BanG Dream! 5人の幼なじみと1人の先輩 作:ELS@花園メルン
なので、ここからの展開は殆ど私の考えたオリジナルとなっていくと思います。
Side 真
「さて、作るとするか!」
「真!俺達はこっちで一杯やってるからツマミになるもの作ってくれ!」
「分かったよ!」
俺はとりあえず今日、魚屋で買った海老を茹でるために鍋に湯を沸かす。
すると、蘭が台所に入ってきた。
「...私も手伝う。
母さんの手伝いで何度か料理したことあるから」
「悪い、助かるよ、蘭。
じゃ、早速だけど湯が沸いたら海老を放り込んでくれ。
包丁はあんまし使うなよ?
ギターは手が命だからな。
こんな所で怪我したら元も子も無いぞ?」
蘭にそう忠告すると、
俺は白菜やきゅうりなどの野菜を切り、皿に乗せて上から生ハムを置き、サラダを完成させ、それを父さんたちの所へ持っていった。
「ほい、とりあえずサラダでもつついてて」
サラダの皿と冷蔵庫に入ってたドレッシングを机に置いた。
「ほ〜?シンプルだけど美味そうじゃないか?」
「彩りも綺麗だな。
ありがとう、真君」
父さんと哲馬さんは既に何杯か日本酒を飲んだようで、その顔はほんのりと赤かった。
台所へ戻ると蘭が海老を鍋に入れ終えていた。
「終わったよ、先輩。
次、何したらいいの?」
「じゃあ、この紙に書いてる調味料を混ぜ合わせといてくれ」
そう頼むと、俺は玉ねぎを微塵切りにし、それを軽くフライパンで炒めた。
「先輩、手際いいよね」
「まあ、半年くらい一人暮らししてたら流石に料理は慣れるさ。
蘭だって、出来るんじゃないか?」
と、軽く会話をしながら、どんどん行程を進めていき、30分も経つとエビチリとかきたまの中華スープが完成した。
「...美味しそう」
「ちょっと味見してみるか?
ほれ、アーン」
「!?」
俺は取り分けたエビチリを箸でツマんで、蘭の方へと近づけた。
「ちょ、食べさせなくても自分で出来るって!」///
「いいからいいから、早くしないと落ちるぞ?」
「ッッ!...あむっ、んっ!」
蘭はエビチリを口に運んだが、少し辛かったのか呻いていた。
「なんだ?辛かったのか?」
「べ、べつに、こんなの問題ない...!」
と、そう言いながら冷蔵庫に手を伸ばしていたので、
ちょっと悪戯してやろうと思い、
俺は冷蔵庫の扉を閉めた。
「せ、先輩なにを!」
「大丈夫なんだろ?じゃあ、飲み物飲まなくても平気だよな?」
すると、なにを思ったのか蘭はレンゲを取り出し、そこに豆板醤、ラー油を入れ、そこにエビチリを乗せたものを俺に食わせてきた。
「あぐっ...!?んん!」
辛っ!?蘭、どれだけ豆板醤、入れたんだよ!?
「ふん!仕返し!
変なことする先輩が悪いんだよ!」
と、少し一悶着あったが、料理が完成したので父さんたちの所へ持って行って、4人でご飯を食べた。
「ほう?だいぶ上達したんじゃないか、真?
だが、母さんにはまだまだ届かないな」
「分かってるよ、そんなの。
何年、差があると思ってんだ」
俺と父さんは話しながら、食べていたのに対して、
蘭と哲馬さんは2人が揃った途端に口数が減ってしまった。
「どうした、哲馬?蘭ちゃんも。
折角の暖かい飯が冷たくなるくらい寂しいぞ?」
だめだ、父さん完全に酔ってる...。
2人と父さんの熱の差が激しかった。
すると、哲馬さんが箸を置き、話し出した。
「...蘭、お前のこれからの事で少し話がある」
「......何?また、私にバンドをやめろっていうの?
私は、自分の好きなことに打ちこんでいたいの!
...ご馳走さま!」
そう言うと、蘭は箸を置き、早々に立ち去った。
「蘭!」
俺が呼ぶのを無視して蘭は部屋を出た。
「...哲馬、蘭ちゃんと上手くいってないのか?」
「...ああ。
恥ずかしい話だよ。
自分の娘に対して向き合おうとせず、ただ跡を継ぐためにバンドを辞めろと言い続けた罰なのかもしれないな...。
私はあの子の事を何も考えて無かったのかもしれん」
哲馬さんは、少しずつ話して言った。
そして、グラスに酒を注ぎグイッと飲み干した。
「真」
「分かってる。
蘭の方は俺が何とかするから」
「頼んだぞ」
「ああ」
取り敢えず、俺はお盆を取り、蘭が食べ残したものをラップして台所に持っていき、勝手にではあるが、コーヒーを入れ、蘭の部屋へと向かった。
トントンと蘭の部屋をノックした。
『だれ?』
「蘭、俺だ。
入るぞ?」
失礼だとは思ったが、返事を聞く前に俺は蘭の部屋を開けた。
「何の用?」
「ほれ、コーヒー入れてきたから1回落ち着こうぜ?」
マグカップを蘭に渡し、床に座り込む。
なんて切り出そうか迷っていると、
「父さんに言われたの?
私を連れてこいって」
「いや?お前のことが心配だったから様子を見に来ただけさ。
...何で哲馬さんのことを避けるんだ?」
一番の核心を尋ねた。
「私さ...。
跡なんて継ぎたくないんだ...。
先輩が父さんのこと知ってるならうちの事情も大体分かるでしょ?」
「100年の伝統を持つ美竹家...だろ?」
「うん。
私は一人娘だから、家を継がなきゃいかないってのは前々から言われてた。
でも、私は華道という道に縛られて歩くのは嫌なの。
今だってそう、みんなと一緒にバンドを続けてたい。
もっと一緒に色んなフェスに出たりしたい」
「でも、いつかは答えを出さないといけないんだ...。
それは分かってるんだろ?」
俺がそう聞くと蘭は頷く。
「でも、伝統を継いで1本のレールを歩くより、もっと色んな事をして、私自身の視野を広げたい!
そして、それからでもいいから華道についてもゆっくり答えを出したい!
...私はそう思ってる」
そっか...。
余り関わった時間は少ないけど、【美竹 蘭】という、人物は芯がしっかりとした女の子だな。
「なら、その言葉をなんで哲馬さんに伝えないんだ?」
「...だって、どうせ言っても真っ向から否定されるだけだもん...」
...なんだよそれ?
結局どっちも気持ちを伝えずに閉じこもってるだけじゃんか!
...なんか、笑えてきたな。
「ははっ!」
「なんで笑うの!真面目な話してんのに!」
「いや、やっぱり親子だなって思ってさ...。
...大丈夫さ、蘭。
哲馬さんと1度しっかり話し合ってみろよ?
お前の本心、これからの答えの出し方をさ。
哲馬さんだって、お前の事を思って道を示したんだ。
なら、さ?お前も自分が進もうとしてる道を哲馬さんに示してみろよ」
「道を...示す...」
「そうさ。
ホントの声は伝えないと誰にも届かないぞ?
歌と同じさ。
声を出さなきゃ観客には歌なんて届かないだろ?」
何か自分で言ってて恥ずかしいな。
「歌と...同じ...か。
ふふっ、そうかも...」
蘭がクスリと笑った。
「やっと笑ったな、蘭。
じゃあ、コーヒー飲んで落ち着いたら先ずは哲馬さんに謝ろう。
そして、それから自分の素直な気持ちをぶつけたらいいんだ!」
俺は、蘭に向けて拳を突き出した。
「...うん、ありがと、先輩」
蘭もそれに答えるかのように拳を突き出し、ぶつけ合った。
「まあ、かく言う俺も一人暮らしをする前に父さんたちと凄い大喧嘩をしたんだけどな」
「ぷっ、何それ?
じゃあ、先輩も人のことを言えないじゃん?」
「俺だからこそ、なんだよ。
そういう経験の【先輩】として、お前に一つの道を示したんさ」
そうして、蘭と俺は部屋を出て、父さんたちの元へと戻った。
哲馬さんは俺がいなくなる前は酒をがぶ飲みしていたが、今は水を飲んだのか少し落ち着いていた。
「...蘭」
「父さん、話を聞いてほしい」
「言ってみなさい」
頑張れ、蘭...!
俺は心の中でそう祈った。
「私は、みんなとバンドを続けたい!
バンドだけじゃない、これからも!
私はもっと色んなことを見て行きたい!」
「...だが、それは華道の道を継いでからでも出来るはずだ」
「そうかもしれない...。
でも、父さんに決められた道を歩むんじゃなくて、私は自分が見て!考えて!道を決めたい!
私の将来のことや華道のことだって!
色々なものを見てからこそ別の視点から物事を測れることが出来ると思う!」
「だが、その道をどう示す?
言葉だけなら誰だって吐くことはできるぞ?」
「...ちょっと待ってて...」
そう言うと蘭は自分の部屋に戻っていき、すぐに帰ってきた。
その手には1枚のチラシが握られていた。
「ガールズバンドジャム?」
そのチラシを哲馬さんに渡し、哲馬さんはそれを見た。
「私たちは今、それに向けて必死に練習してる。
時期は来年の夏だけど、その時に私たちのバンドを見に来てほしい。
そこで私が、私たちが、自分の道を示す【覚悟】を証明してみせる!」
蘭は真っ直ぐ哲馬さんを見つめる。
「ふむ...。
なら、もし私がお前からその意思を感じ取れなかったならばお前はどうする?」
「...父さんの言う通りに...華道を継ぐための勉強に取り組む」
「...分かった。
お前の気持ちは伝わった。
ならば、後はそれを証明して見せろ、蘭!」
「言われなくても分かってる!」
今の蘭の目はとてもやる気に満ち溢れていた。
俺はそう思った。
「そうか...で、は...楽しみに...しておこう...」
「と、父さん?」
酔いが完全に回ったのか、哲馬さんは眠りこけてしまった。
ん?そういえば父さんは...って!?もう寝てた!?
「...どうしよ、先輩。
この状況...」
「と、とりあえず片付けるか...」
俺と蘭は寝てしまった2人に毛布を掛け、食事の片付けを行った。
「蘭、ちゃんと気持ちを伝えられたか?」
「うん、でも後はそれを証明するために成果を残す」
「そうだな。
ま、頑張れよ?」
「......ありがと」
蘭はそう言うと、再びせっせと作業を再開した。
「でも、父さん放置したままでいいのか...?」
「...しょうがないから泊まっていったら?」
その蘭の提案に乗り、俺は美竹家に泊まらせてもらうこととなった。
まあ、当然だが蘭との部屋は別々である。
本来なら、父とのぶつかり合いと、つぐみが倒れるのが重なって、メンバーともギクシャクした感じになるんですが、
主人公の介入により、いい展開に出来たかなと思っています。