みほは、奪い取った展望台に入った。生徒会側の守備隊100名の遺体が転がっている。
「あはは。私に逆らったばかりにこんな惨めな姿になっちゃって。戦争って楽しい。この狂気が楽しくておもしろい。あははは!」
みほはバカにしたように笑いながら転がっている遺体を見下ろす。そして顔を踏みにじる。
「どう?痛い?あはは。死んじゃったら何も言えないよね。貴女たちは、死んでも屈辱を受け続けるんだよ。私に逆らったらどうなるか教えてあげる。」
みほは遺体を坂から蹴り落とす。遺体は坂を転げ落ちていった。みほはそれを楽しそうに見ていたが、やがて興味を失い歩き始めた。そして、展望台の頂上にたどり着く。そこには桃が、磔台に晒されている。
「あはは。河島さん。血だらけですね。私に逆らうからこうなるんですよ。素直に降伏すればよかったのに。でも、貴女が死んでくれたおかげでもっと狂気を楽しむことができる。ありがとうございます。えへへ。」
そう言うと、みほは滴り落ちる血をその手に塗りたぐる。そしてその血を艶めかしく舐めた。
「ああ、おいしい。血の味。狂気の味。恨みと憎しみの味。河島さんの血の味おいしいですよ。」
みほの美しく白い肌が桃の血で赤黒く染まる。みほは、血濡れの手で次なる作戦を下知した。
「ゲリラは市街地に潜んでいるはずだ!市街戦を行う!10000人のうち、2000人はこの展望台を守れ!残りは私についてこい!そして、戦車部隊は市街地に集結せよ。」
みほは、自ら最前線に立ち指揮を執る。そして展望台の麓の街にたどり着いた。すると、やはりゲリラが攻撃をしてきた。今度は的確だ。しっかり狙って撃ってくる。反乱軍の兵士も次々と倒れる。
「やはり…市街地に火を放て!ゲリラを炙り出してやれ!」
みほはガソリンをまき、火をつけるように命令した。その時である。住民の男が飛び出してきた。
「私の家に何をする気だ!」
この男、避難をせずに家を守るために家族を先に逃がしてずっと頑張っていたのであろう。
「ここはもうすぐ焼き払います。作戦の邪魔です。すぐに立ち去ってください。」
みほは優しく諭すように命じた。しかし、男は頑なだった。
「嫌だ!私がなぜ立ち去らないといけない?ここは私の家だ!私がどこにいようと自由じゃないか?それより、おまえたちこそ撤退しろ!」
「そうですか。なら仕方ありませんね。」
みほは残念そうな表情をすると後ろに控えていた兵士に声をかける。
「おい!誰か銃を持ってこい!」
「な…何をする気だ…?」
「貴方を、ゲリラに協力する民兵と断定し殺害します。ゲリラに協力した者の末路はこうだ!」
みほは血濡れの手で引き金を引き、銃を撃つ。男は倒れた。地面に赤い血が広がる。みほは男を嘲笑しながら蹴り上げた。
「ふふ…可哀想に…もっと頭良く生きなきゃダメだよ。おじさん…貴方はゲリラに協力した戦闘員。だから殺しても問題はない。解釈の問題だよね。でも、確かに何も告げずに火を放つのは住民が可哀想か…これから、この地区の住民に退去命令と警告を行う。期限内に退去しない者は全て敵と断定し殺し尽くせ!」
『現時刻から1時間後、この地区の掃討作戦を開始する。非戦闘員は直ちに退去せよ。1時間を過ぎた時点でこの地区内にいる者は全て戦闘員とみなし、掃討する。繰り返す。非戦闘員は早急に退去せよ。1時間後この地区にいる者は全て戦闘員とみなして掃討する。』
みほは、この地区の住民に対して警告と避難勧告を行なった。
そして、1時間が経った。戦車部隊の集結も完了し、みほは市街地に火を放つように指示をした。先ほど殺害した男の家と向こう三軒両隣にガソリンをかけ火を放つ。あっという間にガソリンに火がつき周囲は火の海になった。するとどうだろう。次々と人々が叫びながら逃げてくる。まさか本当に火を放つとは思わなかったのだろう。避難しなかった住民と見られる者も多くいた。いや、そもそも住民か戦闘員か見分けなどつくはずがない。逃げてくる見分けのつかない集団にみほは銃を撃ちまくるように指示をした。流石に目の前の見分けのつかない集団を撃つのは反乱軍の兵士は躊躇った。しかし、みほは容赦なく撃ちまくる。皆、悲鳴をあげて倒れていく。次々と逃げようとしては倒れ、逃げようとしては倒れ屍の砦を築く。市街地には阿鼻叫喚、地獄さながらの世界が広がっていた。
「躊躇うな!撃ち続けろ!殺しまくれ!あれは非戦闘員ではない!殺せ!」
一人の兵士が怯えている。それを見てみほは銃をその兵士の前に投げ捨てる。
「ほら、銃を取れ。どうした?あいつらは戦闘員だ。殺しても何の問題もない。我々の敵だ。」
「戦闘員と非戦闘員の見分けなど…つきません…彼らを殺すということは…それは…つまり…」
「だからどうした。我々の敵が掃討される。素晴らしく、いいことじゃないか?」
兵士は目を見開いた。それでも武器を取らない。みほは追い討ちをかけるように低い声で呟いた。
「殺さなければどうなると思う?憎悪は憎悪を生む。今度は、我々の兵士が殺される。武器を取れ。そして殺せ。躊躇うな。」
兵士は目を剥いた。そしてダラダラと汗を流し、ガチガチと歯を噛んだ。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
怯えていた兵士は半狂乱になり、乱射しまくった。その様子をみほは無表情で見つめ、そして次なる指示を出した。
「戦車隊、前へ!榴弾装填!射撃用意!蛆虫どもを吹き飛ばしてやれ!」
装填完了の連絡を受けるとみほは血濡れの手をさっとあげ市街地に向かって叫ぶ。
「撃て!」
砲弾は風をきり飛んでいく。市街地に着弾した榴弾は炸裂し建物を吹き飛ばす。みほは何度も何度も執拗に砲撃を命じた。中地区の市街地は跡形もない瓦礫の街になった。火は延焼し拡大を続ける。
「あははは!燃えてる燃えてる!美しい炎だ!!さあ、戦闘員の皆さん!!私の前から逃げられるかな?ほらほら!!早く逃げないと殺されちゃいますよ!?」
みほはそういいながら、銃を撃ちまくる。逃げ惑う集団は次々とみほの目の前で凶弾に倒れていった。戦車が追い討ちをかけるように死体と瓦礫を押しつぶしながら進み続ける。瓦礫の中には住民が埋もれているかもしれないがそんなことはお構いなしに進んでいく。みほは、わざと縦横無尽に戦車を走らせた。生存者を殺すためにわざと踏み潰したのだ。戦車を盾にした歩兵がさらに逃げ惑う集団を銃撃しながら進む。
みほは、戦争のやり方をよく理解していた。そして、そのやり方を的確に実行する。自身の研究に裏付けられた、古今東西の戦争の戦略を組み合わせた方法で的確に戦争を遂行する。
市街地には真っ黒な炭と化した焼死体と銃撃で死んだおびただしい数の犠牲者の死体が転がっている。砲弾に吹き飛ばされたのだろうか。腕や脚も転がっていた。その中をみほは笑顔で楽しそうに進軍する。そして、みほは展望台に続き、その麓の市街地まで手中に収めた。みほは制圧完了を高らかに宣言した。
「諸君。中地区の市街地は我らが占拠した!我らは連勝したのだ!皆この調子で次も必ずや勝つぞ!!」
その時である。拠点で待機していた2000人の部隊から連絡が入った。
『隊長!知波単の川島という方から連絡です。もう間も無く、知波学園の援軍が到着する模様です。』
『わかりました。では、搬入口の制圧までしばらく待つように伝えてください。』
『了解です!』
勇敢な突撃狂、知波単学園がついにきた。運用次第では大きな戦力になる。市街地を燃やしつくす炎を背にみほは狂気顔をして佇んでいた。
つづく
戦死者リスト
生徒会
河嶋桃
展望台守備隊 100名
ゲリラ部隊 一般市民と見分けがつかないため不詳
みほ陣営
10名
一般市民 ゲリラと見分けがつかないため不詳