「これが、全国大会前後でのお話です。」
「なるほど…随分と壮絶な体験をされたのですね…」
「ええ…まあ…辛かったですがあの時はやらなければこちらの身が危険でしたから…」
秋山優花里から聞いた全国大会前後での話は非常に悲惨だった。仲良くなった子たちの髑髏を盃にして祝杯をあげるなど聞いたこともない。いや、似たような話ならあるか。織田信長が浅井久政・長政親子と朝倉義景の髑髏で酒を飲んだという話が浅井三代記に収録されているという話を聞いたことがある。それに勝るとも劣らない話である。そんなことを考えていると、今度は澤梓が何かを思い出したようだ。
「そういえば、この後ですよね。生徒会が失脚させられたのは。」
「ああ、そうですね。あの頃の話は生徒会も交えて話した方がいいかもしれませんね。ちょうど2人いますからクーデターを起こした側と失脚した側の2対2で対談してもいいかもしれません。」
私は驚いた。なんと生徒会のメンバーと会えるかもしれない。期待してしまった。
「それは、こちらとしても助かります。もしよかったら紹介していただけませんか?」
「ええ。構いませんよ。」
秋山優花里はあっさり了承してくれた。時計を見たらもう随分遅い時刻になっていた。今日はとりあえずお暇させていただくことになった。生徒会のメンバーには秋山優花里から連絡してくれることになった。
数日後、秋山優花里から連絡がきた。私はどきどきしながら電話を取る。
『もしもし。生徒会の人たちは最初は拒んでいましたがなんとか説得したら取材を受けてくれるそうですよ。取材を受けてくれるのは生徒会長の角谷杏さんと生徒会副会長の小山柚子さんです。』
『ありがとうございます。本当に助かります。』
私は、何度もお礼を言った。秋山優花里には頭が上がらない。秋山優花里のおかげで取材はどんどん進む。
『いえいえ。私でよければいくらでも協力しますからいつでも言ってくださいね。面会する日は3日後の日曜日です。また、私のアパートの前に来てください。』
『はい。了解しました。』
私はその日が待ち遠しかった。そして、とうとう日曜日になった。私は、まず秋山優花里のアパートに向かった。
「秋山さん。おはようございます。」
「ああ、山田さんおはようございます。」
秋山優花里は車に乗り込む。
「今日は、大洗に向かって、まず澤ど…さんを拾います。そしてそのまま大洗にあるホテルで面会する予定です。」
2人は澤梓の住む大洗に向かい、澤梓を拾ってから大洗にあるホテルに向かった。そこが待ち合わせ場所なのだ。すると、そこには背の低い小柄な女性ともう1人女性がいた。
「秋山ちゃん!澤ちゃん!久しぶり〜!」
「秋山さん。澤さん。お久しぶりです。」
小柄な女性は飄々とした人で、もう1人はおっとりとした人だった。
「あ!会長!副会長!お久しぶりです。」
秋山優花里と澤梓は懐かしそうだ。
「紹介します。こちらがフリージャーナリストの山田舞さんです。」
「山田舞です。よろしくお願いします。」
「山田さんね。よろしく。私は角谷杏だ。」
「よろしくお願いします。小山柚子です。」
秋山優花里が軽く咳払いをして改めて紹介した。
「彼女たちはあの時生徒会として学園をまとめていました。そして、あの時私たちと戦いました。今となっては本当に申し訳ないことをしたと思っています。」
秋山優花里がそういうと角谷杏は笑う。
「仕方ないよ。あの時は…」
すると小山柚子が促した。
「こんな所ではなんですから会議室を取ってあるので、そこで話しませんか。」
そういうと皆、会議室に向かう。そして、貴重な加害者と被害者の対談が始まった。
つづく
次回から、視点が1〜2回ごとに変わります。