俺は神風に「お兄ちゃん」と呼ばれたい。   作:LinoKa

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第1話 お兄ちゃんの日

 

ロリコン、という言葉がある。

小、中学生以下の少女に手を出す、所謂、変態と呼べる人種のことだ。この人種は本当に死ねば良いと思う。だって考えてもみなよ?単純にキモいだけじゃない、無邪気な女の子を邪気のある目で見てるって事だよ?こんなの、キモいどころかキショイだろ。俺は絶対そんな風にはなりたく無い。

そんな事を思いながら、録画したエ○マンガ先生の最新話を見つつ、今日の報告書や書類を終わらせ、背もたれに寄り掛かった。

 

「………ふぅ」

 

疲れた。後は遠征メンバーが帰って来るまでここで待機するしか無い。………あ、アニメ終わっちまった。天使と言っても過言では無い白髪の妹キャラが洗濯機の前で踊っている。おへそ可愛い。

………これが終わったら、少し暇になっちまうなぁ。たまには鎮守府の中でも見回ろうか。

執務室を出て、演習場の中を覗いた。戦艦や重巡洋艦の皆様が、駆逐艦を指導している。場所によっては軽巡洋艦も指導に当たっていた。

 

「む、提督?」

 

指導していた利根から声が掛かった。

 

「よ、利根。みんなの様子はどう?」

「ふむ、新人も皆懸命にやっておる。練度も着実に上げて来ておる。心配はいらん」

「そうか」

「提督は何しにここへ来たのだ?」

「暇潰し」

「ひ、暇潰しか………」

 

まぁ、みんな調子良いならいいか。

この前のイベントでドロップした神風型もみんな頑張って………あれ?ネームシップだけいないじゃん。

 

「利根、神風は?」

「来てないぞ?」

 

確かに、今日神風は非番だけど……面倒見の良い人だから、妹達が演習してたら、神風も一緒にいるもんだと思ってたが……。まぁ、そういう日もあるか。

 

「というか、神風は遠征に出ているだろう。提督が命じたのではなかったか?」

「あーそうだっけ?遠征メンバーとかサイコロで決めてたから覚えてなかった」

「お、お主は………」

「まぁいいや、邪魔したな」

 

俺は財布から3000円取り出して、利根に渡した。

 

「? これは?」

「演習終わった子にアイスでも飲み物でも奢ってあげて。駆逐艦優先で。余ったら他の奴も好きなの一つずつな」

「おお!ありがとう、提督!」

「いえいえ」

 

テキトーに返事して、演習場を出た。

さて、もう少しぶらぶらするか。腹減ったし、間宮さんのところにでもお邪魔しよう。………あ、ダメだ。今、金渡しちまったし、プレミアム切れてるからぷそのカードも買いに行かなきゃいけないし。

仕方ないので、自室に戻る事にした。俺の部屋は、艦娘絶対立入禁止の場所だ。何故なら、中には高坂桐乃、白、結城みかん、小鳥遊なずな、平沢憂、ファイヤーシスターズなどといったフィギュアが並んでいるからだ。こんなもん、艦娘に見られた暁には死にたくなる。重要なのは、中学生以下の妹、だということだ。一回でいいからお兄ちゃん、と女の子に呼ばれたかったものだ。

でも、流石に就職する歳になって母親とかに「妹が欲しい!」なんて言えるわけもないし、諦めるしかないよなあ。あ、言っとくけどロリコンなんかじゃないからね?中学生以下の妹が好きなだけだから。

 

「………はぁ」

 

深くため息をついて俺は自室に向かった。部屋の扉を開けたときだった。

 

「………あっ」

「っ」

 

中で、俺妹の原作を読んでる神風がビクッとしながらこっちを見た。

 

「……………」

「……………」

 

顔を合わせたまま、お互い何も話さない。ただ、無言で見つめ合っていた。

えーっと、何これ?どういう状況だ?俺の部屋に神風がいて、俺妹を読んでて………?えっと……まぁ、とりあえず、

 

「…………お前何してんの?」

 

質問した。

 

「あ、いえっ、これはっ、その………」

「見た?」

「えっ?」

「この部屋、どれくらい見た?」

「…………ひ、一通り」

「全部?」

「全部………」

「……………」

 

これは、うん。もうあれだな。

 

「ちょっと、天国旅行行って来る」

「お、落ち着いて下さい司令官!謝ります、謝りますから待ってください‼︎」

「いや、そういう問題じゃないし。もう死ぬしかないだろこれ。ていうか死ぬわ、うん。サヨナラ」

 

懐から拳銃を取り出し、こめかみに当てた。

 

「⁉︎ だ、ダメェ〜‼︎」

 

拳銃を握る俺の拳に神風は突撃し、銃口は上を向いて、飛び出した銃弾は天井にめり込んだ。

 

「危ねぇよ!」

「危ないのは司令官よ‼︎落ち着いて下さいってば!」

「落ち着いてるよ!その結果、死のうと……!」

「落ち着けてません!誰にも言わないって約束しますから死なないで下さい‼︎」

「…………本当だな?本当に誰にも言わないんだな?」

「言わないわよ!………そ、そもそも、私だってルールを犯してここに入ったわけですし……」

 

ああ、それは確かに。お前なんでここにいんの?

 

「何してんだよお前」

「ご、ごめんなさい司令官………。だけど、執務室に司令官がいないから、この部屋にいるのかと思って、つい………」

「………それで入ったのか」

 

畜生………魔が差して出掛けたりなんてしたばっかりに……!額に手を当てて全力で後悔してると、神風が質問して来た。

 

「あ、あの……司令官?それで、なんでこんな妹モノのものばかり……」

「やっぱ死ぬわ」

「わー!わー!お、落ち着いてください!別に責めたりなんてしないから!」

「いや、もう部下の女の子に性癖見つかった時点で俺に残された道は死しかないと思うんだが……」

「も、もう面倒臭いなぁ!うちの指令官は‼︎」

 

神風はため息をつくと、恥ずかしそうに頬を赤く染めながら言った。

 

「そのっ……わ、私もです……」

「死ぬにはやっぱ首吊りかなぁ……え?何が?」

「私も、お兄ちゃんが欲しいんです!」

「…………はっ?」

「ほら、私って一番お姉さんじゃないですか。だから、一回でもいいから甘えられるより、甘えてみたいんです………」

「…………」

 

………それは正直意外だ。しっかり者の神風も誰かに甘えたいとか思うんだなぁ。

 

「………だから、司令官も同じですよね?」

「まぁそうだな。俺は妹キャラが好きというより、妹が欲しいんだけどな」

「そうなん、ですか?」

「ああ。一回で良いから、自分より年下の女のコ……それも中学生以下の子に『お兄ちゃん』『兄ちゃん』『お兄』と呼ばれたかった……」

 

あ、メイド喫茶のオプションとかは別な。あんなババァどもにお兄ちゃん呼ばれても嬉しくないわ。

しみじみと思ってると、神風が顔を赤くしたままの状態で、上目遣いで口を開いた。

 

「あっ、あのっ……」

「?」

「も、もし、よかったら………」

「何」

「わ、私を……妹に、してくれません、か……?」

「…………はっ?」

 

何言ってんのこいつ?血迷った?

 

「ほ、ほら!私はお兄ちゃん欲しいですし、司令官も妹が欲しいならちょうど良いじゃないですか!」

「……………」

 

………ふむ。神風、駆逐艦。年齢はどれくらいだろうか……。

顔は幼い、中学生くらい。

しかし、胸は大きい。高校生くらいはある。

続いて、着物も着てるし、大人っぽさに拍車が掛かってる。

身長は普通くらいだから、中三〜高一くらい。

中学生+1で高校生くらいなんだよなぁ………。公式設定で中学生とされている妹は、どんな外見でも気にならないが、年齢不詳だと外見は気になってしまう。悪くない提案だったかもしれないが、ここはやはりお断りして………。

そう思った時だ。床に落ちてる鏡が反射して、神風の袴の下を映した。

 

「ーッ⁉︎」

 

く、クマさんパンツ、だと………⁉︎しかも『神風』という名前付き⁉︎

クマさんパンツ、幼さの象徴、それに「下着に名前を書く」という追加ダメージまで重ねて来やがった!

これによって、中学生-1くらい、つまり小学六年〜中学一年くらいに下がった。少なくとも、高校生では無い。

俺は神風に向けて親指を立てた。

 

「採用」

「! ホントですか⁉︎」

「ああ。でも、みんなの前では普通にしてろよ」

「は、はい!分かりました、お兄ちゃん!」

「………おうふ」

 

拝啓、おふくろ様。

わたくしは23歳になって、妹が出来ました。

 

 


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