もう一つの【銀狼 銀魂版】   作:支倉貢

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他のやつとっとと更新しろ!とか言わない。
最近課題に追われて忙しいの。ゆっくり考える時間があまりないの。どうしてこうなったんだンゴ三兄弟。私のせいですねすみません。




松下村塾一の実力者・吉田志乃には、ある習慣がある。

それは、散歩だ。元々活発な性格の彼女は、昼下がりに毎日散歩に出かける。護身用の木刀を腰に挿し、愛用の草鞋を履いて、外へ飛び出す。

 

「いってきまーす!」

 

「暗くならない内に帰ってくるんですよ」

 

「はーい!」

 

その背中を父・吉田松陽は、微笑ましい気持ちで見守っていた。

志乃は母に似て、元々体が弱い娘だった。幼い頃はよく熱を出し、その度にヒヤヒヤしたものだ。

その娘が元気に外を駆け回っている。丈夫に育ってくれて本当に良かった、と安堵した。

 

しかし、出かける度に、護身用として木刀を持たせるのは、いささか気分が良くなかった。

天人襲来当初、治安はまあ悪くなった。そもそも地球を蹂躙する目的でやってきた連中だ。反りが合うわけがなく、かつてはぶつかり合い、首都の江戸には未だ攘夷浪士達が蔓延っているという。

そんな時代だからこそ、自分の身は自分で護れるくらい、できなくてはならない。それがすごく、苦々しくて。

そして、今日も願う。どうか、あの娘の剣が抜かれませんように、と。

 

********

 

村を一回りした志乃は、西日に照らされた土手を步いていた。そこには小さな広場があって、子供達が遊んでいるのが見える。それを横目に、空を仰いだ。

赤と紫の境目がぼんやりする夕焼け空。暗くなる前に帰ってこいという、父の言葉を思い出す。

 

「……そろそろ帰ろっかな」

 

父が娘である自分を溺愛してくれているのは、もちろん彼女自身も知っていた。 娘のことになると自身を顧みず、いつも心配してくれる。それがかなり大袈裟で困ることもあるが、私のことを想ってくれているのだと思うと、とても嬉しかった。

そんな父に、心配をかけたくない。小走りで自宅へ向かおうとしたその時。

 

「きゃああああああああああ!!」

 

「わああああああああん!!お母さーん!!」

 

「!?」

 

空気を切り裂くような、悲痛な叫び。志乃は思わず足を止め、振り返った。

声は、あの土手から聞こえてくる。一度だけかと思えば、子供の泣き声は何度も聞こえてきて、ただ事じゃないことを匂わせた。

土手の広場に向かうと。

 

「……なっ」

 

志乃は目を疑った。

泣き叫ぶ子供達を連れていこうとしている、異形の生物達。地球では決して見ることのない、そいつらはーー天人だった。

何で。どうしてこんな片田舎に、天人が襲ってくるんだ。

初めて見る天人の姿に、志乃は一歩退がる。とにかく、誰か助けを呼ばなければ。天人に打ち勝てるほど強い人は、この村ではーー。

 

グイッ!

 

「頭ァ、もう一人ガキを見つけましたぜ!」

 

「っ!?」

 

首根っこを掴まれ、足が宙に浮く。天人に見つかり、捕まったとわかるのは早かった。脳が恐怖にジャックされ、ジタバタと暴れ出す。

 

「や、放してっ!!」

 

「けけっ、イキのいい娘だ」

 

「それに見ろよ、この顔」

 

天人に顎を乱暴に掴まれ、持ち上げられる。

 

「これくらいの上玉なら、相当高く売れるぜ」

 

「オイ、無闇に傷つけるなよ。せっかく捕まえた商品の価値が下がるだろ」

 

天人達の会話を聞いて、志乃は青ざめた。

売られる。このままじゃ遠い宇宙のどこかに売り飛ばされて、二度と父さんの元へ帰れないかもしれない。それどころか、その先でもっと酷い目に遭うかもしれないーー。

嫌だ。怖い。怖い!

 

「ッ!!このガキ、暴れるな‼︎」

 

逃げようと必死に抵抗しても、数人に押さえつけられて、自由になれない。周りの子供達の泣き声が耳に入り、さらに恐怖は募っていく。

助けて。誰か、助けて。父さんッ……!!

心の中で、叫んだその時。

 

カツン

 

ジタバタさせていた足が、ふと腰に挿した木刀に当たる。志乃はその感覚に、ハッと我に返った。

そうだ……何のために、木刀(これ)を持ってきたのか。何のために、今まで父に鍛えてもらったのか。

恐怖に囚われていた頭が、急に冷静になっていく。

暴れなくなった志乃を押さえていた天人が、彼女の腕を掴む手を緩めた。

その瞬間。

 

ドォウッ!!

 

志乃は一瞬で木刀を抜き、押さえていた天人達を一掃した。

そのコンマ単位の出来事に、他の天人達も子供達も驚愕を隠せない。その中で、志乃だけが悠々と木刀を肩に置いた。

 

「なっ……何しやがる、クソガキィィィ!!」

 

武器を持って襲いかかってきた天人。動きを見た志乃は、驚いていた。

 

ーー何こいつ?こんなに鈍くて、勝てると思ってんの?

 

世界がスローモーションみたいに、ゆっくり動いて見える。いや、天人が遅いだけかと判断し、攻撃される前に強烈な一撃を叩き込む。

他の天人達も、同じくゆっくり動いて見えた。

躱し、殴り、時に蹴る。正直に言って相手にならないほど、敵は弱かった。

志乃は確信する。自分は、強いと。

 

「ひ……ひィっ!!」

 

「な、何なんだこの娘は!?」

 

「オイてめーら」

 

怯えて後退りする天人に、志乃はビッと木刀を差し出す。

 

「今すぐその子達全員解放しろ。そしたら命だけは助けてやらァ」

 

「なにっ……!?」

 

「このまま戦っても、てめーら総潰しになるだけだっつってんだよ。それともアレか?ここで全員殺されたいのか?選択肢は二つに一つだろ。ホラ早く選べ。3秒待ってやる。ハイいーち……」

 

「わ、わかった!!ガキ共は全員置いて帰る!!それでいいだろ!!」

 

「よろしい」

 

天人達は、志乃の強さとただならぬオーラに、引き退る他なかった。子供達を全員解放し、倒された仲間を引きずって帰る情けない姿を見送った志乃は、彼らに嘲笑を送った。

そして、助けた子供達を振り返る。

 

「みんな、大丈夫?怪我はない?」

 

「「「うわあああああああああん!!」」」

 

子供達が一斉に泣き、志乃に集まってくる。べたべたと抱きつかれて、動けなくなった。

志乃はその子供達の頭を、一人一人優しく撫でる。誰も怪我をしていないみたいだ。

よかった。私も、何かを護れたんだ。そう思うと、嬉しかった。

怖かった。怖かったよ。ありがとう、お姉ちゃん。

涙でぐちゃぐちゃになった顔を押し付けて、彼女にお礼を言う子供達。

 

「もう、大丈夫だよ」

 

志乃が優しく声をかけると、子供達の涙の大合唱は、さらに大きくなったーー。

 

********

 

「ーー何?それは本当か?」

 

地球に停泊している、とある船。そこでは天人達が忙しなく行き交い、何かを運んでいる。

ダンボールに詰められたそれの中身は、全て白い粉ーー転生郷だ。そして、それを売り捌く彼らは、宇宙海賊「春雨」の末端。

 

そこの事実上のリーダーは、片田舎から子供を誘拐しようとしていた部下が戻った報告を受け、彼らの元へ足を運んだ。

しかし、目的の子供は一人もいない。なんでも、攫おうとした子供の中に桁外れな強さを誇る娘がいて、それに邪魔されたという。しかもその娘ーー。

 

「まさか。しかし"奴ら"は、先の戦争で絶滅したのではなかったか」

 

「はい、確かに戦争で"奴ら"の血筋は途絶えたはずでした。ですが、容姿の特徴とバカげた強さ……我々もまさかとは思いましたが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー間違いありません。あの娘、"銀狼"の生き残りです!!」




松陽は娘に銀狼の血が流れていることを隠していました。おかげで志乃は今まで平和に暮らすことができたわけですが……。
アレですね、やっぱ松陽が育てても銀時が育てても、結果は同じでしたね。志乃は自分の正体を知らずに育つっていう。

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