機動戦士ガンダムSEED WILD   作:セイワ

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どうもセイワです。
お気に入りが合計31、感想が8と好評です。
こんな作品でも応援している人たちがいる事に感動しました。
それでは始めます……


第4話 勇気の証明

 トウマは一旦目を閉じてまた見た。“ヘリオポリス”であった場所に偶然にも、だが不幸にも見つけてしまったものの残骸を見て、

 

「不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 叫ぶしかなかった。そう、自分達が乗っていた船の残骸を──

 

「はぁぁ、これで“アークエンジェル”に乗るしかなくなったか……」

 

 ため息とともに周りを見渡すと、

 

《XXX001“ビルトシュバイン”…XXX001“ビルトシュバイン”、トウマ・カミジョウ、聞こえるか、返事をしろ!!》

 

 通信からナタルのどなる声が聞こえて来た、それだけ必死なのだろう。まあ、自分ではなくこの機体なのだろうとトウマはそう思い、通信のスイッチを入れた。

 

「聞こえている、人が悲しみに黄昏ているっていうのに、空気読んでくれよ全く」

《無事か。だが、空気を読めとはどういう事だ?》

「何、俺らが乗っていた船の残骸を見ていただけさ。所でXXX001って?」

《XXX001はその機体のコードだ。それよりも誘導ビーコンを出す。そちらに戻れるか?》

「それなら何とか」

 

 バッテリーは半分を切ったが戻るのには大丈夫だろう。

 

《よし、直ちに帰還しろ。脱出するぞ》

「へいへい、それまでザフトに見つからないようにしますよ。勿論そっちも」

《口の減らない男だな、お前》

 

 そう通信を切り、ビーコンの反応を頼りに動こうとした時、

 

「あれは、脱出用のポットか?」

 

 “ヘリオポリス”から射出された脱出ポットを見つけたが、何かおかしい。注意深く見て気付いた時、すぐに通信のスイッチを入れた。

 

「こちらXXX001、緊急事態発生!!」

 

 

「こりゃあ、どこかぶつけて破損したようだな。このまま放置していたら乗っていた民間人は全員酸欠で全滅だったな」

 

 トウマが見つけた脱出ポットをコジロー・マードックが調べたことをマリューとナタルに報告していた。脱出ポットに起こった異変、それは酸素ボンベが噴き出した事による乗員の全滅の危機。トウマはそれを見つけてすぐに“アークエンジェル”に報告、回収することを提案した。その時にナタルと一悶着があったが、トウマに口で言い負けさらにマリューの采配で回収することになった。コジローが見ていたのはトウマの報告の審議であり、結果、それが正しかったといえる。

 

「だが、この人数で行動をすれば遅かれ食糧不足になるぞ」

「そこは安心しろ。後で“運び屋”に頼むようにする」

「“運び屋”?」

「俺達ジャンク屋で有名な奴だ。金さえ払えばどんなものを運んでくれる」

 

 救出した民間人をこれからの事を話しあったトウマ達に、

 

「トウマ・カミジョウ……?」

「んあ?」

 

 ふと自分の名前を呼ばれたので声の方を見ると赤髪の少女がいた。だが、その顔は驚愕の顔をしていた。

 

「おお、アルスターの箱入り娘か。いたんだ」

「いたわよ! 何でここにいるのよ……?」

 

 頭を抱えるフレイ・アルスターはげんなりとトウマを見ていた。

 

「アルスター? まさか事務次官と関係が?」

「さっきも言ったが、こいつはジョージ・アルスターの一人娘でバカ娘だ」

 

 さっきから箱入りだのバカだの爆弾発言をするトウマにナタルは頭を抱えた。この男は“コーディネイター”だが他の“コーディネイター”たちと違う点が多すぎる。高慢で他を見下すのがイメージだが、彼の場合はむしろそれとは逆で掴めない性格である。

 

「ま、まあ……、これからの事を話をしましょうか……」

「そうだな、後でサイに会え。この艦にいるからな」

 

 マリューが呆れながらもこれからの事を話すといい、そう言い格納庫から出ていくと同時にすれ違いにサイが入ってきて感動の再会をしているのだろう、フレイを思い浮かべながらトウマは去っていく。

 

 

 “ヘリオポリス”の残骸は皮肉にも“アークエンジェル”の隠れ身となっていた。“ニュートロンジャマー”との相乗効果によりレーダーは使えず、残骸の中には熱を持つものもあり熱源センサーも使えないのだ。

 

「後は何処へ行くのかだな……」

 

 トウマの言う通り、今後の方針を決めてそれを実行するだけだ。

 

「敵の居場所は分かる?」

「無理ですね、相手もこちらに見つからないと同時にこちらも相手を見つけません」

 

 マリューの質問にナタルは渋い顔で返答した。条件は同じだが、相手にとって有利である。それは──

 

「今攻撃を受けたらこっちに勝ち目があるかどうか……」

「だよな、あっちは5機の“G兵器”があるし。こっちは俺のボロボロの“メビウスゼロ”に調整が終わっていない“ゲシュペンスト”と“シュッツバルト”、そして“ビルトシュバイン”だ」

 

 トウマとムウが言う通り、あっちに“ジン”が何機か残っているかは分からないが戦力は圧倒的に不足している。“ゲシュペンスト”と“シュッツバルト”もOSが全くない状態で手つかずの状態なのだ。それだけではない、補給物資、特に水と弾薬が不足気味だった。弾薬の方はいざとなればトウマ達が何とかしてくれるのだが、水と食料が問題なのだ。どこかで補給をするしかないとだれもが思った。

 

「あっちにはナスカ級がいるって言うし、こうなったらデブリの中を突っ切るしかないか……」

 

 トウマは頭を抱えながら進言する。この“アークエンジェル”は高速艦だが、同じ高速艦であるナスカ級がいる為振りきれない可能性が高い。ならばこのデブリを利用して逃げるしかないのかと考えたのだ。

 

「……艦長、私は“アルテミス”に向かう事を提案します」

 

 その提案に3人はナタルの方を向いたのだ。

 

「確かに“アルテミス”なら近いし、“傘のアルテミス”って呼ばれているからザフトも手出しできないかもしれないけど──」

 

 宇宙要塞“アルテミス”は“ヘリオポリス”から比較的に近い地球連合軍の宇宙基地である。そこには光波防御帯と呼ばれる特殊な防御フィールドを形成するシステムを装備している為、鉄壁の守りを誇っている。その防御帯を広げた姿を“アルテミスの傘”とも呼ばれているのだが──

 

「だが、この艦は公式発表どころか友軍認識コードがないはずだろ?」

「仮に撃たなかったとしても、すんなりと入れてくれるかい?」

 

 トウマとムウが言う通り、この艦には友軍として認してくれるものがない、来たら撃たれることもあるのだ。そしてここが重要なのだが、連合軍には一枚岩とは言い難い。特に大西洋連邦とユーラシア連邦は仲が悪く互いを出し抜こうと足を引っ張る事もあるのだ。ザフトはそれを利用して戦乱を維持しているのが何とも皮肉である。

 

 強奪された“G兵器”とこの“アークエンジェル”は太平洋連邦が独自に進めたもので、“ゲシュペンスト”や“シュッツバルト”、そして“ビルトシュバイン”を確保したのも太平洋連邦である。これらを元に同じものを開発すると意見があったのだが、設計通りの性能が出るのかと疑問の声や色々のデメリットの声が上がり、結局の所“G兵器”を開発することが決定したのだ。

 

 そして、“アルテミス”は本来の所ユーラシア連邦の管轄で、現在滞在しているのもユーラシア連邦なのでトウマ風に言うと不幸な事が起こるというのだが──

 

「しかし、このまま月へすんなり行けるとは思っているのですか? いずれにしても早急な物資の補給は必要です」

 

 だがナタルの言う通り、今の“アークエンジェル”には補給が必要なのだという事は誰にも分かり、決断した。

 

「判りました。それで行きましょう」

「いざとなったら俺の名前を出せ。ユーラシア連邦も俺がこの艦に乗っていると分かったら下手な手は打たないはずだ」

 

 トウマの名は連合に知れ渡っていて、“オーブ”に国籍を置いた後も引き抜こうと色々声をかけているためユーラシア連邦も無礼な事をやらない筈だと思っていた。

 

「“ゲシュペンスト”と“シュッツバルト”の方は?」

「一時間以上かかるがなんとか調整を終わらせるさ。後それと並行で“メビウスゼロ”の修理も進めている」

 

 トウマの報告にマリューは艦長として方針を言った。

 

「判りました。本艦はこれより、“アルテミス”宇宙要塞へと進路をとります」

 

 

 “アークエンジェル”が方針に迷っているのと同時期にザフトもまた迷っていたのだ。

 

「やれやれ、まさかこんなことになるとはな…」

 

 元“ヘリオポリス”の残骸を見ながら、クルーゼがため息混じりで呟いた。最も仮面をかぶっているために表情は読めないが。

 

「中立国のコロニーを破壊したとなると、問題になりますな。評議会に何というのです?」

「連合のモビルスーツを開発していたコロニーの、どこが中立だ? それに住民のほとんどは脱出している。“血のバレンタイン”に比べたら大した事はない。それに、先ほどミゲルに奪取した機体やそれをもとにした機体のデータを持って“プラント”にひと足早く帰した。彼は“ビルトシュバイン”と2回交戦し生還している、説得力は大きいさ」

 

 艦長であるアデスに、そう答えるクルーゼ。先ほどミゲルにそのデータを渡して“アサルトジン”を乗せた小型船で“プラント”に向かわせた。彼の口から一応の時間稼ぎが出来ると彼は心の中で思ったのだ。

 

「アデス、例の新型艦は掴めているか?」

「いいえ、こうもデブリが多いとレーダーやセンサーも役に立ちません。誰かさんが余計な事をしてくれたせいで」

 

 アデスの皮肉にクルーゼは言葉を詰まらせる。戦力の方は“5機”で何とかできるが少ないため策敵で広範囲に展開できない。すると宙図をを見るとある場所に目が止まった。

 

「……網を張るか」

「網ですか?」

 

 アデスの言葉に頷き、クルーゼは指をある場所を指した。

 

「奴らは我々の襲撃で多くのものを失った、それは機体や人材だけではない。それらを補給するためにはここに行くしかない」

「なるほど、ではついでにここも落としますか?」

「ふっ、確かに予備線も敷いておくのも一興。だが、それは賭けに勝った時だ」

 

 クルーゼの説明を聞き、もしも作戦に失敗した時のも考えて提案し、彼と共に不敵に笑うアデス。その時──

 

「大型の熱源を探知。戦艦かと思われます。コースは地球スイングバイにて、月面大西洋連邦軍プトレマイオス基地!!」

 

 オペレーターの報告にクルーゼはより笑みを深めた。

 

「アデス、賭けに勝ったな」

「おそらくダミーでしょうな。我々に行き先を知らせている事を知らずに」

 

 同じく笑みを浮かべるアデスにクルーゼは指令を下した。

 

「“ヴェサリウス”は先行して“アルテミス”付近で敵艦を待ち伏せする! “ガモフ”を呼び出してこう伝えろ。迂回コースを取り索敵を密にして後続せよとな。敵艦を挟み撃ちにした後、“ガンダム”5機を発進せよ!!」

 

 

 ザフトに行き先を知らされるとは知らない“アークエンジェル”はサイエント・ランニングと呼ばれる、動力の一切を切ったまま、無重力での惰性を利用して航行するこの航法はスラスター噴射により熱を発せずにそこら辺に漂うデブリ化に近くなる。

 

 そんな中にあってか、不安は伝染病のように居住区に蔓延していた。

 

 トウマの手によって救出された民間人だったが、肩を寄せ合い、皆が怯えている。住む所を失った上、今いる場所させ安全ではないのだと知っているからだ。

 

「俺達、どうなっちゃうんだろう?」

 

 それはトール達学生も同じだった。あれからフレイと話をしたのだが、彼が有名な人物で彼女いわく“とんでもない男”と言うが、まさしくその通りだった。自分達はどうなるのかと、彼らが考えていると──

 

「食え」

 

 そう言いながらウエハース1箱を置いたのはヒイロである。その隣には──

 

「みんなー、ご飯持って来たんだよー」

 

 どこから持ってきたのか、シスターの服を着たインデックスが民間人にアンパンなど食糧を配っていたのだ。

 

「これを食べて腹を満たしておけ。いざという時に腹が空いていたら動けないからな」

 

 ヒイロがそう言うが、誰も手を出さない。それよりも質問したい事があるからだ。

 

「ねぇ、両親は? 家族は今は……?」

 

 ミリアリアが自分達を代表としてヒイロに尋ねた。自分たちよりも幼いのに大人顔負けの行動力や頭脳、だが、彼みたいに親がいるはず。そう思ったら──

 

「俺は物心に気付いた時、1人だった」

「え?」

 

 だが、ヒイロが言った言葉に呆気に取られる彼ら。

 

「育ての人は殺されて、後は一人で生きていた。生きる為に人を殺したり、泥棒もしていた」

 

 彼が語る過去は自分達が経験した事を遥かに超えていた。そうまさに戦場で生きていたと言わないほどに──

 

「5年前、トウマと出会って俺が“ヒイロ・ユイ”という名をもらったのと戦う事以外も生きていくことを教わった」

 

 だが、トウマと出会い、彼が変わっていった。

 

「今、あいつが親で今いる仲間が家族だ。それが俺の答えだ」

 

 そう言い、立ち去ろうとするヒイロに、

 

「ね、ねえ。もしザフトが襲ってきたら……?」

「戦う。俺に出来るのはそれだけだ」

 

 カズイの質問に即答するヒイロ。そして──

 

「困難に立ち向かうことは勇気がいる。だが、守りたいものがある時、その一歩が勇気だという事を忘れるな」

 

 そう付け加え去っていくヒイロ。インデックスはまだ食料を配っている。

 

「その一歩が勇気……か」

 

 サイが呟くように言う言葉に彼らが黙った。そして──

 

「……俺、決めたよ」

 

 

 一方、“ヴェサリウス”の一室では──

 

「……」

 

 1人写真を見ていたキラ。それは幼い頃、友達と一緒に撮った写真だ。今、その友達と共に戦場で戦友として肩を並べている。まあその肩には鳥型のロボット“トリィ”が乗っているのだが。

 

「もう、あの頃には戻れないのかな……?」

 

 本当は戦いなんてしたくない。だけど──

 

「入るぞ、キラ」

「あ、うん」

 

 そう返事と共に入ってきたのはアスランであった。キラが持っていた写真に気がついたアスランはキラの隣に近づいた。

 

「あの時の写真か…」

「うん」

 

 そう言うとしばらく沈黙が続いた──

 

「すまない、キラ。お前をこんな事に巻き込んでしまった……」

「アスラン……」

 

 沈黙を破ったのはアスランだった。だが、それは後悔の顔であった。

 

「お前と再会したあの日…、“ユニウスセブン”に核で崩壊した時、俺の母上は……」

 

 あの日、運命のいたずらか、キラが“プラント”に来て一緒に外で話をしていたら大画面で“ユニウスセブン”の核攻撃の中継を流れていた。そう、そこで働いていたアスランの母、レイア・ザラも──

 

「俺がザフトに入って、母上の様に犠牲になるのを防ごうと心に決めたように、お前もザフトに入った」

「うん、僕も同じ気持ちだった。アスランの母さんみたいに犠牲にしないために」

「考えている事は同じだったか」

 

 お互いがあの時同じ気持ちだった事を再確認したアスランは手を差し伸べた。

 

「これから頼むぞ、キラ」

 

 その手をしっかりと握り返すキラ。

 

「こちらこそ、アスラン」

 

 お互いの友情を再確認した時!

 

《コンディションレッド発令、パイロットは各機で待機せよ!》

 

 警報が鳴り響きトリィがキラの肩から離れた。

 

「アスラン!」

「ああ、先に行くぞキラ!」

 

 先に出て行ったアスランの後をキラは追う前に、部屋に背中越しにもう1つの写真を見た。

 

「行ってきます。父さん、母さん」

 

 故郷にいる両親を写っている写真に言うと部屋にトリィを置いて出て行った。必ず戻ると心に誓って……

 

 

 けたたましい警報は、“アークエンジェル”でも鳴り響いた。だが、それは最悪の事態を告げると同時に、皆が抱いた不安は的中した瞬間だった。

 

「大型の熱量を感知、戦艦だと思われます。距離200、イエロー3317、マーク02チャーリー、進路、ゼロシフトゼロ!!」

「気付かれたの!?」

 

 報告を受けて問いかけたマリューだったが、すぐにそれを否定した。距離が遠すぎるのだ。

 

「目標はかなりの速度で移動中。横軸で本艦を追い抜きます。艦特定、ナスカ級です!!」

「もう一隻居るはずだ。ローラシア級はどこにいる!?」

「本艦後方300、追尾しています。いつの間に!?」

 

 その報告に、一同は絶望に包まれた。

 

「くそっ、読まれていたか!」

「考えてみれば、奴らの襲撃で失った物を補充するために近くにある“アルテミス”を見逃すわけがないか…、フラガ、“メビウスゼロ”の修理は終わっているが他はまだだ」

「分かっているさ、それじゃあ、作戦タイムと行きますか」

 

 フラガは舌打ちをしながら呟くが、トウマは敵が自分達の状況を知っての行動を読まれたことにため息をついて言ったが、すぐにフラガとともに作戦を決める事になった。まともに戦っていたらこっちが負ける、そんな事はここにいる全員が分かっている事だ。その時──

 

「すいません! 遅れてしまいました!」

 

 そう入って来たのは吹寄であったが、彼女が今着ているのは連合の制服だった。それだけじゃない、フレイも含めて後の5人も同じ連合の制服を着ていたのだ。

 

「って、その服装は何でえか?」

「彼女達はブリッチのオペレーターだ、人数が少ないからな。彼女たちが志願したのだ」

「ふーん、分かった。じゃ、俺たちは別の所で作戦を決めるから。後、安心しろ。俺達が道を切り開く」

 

 トウマの質問にナタルが答えると、トウマはフラガと共にブリッチから出て行った。自身が守ると宣言して──

 

 

 “ビルトシュバイン”のコクピットに座り、起動するトウマ。だが、彼が着ているのは普段着ている服ではなくインデックスが出会ったころに着ていた黒を中心としたパイロットスーツだった。このパーロットスーツには加速時のかかる負担を軽減することが分かり、あまりの加速で失神寸前のため出力を落としていたが、これで全力で戦える状態になった。

 

 作戦はフラガが“メビウスゼロ”で単独で正面にいるナスカ級に奇襲をかける。自分は“アークエンジェル”を守りながら時間を稼ぐ。そしてフラガがナスカ級に奇襲が成功したら全速で離脱。後は“アルテミス”に逃げ込む。

 

 これが作戦で、カギは自分がどれだけ時間稼ぎが出来るか。“ゲシュペンスト”と“シュッツバルト”の調整はウイハルが最後の調整をしているため、後20分ですべての機体が戦闘可能となる。それまでに敵を1人で押さえるのだ。

 

《えっと、カミジョウさん》

 

 ブリッチから通信が入り、それをオンにするとモニターにミリアリアが写っていた。

 

「トウマでいい。歳は同じだしな」

《それじゃあ、トウマ。これから私がモビルスーツ、及びモビルアーマーの発進管制を行います。よろしくね》

「そういう時は、よろしくお願いしますだろ。まぁ、しばらくよろしく」

 

 そんなやり取りをしながら武器の選択をするトウマ。持っていく武器は先ほどの戦闘で使用したビームライフル、マシンガンとショットガン、それに新たにビームソードを追加で頼んだ。このビームソードはビームサーベルと同威力だが発生する時間は短いがバッテリーは少なくて済むのという一長一短がある。さらにバックパックにはショルダーバルカンを左右1門ずつ装備し準備は万端になった。

 

《前方の敵艦から2機、後方の敵艦から3機が接近。照合の結果、前方に“ストライク”と“イージス”、後方に“デュエル”、“バスター”、“ブリッツ”の5機。“ストライク”は“エールストライカー”を装備していて、高機動型になっているので注意してください》

「やっぱり投入してきたか。そういうわけだから早めに頼む」

《分かっているわ。こっちも早めに調整するけど、やられるんじゃないわよ》

 

 ミリアリアの報告にトウマは作業しているミコト達にモニター越しに言い、ミコトは不敵に笑い返した。彼の実力なら自分達が出撃するまで耐えているだろうと信頼していた。

 そうこうしている間にハッチが開き、リニアカタパルトの灯が入り発進準備が整った。

 

「やれやれ、相手は5機か、しかも奪取した機体と来たか。不幸だな、けど……」

 

 いつもの不幸だと笑い飛ばす彼は──

 

 

「いいぜ、今からてめぇらが今描いている、そのふざけた幻想をぶち壊す!! トウマ・カミジョウ、“ビルトシュバイン”、行くぜ!!!」

 

 

 その言葉と共に“猪”は戦場に飛び出した。




いかがだったでしょうか?
次回からは戦闘ですが、それは次回まで待ってください。
所でアンケートを取りたいですが、グルンガスト系などの特機を登場してもいいですか?
乗せる人物はある作品のキャラですが、オリジナル設定になります。
投票は活動報告で今から書くのでそこにお願いします。それでは次回予告です。

次回予告!!
5機の“ガンダム”が“猪”を追い詰める。
だがその時、“防風林”と“亡霊”が動き出す。
新たな覚醒と共に“黒き竜巻”が戦場を駆け巡る!!
次回! 機動戦士ガンダムSEED WILD
第5話 撃ちこむ“防風林”、暴れる“亡霊”
新たな戦い、目覚めろ、ゲシュペンスト!!

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