血塗られた戦車道   作:多治見国繁

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みほ陣営のお話です。


第59話 人間狩り

地獄の幕が開く。みほ率いる8000人の大洗歩兵部隊と小梅率いる1000人の黒森峰部隊総勢9000人は市街地に襲来した。

 

「よし。まずは、市街地を囲め。一斉攻撃を仕掛ける。今回はあくまで人間狩り。いわばゲームだ。チーム戦で行う。人間を捕まえたら殺してもいいし奴隷にしても構わない。一番多く捕まえることができたチームが優勝だ。殺した場合は殺したという証拠に身体の一部を切り取って持ってくるかどのチームの手柄かわかりやすく死体を積んでおくように。では、諸君を9つのチームに分ける。ちなみに私も参加する。」

 

みほはそう言うと名簿を見て9つのチームに迅速に分けた。みほは梓たちと一緒に行動することにした。その目的は梓の監視と試験だった。みほは今回の「人間狩り」でためらいなく人を殺すことができるかなど改めて試験を行うことにしていた。みほは梓の心を支配できているか梓が悪魔になっているかを確認し、もしなりきれていないという判断した場合は再教育をしようと考えていたのである。

 

「それでは諸君!人間狩りを始めよう。人間狩りの開始だ!」

 

みほは拳銃を手にすると空に向かって撃った。9000人の兵士たちは一斉に市街地に襲いかかりはじめた。みほはその様子をニコニコと眺めていた。

 

「それじゃあ、私たちも始めよっか。」

 

みほはそう言うと住宅密集地に向かった。

 

「えへへ。よく燃えそうだな。梓ちゃん、ガソリンを持ってきて。」

 

「わかりました。」

 

梓がガソリンタンクを持ってくるとみほはそのタンクのガソリンを目の前の木造住宅にぶちまけた。そして、新聞紙に火をつけてそれをガソリンが付着した木造住宅に投げた。木造住宅は見事に炎上した。木がパチパチと燃える音がしてくる。しばらくすると住民の女子生徒が飛び出してきた。その生徒は一時帰宅をしていたようだった。みほはそれを見ると待っていたかのように銃を構える。

 

「待って!やめて!撃たないで!お願い!」

 

女子生徒は嘆願した。みほはニコニコと微笑みながら近づくとその生徒に優しげな口調で質問した。

 

「この地区に他の住民はいますか?」

 

「はい。いるはずです。今日はこの地区の住民が一時帰宅の該当日ですから。」

 

「そうですか。ありがとうございます。」

 

みほはほくそ笑んだ。まさにベストのタイミングだ。まさか、この地区の住民が帰還している頃に「人間狩り」が実行できるなんて思ってもみなかったのだ。そして、みほはさっと手で合図をする。すると、その生徒は手を後ろ手に縛られ、トラックに詰め込まれた。

 

「何するんですか!やめて!離してください!」

 

「えへへ。私たちはこれから人間狩りを行います。あなたはその人間狩りで捕まえたなかの1人目です。」

 

「人間狩りってどういうことですか…?」

 

「うふふ、貴女は可愛いので私のそばで奴隷としておいてあげますね…たくさん可愛がってあげます。貴女を私がいないと生きられなくしてあげます。それではそこでおとなしくしていてくださいね。」

 

「そんな…お願いします…私を帰してください…」

 

みほは微笑むと何も言わずにトラックの幌を閉じた。

 

「さあ、残りの人たちも探しましょう。まだたくさんこの地区にいるはずです。見つけ次第捕まえてください。殺すか生かすかは私が決めます。」

 

「わかりました。」

 

梓はまっすぐみほの目を見つめながら呻いた。みほはその様子を見て梓に囁いた。

 

「梓ちゃん。私はいつでも梓ちゃんを見ているからね。決して逃れられるなんて思わないことだよ。」

 

「わかってます。私におまかせください。」

 

みほは微笑むと梓に他の住宅にも火を放って住民をあぶり出すように命じた。梓は次々とガソリンをぶちまけて火を放った。すると、たくさんの住民が火を逃れて飛び出してきた。

 

「熱い!熱い!助けて!」

 

「うわぁぁぁぁ!!痛い!痛いよお!誰か!」

 

住民たちは悲鳴をあげ口々に叫びながら必死にこちらに向かって走ってくる。みほは住民たちを待ち構え、銃口を住民に向けて狙いを定めた。そして、逃げ惑う住民に小銃を乱射しまくった。無防備の住民は為すすべなく次々と悲鳴をあげて倒れていく。火を恐れて逃げる住民がみほに撃たれて倒れた住民に躓き転ぶ。すると、将棋倒しのように次々と住民が折り重なって転びそこにさらにみほから銃弾の雨を浴びせかけられる。阿鼻叫喚の地獄が広がっていた。みほは住民の悲鳴を聞き絶頂していた。住民の遺体はうず高く積み上がる。屍の砦を築いていた。今回は前回の市街殲滅戦よりも酷い有様だった。

 

「あはは。やっぱり人間狩りは楽しいな。みんな次々死んでいく。もう100人は殺しちゃったよ。人間を殺す時のこの気持ちの高ぶりはたまらないね。さあ、残りの人たちもみんな捕まえよう。残らず全員捕まえたら収容所に連れていって。そこで奴隷にするか処刑するか決めよう。」

 

みほは梓に生き残った住民を残らず捕まえるように命令した。梓は隈なく片っ端から住民を捕まえた。捕らえられた住民は先ほどのトラックに詰め込まれ運ばれた。住民たちは戸惑い、何をされるかわからずに恐ろしくなり震えていた。なぜ自分が捕まったのが全くわからないと言った顔をしていた。梓は捕まえた住民を収容所に連れて行った。収容所に着くとすでにみほが待っていた。みほは住民たちの顔を眺めると満足そうに頷く。

 

「これから皆さんを3つのグループに分けます。分けられたら素直に従ってください。もし、抵抗したら命はありません。」

 

みほは捕まえた住民の身体測定と体力測定を行いデータを取った。そして、そのデータと実際に目で確認した結果を基に総合的に判断しAグループとBグループとCグループに分けた。このグループ分けで住民たちの運命は分かれた。中には家族がバラバラのグループになった者もいた。家族と一緒のグループにしてくれと頼んだ住民は有無も言わせずに殺された。みほは3つのグループの処理を次のように考えていた。Aグループはみほのそばで奴隷として扱い、Bグループは収容所の労働力に、そしてCグループは役に立たないとして処刑しようと考えていた。収容所には当然人道や人権というものはなかった。まさにアウシュビッツ強制収容所のような有様だった。この収容所は殺害と反逆者の絶滅を目的にしているものであるから人権など無視しても良いのだ。みほは先ほどグループわけしたグループのうちCグループの処刑を早速行おうとしていた。みほはCグループの住民たちを集めた。

 

「えへへ。皆さん、こんにちは。さあ、皆さんこっちにきてください。」

 

住民たちは震えている。みほは3つの処刑方法を用意していた。みほはまず住民に穴を掘らせた。

 

「その穴の前に立ってください。」

 

みほは銃を構えると後ろから頭を撃ち抜いた。住民は倒れ穴の中に落ちる。

 

「梓ちゃんもやってごらん?」

 

みほは銃を梓に差し出した。梓は銃を手に取る。梓の手は震えていた。みほは梓に囁く。

 

「この人たちは梓ちゃんから紗希ちゃんを奪った蛆虫の仲間だよ?梓ちゃんは許せるの?仇を取るんじゃないの?」

 

すると梓はピクリと動き、銃を構えると半狂乱になって連射した。梓は住民の命の火が消えて倒れても遺体に向かって銃を撃ちまくっていた。みほは梓の行動に満足そうに微笑み頷く。みほはさらに何人も梓に殺させた。みほの残虐行為はこれだけでは止まらなかった。2つ目の処刑を始めたのだ。みほは一軒の家に住民を押し込み、その家に火を放ち生きたまま焼き殺した。

中からは悲鳴が聞こえてきた。みほはその悲鳴を楽しげにまるで自分の趣味の音楽を聞くかのように聞いていた。しばらくするとやがて悲鳴は小さくなっていき、聞こえなくなった。

 

「あはは。楽しいな。」

 

みほは呟く。あたりは人間が焼ける独特な臭いが漂っている。

 

「あぁ、人間の焼けるいい匂い。この匂い大好きなんだあ。」

 

みほは悪魔の言葉を次々と紡ぎ出す。そして、みほは最後の処刑を行う。それは、ファラリスの雄牛だった。古代から伝わる史上もっとも残酷な処刑方法と言われているもので、中が空洞で人が1人入ることができる真鍮製の雄牛を使う。みほは、住民をその雄牛の中に押し込み鍵を閉めた。そして、その雄牛の下に火を焚いた。中からは住民が悶え苦しむ叫び声で雄牛は唸り声をあげた。

 

「あはは。牛さん。もっと鳴いてよ。ねえ、もっともっと。あはは。」

 

人間狩りはみほと梓のチームが圧倒的な勝利を収めた。さらにみほは雄牛の中で照り輝き宝石のようになった犠牲者の骨をブレスレットにしてアクセサリーにした。みほの残虐さはとどまるところを知らず底なしだった。みほは人を殺すことを心の底から楽しんだ。そして、人を殺すことに性的な興奮さえ覚えている。今回の人間狩りの多くが生徒会とは無関係な普通の住民で武装もしていない避難民だった。みほはそれをよく理解していた。しかしそれでもみほは罪悪感など微塵も感じていなかった。みほは自分の人を殺したいという欲望だけで今回の人間狩りを実行したのだ。しかも、ただ殺すだけではなく残虐さを求めた。みほの残虐行為は地獄よりも恐ろしいものだった。皆の心は少しずつみほの恐ろしさに支配されつつあった。

 

つづく

 


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