赤い霧? 面倒くせぇ
突如、幻想郷が赤い霧に包まれた。常識にとらわれてはいけない事に定評のある地ではあるが、流石にこの事態はこちらにとっても異常な光景である。
所謂異変と呼ばれるそれを解決していく。それが博麗の巫女、ひいては博麗の神主の役目である。そして件の彼はというと...
「赤い空、赤い雲...ま、いっか。昼寝の続きだ続き」
だらけていた。もう一度言おう、だらけていたのだ。異変解決? なにそれ美味しいの? とでも言わんばかりに職務を放棄して寝転がる駄神主。
「さーて、シエスタシエスt「「させると思ったか!!」」ごふぅ!?」
何もしないで只々だらけた毎日を過ごすのがまかり通って良いのか? 答えはNOである。故に彼は二人の少女によって、自分の数少ない(側から見れば数多い)休憩時間を奪われてしまうのだった。
「全く...油断も隙もあったものじゃないわ」
前回もチラとだけ出ていた少女...名を博麗霊夢。この幻想郷の要である博麗大結界の管理や異変解決等行う博麗の巫女で、他種族同士の争いが絶えない幻想郷を少しでも良くする為あるゲームを立案、そして今の幻想郷を作り出した巫女でもある。
「乙女2人が異変解決に向かうってのに男がエスコートしないでどうするんだぜ!」
もう一人は黒いとんがり帽子と魔女が着るような黒い衣装を身に纏っている。彼女は霧雨魔理沙といい、上記の博麗霊夢のライバルである普通の魔法使いだ。
二人は神主を無理やり叩き起こした後、お腹を抑えてうずくまる彼に詰め寄りながら異変解決に向かうよう尋ねたのだった。
「いやいや、お前ら先輩、俺後輩。俺は後輩でまだこの仕事に慣れてないんで留守番をしますんで、いってらっしゃい先輩方〜」
しかしながらそこは駄神主。一流のサボりスキルで言い訳を瞬時に導き出し、二人に言い放つ。その時の彼の表情のムカつきようは、見る人が見れば頭に血管を浮かび上がらせながら怒りを露わにする程である。
「心配しなくていいわ」
だがしかし、現実は(駄神主にとって)無情かな。
「こんな事もあろうかと神社には結果を張っておいたの。だから先輩に敬意を払わない後輩よりはよっぽど侵入者対策になるわ」
「え...いやいや、嘘?」
「「ほんと」」
二人の満面な笑み。それはこの一連の勝負が彼女達の勝利によって終了を迎えてると悟ってしまい
「...嫌だああああああ!?」
こうして、駄目人間の叫びと共に二人の少女と一人の男が(無理矢理)異変解決へと向かうのだった。
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「嫌ね、どうせ実害があるとかそんなんじゃないから今回の異変解決しなくていいと思ったんだよ。だから引き返そうって...話聞いてるか?」
数分後。赤みがかった空中を当たり前の様に飛んでいる3人...その内の一人である博麗の駄神主が愚痴を言いながら見苦しくも引き返す事を提案している。そのしつこさをどこか別の所で発揮すればいいのだが...生憎この駄目人間に今の所そんな予定はない。
「聞いてるわよ。どんなものだろうと、それが異変であれば解決に向かうのが私とあんたの役目じゃない。それに実害だったらあるわ」
「どんな? 俺が見た限りでh「洗濯物が乾かない」は?」
彼女の言葉に一瞬のフリーズを起こしてしまう神主。直ぐそばで箒にまたがりながら飛んでいた魔理沙も、彼女の言葉にぽかんと、目を点にしながら口を開いてしまっている。
「だから、洗濯物が乾かないのよ。あの霧が日光を防いでるせいで」
もう一度言われる事により、フリーズが解除された神主。そしてその言葉の意味を理解した彼はわなわなと肩を震わせ、ガバッと天を見上げて叫び出す。
「おかしいと思ったよ!! 魔理沙はともかくお前まで妙に乗り気だったからおかしいとは思ってたんだよ!!」
愛しさとか切なさとか心強さが現れる様な叫びはしかし、某龍玉でお馴染み最近出番をサボりがちのピンクの魔人みたく、空間に穴を開けて赤い霧を吹き飛ばすとかそんなことはなかった。
「まあ...元気出せって。くよくよしてたら解決出来るもんも解決出来ないぜ」
その様子を見かねて、魔理沙が彼の肩に手を置き慰めの言葉をかける。だが、外道には中途半端な慰めは逆効果であった。
「うるせぇ! 慰められても俺の心の傷は癒えねぇよ!! それにお前もある意味同罪じゃボケェ!!」
「なっ!?折角慰めてやってるのに...そりゃないぜ!!」
「悔しかったらマスパでこの赤い霧吹っ飛ばしてみやがれ!! そうすりゃ万事解決だぜ!!」
「出来るか!? そして私の口調をパクるな!!」
異変解決を始めてまだ数分しか経っていないのに、既に口論となり収集がつかなくなってしまっている。幻想郷の危機だというのにこんなことで足止めを食らってしまうのは、ひとえに彼らの相性の悪さがなせる技なのかもしれない。
「二人とも、そんなのはどうでもいいから後にしましょ。時間は待ってくれないわ」
「「お前が言うな!!」」
そんな二人の息の合った突っ込みは先ほどの駄神主一人の叫びよりも響いていたとか...
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「そーなのかー」
突如現れた黒い球体、それが晴れることにより現れた金髪の少女。どう見ても倒さなければならない相手を目の前にして三人は
「「「そーですかー」」」
素通りしようとしてた。面倒くさいから、早く洗濯物を乾かしたいから、どう見ても今回の異変に関係なさそうだから、それぞれ思うことは違ってはいたが見事に息の合ったスルー術である。
「無視しちゃ駄目なのだ!?」
思わずツッコミを入れてしまう人食い妖怪。本来彼女はそんなキャラではない筈なのにそういったセリフを吐いてしまったのは、三人の息の合ったボケのなせた業であるのかもしれない。
「貴方は食べてもいい人類?」
「こいつ敵らしいんで先輩方、やっちゃってください」
「...普通そこは後輩が戦うもんじゃないのか?」
「いやいや。私みたいな最弱が一番槍をやった所でそれは唯の噛ませ犬です。ヤ無茶したくないんですー」
「あんたこの中で一番強いじゃない」
せっかく三人の進軍が止まったのでいつも人間を食す時に発する決まり文句を言うのだが、三人は一切聞く耳を持っていない。
「私の...話を...聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
夜符『ナイトバード』
その様子に本来無邪気なはずの人食い妖怪は堪忍袋が切れてしまい。スペカを放ちながら戦闘を開始するのだった。
To be continued...