しかし手が止まりませんでした。書けたものはぜひ読んでもらいたいと思い投稿しました。
前置きは長いといけないのでこのくらいにして……楽しんでもらえるように頑張っていますのでよろしくお願いします。
では始めます!!
簾木 健
「ほい」
「ひゃっ!!」
放課後の図書室。オレンジ色の光が窓から入る中、必死に教科書にかみついていた女の子がおれの当てた缶ジュースの冷たさに驚き声をあげて、バッと顔を上げてこっちを不機嫌そうな顔でムーっと睨む。図書室は俺たち以外には誰もいないため、こんな風に声を出しても非難の視線を向ける人もいない。その女の子にジュースを渡して対面の椅子に腰かける。
「どうだ?少しは頭に入ったか?」
「うーーー無理ーーーー」
長く綺麗な髪を振り乱し、机に突っ伏す女の子におれは苦笑いを浮かべる。
「ちょっとは努力したのかって……ここ最近は頑張ってるもんな」
おれはその頑張りをこうして見ている。もっと早くから泣きついてきてもらってくれればと言うのはいまさら野暮か。
「さつき……志望校変えるか?」
だからこそそんな提案ができた。しかしその言葉に机からバッと身体を起こしブンブンと顔を横に振った。
「嫌だ。あたし康太と同じ学校に行くんだから!!」
「それならおれも志望校落とすよ」
「っ!!」
正直もう時間はなかった。この先受験まで勉強を続けても今のペースではさつきの成績はギリギリもいいところだろう。というか落ちる可能性が高い。それなら確実に……とおれは思っていた。しかしさつきは一瞬は怯んだが、それでも首を横に振った。
「さつき……」
「……もしそうしちゃったら諦めることになるかもよ?」
「どこでだって書けるだろ」
「でもやっぱりいいところの方がいいでしょ?」
「それは……そうだけど」
「じゃあやっぱりあたしが頑張るよ」
そう言ってさつきはまた参考書に噛みつく。嬉しかった。おれのためにと考えてくれてるこの子が本当にかわいくてたまらなかった。
「さつき。今日から家に来い。合宿だ」
「えっ……それってテスト前にしたみたいな?」
さつきが参考書から顔を上げて頬を引く突かせる。テスト前どうしてもさつきがマズイ時はこうして合宿をしている。どれもさつきにとっては辛いものだったろう。しかしここまでの覚悟だ。おれも手伝いたい。
「ああ。さつきのお母さんにはおれから連絡しとくよ」
「ええ!!??ねえ……それ今日からなの?」
「もちろん」
「明日からとかには……」
「悪いがさつきはっきり言うが今のペースだとギリギリもいいところだ。しっかり一週間くらいしごいてその間に上げれるだけ成績を上げるぞ」
「本気の本気?」
さつきの顔が段々とげっそりとなっていく。ただこうやってさつきも頑張ってるんだ。少しくらいの飴は必要だろう。
「本気だよ………たださつき頑張ればなんでも一つ言うこと聞いてやるよ」
「……マジ?」
「いいぜ。おれを好きにしていい」
「乗った!!」
これですぐに乗って来てくれるんだからチョロいんだけどね。おれ以外には乗るなよ。
「よし。言ったからな」
おれはその場で携帯を開き入れ慣れた番号を入れる。
「もしもし」
『もしもし北大路です』
「どうもおばさん。山内です」
『あら康太君。どうしたの?もしかしてさつきが何かした?』
「いえいえ。今自分の前で頑張って勉強してますよ。ただ正直言うんですけど泉坂は今のままでは厳しいんですよ」
『まぁそうよね……でも康太君なんとかしてくれるでしょ?』
話が早くてすごく助かるな。
「ええ。一週間ほどさつきをうちで預かっていいですか?」
『あらそれは助かるわ。正直私もお父さんも勉強とか見てあげれないし……それに康太君ならこの際一緒に住んでも良いのよ?』
「それはもうちょっとしてからでお願いします。自分で稼げるようになったら貰いますよ」
そう言っておれがニヤリと笑う。目の前のさつきの顔が真っ赤なのは今はほっといてもいいだろう。
『あ~ら~!!言ったからね。絶対もらってもらうわよ』
「男に二言はないですよ。そういうことなんで一週間くらいうちでさつき預かりますね」
『わかったわ。同棲の件も一緒にお父さんに伝えとくわ。今度さつきと一緒にうちにもいらっしゃいね。お父さんも会いたがってたから』
「わかりました。入試が終わったら必ずいきます」
『待ってるわ。さつきの着替えは康平君の家に持っていっとくわね』
「すみません。よろしくお願いします」
俺が電話を切る。するとさっき確認したよりももっと真っ赤な顔で俺を見つめるさつきがいた。
「どうした?」
この質問は意地悪だ。だって全部わかってるから。さつきが赤くなっている理由もこんな目でおれを見つめている理由も。
「
「さつきのおばさんもおじさんも弟も妹も知ってるだろ?俺たちが付き合ってるの」
「そうだけど!!」
真っ赤な顔で拗ねるさつきは最高にかわいい。そんなさつきの頭を俺は優しく撫でた。
「悪いけど俺はさつきが大好きだからな。隠すなんてことはしない。というか自慢したい」
「普段はクールな感じで余計なこと言わないくせになんでそんなこと平気で言うかな……」
「それだけ俺がさつきに惚れてるってことだよ」
「バカ……」
普段は騒がしいくらいに元気なさつきが照れて顔を伏せている。見えないけどすごく嬉しそうな顔してるだろうな。
「さつき顔見せて」
さつきの顎に手を置き伏せた顔を上げさせる。案の定さつきは真っ赤な顔だが口角が上がってしまっていた。
「さつき嬉しそうだね」
「だからなんでわかってること。わざわざ言ってくるのよ!!!」
「さつきは撫でられるの好きだもんな」
「別に撫でられるのが好きなわけじゃないわよ……
「そう言ってもらえて俺は光栄だよ」
「だからなんで聞き逃さないのよ!?」
「わざわざ嬉しいこと言ってくれてるのになんで聞き逃すんだよ」
俺はまた改めてさつきの頭を撫でる。小説や漫画に出てくる主人公はよくこういったセリフを聞き逃しているイメージがある。しかしそれは本当に勿体ない。こんなにも嬉しいことを聞き逃して悔しいだろう。
「じゃあさつきそろそろ帰ろうか」
俺はさつきの頭から残念ながらも手を離し、もう一度携帯を取り出す。さつきは少し残念そうにしながらも参考書を片づけ始める。そんなさつきにかわいいと思いつつも再度電話をかける。
「もしもし」
『もしもしってあら康太どうしたの?』
「今日からさつきをうちに泊めることになったんだけど、さつきの母さんから着替え来てる?」
『ええ。さっき来たわ。あんた急になんでそういうことになったの。というかさつきちゃんが来るならもっと色々用意するものがあるんだから』
「あーそれは悪い。でも母さんも嬉しいでしょ?」
『それはもちろんよ!!あんたはいても邪魔なだけだけど、さつきちゃんはかわいいし気も利くしあんたとは大違いよ!!!』
「あーわかったわかった。じゃあ今から連れてくるから。今日父さんは?」
『お父さん?今日は帰ってくるって言ってたわよ』
「了解。なんか買ってきてほしいものある?」
『あら、それじゃあ……牛乳と挽き肉買ってきてくれる?あと何かジュースとお菓子も買ってきていいわよ。お金はぜんぶあとで渡すから』
「そっちも了解。じゃあ今から帰るから」
『気を付けて帰って来なさい。でもなにかあったら……』
「さつきは絶対守るから大丈夫」
『よし。じゃあね』
プツンと電話がきれる。俺は携帯もバックの中に仕舞い、さつきに向きなおった。
「じゃあ帰るか。ちょっと買い物するから付き合ってくれ」
「了解!」
そう言いながら俺の腕にさつきの腕を絡ませてくる。さつきの身体はすごく豊満で出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるから、腕に色々なところが当たってすごく役得な気分になる。
「あ!今ちょっとエッチなこと考えたでしょ」
「……なんでだよ?」
「今少し鼻の下伸びたから。なんだかんだで康太はムッツリだよね」
ニヤリとさつきが笑う。こういうところは本当に敵わない。俺は表情があまり変化しないと思っているのだが、さつき曰く、確かに康太とあんまり関わらない人はわからないけど、少し付き合えばわかるくらいは変化してるよ、とのことだったので、あまり隠すのはうまく出来ていないのだろう。
「さつきの胸大きし柔らかいし最高だと思っただけだよ」
「う~!!だから恥ずかしいことをそんなあっさり白状するなぁ!!!」
ムーとしたさつきにニヤリとしながら二人でくっついて廊下を歩いていく。
そういえばさつきに夢中で自己紹介をしていなかった。この場を借りてしておこう。
俺の名前は山内康太。中学三年生。そしてこの横にいる絶世の美女という言葉が霞むほどの美女。北大路さつきの彼氏だ。
どうだってでしょうか?
近頃いちご100%の続編が出ましたね。それを機会にもう一度持っていた単行本全巻を一気読みし、続編も読んだのですが……さつきがあまりにもかわいそうで気付いたらパソコンに向かってこの小説を書いていました。
僕自身いちご100%のヒロインではさつきが一番好きです。あんなかわいくてたまらないヒロインはそうそういないですよ!!
そうというのに……あのくそ男は…………チッ!!
すみません取り乱しました。
ということもあり、さつきを幸せにするためこのような小説を書きます。
一応原作沿いで言ってあの男やヒロインなどキャラたちとは絡ませていく予定です。ただほぼイチャイチャすると思いますのでぜひコーヒーを片手にお読みください。
では今回はこの辺で!!
感想や批評、評価をいただければ、執筆の弾みになりますのでよろしければお願いします。
ではまた次回会いましょう!!
簾木 健