今回も楽しんでいただけると嬉しいです。
簾木 健
「さつきどうだ?あったか?」
「ちょっ、ちょっと待って……えっと……あっ!!あった!!!!!やったよ康太!!!!!」
さつきが横にいた俺に抱き着く。俺はさつきの頭をポンポンと優しく撫でた。
「よく頑張った。来年からも一緒に通えるな」
「うん。うん!!毎日一緒に通おうね」
「ああ」
かなり周りの視線が気になるけど……さつきがかわいいから万事オッケーだ。
「はは。ここでもイチャついてるな」
「よお、横田。お前はどうだった?」
「合格。そっちも大丈夫だったみたいだな」
「ああ。さつき帰るぞ」
「うん!そういえば今日お母さんが家においでって」
「そうなのか?わかった。そのまま行くよ」
さつきのおばさんからの呼び出しとは珍しい。でも呼び出されるということは何かあるのだろう。
「じゃあ早速行くか。横田また学校でな」
「おう!!北大路もじゃあな」
「うんバイバイ」
横田と別れ、俺とさつきは人を避けて離脱する。
「番号がない……」
「俺もない……」
「えっと……」
「ああ……」
なんというか……残念なやつらとすれ違った。大丈夫なのかね。
「ああいう人もいるよね」
さつきは少し悲しそう。優しいな。俺はポンとさつきの頭を撫でた。
「さつきが悲しむことじゃねえよ。さつきは文句を言わせないくらい頑張ったんだからそんな顔するなよ」
「……もう。ありがとう」
俺の手を優しく両手で掴み頭から降ろして、そのままその腕に両手を絡ませる。左手にさつきの全体重がかかってバランスを崩しそうになるが、何とか耐える。
「急にそんなことするとバランス崩すだろ」
「色々当たって役得でしょ?」
ニヤリとさつきが笑う。さつきよくわかってるな。
「まぁな。さつき胸また大きくなったか?」
「ちょっとね。ブラが……」
「あー……サイズか」
「うん。かわいいのがね……康太にはかわいいのを見てほしいんだけどな」
「……バカなこと言ってんじゃねえよ」
「あっ!康太照れてる!!かわいい!!」
「かわいいは男子には褒め言葉じゃねえよ!恥ずかしいだけだ」
さつきは普段狙って俺を照れさせようとするのだが、実際狙ってるって分かる以上照れることはない。でもこんな感じで自然に言われるのが一番ダメージがあるのだ。
「康太!ねえ康太!!もうこっち向いてよ!!!」
「今は無理だ!!こんな顔見せたくない」
「えー!!ねえ康太!!ねえってば」
「後ろから抱き着くな!!今色々当てられるとマズイって!!」
「もしかして………勃っちゃう?」
「ふぁっ!?」
さつきのやつ何言ってるんだ!?そりゃこのままだとかなりマズイだ。
「でもここじゃ野外になっちゃうから……できれば初めては二人っきりで落ち着いたところがいいかな」
「この野郎!!今後仕返ししてやる!!!」
その言葉で我に返る。ちくしょ!!ここでの我慢は思春期真っ只中の俺に本当に辛いんだぞ!!
「ふん!やれるものならやってみなさい!!!」
そう言ったさつきの声はとても楽しげでさっきまでの感じが吹っ飛びこっちも楽しくなってしまう。
「ほら行くぞ。さつきのおばさんのようってなんだろうな」
「さあね。今日あたしも聞いてみたんだけど、教えてくれなくってさ」
「まぁ行ってみりゃわかるか」
「うん!!じゃあ競争ね!!よーいドン!!」
「……負けねえぞ」
俺とさつきは走りだした。
「ハァハァ」
荒れた息を整える。目の前にはさつきの家。
「ハァ……康太……やっぱり……ハァハァ……速いね」
さつきも少し遅れて到着する。しかし俺の全力で差は少しくらいしかつかないのだから女子にしてはさつきも相当速いだろう。
「まぁ身体だけのもので負けるわけにはいかないからな」
「そういえば……ハァハァハァ……何か道具使う競技本当に下手くそだもんね」
「それは本当にどうしようもねえんだよなぁ」
「ほら早く入ろうよ」
遠い目をした俺をよそにさつきが俺の腕を掴んで家の方に誘う。
「わかったわかった」
「えへへ!!康太にはいいの!!ただいま!!!」
「お邪魔します」
「あっ!さつきお帰り!!」
「さつきお姉ちゃんお帰り!!!」
「あら?さつき帰ってきたの?早かったわね。どうだったの?」
「受かってたよ!あと康太連れて来た」
さつきの家は騒がしい。でもこの騒がしさがなんかいいんだよな。
「あっ!康太兄さんこんにちわ」
「康太なにしにきたんだ?」
「よお久しぶりだな。はづきにみつき。今日はおばさんに呼び出されたんだよ」
「康太君。わざわざごめんね。あと、さつきをありがとう」
「いえいえ。俺のおかげじゃないですよ。さつきが頑張ったからこの結果になったんです。本当におめでとうございます」
「でも、さつきが頑張ったのは康太君のおかげでしょ?だからありがとうね」
「……はい」
その笑顔に少しドキッとしてしまう。さつきの
「康太……」
ガシッと掴まれる肩。痛い。とても痛い。しかし振り向くのはあまりにも怖すぎる。
「康太……お母さんにそんな風になるなんてやっぱり年上が好きなの?」
「さつき。俺の話を聞いてくれ」
ここは誤解を解こう。もう弁明すら許してくれないのなら一発くらいぶん殴られる覚悟をするか。
「あらあら。さつき私に嫉妬にもなんて………この際康太君を食べるのをいいかも」
「おばさん!?」
「お母さん!!本当に何行ってるの!?」
なんでこの人は絶妙に話をややこしくするかな!?たださつきのおばさんは全く悪気なくふふっと笑う。
「もう冗談よ。さてはづき、みつきちょっと遊びに行ってくれる?」
「わかった!!みつきいこ!!」
「はーい!じゃあ康太後で遊ぼうね」
「時間があればな。行ってらっしゃい」
「あんたたち気をつけるのよ」
はづきとみつきは元気に家を出ていく。子どもっていいよな。無邪気で本当にかわいいと思う。
「さて康太君。さつき上がってリビングにきなさい」
さつきのおばさんは先に行ってします。なんか神妙な話題みたいだな。そう思い俺もさつきを少し雰囲気が締まる。二人でさつきの家にあがり、リビングに行くとそこには俺の母さんとさつきの両親がいた。
「母さんなんで?仕事は?」
「お父さんも仕事はどうしたの?」
俺の母さんもさつきのお父さんも基本的に土日も仕事なのだ。今日は仕事は休みだったのか?
「康太久しぶりだな」
そんな風に考えているとさつきのお父さんに話しかけられた。
「こちらもご無沙汰していましたおじさん」
「ああ。さて二人とも座りなさい」
さつきのおじさんに促され、俺とさつきはリビングの入り口のところで正座した。俺たちの目の前にさつきのお父さん。そして横の方に俺とさつきの母さんが、座っている。
「今日は二人に話がある。その前に二人とも高校合格おめでとう」
さつきのお父さんがフッと笑う。さつきのお父さんは顔が怖い。しかも身体もかなりゴツい。俺の父も警察として様々は武術を身につけているが、父曰く、さつきのお父さんはさらにやばい人らしい。正直職業は怖く聞いたことがない。その人もこうして笑うと優しい父親に見えるのだから本当に不思議なものだ。
「まぁ長く話すことでもないから本題に行くぞ。康太、さつきお前たちお互いのことが好きか?」
さつきのお父さんの言葉に俺の思考はショートした。さつきが横で真っ赤になりながらも叫ぶ。
「な、な、何言ってんの!?お父さん急にどうしたの!?」
「確認だ確認。どうなんだよ?」
さつきとは対照的にさつきお父さんは静かに俺たちの真意を読み取ろうとしながらさらに尋ねる。そこで俺は思考をある程度正常に戻した。
「俺はさつきのことが好きです」
これは正常に戻った思考だ。こうして聞いてくれるのだ。答えないのは不義理だろう。俺の言葉を聞いたさつきは横で嬉しそうに笑った。
「あたしも康太が好き。康太と一緒にいたい」
「………そうか」
さつきのお父さんは俺たちの答えをしっかりと受け止め、ハァと一つため息をついた。
「二人とも高校から一緒に暮らすか?」
いかがだったでしょうか?
ちょっと超展開になってしまいましたが後悔はしていません。
これからも砂糖90%でやっていこうと思ってますのでよろしくお願いします!!
ではまた次回会いましょう!!
簾木 健