血塗られた戦車道   作:多治見国繁

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みほ陣営のお話です。


第61話 死のゲーム

みほは殺戮が大好きである。しかし、みほは殺戮だけでなく人が憎しみあい殺しあう姿を見るのも大好きだった。みほは人間狩りで捕まえた住民たちを残虐で最恐のゲームの世界にいざなった。みほは今回の人間狩りで無価値で処刑されるべきとされたCグループに分類され、未だに処刑されていない者たちを集合させた。みほはニヤリと笑うと皆の前で話し始めた。

 

「皆さん。皆さんは、Cグループに分類された生き残る可能性など全くない、処刑されるだけのグループです。皆さんはこの地獄から生還したいですか?」

 

「そんなの、当たり前ですよ!誰がこんなところで死にたいなどと思うんですか!」

 

誰かが叫んだ。みほは優しく微笑む。

 

「そうですよね。こんなところで死にたくない。当たり前の感情です。そんな皆さんに吉報です。私は、皆さんに生還のチャンスを与えます。」

 

「本当ですか!?」

 

「ええ本当です。しかし、条件があります。」

 

「条件…?」

 

「あはは。そんな構えなくてもいいじゃないですか。簡単なことですよ。ゲームに勝つことです。」

「ゲームに…勝つ…?どういうことですか?」

 

1人の女子生徒がみほに尋ねる。

 

「そのままの意味ですよ?皆さんにはこれから自由と生存をかけてゲームをしてもらいます。このゲームに勝ったらもれなく自由と生存がプレゼントされます。どこへ行こうとも自由。そして、無事にここから生きて出られます。つまり、この地獄から解放されるのです。」

 

「え?本当ですか!」

 

それを聞いて皆ワッと湧いた。みほはその様子を微笑みながら見ていた。

 

「はい。もちろん本当です。参加しますか?」

 

「はい!参加します!いえ、ぜひお願いします!参加させてください!」

 

「わかりました。では、皆さん参加ということでよろしいですね?ですがやはりゲームですから勝ち負けがあります。もしも負けたら…ふふ…」

 

みほはクスリと笑う。みほの不敵な笑みで一気に静まり返る。1人の生徒が恐る恐る尋ねた。

 

「負けたら…?」

 

「負けたら死んでもらいます…あれでね…」

 

みほが指差すその先にはギラギラと光る一匹、いや一体の真鍮製の雄牛があった。

 

「死ぬ…?死ぬってどういうことですか…?それにこれは…一体…?」

 

「えへへ。当たり前じゃないですか。もともと死ぬ予定だったんですから負けたら死ぬ至極当たり前のことです。皆さんは無価値な存在なんですから。ああ、これですか。これはね、ファラリスの雄牛という古代ギリシアで設計されたと言われている処刑道具だよ。この中に入れて処刑者を炙り殺すっていう処刑道具なんだけどね。私はこれが大好きなんだ。まず、閉じ込めることによる恐怖とストレスそして、450℃を超える高温で炙ることにより人を焼き殺し、地獄のような苦痛を与える処刑道具。普通、人は火事だと大抵は一酸化炭素中毒、すなわち煙に巻かれて死ぬ。だから炙り殺されても普通はそこまで苦しまずに死ねる。気絶するからね。だけどこれは違う。これは雄牛の中から空気が吸える管があるんだ。酸素がなくなって苦しくなると人間は酸素を求める。目の前にそれを手に入れることができる管がある。人間はそれに必死にすがりつく。だからなかなか死ねない。つまり、本当に焼き殺されるまで死ねないってことだよ。そして、この雄牛からは人間が焼けるとっても良い匂いが立ちのぼる。最高だよね。実は昨日、これで1人処刑したんだ。皆さんと同じCグループの人をね。中、見てみますか?この処刑道具で死んだ蛆の姿を。」

 

みほはそういうと雄牛の背についた鍵を開け、扉を開ける。みほは中を覗き込むと高らかに笑った。

 

「あはは。すごいよ。原型をとどめていない。」

 

中からは焼けた犠牲者が出てきた。ただの焼死体ではない。身体中全てが焼けている。人間の形をしたそれは真っ黒ではなく皮膚が真っ赤に焼けただれ、酷い有様だ。ファラリスの雄牛はフライパンで焼かれ蒸し焼きにされるのが同時に起こっている状態なのだ。高温で金属に皮膚がはりついたことでところどころ肉が剥がれ落ち骨が見えているところがある。その骨はテカテカと宝石のように輝いていた。みほは犠牲者を抱きかかえ愛おしそうに口づけをすると骨を手に取り呟く。

 

「綺麗。これは、アクセサリーにぴったりだね。いい色してる。」

 

皆、言葉を失う。沈黙が続いた。その時である。1人の女子生徒が半狂乱になりながら叫び逃げ出そうと走り始めた。

 

「嫌だ!こんなの嫌だよ!私はまだ死にたくない!こんなゲームまっぴらごめんだ!うわぁぁぁぁ!!」

 

みほは微笑みながら逃走する様子を見ていたがおもむろに懐から拳銃を取り出してその生徒の足を撃ち抜いた。

 

「どこに行くんですか?」

 

みほは拳銃を手に持ちながらゆっくりとその生徒に近づく。

 

「いや…やめて…近づかないで…」

 

「どこに行こうというんですか?逃げられると思っているんですか?せっかく貴女にも生き残るチャンスをあげたのに残念ですが剥奪ですね。さあ、覚悟はいいですか?今度生まれてくるときは私に巡り合わないようにお祈りでもするといいですよ。」

 

「お願い…殺さないで…」

 

「命乞い…良いですね!ゾクゾクしてきます!」

 

みほはそういうとノコギリとペンチで右手の指を一本ずつ切断し始めた。

 

「何をするんですか…?え?いや…やめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてください!!うっ!うぎいいいいい!!ぎゃああああ!!うわぁぁぁぁ!!痛い痛い痛い痛い痛い!痛いよおおおお!」

 

「良いですね。その叫び声最高です。はい。1本切断。」

 

「ぎゃああああああ!」

 

「2本」

 

「うぎいいいいい!!」

 

「3本」

 

「いぎゃあああええあえ!」

 

「4本」

 

「ぐぎいいいいい!」

 

「5本」

 

「うぎゃああああ!!」

 

「はい!右手の指は全部切断しましたよ。でも、指を切断するのってまどろっこしくて大変ですね。もっと楽しちゃいます。」

 

みほは艶めかしく、切断した指を舐めながらそういうと軍刀を抜いた。そして、みほは軍刀を構えると女子生徒の左の手首に向かって振り落とした。女子生徒の左手首から下が床に転がった。

 

「逃げなければこんなことにはならなかったのに可哀想に。それじゃあ、最期のときです。覚悟はいいですね?言い残すことはありませんか?」

 

みほはそういうと軍刀を再び構える。女子生徒はボロボロになりながらも這ってでも逃げようとしている。

 

「死に…たく…ない…生き…な…きゃ…この…悪魔に…ころ…され…た…家族の…ぶんまで…」

 

「あははは。そんな姿で逃げられると思ってるんですか?あ、そうだ逃げられないように脚も切り落としてあげますね。」

 

そういうと、みほは近くにあった斧を手にして振り上げた。

 

「せえの!」

 

ぐしゃりと嫌な音を立てて右脚の太ももから上が切り落とされた。悶え苦しむみほは高らかに笑いながら左脚も同じように切り落とす。

 

「あははは。惨めなだるま女だ!あははは!それじゃあ、今度こそ最期ですね。覚悟してください。」

 

みほは無慈悲にも微笑みながら軍刀を女子生徒の首めがけて振り下ろした。その女子生徒の首が床に転がった。みほは首を持ちながら切断面に口をつけ、血を飲む。みほは手と顔を赤黒く血の色に染めながら微笑んだ。

 

「人間の血の味…おいしい…極上の味だよ。苦しみ抜いた声と苦痛に歪む顔を見た後に飲む人間の血は。」

 

皆、目の前で起きている惨状を直視できなかった。当たり前である。直視できるものなどいないだろう。一部を除いては。ある者は必死に目と耳を塞ぎある者は失禁し、ある者は胃にある内容物を全て吐き出した。

 

「それじゃあ、早速チーム分けを始めていきましょう。」

 

そういうと、みほは何か紙を見ながら迅速に5人のチーム分けを始めた。どういうわけか、それは全て縁のある者、例えば友人同士や家族同士でチーム分けされた。皆はみほが全く知らない人とゲームをするのは不安だろうからと慈悲でもかけてくれたのかと喜んだ。しかし、その喜びも束の間だった。みほは意地悪く笑いながら言い放った。

 

「皆さん、もうお気づきだと思いますが、このチーム分けは家族や友人同士などで縁の深い人間同士でチーム分けをしています。皆さんの中で生き残ることができるのは優勝者のただ1人だけ。今から行うのは予選です。これから、次の準々決勝に進める人間を4人選別していきます。つまり、ここで各チーム1人脱落者が出ます。脱落者は先ほども言ったように、あのファラリスの雄牛でその日のうちに処刑されます。つまり、皆さんは敵同士。全員が敵です。生き残るためには…殺しあってください。たとえ家族であろうと友達であろうと。そして、私を楽しませてください。私は深い縁や絆がある人間同士が憎しみあい、殺しあう姿を見るのが大好きなんです。」

 

生き残るためには自らの手で目の前にいる人間、しかも非常に縁の深い人たちを殺さなければならない。皆、真っ青な顔をしてお互いの顔を見回す。誰かがみほに問う。

 

「家族や…友達と…殺しあう…?まさか…このチーム分け、いやこの生き残るのチャンスを与えるというのはこのために…?」

 

「はい。そうですよ。全ては私が楽しむために…皆さんがあさましく憎しみあい、殺しあう姿を眺めるために…うふふ…楽しみです…皆さんがどんな憎しみあいと殺しあいを見せてくれるのか。ふふふ…あははは。」

 

「そんな…貴女、何も感じないんですか…?こんな残虐なことして…心が痛まないんですか…?」

 

「ふふ…おもしろいこと言いますね。貴女は私の良心に訴えかけようとしていますが、私は罪悪感など微塵も感じてはいませんよ。あまり、意味のあることとは思いません。良いじゃないですか。貴女たちは死ぬ運命を変える椅子を手に入れることができるかもしれない。そして、私はその椅子に座るために家族や友達を裏切り、殺し、憎む姿を眺めることができる。お互いウィンウィンじゃないですか。さあ、しのごの言ってると貴女も首と胴体が切り離されますよ。いい加減覚悟を決めてください。親しい者を憎しみ、縁のある者と殺しあう覚悟を。あははは。」

 

みほは血塗れの手で、みほに問うた生徒の肩を抱きながらそう言った。そして、みほは翻って前に向かいながら叫んだ。

 

「それでは、始めましょう!楽しみましょう!地獄のデスゲームを!」

 

つづく

 


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