血塗られた戦車道   作:多治見国繁

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祝 西住みほ生誕祭!
今日はみぽりんの誕生日です!原作の優しいみぽりんもこのお話の恐ろしい闇のみぽりんもおめでとう!これからも大暴れしてください!
今回はお誕生日ということなので誕生日のことを少し西住殿が言及しています。1年前の誕生日、みほは忘れられない体験をしたようです。何があったのか…ご注目ください!

大幅に変更することはありませんが、どことなくまとまっていない気がするのでリメイクはするかもしれません。よろしくお願いします。


第88話 私の人格は一度死に悪魔になった

応接間は暗く重たい恐怖で支配されていた。みほはどこから持ってきたのかサーベルを処刑した少女の身体に何度も突き刺して高笑いをしている。みほは遺体を弄んでいた。その光景は狂気の範疇を大きく超え、形容しがたいものになっていた。しばらくするとみほは遺体を傷つけることに飽きたのか少女の遺体から興味を失って冷たい声で扉の向こう側に声をかけた。

 

「565番、566番。入ってください。」

 

すると頭を丸刈りにされた全裸の少女2人が入ってきた。2人の少女は磔にされた少女の遺体を視認すると磔台に駆け寄り、すがりつきながら人目も憚らずに大粒の涙を流しはじめた。

 

「お姉ちゃん…お姉ちゃん!何で…何でこんな姿に…」

 

「西住さん!お姉ちゃんにどんな罪があったというのですか…?何でお姉ちゃんは処刑されなければ…」

 

先ほどみほの手で理不尽に処刑された少女は、後に入ってきた番号で呼ばれた2人の少女の姉だったのだ。2人の少女は泣きながらみほに訴える。しかし、みほに2人の訴えは届かない。みほは楽しそうに笑いながら答える。

 

「ふふふ…別に意味はないよ。ただ、たまたまそこにいたから。処刑の対象とすべきターゲットを探していたらたまたま見つけたから。それだけの話だよ。」

 

「意味はない…?それだけで…それだけの理由でお姉ちゃんは貴女に殺された!?貴女はなんてことを…!貴女はそれでも血の通った人間ですか!?私たちはなぜ強制収容され、強制労働のあげく、命までも奪われなくてはいけないのですか!?私たちはこのような目に合わなくてはいけないんですか!?私たちが何をしたというのです!?」

 

みほは笑顔で頷く。2人の少女は恨みと憎しみの眼差しをみほに向けた。みほはそれに動じることはなく、質問に答える。

 

「ふふふ…そうだよ。私は意味もなく貴女たちのお姉ちゃんの命を奪った。この銃を使ってね。貴女たちのお姉ちゃんの最期は立派だった。何も言わずに怯える様子もなく死んでいったよ。私もあんな立派なお姉ちゃんが欲しかったなあ。今さら家族なんてどうでもいいけどね。あ、そうそう。聞かれたことは答えなくちゃ。何でみんながこんな目に合うか教えて欲しい?それはね、みんなは私の道具だからだよ。貴女たちにはこれからも役に立ってもらうね。私の道具として。あははは!」

 

「そんなことのためにお姉ちゃんは…」

 

2人の少女は下を向きながら呻くように声を絞り出して拳を強く握る。みほは2人に近づくと彼女たちの腕を確認した。彼女たちの白い腕には不似合いな黒い数字とアルファベットの刺青があった。この刺青は収容者たちの識別のためにみほが梓に命じて入れさせたものだった。みほは2人の腕に刺青されたB-565とB-566の数字とアルファベットを確認して満足そうに微笑み愛おしそうに腕を撫でた。

 

「や…やめてください…触らないで…」

 

少女たちは顔を引きつらせて嫌悪と憎悪が複雑に絡み合った表情をする。

 

「あははは。嫌われちゃってるね。2人ともプルプル震えて可愛いなあ。さあ、2人とも早くそこにある見すぼらしい死体(ゴミ)を処分して。早くしないと…殺しちゃうよ?」

 

みほは拳銃を2人の頭に突きつけながら、冷たい声で死体を処分するように命令した。2人を見るみほの目は人間を見る目ではなかった。まるでゴミを見るかのような目であった。2人の少女は唇を噛み、大粒の涙を流しながら遺体を運び出した。

 

「なんてことを…」

 

みほの極悪非道で残虐な行いに福安首相は思わず呻く。みほはしばらく首相たちの顔を何も言わずにじっと見つめる。しばらくするとみほはニッコリと笑顔を浮かべて小さく低い声で呟いた。

 

「ふふふ…私に逆らうと貴女たちもあの子たちのお姉さんみたいな目に合いますからね。ゆめゆめ忘れないように。」

 

首相たちは皆必死で首を縦に振った。躊躇ったら容赦無く殺されることは火を見るよりも明らかである。選択肢などなかった。その姿は一国を背負う高名な政治家とはかけ離れた姿である。みほはあのしたたかな政治家さえも自分の掌で踊らせていることに快感を感じているといった様子である。森田防衛大臣が怯えながらみほに尋ねた。

 

「あの…それで一体今日は私たちに何の用ですか?」

 

「あっはははは!そうでした!そろそろ本題に入りましょう。今日皆さんをお呼び立てしたのはちょっと皆さんに頼みがあったからです。」

 

「頼み…?」

 

「はい。頼みです。実は我々は今戦争をしています。生徒会からこの大洗女子学園の学園艦を奪い取るために戦っているのです。しかし、武器が足りない。だから…少しだけ本当に少しだけ防衛装備品を私たちに分けて欲しいのです。そうですね…えっと84mm無反動砲…あれを20門ほど譲っていただけませんか?」

 

みほの言葉に、床に正座させられている4人の政治家と官僚は目を剥いた。まさか、こんな要求とは思っても見なかったのであろう。皆、明らかに戸惑っていた。

 

「それは…いくら何でも…」

 

防衛大臣と防衛装備庁長官は言葉を慎重に選びながらみほの要求を拒否しようとしていた。しかし、みほはそれを許さない。みほは防衛大臣と防衛装備庁長官の言葉を遮る。

 

「ふふふ…嫌だ、できないとは言わせませんよ…?あなたたちならできるはずですよね?金を使えば。それに断ればどうなるかもう皆さんは見たはずですよね?ふふふ…ここで消されるか素直に私に従うか。どちらがいいですか?」

 

みほは蔑んだ目で高座から4人を眺めていた。4人はもはやみほの言いなりだった。4人は又しても必死で首を縦に振る。

 

「わかりました…要求通りにします…」

 

「ふふふ…ありがとうございます。あとついでに官房機密費を分けてください。あなたたちには選択肢はありません。よろしくお願いしますね。」

 

「はい…」

 

みほはここぞとばかりに理不尽な要求を突きつける。首相たちはみほの理不尽な要求を呑むしかなかった。みほは首相たちの返答を聞くと満足そうに頷いた。みほは満面の笑みを浮かべ、嬉しそうに手を叩いて、4人の目の前に書類を差し出した。

 

「ありがとうございます。それでは早速誓紙を書いてください。」

 

「はい…」

 

首相たちはみほに言われるがままペンを取り、誓紙に自らの名前を記入する。みほはその様子を眺めてニヤリと怪しく笑う。みほは提出された誓紙を確認すると笑顔で頷く。

 

「はい。いいです。それでは、皆さん。戦争の勝敗は皆さんにかかっています。くれぐれも裏切ったりしないように。裏切ったらその時は…えへへへ…言わなくてもわかっていますよね?」

 

「わかっています…」

 

首相たちはみほに表情を悟られまいと顔を下に向けながら呻く。みほはその様子をおもしろそうに笑いながら見ていたが何かを思い出すかのような表情をする。

 

「あ、そうだ。忘れてた。あと一つ、皆さんに頼みがあります。」

 

「何ですか…?」

 

首相たちは顔をあげて次はどんな理不尽な要求をされるのかと怯えた表情をしている。みほは苦笑いしながら首相たちに言った。

 

「あははは!そんな表情しなくてもいいじゃないですか。えっと、学園艦の自治権の拡充をお願いしたいのです。もともと、私たちの学校は廃校の危機に瀕していた。なぜなら文科省が廃校を目論んだからです。これは、本来の学園艦の崇高な学生自治の理念に反するのではないですか?是非とも改善をお願いします。」

 

首相たちは思いの外まともな要求に気が抜けてしまった。ホッとしてわかりましたと返事をする。みほは満足そうに微笑むと自分たちが支配している地域を案内すると言った。首相たちからしたら一刻も早くこの恐ろしい空間から抜け出したかったが、そんなことは無理だった。みほは自ら先導して首相たちの案内を始める。まず、最初に連れて行ったのは生物化学兵器の実験と収容所などで処刑相当とされた者たちが収監されている特別棟だった。

 

「ここは、処刑を言い渡された者たちが収容されている特別棟です。また、特殊な任務を行なっている部屋でもあります。紹介します。ここの棟の責任者冷泉麻子さんです。」

 

「冷泉麻子だ。よろしく。」

 

首相たちは冷泉麻子と面会した。麻子が研究をしており、計画の要でもあることは説明されたが麻子が何を研究しているかなど特別棟に関する詳しい情報をみほは説明しなかった。やはり、ここは計画の要であり、高度な機密として扱われているのであろう。そう考えると当たり前の処置であった。麻子と合流して次に案内されたのは収容所だった。その収容所は先ほど2人の少女が収容されている収容所である。首相たちが視察に向かうと皆一様に驚いた。まさか、首相までが西住みほに加担しているとは思っても見なかったのであろう。みほは虚ろな目をして痩せた収容者に笑顔で手を振りながら歩いた。その光景はナチスドイツのアウシュビッツなどの各強制収容所とも匹敵するといっても過言ではないものだった。みほは嬉々としながら収容所に関する説明を始めた。

 

「ここが捕虜と反逆者を収容している施設です。彼らは利用価値に合わせてABCの2つに分類しています。Aが私のそばに置く奴隷でここではなく、私の執務室の近くに収容され、ここにはBとCに分類された者たちがいます。Bは強制労働。Cは処刑又は実験のモルモットとして利用されます。」

 

「西住さん。皆、いやに痩せていますが…ここの人たちの食事や衛生環境などは…」

 

「あははは。ここの食事は小さなパンひとかけらだけです。衛生環境も非常に悪いと思います。食事や衛生、そんなものはなくてもいいんですよ。ここに収容されている者は皆死を待つだけなんです。ただ、殺され方や死ぬまでの時間が違うだけ。彼らの最終的な行き先は死です。生還は絶対にさせません。あ、そうだ。おもしろいものを見せてあげましょう。」

 

「おもしろいもの…?」

 

首相の怪訝そうな顔にみほは頷きBグループの収容者たちを全員集合させて、収容者たちの顔を眺めまわすとニッコリと微笑んだ。

 

「600番から700番までの皆さん。前に出てください。」

 

番号を呼ばれた少女たちが身体を震わせながら一歩前へ出る。彼女たちは皆、トラックに乗せられどこかに連れていかれた。みほは残りの収容者たちを解散させ、作業の続きに当たらせた。

 

「あの…先ほど連れていかれたあの少女たちは…」

 

首相たちはまたみほが悪いことを考えているのではないかと戦々恐々としていた。みほはおもしろそうに笑う。

 

「ふふふ…すぐにわかります。さあ、行きましょう。」

 

みほは楽しそうにスキップしながら首相たちを先導する。その光景は異様であった。首相たちは収容者たちの恨めしそうな目線に必死に耐えながらみほの後に続く。やおらみほは立ち止まった。そこは収容所の一番奥だった。先ほど収容者たちが乗せられたトラックが先にその場所についていた。収容者たちはその場所で降ろされ整列させられていた。みほはその様子を見てニッコリと笑うとサッと手をあげる。すると、突然赤星小梅が銃を持って現れて、みほに銃を手渡す。それとほぼ同時に収容者たちを三方から囲うような形で銃を持った看守役の黒森峰の生徒たちが現れた。みほが振り上げていた手を振り下ろすと一斉に銃撃した。収容者たちは次々と鉛の弾に撃たれて悲鳴をあげて倒れていく。みほはおもしろそうに高く笑った。

 

「あっはははは!はははは!」

 

「に…西住さん…貴女は毎日のようにこんなことを…?」

 

みほは高笑いしながら頷く。みほは100人もの少女を一斉に処刑するという久しぶりの大虐殺に身体をくねらせて興奮していた。みほの嗜虐的な心をくすぐったのだ。みほの銃撃は執拗だった。みほは倒れた少女たちの頭に一人一人鉛の弾を撃ち込んでいった。みほは1人の生還も許さなかったのだ。さらに遺体をおもちゃにして弄ぶ。遺体を何度も銃剣で突き刺した。

 

「あっはははは!久しぶりに一度にこんな大勢を殺したなあ。あははは!ああ!楽しい!」

 

みほは遺体を傷つける行為を楽しんでいた。まるで子どもがおもちゃで遊ぶかのような無邪気な笑顔を浮かべる。みほの過去に何があったのか、梓はみほの背中に尋ねた。

 

「隊長…なぜ隊長はこんな残虐になってしまったのですか…もともと貴女は優しい人だったと聞いています。なのになぜ…」

 

するとみほはため息をつきながら振り向き梓の顔をじっと見つめると無表情になって自分の歴史について話し始めた。

 

「うん。信じられないかもしれないけど、私はもともとこんなことしたくなかった。もっともこんなことは大嫌いだった。でも、忘れもしない私は黒森峰でいじめられちゃったの。私の西住流という地位で副隊長という位にいとも簡単についたことを妬まれちゃったみたいで…最初は我慢していたし、なんとか仲良くなろうと模索したよ。でもダメだった。結局最後は裏切られた。だから私は高等部になった時、副隊長という立場を使って私をいじめた子たちや私を貶めようとした子たち、それに裏切った子たちを罰した。でも、きっとそれだけだと中等部と同じ轍を踏むことになる。きっとまた裏切られるそう思った。だから、私は恐怖で支配することにしたの。収容所をつくり、私に反逆した子たちに恐怖を植え付けて2度と私に逆らわないようにしてあげた。そして気がついた時、私はお姉ちゃんを凌ぐ権力を握っていた。黒森峰に存在する権力という権力が私に集中していた。仲間が何人もできたし、これでやっと安寧で平穏で幸せな学園生活を送れる。そう思ってた。だけど、現実は違った。私の敵はいじめた子たちだけじゃなかった。私の本当の敵。それは西住という家だったの。お姉ちゃんは私をわかってはくれなかった。私のやり方を糾弾した。そして、私は黒森峰10連覇を逃した全責任をお姉ちゃんになすりつけられて副隊長職は剥奪された。それだけならまだ良かった。でも、暴徒と化したお姉ちゃん側の人間たちが私の身柄を拘束して手首に鎖をつけて学園艦中を引き回されて晒し者にされた。その間中辛くて辛くて仕方なかった。みんなから鬼だ、悪魔だ畜生だと石をぶつけられたの。あの時のみんなの憎悪に満ちた顔は忘れられないよ。そして私は学園艦から追放された。私はただ水没しそうな戦車から助けようとしただけだったのにお姉ちゃんに利用された。私はただ自分の居場所が欲しかっただけだったのにその夢さえも奪われた。その後、私は謹慎を言い渡されて家の蔵に幽閉された。トイレさえも許されなかった。トイレは全て桶で済ませるように言われて、お風呂も一週間に一度、古井戸で済ませるようにって言われた。それに布団もなければ蔵だから当然空調設備もない。もう秋も深まってきた頃だったから寒くて仕方なくて震えながら眠ったよ。病気になっても薬はもらえなかった。食事も粗末だった。屈辱的だったけど、唇を噛んで耐え忍んだ。そして、忘れもしない去年の10月23日、私の誕生日に私という人格は他でもないお母さんに殺された。私はやってきたこと何もかもを否定され人格さえも否定された。そして私は西住の家から追放された。その時からだったかな。私の中に何か黒くて暗いものが生まれた。それが今の私の人格。優しさを捨て、心を捨て、憎しみと恨みを孕んで生き、人を殺すことが大好きな嗜虐的な私が生まれた。」

 

みほは淡々と語った。みほはまるでロボットのように冷たい声で第三者の体験のように自らが歩んだ辛い歴史を語る。みほが孕む闇は根深かった。

 

「私もみほさんが引き回されているところ見たことがあります…でも、私はあの時何もできなかった…私はみほさんを救うことができなかった…私も自分の身を守ることで精いっぱいで…でも許せない…みほさんが黒森峰だけでなく実家でもそんな目に合っていたなんて…絶対に許さない…」

 

一番に声をあげたのが小梅だった。小梅は怒りに震えていた。

 

「よくあることだ。第2次世界大戦の後ドイツ敗戦後のフランスなどでもドイツ兵が集団リンチにあったりドイツ兵と親しかったフランス人女性が丸刈りにされたりとかな。」

 

麻子はいつか見た本で紹介されていた、かわいそうなフランス人女性の話を思い出す。

 

「小梅さん。ありがとう。小梅さんは悪くない。私は貴女を許します。梓ちゃん。これが私の答えだよ。私をこんな目に合わせた西住流を私はどうしても許すことができない。だからどんな手を使ってでも西住流を破滅に追い込みたいの。そして、もう誰も傷つかない世界を作りたい。私だって平和を望んでいる。今の状態は必要悪なの。だからお願い。もう少しもう少しだけ私についてきて。それに、私も本当はこんなこと罪もない人間を殺すなんてことやめたいって思ってる。でも…無理なの。衝動が止められない…気がつくといつももうやってしまっている後なの…私どうすればいいんだろう…私自分が怖い…」

 

みほは目の前に立ちすくんでいる梓と小梅の手を取った。みほの話は同情に値するものだった。誰もがみほに同情していた。しかし、この中でみほの言葉に強烈な違和感を覚える者がいた。それが冷泉麻子だった。麻子は見てしまったのだ。小梅が許せないと言った時にみほが怪しい笑みを浮かべた気がした。麻子はみほの言葉に疑念を感じてみほの表情をじっと見つめていた。梓と小梅が先ほどのみほの話を聞いてずっとみほに付き従うことを誓った。その時だった。顔を下に向けたみほの表情は間違いなく怪しく笑っていた。まるで作戦通りとでもいうかのような悪い笑みだ。麻子は確信した。みほは自分たちを騙そうとしている。麻子は今夜みほに追及しようと考えた。その後、首相たちとみほはまた執務室がある拠点近くに戻った。首相たちはみほに脅迫され、忠誠を誓わされて東京に帰っていき、学園艦には静かな夜が訪れた。そして、今日も麻子の研究室にみほがやってきた。扉を叩く音が聞こえる。麻子が応答して入るように促すとみほが入ってきた。

 

「西住さん…またか…」

 

「うん。今日もよろしくね。ちょっと疲れちゃった。」

 

「なら今日はやめて早く寝たらいいんじゃないか?」

 

「ダメ。麻子さんの身体で遊ぶ方が楽しいし、体力も回復するよ。」

 

麻子は諦めてわかったと返事をして、シャワーを浴びた。シャワーから上がって髪を乾かし準備を万端にした麻子は唾をゴクリと飲み込み、今日抱いた疑念をみほに問いただす。

 

「西住さん。今日昼に言っていたことは本当か?本当にそんなふうに思っているのか?」

 

「ふふふ。あっはははは!あははは!そっか。麻子さんにはバレていたんだね。もちろん本当の部分はあるよ。でも、自分で自分止められないから怖いなんていうのは嘘。私は好きでやっている。誰も傷つかない世界?そんなものはない。私は私だけが傷つかなければそれでいい。他なんてどうでもいいよ。それなのに梓ちゃんも小梅さんもころりと引っかかってくれちゃって!まさかこんなに簡単にいくなんて思わなかったよ!あっはははは!ああ!おもしろい!あっはははは!あははは!」

 

「人を騙すことがそんなにおもしろいか?人の心を弄ぶことがそんなに…」

 

麻子は低い声を出す。麻子の声には怒気が孕んでいた。みほは躊躇うことなく質問に答えた。

 

「うん。もちろん。楽しいよ。でもね、麻子さん。私の言ったこと全てが嘘ってわけじゃないよ。黒森峰の体験も西住流からの仕打ちも本当。私の誕生日10月23日に私は1度死んでもう1度生まれた。悪魔…としてね!」

 

そう言うとみほは麻子をベッドに押し倒した。麻子はみほに服を脱がされながらみほに忠告をした。

 

「そこのところは同情するが…でも西住さん。やりたい放題やっているといつか痛い目にあうぞ。」

 

「ふふふ…あんなヘマはもうしない。私は絶対に西住流にも黒森峰にも復讐する。手段は選ばないよ。この学園艦から西住流と言う悪を一掃したらもう2度とこんなことが起きないように理想の国をつくる。それが私の夢。大洗女子学園や他の学園艦には悪いけど犠牲になってもらうよ。武器の調達は順調だし、金もたくさんあるしプラウダの援軍ももうすぐ到着する。あと少しで生徒会も落ちるはず。あと少しで第一段階の戦争は終わって、束の間かもしれないけれど平和が訪れる。だから今は何も言わないで、黙って私についてきてください。お願いします。」

 

みほは麻子のこめかみに拳銃を突きつけた。みほの目は恨みと憎しみで埋め尽くされていた。みほにとっての価値観は全て黒森峰と西住家に恨みを晴らすことに固定され、他に価値を見出せていないし、人を信じることもできない。人間の命の美しささえも信じられないのだ。だから、みほは人を騙したり他の人を殺して対象者を脅すことで自分の元に置こうとしているのだ。みほの心は他でもない家族に殺された。麻子はみほも被害者であると感じていた。みほの心を救ってあげたい。そう思った。この大洗でもみほを否定したら今度こそみほが壊れてしまう。麻子はみほの心の救済の方法を考えることにした。

 

つづく


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