もう一つの【銀狼 銀魂版】   作:支倉貢

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第三弾。
今回のお相手は悪党ばかり。ヤダコワイ何このメンバー。

でもそんな相手に対してズバズバいっちゃうのが志乃だと思うのよね。怖いもの知らずだから。あの銀時が育てた子って設定だから一応。

出来の悪さは相変わらずです。お目汚し失礼します。




〜高杉晋助の場合〜

 

江戸の近郊にある、大きな川。そこに浮かぶ屋形船から、志乃は夜空を見上げていた。

耳には、三味線の弦を弾く音が聞こえる。志乃のいる窓とは反対側のそこで、窓の縁に腰掛けて演奏しているのが、高杉晋助。

 

「綺麗な月だねぇ」

 

空には、大きな月が金色に輝いていた。

ポツリと呟いた志乃の言葉に、高杉は喉を鳴らして笑う。

 

「お前もそんなしみじみしたことを言えるんだな」

 

「むっ、それどーいう意味」

 

「そのままの意味だ。それ以上ねーよ」

 

そう言うと、志乃はますます頬を膨らませる。「もういい。知らない」とそっぽを向く彼女がとても愛らしい。

それを笑っていると、志乃から恨めしそうな視線が飛んできた。

 

「そんな顔すんな。お前が可愛いんだよ」

 

「うるさい。バカ。もう知らない」

 

すっかり怒った志乃は、再び視線を月に向ける。その時、不意に背中が温もりに包まれた。

 

「え……っ」

 

「生意気だな」

 

ニヤリと笑った高杉の手が、服の中に侵入する。

 

「ゃっ……な、何しっ……放せっ!」

 

「おとなしくしてろ」

 

「ひぁ……っ」

 

ツッ、と耳を熱い舌が伝う。ビクッと体を震わせて動けなくなったところで、高杉の手が肌を這う。

 

「や、めッ……」

 

か細い声で訴える。高杉は耳にキスを落としてから、ゆっくりと離れた。乱れた服を整え、赤い顔で睨んでくる。

 

「変態」

 

「何とでも言え。何ならもう一回してもいいんだぜ」

 

「ごめんなさい冗談ですだからやめろ触るなァァァァ!!」

 

屋形船の中で重なる二つの影を、月だけが見ていた。

 

 

 

(本編では結局どういう立ち位置かあまりよく決まってない高杉だけど、今回恋人役として書いたらただのロリコンになった件。個人的に過去篇で出てくる高杉が一番好きです)

 

(あの時は可愛かったのにね……。銀にあんなにからかわれて……)

 

 

 

〜河上万斉の場合〜

 

「寝れない」

 

夜。というより、宇宙に朝も夜もないのだが、就寝時間。

そんな時間に万斉の部屋を訪れたのは、志乃だった。

藤色のパジャマに身を包み、愛用の枕を抱えて部屋に入ってきたのだ。

 

「寝れない。万斉さん、三味線弾いて」

 

「……またでござるか」

 

「うん。また。三味線弾いて、万斉さん。アレ聴いたら眠れそう」

 

ダメ?と上目遣いで万斉を見上げる。志乃がおねだり上手なのは知っているが、実際にされると断りづらい。

昔、高杉に連れられて現れた小さな娘は、今はこんなに大きくなった。

一般的な子供なら寺子屋を卒業しているだろう年頃なのに、未だに眠れないと駄々をこねて、万斉の演奏を強請る。

溜息を吐いて三味線を取り出すと、待ってましたとばかりに布団に潜り込む。ちなみにこの布団はもちろん万斉のものである。

弦を弾いて、彼女の大好きな曲を演奏する。しばらくすると、魔法にかかったかのように、志乃は瞼を閉じて寝息を立て始めた。

志乃が眠ったのを確認して、撥を持つ手を止める。彼女の綺麗な銀髪を優しく撫でた。

 

「まったく……相変わらず無防備でござるな」

 

散々晋助に言われているだろうに。そんな言葉を、溜息と共に吐き出す。

一房摘んだ髪の束を持ち上げて、軽く唇を押し付けた。

 

 

 

(この後高杉に見つかって、「妹に手ェ出したら殺す」と脅され目をつけられる不可避ルート)

 

(万斉さァァん!!)

 

 

 

〜神威の場合〜

 

人気のない、海風の吹く埠頭。

その少し冷たい風に髪を靡かせ、志乃はコンテナに凭れ掛かり、ある男を待っていた。

肌寒さを感じ、腕を抱える。その時、ふわ、と体が抱きしめられ、温もりに包まれた。

 

「神威!」

 

「久しぶり。ずっと会いたかったよ」

 

「うん、久し……んんっ」

 

愛しの彼氏・神威と再会して間も無く、唇を塞がれる。しかもそれがかなり長く、志乃は神威に腹パンした。

「ふぐっ」という彼の苦しそうな声なんて聞こえない。苦しかったのはこっちだ。

 

「何すんの」

 

「こっちの台詞だアホんだら。何しやがる」

 

「再会のキス」

 

「長えんだよ!!窒息で殺す気か!?」

 

「会えなかった時間分するからね」

 

「一ヶ月間するってか!?ふざけんな!」

 

出会って早々、喧嘩する二人。

しかし、これが二人のいつもの関係なので、誰も気にする人はいない。

ここに阿伏兎がいれば、「仲睦まじいこって」と呆れ顔をするだろう。

 

「ってことで、ワンモア!」

 

「話聞いてんのかテメッ……んむっ、ふっ……」

 

再び抱きつかれ、唇を重ねられる。

これにより神威が、本日二度目の腹パンを食らったことは言うまでもない。

 

********

 

「ねぇ志乃」

 

「何?」

 

「キスしていい?」

 

「また!?」

 

団子屋を出て散歩をしていると、唐突にキスを要求される。

にこにこと屈託のなさそうな笑顔だが、考えていることは絶対に腹黒い。

 

「ヤダ」

 

「じゃあ今ここでしていい?」

 

「わかったわかった!わかったから!」

 

後頭部と顎を固定され、危機を覚える。すぐに迫ってくる神威を引き離した。

 

「してもいいけど、今はダメ。我慢して」

 

「え〜?」

 

「え〜?じゃない。我慢もできない奴、私嫌いだよ」

 

「でも俺のこと好きでしょ?」

 

「……………………うるさい」

 

頬を赤らめてそっぽを向く志乃に、神威は満足そうに微笑む。

うむ、今日も志乃のツンデレは健在だ。

 

「ねぇ志乃、やっぱり春雨に来てよ。俺が話通してやるからさ。それに志乃がウチに入るんなら、上も許すと思うけど」

 

「バカ言え。私はお前に会う前に一度春雨の末端組織に誘拐されてんだよ。おかげで連中とは気まずいどころか最悪の関係だし、さらに言えば春雨とも軽くドンパチやってんだからな!?」

 

「すごい。流石志乃」

 

「拍手送ってんじゃねェ!!」

 

パチパチという乾いた拍手も耳障りに感じ、志乃の拳が右ストレートを放つ。もちろん神威に止められたが。

 

「じゃあ、俺とずっと傍にいるのとこうして今まで通り遠距離恋愛するの、どっちがいい?」

 

「…………それは……っ」

 

極限の選択に、志乃は思わず俯いて言い淀む。

神威を好きになった時から、こうなることはわかっていた。

いずれ身の振り方についてもハッキリ決めなきゃいけないし、こうして離れ離れになるとしたら、神威が他の女とくっつく可能性だってある。神威がそんな男ではないとはわかっているが、不安なのだ。

神威は黙って志乃の手を両手で握る。

 

「大丈夫。もし元老(うえ)がお前に手を出そうとするなら、俺がそいつらを皆殺しにしてやる。ずっとお前を護ってやる。約束する」

 

「神威…………」

 

「ねぇ、返事は?」

 

「………………………………は、はい……」

 

「よく言えました」

 

にこ、と笑んだ神威は、真っ赤になって俯く志乃の頬を両手で包み込み、唇を重ねた。

 

 

 

(もしこうなるオチだったら、という妄想の元書きました。でもオチは誰が何と言おうとトッキーなんで)

 

(そーいうこった。だから私のことは諦めろ。そのままライバルポジでいっとけ)

 

(うん。だから最初から言ってるだろ?決闘して勝ったら俺の子を産んでもらうって)

 

(お前人の話聞けェェェェェ!!)

 

 

 

〜阿伏兎の場合〜

 

霧島志乃には、二十歳上の彼氏がいる。

彼の名は阿伏兎。何の因果か何の理由かは取り敢えず置いといて、二人は付き合っている。

 

「阿伏兎さん!アレ!あそこの団子屋、すっごく美味しいんだよ!」

 

「いや、そう言ってさっきも団子屋入っただろうが。つーかどんだけ食うつもりだ」

 

傘をさしていない方の手を引く志乃は、目の前の団子しか見ていない。

そんな少女を窘める男の姿は、側から見ると親娘に見えなくもない。実際、親娘でもおかしくないほどの年の差なのだが、ここでは敢えて触れないことにする。

 

「色気は食い気でできてるんだよ、知らないの?」

 

「ガキが色気だの何だの言ってんじゃねェ。んなもん欠片もねェ身体してるくせに」

 

「コレはサラシ巻いてるだけですー!!ホントはかなりあるもんねー!!そんな小娘に惚れたのは紛れもなくアンタなんだからねー!!」

 

「わかったわかった、それ以上言うな。周りの視線が」

 

周囲など気に留めずに騒ぐ志乃の口を手で塞ぐ。彼の匂いがより近くなって、阿伏兎の腕に抱きついた。

「歩きにくいから離れろ」と言われても、気にせず抱きしめる。

 

「はぁ……」

 

「何、どしたの?」

 

「いや、こんなガキにときめいちまうたァ……社会的に抹殺されるな、って思ってよ」

 

「元々海賊だから社会的に既に死んでるよね」

 

「清々しい笑顔で言ってんじゃねーよ。笑えねーんだよ」

 

ふふっと微笑んだ志乃は、その笑顔のまま続ける。

 

「心配しなくても、私が護るから大丈夫だよ」

 

「バカ言ってんじゃねェ。俺ァ夜兎だぞ。お前に護られるほど弱くねーよ」

 

「知ってるよ。私が言った意味はそっちじゃない」

 

「あ?」

 

「アンタにまとわりつくような女がいたら、私がそいつら全員ぶっ飛ばしてやる。そーいう意味」

 

ニッと歯を見せて笑った志乃に、阿伏兎は再び溜息を吐いて頭を掻いた。

……無防備なのはお前の方だけどな。

口を開いて紡ごうとした言葉は、空に消える。

 

「そーかい。俺からすれば、お前さんの方が他の男に取られねェか心配だがな」

 

「へ?う、わあ!?」

 

ヒョイと軽く抱き上げられ、咄嗟に阿伏兎に抱きつく。

突然のことに、志乃はわたわたと狼狽える。

 

「な、ななな、あ、阿伏兎さん何をっ!?」

 

「何って、ただ抱き上げただけだろーが。ん、顔赤いぜ」

 

「わわっ、み、見ないで」

 

顔を覗き込もうとすると、両手で隠されてしまう。白く細い指の隙間から、チラチラと赤い頬が垣間見えた。

必死に顔を隠さんとする姿が可愛い。思わず笑みを浮かべる。

 

「もうっ!!笑わないでよ!!」

 

「しょーがねーだろ。お前さんが可愛いんだからよ」

 

「は、……っ!?」

 

ぶわっと赤くなる熱い頬に、ちゅっと軽く口付ける。

顔を離すと、少し潤んだ赤い目と視線が合ったが、すぐに逸らされた。

 

「んだよ、もっと見せてくれよ」

 

「やっ」

 

阿伏兎の肩に顔を埋め、抱きつく。

小さい声で囁かれた「バカ……」という呟きは、聞こえないフリをしておいた。

 

 

 

(私個人的に阿伏兎さんは嫌いじゃないよ。何でもかんでもNo.2は親しみが持てるね)

 

(あー、土方とか万斉とか?確かに組織のトップよりNo.2と仲良いよね、志乃は)

 

(真選組の場合は例外だよ。近藤さんのことは大好きだよ!)

 

(なぁ、俺に関してのコメントは?)

 

 

 

〜朧の場合〜

 

暗殺組織「天照院奈落」。

その首領を務める男・朧には、何よりも大切に思う少女がいる。

彼女の名は霧島志乃。彼が想いを寄せていた女性の娘で、戦場で会った際に娘自身にも同様の感情を抱いていた。

以来、朧は陰ながら彼女を見守り続けた。彼女に危害を加えるような存在はすぐに削除したし、彼女に近寄るような男は皆殺した。

 

思えば、単なる想いの暴走だったかもしれない。

おそらく一方的な片思いのはずだったのだ。

誰よりも幸せになってほしいと願うのに、彼女が他の男の手で幸せになるのが、この上なく許せない。

そんなある日、街中で、二人は再会してしまった。

 

「……朧兄ちゃん?」

 

「……!!」

 

愛おしい声で、自分の名前を呼ぶ。それだけで嬉しくなるなんて、自分は案外単純な人間かもしれない。

場所も、ちょうど人が全く通らない路地裏だった。散歩好きな志乃は、こんな路地裏にも平気で入っていく、無防備な子供に成長していた(襲われても物理的に返り討ちにできるから)。

 

「朧兄ちゃん……だよね?そう、だよね?」

 

「………………っ」

 

振り返ってはいけない。

今まで遠くから見守ってきたのに、いざ向こうから近寄ってきたら、遠ざかる。朧は手にした錫杖を、強く握りしめた。

背後から、志乃の足音が聞こえる。すると、背中が温もりに包まれ、心臓が跳ねる。

 

「朧兄ちゃん、待ってよ!覚えてる?私だよ!攘夷戦争の時、子供だったーー」

 

 

腰にまわされた手を取り、抱き寄せて唇を塞ぐ。

驚いて開いた大きな赤い目が、より近くに映った。

 

「お、ぼろ、にいちゃ……ん、んんっ」

 

ぐい、と押しやろうとする志乃を抱きしめて、さらに深く口付ける。

時折体をピクつかせ、ぎゅっと服にしがみつく仕草すら愛おしい。

ゆっくりと顔を離すと、頬を紅潮させて蕩けた目で見つめる志乃の姿があった。

 

「はっ……朧、兄ちゃん……?」

 

「っ……志乃……」

 

やってしまった。

ずっと、触れてはいけないと耐えてきたのに。

バッと志乃との距離を離す。

しかし。

 

ガバッ!

 

「待って……!」

 

志乃の細い両腕が、その場を去ろうとした朧の腰に絡みつく。志乃の目尻には赤い雫が溜まっていた。

 

「お願い朧兄ちゃん……私の話を聞いて……!」

 

「…………放せ」

 

「やだっ!!」

 

説得しても、即座にかぶりを振られる。きっと何をしても、彼女が首を縦に振ることはないだろう。

朧を捕まえたまま、ポツポツと志乃が呟き始めた。

 

「会いたかった…………ずっと、会いたかったよ……」

 

「……………………っ」

 

「私……朧兄ちゃんにずっと会いたかったの。だって……あれから、何にも……」

 

グスッと、鼻水を啜る音がする。

無意識のうちに手が震えていた。

早く、早く引き剝がさねば。

 

「私……朧兄ちゃんが好き」

 

「っ!?」

 

「ずっと言いたかった……お兄ちゃんのことが大好きって」

 

息が止まる心地だった。思わず振り返ると、潤んだ志乃の目と合う。

 

「わかってるよ。私は朧兄ちゃんと一緒にいちゃいけないって。でも…………それでも……」

 

これ以上言わせまいと、再び口を塞ぐ。ゆっくりと顔を離してから、志乃の頬に手を添えた。

 

「…………本当にいいのか。お前の大切な兄や、その仲間も皆全て裏切ることになるんだぞ」

 

「それでもいい……一緒に、いたい…………」

 

両腕に、志乃をしっかり閉じ込める。

烏は少女を攫い、羽根を残して飛び去った。

 

 

 

(本編での登場はまだなんですけど、もう一国傾城篇の半ば以上までは書いてます。早いとこ投稿したい。なのに前の話を書く気になれないんだよなぁ……)

 

(知るか。さっさと続き書けやアホ作者!!早くしねーと読者の皆さんがついてこれねーだろーが!!)

 

(はい!!頑張ります!!泣きそう!!)




ハイ、ということで第三弾はこれにて終了。
全体的な感想としては、ダークネスにラブを入れるのが難しすぎるということですね。最後なんてほぼやっつけですよ、えぇ。
300円あげるからみんなまとめて幸せになって(なれるか)。

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