お気に入りに10人、感想を書かれた人が2人とまずまずの評価をいただけた事にありがとうございます。
今回はトウマ以外の視線で書かれます。それではまた……
トウマ・カミジョウが“ビルトシュバイン”と出会う数時間前までさかのぼる。
コロニー“ヘリオポリス”の周辺に二つの艦、ザフトの所属する青色のナスカ級高速戦艦“ヴェサリウス”と緑色のローラシア級戦闘戦艦“ガモフ”である。
そのブリッチに白服を着た仮面の男と黒服を着た帽子の男が写真を見ながら考えこみ、ふと仮面の男ラウ・ル・クルーゼは苦笑気味に口を開いた。
「そう難しい顔をするな、アデス」
「ハッ、しかし評議会からの返答を待ってからでも遅くなかったのでは?」
フレデリィク・アデスは返事をしながら厳しい顔つきのまま写真に写っていた問題のブツを見ながら作戦の再確認をしたのだ。この場合は上の判断を聞くのが普通のだが、彼自身も写真に写っているブツの詳細なデータを見てすぐに動かなければ手遅れになると分かっていたのだ。
「遅いな、私の勘が告げている。今ここで見逃せばその代価、いずれ我々の命で払う事になるぞ」
「……ビーム兵器の小型化、変形機能に特殊装備、そして実弾を無効化する装甲……、これらはおそらくオーブと共同開発したと思います」
クルーゼが言った後、少し考えたアデスは自身が考えた事を言い、クルーゼは頷いた。
「彼らも我々のように一枚岩ではないという事さ、さて……」
「“ヘリオポリス”に接近する艦あり! 数1!」
「スクリーンに出せ」
作戦を発動しようとしたクルーゼに、オペレーターの報告をきいたアデスはすぐに指示を出しすかさずにオペレーターは実行を移しその艦を写した。が──
「……何なのだ? あのボロ船は?」
「まさか……トウマ・カミジョウが乗っている船か?」
それを見たクルーゼは呆れていたが、アデスが言った人物の名前に聞き覚えがあった。
「なるほど、彼は“ジャンク屋組合”に入りながらオーブの管轄にあると噂があったが、まさか本当だったとはな」
「どうします?」
彼の噂の真実を確認したクルーゼにアデスはこの船をどうするのかと聞いてきた。
「ほおっておけ、もし撃墜するためにモビルスーツを出撃しようなら、彼と彼の仲間に撃退されるのがオチだ。それに今出撃しようなら“ヘリオポリス”にいる連合軍にも気付かれる、つまりここでの選択は見逃すことだ」
「聞けば、彼と彼らの仲間は全員コーディネイターだと聞きます。たとえ数で勝っても彼らの腕では被害もばかになりませんからな」
ま、その代わり彼らは自分たちの代わりに無料で修理するのはいいですがとアデスは付け加えたのだ。
「だが、彼らはここで沈んでもらおう。怨むなら地球連合と共同開発をしたオーブを恨む事だ」
「ではジン部隊にその事を伝えましょう。“停泊している船をすべて轟沈せよ”と」
しかし、彼らはみすみす自分達にとって危険な人物を放置するわけにはいかず、“不幸な事故”として“ヘリオポリス”での撃墜をもくろんだ。そしてクルーゼは“ヘリオポリス”を向き、
「地球軍の開発した新型モビルスーツ、我々がいただこう」
不敵な笑いを浮かべたのだ。
「……以上が、この度の換金金額になります」
そう言った作業着を着た女性、マリュー・ラミアスは目の前にいる少年2人に目を向けたのだ。今現在、忙しいこの上ないのに突然の来訪者である。上層部は丁重におもてなしをするように言われて来てみたら学生くらいの少年にそれよりも幼い少年の2人組であった。
しかし、持ってきたパーツとジャンクで作った実践で使えるカスタム武器、そしてジン3機、ザフトの隊長クラスが使用している“シグー”1機がすべてカスタム機と品添えに驚きを隠せなかった。すべて合わせると1000万以上の値打ちがつくためにマリューはそれ以上の値打ちとして3000万を出すことを決めたのだ。
「しかし、モビルスーツを売るほどお金に困っているのですか?」
「まあ、うちの問題児どもが色々やってしまって、その謝罪金としてあちこち払って今現在金なしの状況なんですよ」
「はぁ……」
そう会話をするマリューは目の前にいるツンツン頭の少年は年の割にしっかりしており信念を持っている事が分かったのだ。
「すぐに現金を持ってきますのでお待ちください」
そう立ち上がろうとした時、
「ああ、そう言えばこの工場、何か作っているんですか?」
「え?」
ふとその少年が質問してきたので、しばし考え、
「普通の製品です。日常の」
「なるほど、分かりました」
そう納得したように頷き、
「モビルスーツを利用するほどの製品、まさか新型モビルスーツを開発しているんでえか?」
「!!」
続いて出てきた言葉にポーカーフェイスを装いながら内心驚いたのだ。
「……お茶を飲みながらお待ちください」
ここにいたらまずいと考えたマリューはすぐに部屋から出て言ったのだ。そして緊張が切れたのか、座り込み先ほどの少年の末恐ろしい恐怖を感じていた。
「まさかここまでとはね……、連合軍が欲しいわけよ」
モビルスーツの操るだけではなく頭の切れは刃物の如く鋭い、さらに人を引き込むほどの魅力とカリスマ性を誇っている。コーディネイター嫌いで知られる連邦軍が欲したその人物の名前を呟くように言った。
「トウマ・カミジョウ……」
それは偶然だった。ウイハルがいつもの様にレーダーを見ていた時にそれが乱れた。その現象は彼女が知っている、しかしあり得なかった。
「ミサカさん、シライさん、サテンさん、デュオ君!! ザフト軍が“ヘリオポリス”に接近中!!」
「はぁ!? ここ、中立コロニーのはずでしょ!?」
ミコトは驚いて聞き返してきたのだ。しかし、
「“ニュートロンジャマー”の影響でレーダーが乱れたんです!! それと管制官達があわただしく動いている事も確認したんです!!」
“ニュートロンジャマー”の副産物として電波妨害があげられる。これにより、目視での戦闘を強いられ国力で劣るザフト軍が戦ってこられた原因の1つでもある。
「それが本当なら、最悪な状況ですの」
「そっか、モビルスーツは売っちゃったし、この船は機動力重視に改造したから武装もない。たとえあってもコロニーの中に撃ったら分かりきっているから……」
「八方ふさがりかよ……」
そう、今現在彼らの待つ末路は死である。だが……
「ウイハルさん、接触までどんだけ時間が残っている?」
「30分です」
「そんだけ時間があれば十分よ。デュオ、造っておいた武器やこの船に残っている物全部をトレーナーの中に急いで運んで。他のみんなも手伝うわよ」
「それってまさか…」
クロコはミコトの考えが分かった、つまりは……
「総員、この船は現段階より破棄よ!!」
「あいよ! 急いで準備するぜ!!」
「バックデータを今スグとっておきます、10分ぐらいで終了できます」
「いやいや、この船とはここでお別れか……」
「まあ、ここまでもったってことですの」
決断は迅速に行われ、10分後、この船は無人となった。
“ヘリオポリス”の外部と内部の中間部分に1人ポツンとパソコンを操作している赤いスーツを着ている人がいた。だが、彼はこのコロニーの人間ではない、それに近いが違う人間であった。とそこに赤と緑のスーツを着た一団が近づいて来てその先頭の赤いスーツを着ている4人が前に出てきて、それに気がついたパソコンを操作をしながら振り返り、
「最新情報はあるけど?」
「聞こう」
そんなやり取りをして、赤いスーツを着ている4人はパソコンを操作をしている赤いスーツの人物越しにパソコンをのぞきこんだ。
「“デュエル”は近接接近戦用の機体、“バスター”は砲撃援護戦用、“ブリッツ”は報告にあった特殊装備用、“イージス”は同じく報告にあった変形機能の機体、ここまではいい?」
「ああ」
パソコンを操作をしながら説明する声は少年でこの5人は知り合いだという事が分かった。
「最後の機体、“ストライク”はバックパックを交換することで砲撃戦型、接近戦型、高機動戦型の3つの形態が取れる事が分かったったんだ。つまり1機でどんな戦場も場所は問わない万能型なんだよ」
「ヒュー、凄えなぁ」
「クルーゼ隊長の勘が当たりましたね」
そう会話をする彼らの言葉からザフト兵だという事が分かった。彼らの目的は、
「作戦の説明をするぞ」
この5機の奪取なのだ。
「キラ」
“ヘリオポリス”にいた連合軍はあまりの事に驚愕していたのだ。中立を宣言した国のコロニーにザフト軍が接近してきたのだ。先ほどから管制官の警告しているのだがとまることはなくそのまま直進している。
「敵は!?」
そう言って自分の愛機であるモビルアーマー、“メビウスゼロ”に乗り込みブリッチに通信を開くムウ・ラ・フラガ。
《2隻だ、ナスカ級とローラシア級の1隻づつ。電波干渉の後、モビルスーツの発進を確認した》
回答したこの艦の艦長にも緊張が走る。まさかここまでやるとはだれも予想はしていなかった。
「ひよっこどもは?」
《もう“モルゲンレーテ”に着いている頃だろう》
そう会話をするが安心はできない、もしも彼らの目的があれなら何か手を打っているはずだと。
「ルークとゲイルは“メビウス”で待機、まだ出すなよ!!」
自身の部下である2人に命令しながら発進の準備をするフラガ、“メビウス”と“ジン”との戦力は“メビウス”が3機失う事で“ジン”を1機失うほどの戦力差である。自身の腕と“メビウスゼロ”の性能でどこまでやれるのかは分からない。
「行くぜ!」
そう言って発進するフラガ、“エンデュミオンの鷹”と呼ばれる男は戦場に向けて飛び立った。
だが、そんな彼の予感は的中してしまった。
「ふん、ナチュナルどもはどうも馬鹿ばっかだな」
そう言って“デュエル”のコクピットで起動の準備をしているイザーク・ジュールは機体の周りにいる屍になっている連合軍の軍人に向かっての自分の感想を言ったのだ。
これがクルーゼが立てた作戦で、まず囮部隊を外側に展開、連合軍は新型モビルスーツを安全な所に運び出そうとする所を内側に待機していた歩兵で制圧、ついでに同じく囮部隊を出し、連合の混乱を起こさせて作戦を成功させる確率を上げたのだ。
しかし、運び込まれたのは3機であり、残りの2機は工場で作業中のようだ。そこは先ほど別の部隊が行っているため、自分たちが起動したら、そこに行ってある物を完全に奪う事でこの作戦は終了となる。
「まあそう言うなって、逆に俺達の方が頭いいってことだろ?」
そう言いながら同じく“バスター”の起動準備をしているディアッカ・エルスマンは親友に軽口を叩きながら作業していた。
「……2人とも、OSを見ましたしたか?」
と“ブリッツ”の起動作業を終えたニコル・アマルフィは2人に尋ねたがどこか様子がおかしい。
「いや、見てないが?」
「何だ、どうしたんだ?」
2人は機体を制御するOS、“オペレーションシステム”を見てみると──
「「……はぁ!?」」
あまりの事に、怒りを通り越して哀れを感じてしまった。
「やっぱ、ナチュナルどもは馬鹿なのか!?」
「こりゃ、ある意味尊敬するぜ……」
「こればっかりは僕もフォローしません」
口々に言う3人、というもの──
「こんなOSで俺達、コーディネイターを倒そうとしていたのかよ!?」
「これだったら、奪わずにぶっ壊した方がよかったんじゃない?」
「一応最新機ですよ、これ……」
そう、OSが未完成だったのだ。しかも彼らが呆れるほどの酷さで。
「「「……はぁ……」」」
既に起動し、大地に立っている機体であるが、あまりの酷さにこの機体がかわいそうに感じてしまいため息が出る3人は──
「……とりあえず、“イージス”と“ストライク”がある工場に行くか……」
「おうよ……」
「ええ……」
移動をするが、機体から哀愁が漂っていた。
突然のザフトによる襲撃、衝撃を受けたのはトウマ達や連合軍だけではなかった。
「な、何だ!?」
そう言ったのは工場の一角にあるカトウゼミのラボにいる男子学生が驚きの声を上げた。
「爆発なの……?」
さっきの衝撃で尻もちをついた女子学生は言い、メガネをかけた男子学生が手を出して助け起こした。オロオロと気弱そうな男子学生は辺りを見渡していた。
「とりあえず、危ないかもしれないから外に出ましょ」
黒髪のロングヘヤーで勝気がある女子学生が先頭に立ち、一同は部屋から出て行った。が──
「ちょ、ちょっとあなた!?」
帽子をかぶっている自分は彼らとは別の方角へと走って行った。ある程度走った後──
「おい! 何が起こっているんだ!!」
後ろから言われた時、爆発の衝撃でよろめき後ろに倒れそうになったが後ろにいた人物が支えてくれて、
「女……?」
その言葉に、頭にかぶっていた帽子が取れていた事に気がついた自分は、
「っぅ!」
恥ずかしさと怒りで走りだし、そして見た、いや、見てしまった──
「ああ、連合のモビルスーツ……」
信じていたものが崩れていく、そう──
「お父様の裏切り者ぉぉぉ!!」
そう叫ばなくてないけなかった、その時!
「おい、こっちに来るんだ!!」
問答無用に手を掴み連れていかれる自分は驚きながらもそれについて行って、
「おい、誰かいるか!?」
そう言ってシェルターの扉をたたく、頭がツンツンで、自分と同じ歳であるが、その目には信念があり、お父様と同じ目の──
「誰だ!?」
「このシェルターに後何人入れる、出来れば一人が良い!!」
「一人なら可能だ、開けるぞ」
そしてシェルターの扉が開くと、
「入るんだ! 早く!!」
そう言いその男は自分をシェルターの中へと入れたのだ。
「お、おい、お前はどうするんだ!?」
中に入れされた自分の声に彼は背中越しに聞くが振り向かず、
「自分の身は自分で守るさ」
そう言い駆けだす男。その刹那、
「ぎゃあぁぁぁぁぁ、不幸だぁぁぁぁぁぁ!!!」
駆けだした先に、ロケット弾が地面に激突、そして爆発に巻き込まれてしまったのだ。
「おいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
あまりの展開に突っ込みを入れるしかなく、無情にもその扉は閉ざされた。
彼女は知らないが、その爆発の中心に大きな穴があって、彼はそこで“猪”と出会った。
銃弾が飛び交う戦場、その中で背を低くしながら素早く目的の場所に走る少年兵。遮蔽の場所に移動すると、
「キラ、状況は!?」
声のした方向に、キラ・ヤマトは向くと、そこには自身と同じ赤のスーツを着た少年がマシンガンを撃ちながら応戦していた。
「ごめん! 僕以外全滅!! アスランは!?」
言いながらも、アスラン・ザラの元に何とか着いたキラだったが──
「俺も同じ。今いるのは俺たちだけのようだな」
どうやらここにいる自分達以外は全滅したようだ。
「何とか隙を見つけていきたいが……、弾薬は?」
「少ないよ、アスランは?」
「こういう時は息合うんだな、俺も同じだ」
正しく絶体絶命の状況だが──
「“デュエル”!? “バスター”!? “ブリッツ”!? どうしてここに!?」
対峙していた連邦の声に後ろを振り向くと手に重突撃銃を構えた3機が──
「伏せろぉぉぉ!!!」
誰が言ったか判らない。しかし、その言葉と共に3機が重突撃銃のトリガーを引いた。
自分達が作った連邦の兵士に向かって……
「くっ!?」
銃撃による煙のせいで視界が見えない。自分の見間違いでなければそれを撃った3機は──
「うっ!?」
煙が晴れると、そこは──地獄絵図だった。人だったものがただの肉の塊になり、大地には赤い池が出来ていた、血の池が。そう、自分以外が死んでしまった。運良く生き残ったのではなく、運悪く生き残ってしまったのだ。
それを頭で理解すると胃から逆流してきてそれを必死に抑え、それが収まった時、
「しまった!?」
ふと、自分達が死守していたモビルスーツのコクピットにザフトの兵が入って行くのを見た。さっきの銃撃の間に走って機体のそばまで来たのだ。
そして、立ち上がるモビルスーツ、自分の後ろにあったモビルスーツも立ち上がったのだ。
「そんな……」
新型モビルスーツ、“デュエル”、“バスター”、“ブリッツ”、“イージス”、そして“ストライク”。
連合を勝利に導くはずの救世主が今、連合を敗北に追い込む破壊神となった。
そして、灰色だった装甲が、それぞれ鮮やかな装甲になってその場を離れる5機をただ、ただ、見守るしかない。動こうにも動けない。恐怖が体を支配し、これは夢だと、悪夢なんだと信じたい気分だった。
「「はぁぁぁぁぁ!?!?」」
キラとアスランはそれを見て驚いていた。OSを──
「お前ら……、よく動かせたんだな……」
“イージス”を動かしながらここまで頑張って操縦した戦友に向かってアスランは同情の言葉を贈った。
「全くだ、途中で転ぶわ、ディアッカが建物に突っ込むわ、ニコルが“ジン”と激突するわでさんざんな目にあったぜ」
「しかも、起こそうとしたらこっちまで倒れてしまうし、まあ、おかげで銃をもらえたんだがな」
イザークとディアッカがここまで来た長い道のりを思い返しながら言う事にアスランは心の中から称賛した。
「あのぉ……キラが黙っているんですが……」
とニコルが会話に入ってこない事を言うので彼の操っている“ストライク”の通信を開くと──
「「「「……」」」」
聞こえてくるのは高速で何かをたたく音と、高速で何かをぶつぶつ言うキラの声だった。その事に彼らは──
「な、なあ、あいつ何唱えているんだ?」
「さ、さあ? ニコルは分かるか?」
「な、何かの用語は聞こえましけど、アスランは?」
「知りたくもないし聞きたくもない……、あんな様子のキラは初めてだからな」
「……ガキの頃からの付き合いのお前も知らないのか……」
「こりゃあ、終わるまであのままだからほっとくか?」
「そうですね……」
「どうしたのみんな?」
「「「「どわぁ!?!?」」」」
彼らの会話にキラが突然入り込んだので4人は驚いた。
「キ、キラ!? 大丈夫か!?」
「アスランどうしたの? 大丈夫だよ僕」
「今まで何やっていたんだ!?」
「OSの再調整、このままじゃいけないから実用性まで上げたんだよ」
「……何か高速呪文を唱えたのは?」
「あれ? もしかして僕口にいいながら作業をしていたみたい」
「ちなみに作業を始めたのは?」
「OSを見たときだよ、誰だよ、あんなOSを組んだの」
キラへの質問の答えに唖然とする4人は、しばし言葉を失い──
「あ、後みんなの分のOSの上書き、終わらせておいたから今までよりも動きやすいよ」
「へっ? そう言えば動きやすくなった……?」
「おいおい、確かお前電子で1位を取ったっていったがここまでとはな」
「けどこれで何とかいけますね」
「元々、ハッカーが得意だったからな……」
さらに神業を披露したキラに驚きを隠せない4人。と──
「そう言えば、気になったデータがあったんだ。これを見て」
そう言ってモニターに出すと、
「……何だ? このモビルスーツ?」
イザークが見たのは肩に砲門がある砲撃型と左手甲に3本の突起物があるモビルスーツだった。これらはザフト軍で使っている機体や、自分達が乗っている機体とは全く違うのもである。
「OSを上書きの時に見つけたんだ。砲撃用は“シュッツバルト”、もう1機は“ゲシュペンスト”。そして──」
説明をするキラはもう1機のデータを表示した。
「“ビルトシュバイン”」
「じゃあ、この3機が“ガンダム”のひな型になったのか?」
“イージス”に乗ってコンテナの中のバックパックをキラの乗る“ストライク”に装着の手伝いをしながらさっきの仮説を繰り返し言った。“ガンダム”とはキラ達が強奪した機体でOSの頭文字をキラが読んだ事により、“シンプルでいい”と全員の意見で定着したのだ。
「うん、装甲の“フェイズシスト装甲”はオリジナルなんだけど、ビーム兵器はこの3機から来ているんだ。ビームサーベルは“ビルトシュバイン”、携帯用のビームライフルは“ゲシュペンスト”、そして大質力のビーム兵器は“シュッツバルト”に搭載されている兵器から調べてこぎつけたんだけど……」
そう説明するキラだったが、
「けどよ、何でナチュナルどもは“ガンダム”を作ったんだ? 元の機体をそのまま使えばよかったのによ」
イザークが操る“デュエル”はコンテナにある大剣を確認しながら誰もが思っている疑問をいったのだが──
「どうやらこの3機、“宇宙に漂っていたコンテナの中に厳重封印していた”ってレポートに書いていたから、少なくとも人が造ったものじゃないって思っているんだ」
「はぁ!? じゃあ、もしかしてこの3機は宇宙人が造ったっていいたいのかよ!?」
「もしそうなら大発見ですよ!?」
キラの仮説に、コンテナを運んでいた“バスター”に乗っているディアッカ、“ブリッツ”に乗っているニコルが驚いていたのだ。
「けど、その封印は思っていたより複雑で開けれなかったからそのデータを元に“ガンダム”を造ったってレポートに書いてあったんだ」
「何だよ、それって“宝の持ち腐れ”じゃないかよ」
「だか、そのスペックは“ガンダム”と同格なんだろ」
キラの説明にイザークは呆れていたがアスランはその性能が今乗っている“ガンダム”と同じだと聞き出したのだ。
「“シュッツバルト”と“ゲシュペンスト”は“ガンダム”に劣るけど、“ビルトシュバイン”だけは……!?」
「ん? どうしたんだ?」
「何かあったのですか?」
説明しようとしたキラが何かに気がつき息をのんだのを感じたディアッカとニコルが聞き出そうとしたその時!!
突如、地面から何かが飛び出し、そのまま地面に着地した。
「お、おい…、確か厳重封印しているって言わなかったか?」
「ああ、そのレポートが本当ならな……」
その何かを見たイザークとディアッカが確認のためにお互いが確認し、
「アスラン……」
「……キラ、さっきの続きは何だ?」
ニコルとアスランはキラに話の続きをと言い、
「うん、“ビルトシュバイン”は……」
そしてキラは目の前にいる機体の性能をはっきりと言った。
「“ガンダム”と同格の強さだよ」
これが“ガンダム”と“ビルトシュバイン”の初めての出会いだった……
そして、トウマとキラ、アスラン、イザーク、ディアッカ、ニコルの“チームG”との初めての出会いでもあった……
いかがだったでしょうか?
“もし、キラがザフトにいたら?”。これが私が小説を書こうと思った1つの要因でもあります。
まだまだ面白くしようと思いますので皆さん楽しみにしてください。
では次回予告です。
すべてが一変した世界。
少年達は軍と出会い、また“猪”とも出会う。
彼らを守るために“猪”は孤独の戦いをする。
次回! 機動戦士ガンダムSEED WILD
第3話、咆哮する大地
その幻想、破壊せよ!! ビルトシュバイン!!!