世紀末戦記   作:溶けない氷

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ダイアモンドシティ

『実に嘆かわしい!自殺を禁じた我の教えに背いて命を捨てるとは!

貴様からは信仰のかけらも見えん!』

 

『前のやつもそうだ!お前も!お前も!お前もお前も!なぜ貴様ら揃いも揃って我の教えに従わぬのか!』

 

『つまり・・・・命を繋ぐのも苦労する世界に転生させれば良いのだな!』

 

存在Xの理不尽な判断がオリー主転生者を襲う!

 

自殺した引きこもり男子高校生 田辺 洋次郎はキャピタル・ウェイストランドに転生させられた。

生まれはどっかのメスレイダーが産み落とし、生まれると同時にパラダイスフォールの奴隷商人に200capで売られ、どうにかして奴隷集めの下っ端になったところで通りがかりの101に殺されて身ぐるみ剥がれた。

ちなみに童貞は卒業できなかったが処女は卒業できた。

 

トラックに轢き殺されて死亡した、引きこもり男子高校生 岡部 誠はニューベガス近郊のシーザーリージョンに買われた。貧しい食事、スパルタ軍事教練、毎晩おカマを掘られる苦行の日々。そして初陣で運び屋に殺された。

ちなみに童貞は卒業できなかったが処女は卒業できた。

 

多くの日本人が命が1capの価値もないウェイストランドに存在Xによって転生させられたが15歳まで生き延びた者は1%にも満たなかった。

高校生転生者は右も左もわからないところをヒャッハーに襲われてハイオク輸血袋として短い一生を終えることになる。

過酷という言葉すら生ぬるい、正に時は世紀末である。

 

『それなのに信仰が全く集まらんとはどういうことだ!』

そしてこの理不尽な怒りである。

 

『我が主、よろしいでしょうか?やはり唐突に平和で暴力が忌避される島国かつ金持ち先進国の一般家庭出身の者を過酷な世界に放り込むのは・・・』

 

『うむ・・・・つまり段階を追って徐々に過酷にしていけばいいと・・・

ピポパ・・・あっもしもーし、月ちゃん?うんそう、新しい人間だけどね、そっちに送りたくって

いや、いいよ。うんそれじゃよろしく』

 

と、いうわけで存在 Xはテストモデルとして日本人高校生 山根 光一を選んだ。

多世界のfsafalrghldnfと交渉してブラッドボーン世界のヤーナムに送り込まれ、開始3秒で下水道で豚に食われて死亡して蘇り延々と殺され続けるがそれは別のお話。

 

 

『それで・・・・あくまで噂なんですけどね・・・例のVault居住者が連れてたんですよ。

小さな女の子を・・あ、もちろん変な意味じゃなくって・・・その、例のならず者のスーパーミュータントから助けだしたって話ですよ。

流石はボストンの何でも屋だって・・・あ、もうこんな話いいですよね』

 

ラジオからはどもりのトラビスのクッソどうでもいいニュースと戦前の音楽が流れている。

だれかさんは世界に火をつけたいわけじゃなかったらしいが、ご覧の通り世界は核の炎で燃え尽きておまけに放射能の灰まみれときている。

・・・・・・泣きたくなってきた。

 

今の私、ターニャ・デグレチャフはダイアモンドシティのタカハシの店でラーメンをひたすらかっ喰らっている。

『ナニニシマスカ?』

『Yes』

ナニニシマスカとしか言えないタカハシの出すのは一品しかないのでYESかNOだけで足りる。

既に2杯目にありついた私は満腹だが万が一に備えてもう少し食いだめておく。

食える時に食う、ウェイストランドで生き延びる秘訣。

 

『うわーい おいしい!ありがとーパパー(棒』

もう慣れた、笑いたければ笑え。人間、極限の環境に置かれれば何をしてでも生きる。

 

 

で、なんでこうなった・・・・

『さ、皆さんの新しいお友達のターニャさんですよー』

ロボットのエドナ先生が新入生のターニャ・デグレチャフを紹介するのを現実味のない他人事のように聞きながら私は死んだ目をこれからの同学年の皆に向ける。

「ターニャ・デグレチャフです!よろしくお願いします」

それでも社会人の常として初印象は大切と精一杯の笑顔を振りまく。

・・・ちびっ子相手に何をしているんだ、私は。

Vault居住者に連れられて私が入ったのは、ダイアモンドシティの小学校だった・・・

どうしてこうなった。

いや、確かにこの年頃の子なら小学校で勉強しているのは普通だし

 

『デグレチャフさんは、この前できた111(スリーワン)八百屋の従業員だそうですよ。

皆さんも新鮮なお野菜を食べて元気に成長しましょうね!』

エドナ先生の明るい元気な声が教室に響く。

『ヒュー結構まぶいじゃん』

『姉ちゃん、なんぼや?』

このクソエロガキども!どこでそんな言葉覚えてきやがった!

 

そう、Vaultの男がダイアモンドシティの一軒家を買い取ってオープンした八百屋で働くことと引き換えに私はダイアモンドシティの居住権を手にいれた。

いや、確かに外でゴミ漁りをするよりは遙かに安全で快適だ。

電気もシャワーも(ぬるいし水はちょっと錆臭いが)ある、くそったれなレイダーやミュータントが襲ってくる心配もほぼない。

精々50cmほどのゴキブリが出る程度、スワッターで倒せる。

あれ?すっごく恵まれてね?

更にこうして学校に通っている時はロボットが店番をしてくれているし。

 

『君は学校に行かなければダメだ。どんな将来を送るにせよ、最低限の学がなければ生きてはいけない』

 

全くもってごもっともである。

「うん!ターニャ頑張っておべんきょうするー」

もう慣れたって言ってるだろ!誰だ笑ってるやつは!?

 

『ちょっと男子ども!いやらしい言葉やめなさいよ!

ターニャちゃん、隣空いてるよ』

 

この子は知っている、パブリックオカレンシーズの売り子のナットだ。

世紀末世界とはいえ、ジャーナリズムに従事するだけあってなかなか見聞が広い。

個人的にも新しい情報を仕入れることは私のこの先のビジネス展開に重要なこととも予想されるので親しくなっておくに越したことはない。

今の私の新しい目標、それは・・・

(私は・・・このダイアモンドシティの市長になり、より安全で快適な場所で暮らしてみせる!)

そのためにはもっとキャップが必要だ、いつの世も最後にモノを言うのは暴力だが暴力と金と権力に互換性があると言うのも真理である。

 


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