ダンジョンで技名を叫んでから殴るのは間違っているだろうか 作:冬威
「ここが僕たちの
ヘスティアに手を引かれながら辿り着いたのは、大通りから外れ更に奥へと進み、周りが廃墟だらけの古びた教会。
「……」
「あ、ははは。ボロボロだけど中の生活スペースはちゃんとしてるから」
教会の扉を潜ると、中はやはり廃墟同然で床は所々抜け、草が伸びている。天井も穴が空いているところから陽の光が差し込み教会を照らす。
「コッチだよ」
祭壇の奥にある隠し扉を開け、階段を降りた先にはこじんまりとした部屋があった。
「……」
「ご、ごめんね。こんなところで…」
教会に着いてから一言も喋らないフランシスカにヘスティアは不安を感じてしまう。フランシスカはというと…。
(…廃墟の
不安で仕方ないヘスティアとは真逆に、よく分からない感性を刺激され胸を高鳴らせていた。
「あの、フランシスカ君?」
「すいません少しぼーとしてました、良いところですね」
「そ、そうかい?なら良いけど…」
ニッコリと爽やかな笑みを浮かべるフランシスカに対して、タジタジになりながら一安心した。
「あっ、あと私の名前は長いのでフランかフランクと縮めて下さい」
「分かったよ!フラン君と呼ばせたもらうね」
「はい。ヘスティア様」
「それじゃ、早速恩恵を刻もうか!上を脱いでくれるかい?靴も脱いでそこのベッドに寝てね」
言われた通り上を脱いでいく。脱ぎ終えたフランシスカをみてヘスティアはギョッとした。
「フラン君…。すごいねそれ、刺青かい?」
フランシスカの体、筋肉は鍛えすぎず程よく引き締まり、長い手足でスレンダーではあるが、出るところも大き過ぎず小さすぎずちょうど良い。
だが何より目をひくのは、白い肌に描かれた刺青。左よりに心臓から上は首へ伸び、下もズボンで見えないが靴下を脱いだ足の裏まで模様が浮かび、両足で異なる十字架が刻まれていた。
「その話は後で…。流石にこの格好のままでは…」
「ごめんごめん!直ぐ始めようか」
ベッドにうつ伏せに寝転がると、その上にヘスティアが跨り
ステイタスは項目自体統一されているが人により千差万別。その人自身の経験が反映され、能力を引き上げるための神々に唯一許された力。
ここで不正しようものなら他の神に「チートとかマジないわ〜」と袋叩きにされる。そもそも、不正するにしても神の力を使った事がバレるためやりようがないらしい。
「…フラン君。君はいったい…?」
「ああ、やはり何か出ましたか?それについても刺青の事と合わせて説明しますよ」
「…分かった。コレが君のステイタスだ」
ヘスティアから用紙を受け取り目を通す。
ーーーーーー
フランシスカ・アルベルタ・スターフェイズ
Level.1
力 :I 0
耐久:I 0
器用:I 0
敏捷:I 0
魔力:I 0
血凍道 I
魔法
スキル
【
・エスメラルダ式血凍道。
・血を凍結させる。
・精神状態により術式が変化する。
【
・ブレングリード流血闘術(擬似)。
・血を凝固させる。
ーーーーーー
(エスメラルダは分かる、自分の家系だし。…紳士の技?これまで反映されたのか)
取り敢えず服を着て、ヘスティアに向き直る。
「それで?君について聞かせてくれないかい?」
「はい。私はーー
オラリオから遠く離れた、雪が降り積もる国でスターフェイズ家の末っ子として生まれた。
このスターフェイズ家は、古の英雄時代に神の恩恵なしでモンスターと戦う術として、自身の血を凍結させる技術を生み出した。それが初代エスメラルダ。
体の刺青は術式で力が強くなるに連れて広がり、抑制してくれる効果がある。逆に刺青が浮き上がらないと大問題になる。
そして、彼女は同じ様に、血を凝固させる力を生み出した、ラインヘルツ家の戦士。ブレングリードと共に、大穴から溢れるモンスターと命がけで戦った。
彼女達は神々が降り立った際に、人類の危機が去ったと判断し神々の眷属にならずに故郷へと帰っていった。
それから、それぞれの家で2人の血を引く子には血凍(闘)の力を持った子供が生まれる。だが、必ずではなく何世代も生まれない時もあれば、立て続けに生まれる事もある。力の強さもそれぞれだ。ただ技術を絶やさないように、一族で守ってきた。
17年前、フランシスカは血凍道の使い手として生まれた。先祖返りをしたようで、目は瞳だけでなく初代のように白目部分まで
叔父にあたる血凍道の使い手を師とし、さらに叔父と仲の良いラインヘルツ家の者にも教えを請う。師と先生に鍛え上げられる修行の日々。ぶっちゃけ思い出したくない。
本来使えるはずのないブレングリード流血闘術が使えるのは、血を操る事に才があったらしく、ただ真似ているだけ。
ーー後は、家のゴタゴタでこのオラリオにやって来たという訳です」
「なるほどね〜。古の英雄時代の技術か…」
フランシスカの話を真剣な顔で、終始黙って聞いていたヘスティアは考え込んだ。
「…フラン君。君のその力は暫く人目につかないようにしてほしい」
「と、言うと?」
「君の力を知った暇神共にオモチャにされかねない!ステイタスやレベルが上がれば、いくらでも誤魔化せる‼︎緊急時以外はなるべく避けてくれ‼︎」
力強く説得してくるヘスティアに、若干ひきながらフランシスカは頷いた。
「よし!…後は僕の眷属に会ってもらうよ。もう直ぐ帰って来ると思うんだけど…」
ヘスティアが隠し部屋の扉に目を向けると、タイミングよく上階から足音が聞こえ、勢い良く扉が開いた。
「ただいま戻りました!神様‼︎」
ニッコリと笑みを浮かべた、白髪赤目の兎のような少年。
(この子…。何処かで…?)
はい、勝手に設定盛りました。良いじゃないのよ人間だもの。