ごめんなさい
今回も楽しんでいただけると嬉しいです
簾木 健
「ってことがあったんだ」
俺はポテトを食べながらハアッとため息をついた。それに目の前で横田はハハッと苦笑いを浮かべる。
「それで?どうなったの?」
「一緒に住むことになったよ……俺の家にな」
そういう落ちだった。さつきと一緒に住むということは俺の家にさつきが居候するということだった。今日は日曜日で普段はさつきと一緒にどこかに出かけてもよかったのだが、その件で引っ越しの準備があるということで俺は珍しく横田を誘い遊びに来ていた。引っ越しの準備は手伝うと言ったのだが、なぜかさつきには断られてしまった。
「……ガッカリだったか?」
「正直な」
「本当に北大路のことになると素直だな」
「二人で住むことになれば家事とか面倒だからって諦めたよ」
「………家事してる北大路を想像はしたんだろ?」
「それよ!!」
「どれよ!?」
俺はピッとポテトで横田を指す。
「エプロン着てさつきが家事してる姿ヤバいだろ!!たださ帰ってきて『お帰り』って言われるだけでも俺すげえ嬉しいよな」
「康太は北大路のことになると馬鹿になるよな」
横田は完全に呆れたと言わんばかりに大きなため息をついた。
「もう北大路の話はいいよ。今日康太呼び出したのはさ会わせたいやつがいたからなんだ」
「会わせたいやつ?」
横田はお世辞にも友達が多いとは言えない。しかし全く友達がいないのではなく、それなりには友達がいる。しかしその友達のほとんどはすでに俺とは知り合いだ。横田と一緒にいる以上紹介されるし、話したこがあるやつがほとんど。そんな横田が紹介したいやつと言ったのだ。俺は怪訝そうに横田に言った。
「誰だ?わかってると思うが俺は愛想がいい人間ではないぞ。女もさつき以外には全く興味ない」
「どっちも知ってる。今日はな……あっおーい!!」
どうやら俺を呼んだ原因が来たらしい。
「やあやあ。お二人さん」
やってきたのは目が隠れるほどの前髪。ただその笑顔はなんとも胡散臭い。というか俺こいつ知ってるぞ。
「横田が会わせたい人って外村のことだったのか」
「ああ……てかやっぱり康太でも外村は知ってるんだな」
「そりゃな。まずうちの学年一位としても知ってるし、あのホームページの運営について何回かお話をしたこともある」
「はは。その時はお世話になったよ」
外村がかわいた笑いを零す。外村はかなり頭は良い。正直こいつは天才だと思っている。しかしこの男は人畜無害な顔の裏腹にドスケベだ。自分で見つけたかわいい女の子を盗撮、もしくは撮影をしてそれを自分で立ち上げたホームページに載せている。ただ本人の好みは年上好きらしいというのが俺が知っているこいつの情報である。普段ほぼ他人に興味がない俺がなぜ外村をここまで知っているかというと、さっきのホームページにその原因がある。外村は少し前にさつきのことをホームページに載せたことがあり、それを
「それで?俺に話ってなんだよ?」
「いや俺も泉坂に行くことになったから挨拶をしとこうかとね」
「外村泉坂なのか?お前ならもっと偏差値のいい高校に行けたんじゃないのか?」
「康太……あそこ女の子のレベル高いらしいぞ」
「なるほどな。それが理由か」
「さすがは横田……で、山内にしたい話があるんだよ」
「外村が俺の話ってことは………さつきのことか?」
「山内もさすがだな」
外村のことだ、必ず女子の話だろう。そして俺に関わる女子といえばさつきしかいない。
「さつきの話か……あんまりふざけた話なら………」
「だ、だ、大丈夫だ。北大路をどうこうしようということじゃない。もちろんホームページにも載せない」
「それじゃないのならなんだ?」
そこで外村は少し間をあける。この先が本題であり重要なのだろう。
「……北大路をうちの事務所にくれ!!!」
「………横田。そいつ押さえろ。ふざけた話しやがった」
「ほーい」
「ちょっと待て!!!待ってください!!ふざけてない俺は真剣だ!!!」
横田が立ち上がり、外村を押さえにかかり、俺も立ち上がって拳をパキパキと鳴らす。
「俺は大学に入学したら女子限定の芸能事務所をを立ち上げるつもりで、そこに北大路をもらいたいんだよ!!あの胸と色気があれば天下を………だから二人とも無言で俺を殴る準備をしないで!!!」
「そんなことさつきに聞くまでもねえ。俺が断る」
「外村さすがにこれは康太が正しい」
「えー!!俺は真剣なのに!!!」
「……ハァ。横田やっぱりいい。こいつ本気みたいだわ」
「お、おう」
横田が外村の拘束を解く。すると外村が俺の両手を両手で覆った。
「山内頼む!!北大路さえうちの事務所にいれば本当に最強なんだ」
「外村お前が真剣だと言うことではっきり答えてやる。さつきはやらん。それにさつき自身も前にスカウトされたことあるが、絶対にやらないと言ってたぞ」
理由は俺と結婚できなくなるとかデートを公で出来なくなるとか言ってたが、それは言う必要はないだろう。
「そ、そうなのか……それじゃあ無理かぁ……」
「ああ。悪い。という外村は将来そんなことをするつもりなのか?」
「あ、ああ。大学は東京大学に行って箔でもつけて芸能プロダクションを立ち上げるつもりなんだ」
「なるほどな……まぁさつきは無理だ。あきらめろ」
「……北大路の肉体があれば世界を取れると思ってたんだがな……仕方ないか」
外村がハァとため息をつく。俺はふうと一息つき、席改めて座る。
「まぁさつきはやらないけど、外村来年からもよろしくな」
「お、おう」
外村は少し引き気味だったが手を出した俺に応え手を出してくれた。
「ただいま」
俺は横田と外村と別れた後、まっすぐ帰路につき家に到着していた。
「あっ!康太!!!」
そこには何故かさつきがいた。時間的にはまだそこまで遅い時間ではないが俺がいない家にいることはほぼないはずだ。でもなんでいるんだ?しかも部屋着だし。
「さつきどうして………」
「今日からこっちで暮らすことになったの!」
「あ~なるほど。それで」
どうやら今日で引っ越しは終わったらしい。手伝ったのに……そんなことを思っていながら靴を脱ぎ、家に上がる。するとさつきは俺にギュッと抱き着いてきた。俺の身長はさつきより少し高いため、さつきが俺の顔を見ると目は自然と上目使いになる。これはズルいだろ……こんな表情されたら……
「康太お帰り」
「っ!!!!」
キューと締め付けられる胸。ゆっくりさつきのお帰りが俺の中に溶けていき、俺の中を幸福で満たす。
「ただいまさつき」
ああ……今俺幸せだ。この幸せをこれから毎日感じることができるなんて俺は本当に幸せ者だ。そんな風に幸せを目一杯に感じていると、さつきが目を閉じて俺に唇を少し突き出す。そんなさつきに俺も答えるように目を瞑って唇を近づける。そして唇と唇が重なり、少しして離れる。そこでニヤニヤとした声が響いた。
「康太、さつきちゃんお盛んなのはいいんだけどあんまり玄関ではイチャついたらダメよ。お帰りのキスくらいなら許してあげるけど、それ以上は駄目よ」
「「っ!!」」
その声に俺とさつきはビクッとしてくっついていた身体を離す。
「そこまで素早く離れなくてもいいのに」
母さんは微笑まし気に俺たち見ていた。この人は本当に……
「玄関じゃなければいいのかよ?」
俺は恥ずかしさを紛らすために母さんの上げ足を取ろうとするが、それに母さんはニヤリと笑った。
「いいわよ。ただもし子どもが出来たら………しっかり面倒みなさいよ」
「面倒みたらいいのか!?俺は4月から高校生で……」
言いよどむ俺に母さんはポンと頭に手を置いた。
「それがわかってるなら大丈夫よ。ただ万が一ってこともあるからその辺はしっかりしなさい」
「……わかってる」
「そう。なら着替えてきなさい。さつきちゃん、康太ともう一回許してあげる。そしたらご飯の準備手伝って」
そう言って母さんはキッチン向かい、俺とさつきだけが玄関に残される。二人で向かい合い、プッとふきだした後俺の方からさつきに優しくキスをした。
「さつき。大切にするから」
「知ってる………大好き康太」
そういってさつきも母さんと同じようにキッチンに向かった。俺はこのなんとも言葉にできない気持ちをなんとか言葉にしようとしながら、着替えのために自分の部屋に向かった。
いかがだったでしょうか?
なんというか俺の想像を垂れ流しですね……まぁそれでも楽しんでいただけると嬉しいです。
さて次くらいから高校編にいければと思っています。
ついに原作キャラの多くが出てきますのでお楽しみに!!
ではまた次回会いましょう!!
簾木 健