今回も楽しんでいただければ幸いです。
簾木 健
「映像部がない?」
俺はふらっと倒れそうになる身体をなんとか支え、黒川先生に聞き返した。すると黒川先生はそんなことも知らなかったのかと言わんばかりに返す。
「ああ。部員減少に加え、IT分野にも学校が力を入れ始めてな。映像部は今では大量パソコンを導入して『コンピューターグラフィック部』となってCGの映像作品をメインで作っているらしいな」
「なんだと……」
俺は職員室で崩れ落ちる。そんな俺はそれならなんのために……てか真中のやつも今日の様子じゃ知らなそうだな。本当どうするかね。
「なんだ山内は実写の映画が作りたかったのか?」
「あっはい。俺は脚本を書きたかったんですけど、CG作品の脚本はなぁ……」
「あはは。どうする康太?」
さつきは崩れ落ちた俺に苦笑しながら尋ねるが、俺にもいいアイデアは出てこない。なにか手がないのか?
「……そこまでやる気なら、部を設立するか?」
「え?」
黒川先生の言葉に俺はなんとか立ち上がって聞き返す。
「部を設立ってそんな簡単にできるんですか?」
「ああ。明日用紙はやるよ。五人部員を確保できれば設立できる。どうだ?」
「やります!!五人集めます」
「そうか。じゃあ明日な」
「はい!」
「よかったね。康太なんとかなりそうで」
「ああ。本当によかった。後は部員だけど……さつきは入ってくれるのか?」
帰り道。俺の質問にさつきは頬を膨らました。
「そんな当たり前のことわざわざ聞かないでくれない?」
「あっ悪い」
「アタシは康太と一緒に入れる時間のためならどんなことでもするんだから」
「……ありがとうなさつき」
「ふふ。いいよ。アタシと康太の間に遠慮なんて今更ないでしょ?」
「ああ」
こういうやり取りに俺は救われている。それにこういうやり取りをするたび、さつきのことが好きなんだと実感できる。
「さつき」
「うん?」
俺の左腕に捕まったさつきが俺を見上げてくる。こういう所作がかわいい。それもしっかりとこの言葉に乗せないといけないよな。
「好きだよ」
その言葉にさつきは頬を染めて照れくさそうに笑った後、きちんと答えた。
「アタシも康太が好き」
本当にこの子に出会えたことは幸せでしかないよな。
「映像部がない!?」
翌日。俺は真中に昨日黒川先生に聞いたことを話していた。すると椅子から転げ落ちた。本当にいちいちリアクションが大きいなこいつ。
「ああ。でさ、映像研究部ってことで新しく部を設立しようと思ってるんだけど、入部しない?」
「えっ!?入る!!!入るよ!!!いやーありがとうな康太」
「いいよ。でさ、他に誰か入部してくれそうな人知らないか?部員を五人集めないと部の設立ができないんだ」
「えっと……一人いる……かも」
「本当か?誰?後で俺が事情を説明するから」
「あー説明は俺がするよ。えっと東城なんだけど……」
「東城ってあそこの東城か?」
「あ、うん」
東城綾。今学校中で最もかわいいとされているらしい(昨日夜、さつきから聞いた)。確かに今日確認してみたら、かなりの美人だ。芸能人でもここまでの人は少ないかもしれない。ただまぁさつきの方がかわいいけど。ただ女優として、取ると考えればいい人材だな。でもよく淳平は東城なんかと知り合いだったな。
「わかった。説明は任せるよ。ということは後一人か………誰かいるかな」
俺のもう一人の友達である横田は中学の時からサッカー部だったため、高校でもサッカー部に入るらしいから誘えないし……あと知り合いと言えば外村くらいか。
「あいつか……まぁでも頭は切れるしただ問題な部分が……でも誘ってみる価値はあるか。しっかり言っておけばさつきは大丈夫だろうし」
「どうした康太?もしかして誰かいるのか部員になってくれそうなやつ」
「ああ。一人いるな。後で相談しておくよ。一応だけど真中も部員として入りそうなやつがいれば声かけておいてくれ」
「ああ。わかった!!」
真中が元気頷く。こいつは本当にわかりやすいし、リアクションも大きい。虫の知らせみたいだが、なんかこれから色々苦労しそうな気もするが、大丈夫だろうか。
「さてさつき。ちょっと飯食う前に……話してきていいか?さつきは飯先に食ってていいから」
「良いけど誰?」
その日の昼休み。俺はさつきとのランチの前に要件を片付けることにした。
「外村。あいつを映像研究部に引き入れようと思ってよ」
「……それは大丈夫なの?」
中学の時の行いを知ってかさつきがげんなりとした表情をするが、俺は笑って頷く。
「大丈夫だ。それに外から色々悪さされるなら、内に入れて監視するほうがいい」
「まぁ康太そう言うならアタシは反対しないよ」
「オッケー。じゃあちょっと行ってくる」
「はーい。行ってらっしゃい」
俺はさつきと別れて外村の席に近づく。外村は今から購買にパンでも買いに行こうとしてたようで、財布を持って立ち上がったところだった。
「外村。ちょっといいか?」
「山内から話しかけてくるなんて珍しいな。なんかようか?」
「ああ。ちょっと相談だな。歩きながらでいいよ。購買行くんだろ?」
「オッケー」
俺と外村は一緒に教室出る。教室を出てすぐ俺は切り出した。
「映像研究部って部を作ろうと思うから、入部してくれ」
「なんで命令……てか映像研究部って映画でも作るつもりなのか?」
流石は外村。話が早い。
「ああ。それで部を設立するには人が足りなくてな。入部してほしいんだ」
「山内が入部するってことは北大路も入部するのか?」
「もちろん。あとうちのクラスの真中ってやつと東城も入るかもしれない」
「えっ!?東城が入るの?」
あっこいつ食いついたな。
「ああ。真中が入部してくれるって言っててな。どうだ?結構プラスじゃないか?」
「そうだな。北大路は……はい。すみません」
俺はさつきの話をしようとした外村を目で殺す。さすがにさつきの写真は許さんが……
「入ってくれるなら少しは緩和するよ。さつきが嫌がる範囲でなければ写真を撮ってもいい。まぁホームページに載せるのは許さないし、隠し撮りも許さないけど」
「それだと俺にとっては撮っても無意味と変わらないが……まぁいいや。結構条件はいいな」
「ああ。パソコンも自由に使えるように抑えるつもりだし……あとなんといっても顧問だな」
「えっ?まさか……」
「ああ。黒川先生にお願いするつもりだ」
ここで切り札を切ると外村は完璧に釣れた。
「よし!入部しよう!!」
「毎度あり。あとで手続きの書類持っていくから書いてくれ」
「了解了解」
ふう。これで外村も入部してメンバーは一応形になったか。
「外村には映画の撮影にもしっかり協力してもらうからよろしくな」
「ああ。エロを詰め込んだいい映画にしよう」
「エロは詰め込みすぎると良い映画にはならないだろうが」
これでなんとか映像研究部は実現することができそうだ。
いかがだったでしょうか?
甘さは少し控えめだったかも……それでも甘い気がするのは気のせいだと信じたい。
さて次回から映像研究部が本格始動ですかね。さてさて一年目の映画はどうなっていくのか、皆さんにも楽しんでいただけるように頑張っていきます!!
ではまた次回会いましょう!!
簾木 健