世紀末戦記   作:溶けない氷

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お前は幼女だ!

拝啓 日本の皆様お元気でしょうか?

異世界転生ってラノベではチートとかハーレムとかありますよね?

成り上がりとか知識チートとか。

あなたがダイアモンドシティのタカハシや原子炉を直せるくらいの腕前のエンジニアならそれもできるかもね。

実際にはそんな事なかった、地獄です。生き地獄。

死に瀕するなんてしょっちゅう。

飢えて死にそうなことは?銃弾が耳のすぐ側をかすめて行ったことは?

遊びで輪姦されそうになったことは?奴隷商人に売られそうになったことは?

平均的日本人ならまずない経験でしょうね。

出生率低下で日本人は絶滅危惧種?大丈夫ですよ。

ええ、ここアメリカでは人間なんて瓦礫の山の片隅のちっぽけな集落で銃を手に身を寄せ合ってなんとか生き延びてられるくらいですから少子化程度で人間なんて絶滅しないもんですよ。

私 恐らくは8、9歳のターニャ デグチャレフにはそれらすべてが同時に襲いかかって来てますけど。

 

ウェイストランド。

ここでは人間の命の値段は無いに等しい。

地獄のど真ん中。死神と悪魔も見捨てた場所。

生と死の境界線なんざ無いも同然。

そんな中にも光は差すのだろうか?

 

『俺たちは救出部隊だ、兵隊じゃない』(ガトリング砲乱射しながら

『この手に限る』(ミサイル発射

など、どっかの筋肉モリモリマッチョマンの変態さんの台詞を引用しながらビルの中で重火器を振り回しながら暴れるパワーアーマーの男に救助されました。

パワーアーマー、200年前の最終戦争で使われた一人乗りの機動兵器。

私もこの背丈さえ伸びれば一台は欲しいところだった。

防御、小回り、機動性にそのパワー、これさえあればひ弱な幼女の肉体でもスーパーミュータントとでもほぼ互角に戦える優れものだ。

スカベンジャーという戦闘力が資本のこの仕事をするならば最善の道具だろう。

難点は高価なことだが。

その結果、核戦争と200年間の荒廃の波に晒されたトリニティビルは哀れ半壊からほぼ全壊状態に。

・・・おりてる途中で崩れないだろうな・・これ?

『レックス・グッドマンだな。ラジオ番組のパーソナリティの?

それと・・・スーパーミュータントォ!?』

「そうだが?君は?思い出した!噂のVault居住者だな!かねがねトラヴィスのラジオで噂になってたよ。

彼はストロング、SMの中でも彼だけが私の話を聞いて庇ってくれたんだ」

『ああ・・・あんたの救出を依頼された、お優しいお友達に感謝してくれ』

 

そう言うと銃で檻の鍵を撃って壊してくれた。

ラジオで聞いたことがある、Vaultから来た男。

攫われた息子を探してダイアモンドシティに来たとかなんとかどもりのトラヴィスも言ってたな。

200年前の最終戦争以前、世界が正気を失ってくそったれなコミュニストが世界を修復不能な不良債権の山に変えてしまう前の世界から来た男。

 

『うん?その子供は?』

「ああ、彼女はこの前スーパーミュータントが連れてきたんだ。

奴らのおやつさ、一応この子もラジオで救援を頼んでいたんだが?」

『いや、聞いていないな?どれ』

 

ウルセェよ、ヘボ役者。

・・・・・っていうか、私のラジオ聞いてなかったんかい!いやそれならそれでいいんだが・・・『あのね、私ターニャ・・』

 

うわぁぁぁぁっぁぁ!やめろぉぉぉ!聞かないでくれぇぇぇぇ!

わざわざ私の前で思いっきり媚びた幼女の声で助けを求める電波を受信するVaultの男。

ヘルメットを脱ぐと、とても可哀想な目で私を見てくるvaultの男。

やめてくれ!惨めになるだけだ!

 

「君・・・大丈夫かね?どこか怪我は?医者に見せたほうがいいんじゃ無いかね?」

な!なんということだろう!この人は普通に私の心配をしてくれている!

普通ならキャップも出せないガキなんぞ、救出ついでに奴隷商人に叩き売るのが一般的なウェイストランド人だというのに!

いや!考えるんだターニャ!この男は200年前・・つまり世界がまだ正気を保っていた時代の常識人。

媚びろ!媚びるんだ!お前は幼女だ!お前は幼女だ!

お前は幼女だ!

お前は幼女だ!

お前は幼女だ!

お前は幼女だ!

お前は幼女だ!

お前は幼女だ!

お前は幼女だ!

お前は幼女だ!

お前は幼女だ!

お前は幼女だ!

お前は幼女だ!

お前は幼女だ!

お前は幼女だ!

お前は幼女だ!

誇りや自尊心なんざ食えやしねぇ!このウェイストランドじゃクソ以下だ!

この男に寄生すれば少なくとも当面の安全は確保できる。

この際多少ロリコン気味でもかまわねぇ!

くそっ!こんな演技を自然体でできるホンモノの幼女の精神構造はどうなってるんだ!?

 

『パ、パパー!助けに来てくれたのねー!えーん、ターニャ怖かったよー(棒』

精神年齢40のおっさん幼女が自分が子持ちのおっさんだったら受けそうな幼女を演技する。

グガァァッァァァ!殺せ!頼む!雷よ!今すぐ落ちて私を殺してくれ!

 

「ストロングは人間の優しさのミルクを手にいれる!

メタル人間、お前はミルクがどこにあるか知ってるか?」

 

ルッセェ!空気を読めこの馬鹿ミュータント!

「パパ?君の探してた子供って男の子じゃなかったっけ?それに赤ん坊だって言ってたような?」ヘボ役者も黙ってろ!ぶっ殺すぞ!

「とにかく、ここを出よう。さっ、君もついてくるんだ」

 

そういうと、バックパックからチェーンガンを取り出し騒ぎを聞きつけて集まって来たスーパーミュータントの群れに向けて一掃射する。

重火器を次々とぶっぱなしながら、群れる緑の巨人を次々となぎ倒す様はさすがはパワーアーマーと頼もしい。

あっという間に集まって来たSM軍団とパワーアーマトの間で第三次世界大戦ばりの火力戦が巻き起こる。

私も取り戻したピストルを物陰からちまちまと撃っては隠れるという行動で、彼を援護する。

あれ?これ祈るの別に役に立ってないんじゃね?

っていうか祈るとLuck Perk発動ってなんだ。

(祈るとランダムにキャップが降って来たり、謎の人が助けてくれるのだ)

絶対に祈らねー!いいか!絶対に祈らないからな!

 

『危ない!』

へ?

突然、スーパーミュータントが後ろの開かなかったドアを蹴破って現れた。

悪いことに安全な場所に隠れていた私のど真ん前だ。

突然、時間が止まり。またくそったれな存在Xの宿ったVaultボーイが現れこう告げる。

(んなぁ!?ナンデェ!?ここはクリアしたはずだろ!)

(いわゆるスクリプト湧きというやつだな、さぁ祈るか死ぬか)

畜生!生まれてこのかた、なんだって私にはいつもこんな事ばっか!理不尽だ!

ああ前言撤回、いのりゃいいんだろコンチクショー!

「前略、中略、後略!主はいませり!神様助けて!」

するとどうしたことだろうか、突然現れたスーパーミュータントのすぐ横にいつのまにかヨレヨレのトレンチコートを着た見知らぬ男が現れ、拳銃の1発で現れた相手の脳を吹っ飛ばした。

・・・・・はい!?

『Mysterious Stranger!?君、大丈夫かい?ラッキーだったな。

どうやら君にも守護天使がついてるみたいだな』

 

・・・・いやいやいや、なんでこの状況で納得する!?

くそったれな死んだミュータントからずっしり重いアサルトライフルを奪い取ったが・・・ダメだ!

栄養失調幼女の体力では10kg以上あるこいつはとても扱えない!っていうかこれもう立派に軽機関銃だろ。

自衛隊のミニミより重いアサルトライフルとかどう考えても設計ミスだろ。

仕方ないのでそこらへんに散らばっていた軽いだけが取り柄のパイプサブマシンガンで応射してみるが、へなちょこ38では蚊に刺されたほどにも感じないようだ。

とはいえ、次々と湧いて出てくるスーパーミュータント相手にはVaultの男とストロング、あと隅でウロウロしてるだけのヘボ役者では明らかに力不足だったので

23世紀のアメリカでは幼女だろうと老人だろうと銃を手に取って戦わなければならない。

銃を手放せば、死ぬ。銃弾が切れれば、死ぬ。(断言

なぜこの世界で子供が少ないかお分かりになるだろうか?要約するとすぐ死ぬからだ。

トリニティビルの大脱走劇はしっちゃかめっちゃかの大銃撃戦へと発展した。

後で聞くと、こっそり入ってこっそり出て行く予定だったらしいが

パワーアーマーでこっそり(笑

という時点で計画にはツッコミどころ満載だ。

腹が減っている上に、体力も並以下の幼女では大して役に立たないのでビルの中の金目のものを素早くくすねながら降りて行くと窓からウィンチで釣り下がったエレベーターへとたどり着く。

え?これに乗るき?めっちゃ撃たれそうなんですけど

とツッコミたかったが、案の定道はこれしかない上に撃たれまくるのでパワーアーマーの男の影に隠れて弾が当たりませんようんと丸まって被弾確率を下げる。

「ぴゃーこわいよー(棒」

とあらかじめ釘を刺して隠れたのだからこれくらいは許容してほしい。

だって幼女なんだもん。

銃声で聞こえなかったみたいだが。

それから先は、大戦争で後で聞くとダイアモンドシティからでも銃撃戦の音が聞こえていたらしい。

そりゃ所構わずレーザーガトリングを打ち込み、隠れた奴にはミサイルをお見舞いする火力で押し切ったらこうなるわな。

そうこうしているうちに、ビルを抜けてロビーから外へと転がり出るように脱出する4人。

Vaultの男のパワーアーマーも撃たれてあちこち凹んでいるところを見ると大激戦だったことが伺える。

 

「いやー助かったよ。君のことはこれからラジオで毎回讃えることにするよ!

もうこんなことはこりごりだ。これからは文化布教はもっぱらラジオからにするよ」

 

いや、このウェイストランドで文化って(笑

 

「ストロングは人間の戦い方に感心した!ストロングは人間についていく!

そして人間の優しさのミルクを見つけてサイキョーのスーパーミュータントになる!」

 

おい、ついてくるきかこの馬鹿ミュータント。

 

『えーと・・・とりあえずこのスーツを修理しないとな。

それにターニャ、君もひどい目にあって疲れたろう。

ふむ、私はダイアモンドシティに戻って補給と整備しようと思うが

よかったら君もついてくるかね?』

 

よっしゃ!これだよ!こういう大人の常識的な対応を待ってたんだよ!

 

「うん、ターニャ パパ大好き!ついてく!」

パパ(笑 が好きそうな幼女を演ずるのは屈辱の極みだが

お前は幼女だ!生きるためにはプライドなんぞ捨てろ!


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