"貴方に永遠の愛を"   作:ワーテル

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お久しぶりです、ワーテルです

今回も例の如く本編とは全く関係ありませんが、私の書きたかった話なのでどうぞ見ていってください


それではスタート!


【閑話】夏の最後の思い出

8月31日

明日から学校が始まる、世の学生はさぞ憂鬱だろう

そんな学生達はこの夏休み最後の日を思い思いに過ごす

 

どこかに出かける者

家でのんびり過ごす者

部活に励む者

勉学に励む者

宿題が終わらず死に物狂いでやってる者

 

いろんな学生がいるだろう、俺もその1人だ

今俺は朝食を済ませ身支度をしているところ

時刻は8:00をもう少しで回るとこ

何故こんな時間に準備をしているのかと訊かれれば1週間前に遡る…

 

 

 

 

 

 

1週間前

 

 

「あー!もう!全然終わらないよー!」

 

 

千歌は夏休みの課題がわからないからという理由で俺の家に来ていた

当然この時点で俺は課題を終わらせている

どうして最後まで溜め込むのか、俺には不思議でたまらない

 

 

「結局夏休みもどこにも行けなかったし」

 

不満の声を漏らす千歌

 

「しょうがないだろ?aqoursの練習があったんだから。というか、ごちゃごちゃ言ってないで早く課題終わらせろよ」

「むぅ!りゅうくんの鬼!あ、ここ教えて」

「鬼に教えを請うか…」

 

 

こんな感じで俺は千歌の課題の手伝いをさせられてるわけ

チューニングする手を止め、参考書を取り、できるだけわかりやすく千歌に教える

 

 

「流石りゅうくん!とってもわかりやすかったよ!」

「そりゃどうも」

 

 

再びチューニングを始める

アコースティックギターというのはエレキギターに比べればズレにくいのだが、俺の場合、弾く前は必ず合わせないと気が済まない性格なので毎回チューニングをする

 

 

「今日は何弾いてくれるの?」

「特に決めてないけど、リクエストあればどうぞ」

「じゃあ、『ユメノトビラ』!」

「あいよ」

 

 

部屋の中にギターの音色が響く

俺はこの時間が好きだ。ギターを弾いてる時は自分の世界にいられる

それに今日みたいに聴いてくれる人がいるというのもまた嬉しいことだ

 

 

「青春のプロロ〜グ〜♪」

 

パチパチパチ

「やっぱりりゅうくんはギターも歌も上手だね」

 

いつの間にか気分が良くなって弾き語りを始めてたみたいだ

すこし恥ずかしくなったが、千歌に褒められたのは嬉しかった

 

 

「ありがとな、ところでさっきから進んでないように見えるが…」

「うっ、それはりゅうくんの演奏がすごくって…」

「はいはい、お世辞はいいから手を動かそうな」

「うぅ…わかったよぉ〜」

 

 

渋々ながらも手を動かす千歌

 

 

「でも、さっきのお世辞じゃないからね」

「え?」

「私はりゅうくんの歌声もギターも好きだよ」

 

 

俺はその千歌の言葉と表情にドキッとした

好きな人に意味合いは違くとも、『好き』と言われると何だか照れくさくなる。俺もまだまだウブだな…

千歌はこういうことを無自覚で言ってるのかな

 

 

「そうか、ありがとな」

「あ〜やっぱどこか遊びに行きたいな〜」

「台無しだな」

「何が?!」

 

 

相変わらずのマイペースっぷりの俺の幼馴染

このままでは中々進まないと思った俺はある提案をする

 

 

「じゃあ、30日、つまり、夏休み最終日前に課題を終わらせることが出来たら、どこか一緒に行ってやるよ」

「えっ!ほんと!?」

 

 

目をキラキラさせ、アホ毛をぴょこぴょこさせ、無邪気な笑顔でこちらを見つめる千歌

 

 

「ほんと、ほんとだから!そんなにちかよって来るな」

「ふぇ?あぁ!ごめん。」

「いや、いいよ、ちなみに今のは『千歌寄ってくるな』と『近寄ってくるな』をかけて…」

「よし!そうと決まれば頑張らないと!」

「あぁ、はい。頑張ってください」

「明日から毎日りゅうくん家行くからね」

「はい。って、えー!!」

 

 

 

 

ということがあった。

結局本当に千歌は毎日俺の家に課題をやりに来た

遊びに行きたいがために驚異の集中力とやる気を得た千歌はまあまあな量あった課題を3日で終わらせてしまった

ただ、できるなら最初からやってくれよとは思ったが、今回ばかりは言わないでおこう

 

千歌の家に9時集合

8:30のバスに乗れば余裕で間に合う

財布、タオル、持ち物を鞄の中に詰め、スマホはポケット中に

ちなみに何処に行くかは知らされていない

どうも当日までのお楽しみだそうだ

何処でもいい、と言ってしまったのを後悔しなきゃいいが…

 

気がつけばもう8:25

俺が家を飛び出すと、雲ひとつない空が広がっていた

太陽もより輝いてるように見える

今年も散々こいつには暑さという拷問にかけられたが、今日ばかりは感謝しよう

 

 

「今日は絶好の…」

 

そう言った時、言葉に詰まった

千歌と2人で出かける

若い男女が2人で歩いて入れば側から見ればデートしてるように見えるだろう

体温が上がる、心臓の鼓動が大きくなり、脈打つ血が感情を露呈する

俺は大きく息を吸って、冷静さを取り戻してからバス停へと向かった

 

 

 

 

バスに乗って20分ほどで十千万に着く

バスから降りて、凝り固まった身体をほぐすように伸びをする

海の目の前だけあって潮の匂いがより強く、気持ちのいい潮風が身体を通り過ぎていく

 

時刻は8:50

ここから十千万までは目と鼻の先

うん、5分前行動とは何ともいい心がけである

まあ、どうせ千歌は遅れて来るんだろうが…

 

 

 

 

「ここからどうしたら雨が降るのか」

「もう!りゅうくん酷くない?」

 

 

よく普段悪さばかりしている人が急に善良な行動をすると"今日は雨でも降るのか"などと言うだろう

今まさにその状況である、なぜなら

 

 

「なんで千歌が時間通りに出てきてるんだ…やっぱり雨が…」

「あんまり言うと怒るよ」

「はい、申し訳ありませんでした。」

 

 

いやでも、普段寝坊助の千歌が時間通りに来たら多分誰でもそう思っちゃうよ、うん、俺は悪くない

 

 

「今失礼なこと考えてない?」

「いえ、滅相もございません」

 

 

なぜ俺の心が読める…女の勘ってやつか。

何とも恐ろしい…

 

 

「ところで千歌、今日はどこに行くんだ?」

「えっへん!よくぞ訊いてくれました!」

 

 

なぜそこで胸を張る

そんなに張られるとそのご立派なものが強調されて目のやり場に困るんだけど…

 

 

「今日はね、三津シーパラダイスに行くよ!」

「ほう、それはまたなぜ?」

「んー、なんとなくね」

「はは、千歌らしいぜ。そうと決まれば早くバス乗って行くぞ」

「えっ、あ、ちょっと!置いてかないでよー!」

 

 

 

 

夏休みとはいえ相変わらずガランとしたバスの中

乗客は私とりゅうくん、それからご老人が2人

目的地に着くまでの間、私達は他愛のない話をして過ごしていた

 

 

「なぁ、そういえば曜や梨子は誘わなくてよかったのか?」

「え、なんで?」

「いや、千歌だったらあの2人も誘うかなって思ったからさ、それに人数多い方が楽しいだろ?」

りゅうくんのバカ

「ん?何か言ったか?」

「何にもないよ!」

「変な千歌」

 

 

そりゃあ私だっていつもなら曜ちゃんや梨子ちゃんも誘ったよ

でも、今日は、今日だけは、彼と一緒にいたかったから

好きな人と2人きりで出かけたかったから

りゅうくんは2人もいた方がよかったのかな…

私はこんなに意識してるけど、りゅうくんはどうなんだろう

 

 

 

 

あれからしばらく経って

バスは目的地"三津シーパラダイス"に到着した

ここは決して大きいとは言えないし、魚の種類も他と比べれば少ないのだが、ショーがとても充実した水族館である

ちなみにここのマスコットうち○ちーは俺のお気に入りだ

 

今日は夏休み最終日ということもあってか、家族連れが多く、カップルもちらほら見られる

 

チケットを購入し、さあ入ろうとしたその時

 

 

「りゅうくん」

「何だ?」

「今日は楽しもうね♪」

 

 

そんな千歌の笑顔に魅せられて、俺も自然と頰が緩む

 

 

「そうだな、じゃあ」

 

千歌の方に左手をさしのべる

 

「ふぇ?」

「せっかく楽しい日にしようってのに逸れたら台無しだろ。だから…」

「うん、そうだね」

 

 

左手に柔らかい感触が伝わってくる

千歌と手を繋ぐのはいつ以来だろうか

そんな懐かしい余韻に浸りながら、彼女の右手をギュッと握る

 

 

「じゃあ、行くか」

「うん!」

 

 

係員にチケットを2枚渡す

その時に「お似合いですね」と言われたためら2人の顔はタコのように真っ赤になっていたことだろう

 

 

 

 

 

「まず何から見ようか」

「私ショーが観たい!」

「今からショーとなると"ショースタジアム"だな。じゃあ観に行くか」

「よーし!全速前進!ヨーソロー!」

「おーい、危ないから走るなって」

 

 

俺の注意も聞かず千歌は無邪気な子供のように走り出す

もちろん手を繋いでいるので俺も必然的に走らされてるわけだが

 

会場に着くと時間はちょうどよくそれほど待つことなくショーは始まった

このショーは30分程度のもので、カマイルカやアシカが様々な芸をしてくれる

どうやら回によって演技の内容が変わるらしい

 

説明はこのくらいにして、俺は目の前のイルカ達に魅了されていた

水族館に行ったことある人なら一度は驚いただろう

人間と動物がここまで意思の疎通をして見事な演技を披露する

今まで何回かショーを観たが、俺は毎回鳥肌が立つぐらい感動してしまう

ふと隣の千歌を見ると、彼女も目をキラキラされて目の前の光景を見ていた

 

 

「ねえ!見て見て、イルカが跳んだよ!わあ!尻尾で進んでる、すごーい!」

 

 

アホ毛がピョンピョンの揺れている

こんなに輝いた笑顔が見れて俺はそれだけで今日来てよかったと思えた

 

しばらくしてショーは終わった

 

「すごかったね!イルカが水の上をすーって尻尾で進んでたよ」

「ああ、あれはすごかった、あんなことができるんだな」

 

2人でさっきのショーの感想を言い合いながらゆっくり進む

 

 

「さて、じゃあ次はどこに行こうか」

「次はたくさん見て周りたいな」

「んー、じゃあ近いところから順番に見ていくか」

「うん!」

 

 

それからゆっくり時間をかけて水族館の中を周った

種類は少ないとはいえイルカやカメが泳ぐ姿は迫力があり退屈することはなかった

時折ショーを観に行ったりして水族館を謳歌しているうちにもう時刻は閉館時間となっていた

 

 

「今日は楽しかったね!」

「そうだな」

 

 

外に出るとまだ明るいものの空はわずかに夕焼け色に染まり始めていた

 

 

俺達はバスに乗り込み三津シーパラダイスを後にする

 

 

 

 

十千万前に着いた

バスを降り、これで終わりかなんて思っていると千歌が

 

「ちょっと歩かない?」

 

と言うので、浜辺を少し歩くことになった

 

 

空は先ほどと比べればより綺麗な夕焼け色に染まっていた

もう夏も終わり、秋がやって来る

毎年のことだけど、夏から秋への変化ってのは個人的にはより一層もの寂しく感じられる

 

 

「今日はありがとね」

 

少し前を歩く千歌が言う

 

「俺の方こそ楽しかったよ、ありがとう、千歌」

「私ね、りゅうくんと2人でお出かけしたかったんだ」

「小学校の時以来だもんな、こうやって2人だ遊ぶのは」

「そういうことじゃないよ」

 

千歌の足が止まり、声を少し強くなる

 

「私ずっと思ってたんだ、この気持ちをいつか伝えたいって。自分の言葉でちゃんと伝えたいって」

 

正直千歌の言ってる意味が理解できなかった

まさか彼女が俺と同じ想いを抱いてるなんて思いもしてなかったから

 

千歌は踵を返し俺の方を向いて、さらに続ける

 

「優しくて、いつも私のこと見ててくれて、こんな普通な私のことを気にかけてくれて。私ね、そんなりゅうくんのことが…」

 

その言葉を聞いた途端俺は千歌に抱きついていた

 

「りゅうくん…?」

「千歌、お前は全然普通なんかじゃない。確かに寝坊助でおっちょこちょいで抜けてるけど、俺は千歌が見せてくれる笑顔が、その太陽のように輝く笑顔が好きだ」

 

俺の本当の気持ち

ずっと伝えたかった

 

「私もりゅうくんのこと大好きだよ」

 

 

そして彼らは腕をほんの少しだけ解き、お互いに見つめ合い、夕焼け色の海をバックに唇とくちびるを重ね合った

 

 

 

ある高校生の甘酸っぱい一夏の思い出

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょっと、本編でシリアスな感じが続いてたので、こんな感じもどうですかね?
最後少し強引な気がしますが、私の今の実力ではこの程度しか書けませんでした。

私の自己満にお付き合いいただきありがとうございます。
本編の方も執筆中ですのでもう少しお待ちください

感想等あればまたお願いします

それでは次回は本編でお会いしましょう

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