これからも頑張っていきます!!
簾木 健
「さてじゃあさつき始めるか」
俺とさつきはおれの家に帰り着き母さんのご飯を食べてから、畳の部屋に置かれた机で向かい合っていた。俺の家は二階立ての一軒家だ。父さんと母さんが頑張って買った家で、三人に住むにはちょっと広すぎる気もするがありがたい。
「約束もしたことだし頑張ります!!」
「なんか少し投げやりな気がするが……まぁいい。じゃあとりあえずこれやって」
俺はプリントを渡す。さつきはそれを少しオドオドながらも受け取る。
「とりあえず今のさつきの実力を知りたいからこの間の実力テストを一教科ずつやっていこう。まずは国語からね」
「わ、わかった」
「時間は一応50分取るけど終わったそこで声かけて」
俺はそう言いながら持ってきたパソコンを立ち上げる。さて本日もやりますか。
「そういえばどれくらい書けたの?」
「……これはまだ全然かな。正直いつ完成するのかわからない」
「そういえばこの間編集さんが来たって言ってたけどもうすぐ出るの?」
「いやそっちはもうちょっとらしい。高校生になったらデビューさせるって」
「ふーん……」
そう言ってさつきはプリントに視線を戻し、ノートに答えを書いていく。俺もパソコンに視線を移し、そしてキーボードを操作してテキストを書いていく。物語に自分が埋没していくこの感覚が俺は大好きだ。紡がれる物語によって広がる世界。もっと美しく、もっと濃く、もっともっと。指は少し止まっては動きを繰り返していく。
「康太!」
もっと書ける。もっと表現をできる。
「康太!!」
そこでガンと肩をゆすられハッと我に返る。
「康太!もしかしてまた?」
「悪い。またいつものだ」
さつきがハァとため息をつく。これは俺の悪いところだ。物語に浸ると周りが一切目にも耳にも入らなくなる。最高に集中した時にはその物語の匂いを感じたほどだった。それをさつき本人も何度も見ているから理解もあるから、それには何も言わずプリントを解いたノートを俺に差し出した。
「ほい。解けたよ」
「ああ。さてと……」
俺は学校でもらった答えを見ながらノートに目を通していく。
「………現代文はいい感じだね。古文が問題だな」
「古文してると頭がキーってなる」
そう言いながらさつきは俺の背中に身体を寄せてくる。
「さつき色々当たってる。集中できない」
「えー頑張ったんだから少しくらい良いじゃん」
「まだテスト一つ解いただけだろうが。たく………ほれこれ」
俺は国語の参考書を開き、それを俺の目の前に広げる。それをさつきは俺の首横から顔を出して覗きこむ。
「ほら。ここの問題から解いて」
「うー難しそうってそもそも解き方が理解できない!!」
「方式は現代文と一緒だけど、読みや意味が違うからな。そこは覚えるしかないかも……」
「覚えるの苦手なの!!知ってるでしょ?」
「知ってるけど……わかった。一緒にしてやるからとりあえず一つずつやってみて」
なるべく優しく言う。するとさつきは俺の背中から俺の隣移動する。そして自分のノートに回答を書いていく。
「ここの意味わかるか?」
「……今そこで詰まってた」
さつきが少し悔しそうに俺を見る。それに俺はニヤリと意地の悪い笑顔を浮かべた。
「ほい辞書。これで調べて」
「教えてくれないの?」
首を倒してかわいらしく笑いながら俺に尋ねてくる。しかしこの笑顔の意味を俺は知っている。
「さつき。面倒くさいと思ったろ」
「えっ……」
完全に図星を突かれたと顔に出ている。この野郎……
「さつき。真面目にやらないなら………意地でもさせるぞ」
「ひっ!!」
少しさつきが腰を浮かして俺から距離を取る。ただそんな簡単に間合いを開けさせない。俺はさつきの腕を掴んでこっちに引き寄せようとしたのだが、ちょっと力を入れ過ぎたのかさつきが俺に密着して俺がさつきを抱いている形になる。さつきの体温を感じる。さつきの心臓結構速くなってるな。
「康太の心臓速くなってるね」
「変なこと言ってんじゃねえよ」
「あっ今照れてるでしょ」
すりすりと俺の胸に頭を擦りつけるさつき。なんだよこの子すっげえかわいいんだけど……
「えへへへ」
すりすりしていた頭を胸から離し、ニッコリと笑う。ズルいだろ!!なんだよこの笑顔反則だろ……えっとすっげえキスしたいんだけどちょっとずつ顔を近づけるとさつきが目を閉じてくれる。これもういいよな!!!俺もゆっくりと顔を近づける。そして唇と唇が当たるってところで……
「康太、さつきちゃんお風呂はいつ入るの……」
母さんがガラッと部屋の襖を開けた。
「「「あっ……」」」
三人の声がハモる。
「康太、それはなんの勉強かしら?」
ニヤニヤと笑う母さん。目の前のさつきの顔も真っ赤になっている。たぶん俺の顔も真っ赤だろう。
「息子を取られるのってすごく嫌って友達とか言ってたけどなんか相手があまりにも納得できる相手だと仕方ないって諦めがつくものね」
「なに冷静に分析してんだよ!もう速く閉めろよ!!」
「親になんて口きいてんのよこのバカ息子」
「そりゃこんな状況ならそうもなるだろ!?」
「ハァ……あんた今度みてなさい。それで?二人はいつお風呂に入るの?」
「この国語の参考書終わったら入るつもりだったけどいつになるかはわからないな。さつきの出来次第」
「そう。でももうすぐお父さん帰ってくるからそれまでには入ってほしいのよ。だから入ってから勉強しなさい」
「わかった。じゃあどっちからか入るよ」
「ええ。そうして頂戴。さつきちゃんごめんね。お邪魔しちゃって」
「い、いえ!大丈夫です」
「その子意外と押しに弱いから押しまくったらすぐになんでもしてくれるわよ。あっ!お風呂も一緒に入る?うちのお風呂広いし」
母さんの言葉にさつきが固まる。母さんはそのさつきの反応が面白いのかニヤニヤと笑っていた。
「母さん何言ってんだよ」
そんなさつきのおかげで俺は平常心を取り戻した。それがわかったのか母さんは「早く入りなさいよ」といって襖を閉める。俺母さんに絶対勝てないよな。
「ハァ……さつき風呂どっちが先に……」
「チュ……」
俺がさつきに視線を戻した瞬間。さつきは俺に顔を近づけてキスをした。
「なっ!?」
「あんな中断でしなくなるの嫌だもん」
「さつき……」
本当にかわいいこの子。少し意地悪したくなる。
「えっとお風呂どうする?一緒に入る?」
「良いけど……康太いいの?」
あっ……これは負けたな。
「いや悪い。冗談だったんだけど」
「わかってる。でも……」
スッと俺の耳元に口を近づける。
「勉強頑張るから今日一緒に寝ようね」
そしてスッと俺から離れてちょっと舌を出し悪戯っぽく笑う。
「わかったよ。ただ風呂あがってもしっかりやるからな」
「うん!」
さつきは嬉しそうに笑って部屋から出ていく。ハァ俺さつきに甘いかな……なんと思っているのと玄関からガチャっとドアを開く音がした。俺は立ち上がり部屋を出て玄関に向かう。
「おかえり父さん」
「おう康太。ただいま。さつきちゃん来てるのか?」
父さんが玄関にある靴を確認して尋ねる。
「ああ。今日から一週間勉強合宿するから」
「わかった。しっかりやりなさい」
父さんは冷静に告げる。この冷静さを本当に学びたいな。ハァとそこでため息をつくと父さんは靴を脱ぎながら俺に話しかけてくる。
「どうしたさつきちゃんとうまくいかないのか?」
「なんで急にそんなこと聞くんだよ?」
「いやなにお前は俺に似て一言足りないからな。そこはしっかりした方がいいぞ」
「わかってる。きちんとするよ」
「よし。それでさつきちゃんは?」
「今風呂に入ってる。風呂場には近づくなよ」
「ふん。そんなことしたら母さんに殺されるぞ」
ふっとクールに笑い父さんは二階に上がっていく。俺も勉強部屋に戻って自分のノートを広げ勉強を開始する。
「ここ……さつきわかってるかな……」
結局自分の勉強よりもさつきのこと考えてしまうんだな俺。その後風呂からあがってきたさつきは色っぽくそしていい匂いでかなりドキドキしたのはさつきにはばれていないと思いたい。
いかがだったでしょうか?
気付いたらすごいUA数とお気に入り登録されてすごく驚いています。
これもひとえにさつきちゃんがかわいいからですね!!
これからもかわいいところを出していけるように頑張っていきます!!
個人的にはもっと活発で元気なところもだしていきたいなぁ……願望ですけどw
それでは次回また会いましょう!!
簾木 健