みほは、生徒会側が開戦を決意したとの知らせを受けた。その時、みほは喜びを爆発させた。
「ふふ…バカな生徒会。戦力差もよくわからないで開戦を決意しちゃうなんて。」
みほは、生徒会はこの圧倒的戦力を目の当たりにして他校に必ず援軍を依頼するはずと考えたらしい。仮に生徒会が戦車道を行なっている全校に援軍の要請をするとして確実に生徒会に味方し、みほと敵対することになるのは黒森峰だ。そして、フェアであることを重んじるサンダースも敵対する可能性は大いにある。援軍の拡大は少なくともその2校にとどめておく必要がある。少なくとも知波単はもう事前に支持を取り付けているので敵対する不安はない。しかし、他校にはまだ連絡をしていないのでどう転ぶかわからないのが実情だ。直接面会して交渉するのが礼儀だが今は他校に直接会いに行くのは難しい。仕方がないので電話でなんとかすることにした。
『もしもし。大洗の西住みほです。』
『あら、西住さん。ごきげんよう。今日は何の用かしら。』
『実は、我々はクーデター、いえ戦争を決行しようと考えています。』
『ええ。そうみたいね。情報部からの情報で聞いているわ。私たち聖グロリアーナは、貴女たちに味方をするわ。私たちの学校ではOGが強い力を持っていてなかなか補強が上手くいかない。だからこそ、私たちも貴女たちのようにクーデターや戦争でOGの方々を取り除きたいの。それで貴女の手法を学びたい。だから、是非とも支援させていただきたいのだけれどよろしくて?』
みほは驚いていた。援軍を要請するつもりが援軍を出させてほしいと逆に頼まれたのだ。拒否する理由もなく願っても無いチャンスであった。
『はい。こちらからも是非援軍を出してほしいと要請をしようと思っていたところでした。助かります。』
『お安い御用よ。それじゃあ、もうすでに近海にいるからすぐに出発すれば1日後の午前中には到着するわ。』
『お待ちしています。』
次に電話をしたのはマジノ女学院だった。生徒会がいかに悪いかを説明しその支配を取り除くためにクーデターをすること。そして、黒森峰は生徒会に味方することを説明したらみほの陣営に味方するとのことだった。マジノ女学院は、どうやら、黒森峰をあまりよく思っていないようだ。しかし、マジノ女学院は今現在遠くにいること。そして、BC自由学園の内紛に巻き込まれたことでとても援軍は出せないらしい。しかし、支持を表明してくれたことは大きな収穫であった。
次にみほはプラウダに連絡をした。
『大洗女子学園戦車隊長西住みほです。カチューシャさんはいらっしゃいますか。』
『はい。少々お待ちください。』
『私がカチューシャよ。もしかして西住流の…?この間はありがとう。貴女のおかげで私たち優勝できたわ。』
『ええ。この前はカチューシャさんのおかげで私たちは負け、私は島流しのように大洗へ追いやられました。』
みほは少しカチューシャをいじめたくなってわざと困らせるようなことを言ったのだった。
『仕方ないじゃない…勝負の世界なんだから…それで、今日は何の用なの?』
『私たちは、クーデターを計画しています。カチューシャさん。私たちに味方してくれませんか?』
『何で私が協力しないといけないのよ!』
『カチューシャさん。相手からプライドを搾取するの大好きですよね?』
『えぇ。そうね。大好きよ。』
『なら、捕虜欲しくないですか?捕虜のプライドを搾取したいとは思いませんか?』
そういうとカチューシャは興味ありげになった。
『詳しく聞かせて。』
『私たちが捕虜にした敵をカチューシャさんに引き渡すということですよ。カチューシャさんはその捕虜をどう扱っても構わない。鉄道建設でも芋掘りでも何でもさせてください。どんなに屈辱的なことでも構いません。しっかり躾けておきます。貴女のもとに渡った捕虜は貴女のものですから自由にいじめてください。』
『し、仕方ないわね。やってあげるわ!それで、私たちはいつ援軍を出せばいいの?』
『プラウダ高校は最後の仕上げをお願いします。時が来たら連絡を差し上げますからその時まで待っていてください。ですから、まだ態度を明らかにしないでください。その間、くれぐれも裏切らないようにお願いしますね。裏切ったら…ふふ…』
『わかったわ。裏切らない。それじゃあまたね。』
『ありがとうございます。助かります。』
みほは、受話器を見つめながらバカにしたように呟いた。
「流石ちびっこ隊長。たやすく騙せる。これでプラウダも私の味方。あとはアンツィオだけど、アンツィオとは2回戦の敵同士。表だって動くことはできないけど水面下で粘り強く交渉しよう。」
すると優花里が心配そうに尋ねてきた。
「継続とBC自由学園はどうするのですか?」
「大丈夫。継続は多分どこにも味方しない。中立を保つと思うし、BC自由学園は内紛でどこかに援軍を出すなんて無理な状況。何とかなるよ。」
みほの予想通り、生徒会はみほの圧倒的な戦力に驚愕し他校に援軍を求めた。そして予想通り、黒森峰とサンダースの2校は生徒会に味方した。一方みほの陣営は聖グロリアーナ、マジノ女学院、知波単学園がみほの支持を表明した。
中立が継続とBC自由学園。
態度不明がプラウダとアンツィオだった。ただし、プラウダはみほとの密約があるので、プラウダも実質的にはみほの陣営の一員である。
みほは、満足げに情勢を報告されて笑っていた。その時だった。電話が鳴り響いた。出てみると知波単の西だった。
『もしもし。西住殿でしょうか?知波単の西です。』
『はい。私です。西住です。西さん。どうしましたか?』
『はい。実は、聖グロリアーナが援軍を出すと言うことで、私たちも何かもっとお役に立てないかと考え、是非我ら知波単も援軍を出したいと思い電話をさせていただきました。』
事態はいい意味でみほの予想を反した。これは好機である。
『え?はい!是非お願いします!』
『では、すぐに出発します。今、貴艦のそばを航行中なので、5時間ほどで大洗に上陸できると思われます。』
『わかりました。お待ちしています。』
みほは受話器を置き、ふうっと息を吐くと優花里と梓に皆を集めるように指示をした。
「優花里さん、梓ちゃん。みんなを集めてくれる?」
「了解です。」
「了解しました!」
みほが皆を見回すととうとう戦いの時が来たのかとうずうずした様子である。みほは大きく息を吸うと勢いよく語り始めた。
「諸君!遂に時は来た!我らは地獄へ行く!悪の巣窟を葬り去る時が来たのだ!確かに我らは数は多い。しかし、敵の抵抗も相当なものだろう。厳しい戦いになるとは思う!しかし我らは必ず勝たねばならない!戦争は数が全てではない。数が多いからといって油断は禁物だ。さて、諸君の中には戦いが初めてだという者も多いと思う。また、罪悪感を感じている者もいるかもしれない。しかし、戦場で死にたくなければためらうな!全て殺せ!我らに刃向かう者や抵抗する者は人間ではない。生きるために殺し尽くせ!それが例え非戦闘員であっても構うな。略奪しても性的搾取でも何をしても構わない。全て許可する。奪え!殺せ!それが戦争だ!それでは諸君の健闘を祈る。戦争を楽しもうじゃないか。以上だ!」
みほは、裏社会から手に入れたカラシニコフ銃を12000人の大洗の生徒に配った。今まで、練習場でしか触れたことがない本物の銃一人一つが自分の手元に来たことに、みほに恭順した生徒たちは興奮していた。しかし、その興奮もやがて戦争が近づくと静まった。
開戦1時間前、学園艦中が静まり返りシンとしていた。ピリピリとした緊張感が学園艦に浸透していた。
つづく