」

 

 

そんな声を出しながら、モカは顔を真っ赤にしていた。

 

 

「よ、よ~し、行こ~!」

 

 

と、モカは上ずった声を出して、俺の腕を引っ張りながら歩いて行った。

はぐれたメンバーを一人ずつ見つけるころには、モカは既に俺の腕から離れてふつうに歩いていた。

 

 

「も~みんな~勝手にどっか行っちゃだめじゃん~」

 

「「「「御免なさい・・・」」」」

 

「ま、合流できたし、それに体育館も目の前だからな。

さっさと出るとしよう」

 

 

俺たちは体育館へと足を運んだ。

 

 

「えっと、出口はっと…。

つぐ、懐中電灯で――」

 

 

と、巴が言いかけた時、つぐみの持っていた懐中電灯から明かりが消えた。

 

 

「うわっ、真っ暗だよ!?」

 

「つぐみっ!懐中電灯は!?」

 

「あ、あれ?故障かな?さっきから全然つかないよ!?」

 

 

真っ暗だったが、カチカチと懐中電灯のスイッチを変更している音が聞こえた。

 

 

「も、もうやだよ~!早く出たい~!」

 

「ひ、ひまり、落ち着けって!?」

 

「トモちん、私だよ~」

 

「あ、間違えた…」

 

 

どうやら、巴がモカとひまりを間違えて慰めていたようだ。

 

 

「くそっ、こうも暗いとどこが出口か分かんないな」

 

 

俺も流石にこうも暗くては出入り口の場所は分からなかった。

 

 

ヒュ~

 

 

「!風の音?

ってことは開いているドアか窓があるはず…!」

 

「蘭、天才か…!」

 

「風ってあっちから吹いてたよね?

行こっ!皆、私に捕まって!」

 

 

つぐみを探し出し、俺以外はつぐみを掴んだみたいだ。

俺は、つぐみたちが走った音を頼りにそっちへ向けて歩いて行った。

 

 

「あれ?風吹いてたのこっちだったと思うんだけど…」

 

『こっち、こっち~こっちだよ~!』

 

「?こっち?」

 

「わ!?つぐ、急に動かないでよ!」

 

 

と、つぐみたちが何かゴタゴタしながら少し歩くと、つぐみの持っていた懐中電灯にふたたび明かりが灯った。

 

 

「やった、ついた!」

 

「急に直ったね。接触が悪かったのかな?」

 

「あれ!?これって非常口じゃない!?」

 

「あ、ホントだ!ひまりちゃん、教えてくれてありがとう!」

 

 

と、つぐみはひまりにお礼を言っていた。

……さっき、ひまりって何か言ってたか?

 

 

 

「こんなとこ兎に角出よう!…あれ?」

 

 

ガチャガチャ

 

 

巴がドアを開けようと引いているが全く開きそうになかった。

 

 

「え、これって……鍵が…?」

 

「そ、外からかかってるな、こっちからじゃ開かないぞ…」

 

 

蘭、巴はいよいよ絶望しそうになってた。

 

 

「詰んだ~。これは流石にもうだめだ~」

 

 

モカもネガティブになってきていた。

 

 

「せ、先輩、どうしましょう…!」

 

 

ひまりが俺に聞いてきた。

 

 

「こうなったら「蹴り破るしかないだろっ!」…」

 

 

巴が今、とんでも無いことを言った気がする。

 

 

「そ、それは不味いよっ!

だ、誰か、開けて~!

でないと、ドアが壊されちゃう~!!」

 

 

と、ひまりがドアの向こうに叫ぶと、

 

 

ガチャ

 

 

と、音がした。

 

 

「あれ?開いた!

やった!ありがとうございます!!」

 

 

と、ひまりはドアを開けながら体育館の外へ出た。

しかし、外には係員の姿どころか、人の存在は無かった。

 

 

「…誰も、いない…?」

 

「もう、勘弁してよ……!」

 

 

ひまりが唖然とし、蘭は頭を抱え込んでいた。

 

 

「思い出した。

最後の七不思議…。

夜な夜な生徒の霊が出るって話だったかも~」

 

 

と、モカが思い出したように言った。

 

 

「も、もうその話はやめようって!無事に外へ出られたんだしな!」

 

「そ、そうだねっ!にしても、つぐ、ナイスだったよ!ドアの場所見つけたの!」

 

「え、ひまりちゃんが教えてくれたから分かったんだよ!」

 

「?私、何も言ってない…」

 

「「「「「「……」」」」」」

 

 

階段の時の巴の声と同じような状況が再び生まれた。

 

 

「「「「「キャーー!!」」」」」

 

 

5人は一目散に学校から出ようと全力で走っていった。

俺も帰ろうと思い、歩こうとしたが後ろに誰かいるように感じ、ゆっくり振り向いた。

 

 

『こんばんは』

 

「…、こんばんは」

 

 

半分透けたような女の子が立っていた。

 

 

「き、君は?」

 

『私?私はね。

この学校の生徒だったの。

でも、病気で死んじゃってね。もっとみんなと遊びたいなって思ってたら、いつの間にか学校にいたの。

それにしても、貴方のお友達はとてもいい反応をしてくれたわ!

おかげで私も満足することができた、ありがとうね』

 

 

そう言うと、女の子の体はより、透けてゆき、終いには完全に消えてしまった。

 

 

……最後の最後でよりにもよって七不思議どころか、本物の幽霊を見るなんてな…。

一夏のいい思い出になったかもしれないな…。

 

 

俺は学校を出て、後日、参考書を無事持って帰ったひまりの宿題を教えたり、Afterglowの新曲づくりを手伝ったりした。

七不思議はおそらく、誰かが流したデマとあの女の子が起こした出来事が色々混ざって大きく話が膨らんだのかもしれないな。

彼女の事は、俺の心の中にずっと留めておこう。・・・そもそも、信じてもらえそうに無いしな。




これで番外編は少し区切りにしようと思います。。

次回からはまた本編へと帰りますが、少し遅くなるかもしれません

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