博麗の(やる気の無い)神主   作:執筆使い

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※リグルファンの方々、要注意



面倒くせぇから妖怪狩りじゃぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 今宵は偽りの満月。故に下級、中級の妖怪は妖力を得られず半ば暴走状態で暴れまわっていた。凶暴性を増した彼らに普通の人間が勝てるはずもない。

 

 地獄絵図...今回の異変は従来のと比べてダントツにこの言葉がぴったりであろう。

 

 

「ギャアアアアア!? た、助けてくれ?!」

 

 

「な、何だあの二人強い...強すぎる上に容赦がねぇ!?」

 

 

「う...うろたえるんじゃないッ!ドイツ軍人はうろたえな、ギャアアアア!?」

 

 

 ...主に暴走した中級、下級妖怪にとってのという言葉が前につくが。

 

 

「な、なんだ...あの女の目...まるで養豚場の豚を見るかのような冷たい目だ...残酷な目だ...」

 

 

「それよりももう一人の方だ...あの姿...間違いないッッッッ!!」

 

 

 辛うじて無事である妖怪たちはその惨劇を作り出した二人の方へと視線を合わせる。異変解決の正義の味方とはとてもじゃないか言えず、寧ろ立ちはだかるもの全てを破壊するラスボスというのがぴったりな二人。

 

 

「俺はイライラしてんだ...そんな状況で襲い掛かってきて...覚悟は出来てんだろうな?」

 

 

「博麗の神主だ! に、逃げるぞ!!」

 

 

 ゆらり...ゆら~り、と近づいていくさまは夏にぴったりなホラーゲームにでも出てきそうな怨霊。そういった類に近い存在であるはずの妖達は逃げた。とにかく逃げた。

 

 

「ここまで来れば...!?」

 

 

 だが無情かな...この作品内での逃走は所謂失敗フラグである。それは神主以外も例外ではない。

 

 

「見ィツケタ」

 

 

 彼らは最後にこう思った。

 

 

 嗚呼、人って妖怪にもなれるんだと...

 

 

 

 

 

 

「もう全部あいつら二人で良いんじゃないか...?」

 

 

 少し離れた後方にて、他のメンバーの内魔理沙がそんなことを思わず呟いてしまう。幻想郷最恐の二人が手を組むとこうまでも相手に同情せざるを得ない状況になるのか? そんな思いが彼女の脳内の八割を占めていた。

 

 

「そう言いたいけれど、そうもいかないわ。何せ今回の異変にあの妖怪達は一切かかわっていない...仮に部下だったら脅して居場所なりを吐かせるけどそれが出来ない。このままじゃイタチゴッコどころかあの二人が幻想郷のパワーバランスを崩壊しかねない」

 

 

 だからこそ貴方たちの出番よ、と言いながら今回の作戦を言い渡す幻想郷の支配者...八雲紫。その様はまさしく妖怪の賢者たる風格である。故にその場にいる誰もが真剣に彼女の提案を聞いていた(幸いなことにこんなシリアスをぶち壊しにする駄神主は戦闘中である)

 

 

「要するに貴方たちにしてもらいたいのは、今回の異変に関する調査。あの二人が暴れまわっている妖怪を殲滅する搖動隊だとすればこちらは異変解決の本命といったところね...各自どんな方法を使ってもいいわ」

 

 

<バナナはおやつに入んのか? BBAー!!

 

 

 前方にてそんな声が聞こえるが無視して進める紫。そして彼女の合図と共に各々は別々の方角へと散らばっていくのであった。

 

 

 ..................................

 

 ....................

 

 ...........

 

 

「ったくよ...俺らが搖動部隊だと? よりによって面倒くせぇ役割じゃねぇか...よ!!」

 

 

「あら、こうやって片っ端に甚振れて良いじゃ...ない!!」

 

 

「俺はアンタと違ってそういう趣味はねぇんだよ。精々相手を如何に気持ちよくぶっ飛ばせるか考える程度だ...よ!!」

 

 

 数十匹の妖怪の群れがたった二人によって完膚なきまでに叩きのめされている。最早搖動部隊じゃなくて殲滅兵器と化している。とても主人公とその仲間がやるような光景には見えない。幸いなのは全員死なない程度に半殺しにされている事か...全く嬉しいことではないが。

 

 

「あ~、ちかれたちかれた。残暑が続いているせいかクソ暑いしよ...」

 

 

 さすがに疲れたのか、大量の汗を掻きながら博麗の神主は毒を吐く。何せ夜中とはいえ、夏が終わったばかりということで気温は20後半を越していたのだった。

 

 

「...そんなにキツいのかしら?」

 

 

 神主にそんなことを聞く相方の大妖怪。質問の内容とは裏腹に彼女は一切怒気を含めていない。

 

 

「ああ、きついぜ。何せ妖怪退治はダルいことこの上無いし」

 

 

 その問いに対して、博麗の神主はいつも通り気怠そうに答える。息はあがっているが、かなり余裕そうで、その気になればまだやれる様な表情を作って...

 

 

「私がそんな事を聞いてるわけじゃないことぐらい、わかってるでしょ?」

 

 

「...俺がアンタに嘘ついているとでも?」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()のはわかっているわ。それなのにその汗...」

 

 

「...」

 

 

 そこまで聞かれた神主は何も言わず、その場をの転がり始めた。どうやら疲れたのでしばらくの間休憩することにしたらしい。

 

 その態度に彼女は敢えて何も言わずに残っている敵...先ほどから隙を伺っているだろう前方の気配に視線を向けた。

 

 

「生憎私に隙なんて存在しないから、さっさと出て来たらどうかしら?」

 

 

 瞬間、前方の気配が瞬時に彼女の目の前まで間合いを縮める。玉砕覚悟で突っ込もうとする蛍妖怪...名前をリグル・ナイトバグという。彼...失礼、彼女は目の前の相手がはるかに格上だということはわかっていた。そして不意打ちがばれた。

 

 だから下手な事はやめて彼女は自らの最大の技を持って一矢報いようと...この勝負に勝とうとしていた。助走をつけつつ蹴り技のために足に力を入れる。それを見た幽香も敢えて躱そうとせず迎え撃つ体勢と入った。

 

 

「喰らえ!!」

 

 

「!」

 

 

 瞬間、カウンター気味に放たれた花妖怪の両腕。何より驚くべきはそれを両足で受け止めた虫妖怪であろうか。一瞬の攻防の間にそんな芸当をしてのけた彼女は両腕をクロスさせながらその技名を言う。

 

 

稲妻十字空烈刃(サンダークロススプリットアタック)!!」

 

 

「へぇ...」

 

 

 両腕を封じられ無防備となった花妖怪の顔面...もっと詳しく言えば首筋に渾身の手刀がぶつけられた。

 

 格上の妖怪とはいえ、首筋という急所に攻撃を喰らえばひとたまりもない。ましてやこちらは後腐れなく今あるすべての妖力を込めた両手で攻撃した。だからこそリグルは勝ちを確信したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何っ!?」

 

 

 笑みを崩さずにケロッとしている彼女の顔を見るまでは。

 

 

「少しはスジがあって良いじゃない...嬉しくて思わず本気を出しそうだわ」

 

 

 笑顔というのは、獣が獲物を見つける際牙を見せることが起源だといわれている。彼女の笑顔を見たリグルは自分がどういう立場に置かれているのかをようやく理解してしまった。

 

 

「あ...ああ...」

 

 

 最早、月がもたらす狂気も関係ない。どちらが食う立場で、どちらが食われる立場なのかを否が応でも理解してしまったのだ。

 

 

「今度はこっちの番。少しは楽しめたわ」

 

 

『花符 マスタースパーク』

 

 

 いつの間にか突きつけられた傘を見ながら、彼女は今までの記憶が走馬灯として頭の中に浮かんできて...

 

 

「い、いや...」

 

 

 せめてもの抵抗に否定の意をこの場で言うが聞き入れてもらえず...

 

 

「死にたくない、死にたく...」

 

 

 がたがたと震えながら涙を流して...

 

 

「貴方は良い悲鳴を聞かせてくれるかしら?」

 

 

 断末魔に近い悲鳴を上げるのだった。あまりにアレな叫び声なので文字には表すことが出来ないが、それを聞いたものであれば誰もが同じことを思うだろう。

 

 

 嗚呼、その場所は地獄なんだな...と。

 

 

 

 To be continued...

 

 

 

 


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