更新が遅れてしまい申し訳ないです。
何だろうこの感覚…
いや、この感じ、俺は体験したことがある…
そうか、俺は、また…
◆
お母さんからの電話を受け、急いで駅に戻り電車に乗った
車内は先ほどまでとは違った緊張感が漂っていた
ひとつひとつの駅までが異常に長く感じる
彼の過去を知った、そして彼は倒れ、運ばれた
もしかしたら、もしかしたら…
そんな想いが私達を一層焦らせる
しかし、列車はスピードを緩めることはしないが、加速することもない
私達が沼津駅に着いた頃には、すっかり夕日は地平線を潜ってしまっていた
電話で話した場所に向かって一心不乱に走り続ける
『考える』その行為の前に身体が動き出していた
ただ、仲間の無事を願って走り続ける9人
いくら沼津と言えど、夜は東京と違って暗い
それでもわずかな明かりを頼りに彼のもとへ向かう
走り続けること数十分
やっとの事で辿り着いたそこの入り口をくぐると、私達のものにお母さんが駆け寄って来た
そして、すぐに病室に案内され、そこで目にしたのは身体中に管を巡らせている私の片恋の相手だった
「りゅうくん、りゅうくん!」
私は彼を見た瞬間涙が出てきて、気がついたら名前を呼んでいた
他のみんなも彼に呼びかけている
しかし、反応は皆無
『ピッ、ピッ…』という電子音だけが一定の間合いで鳴っているだけ
それでも呼び続けた、そうしないと本当にどこか行ってしまいそうなそんな気がした
そうしていると、病室に先生と話を終えた彼のお母さんが入ってきた
そして申し訳なさそうな顔をしてこう言った
「ごめんなさい」
と。
私は意味がわからなかった
どうしてりゅうくんのお母さんが謝らないといけないんだろう、どうして私達は謝られているのだろう
本当に1番悲しいのは彼女のはずなのに、なのに、その本人の表情にはどこか今の状況に安堵しているそんな感じが見られた
そしてそのまま私達にこう伝えた
「今ね、先生と話してきたの。そしたら、もういつ
嫌だよ…そんなの…
「今まで手術はしてこなかったけど、“オプジーボ”っていうものを投与して進行や転移をできる限り抑えてきたけど、この子にはもう限界みたい…
ごめんなさい、千歌ちゃん、曜ちゃん、aqoursのみんな。」
「嘘だよ…」
「千歌ちゃん…」
嘘だよ…私まだ何も伝えられてないのに
まだ、みんなでステージに立ちたいのに
「嘘だよね、そうだよ、きっと夢だよ…ほら、頬っぺたつねっても痛くないもん、ほら、全然痛くないよ、やっぱ夢だよ、夢なんだよ。
ね、ほら、りゅうくんも早く起きないと学校に遅刻…」
「千歌!!」
お母さんに呼ばれた、夢の中で
そして、抱き寄せられた、それはとても温かくて…
知ってるよ、夢じゃないって
わかってるよ、でも、嫌なんだよ…
「嫌、嫌だよ…」
泣いた、今までにこれ以上に泣いた日があっただろうか
私も、曜ちゃんも、みんなも、
9人の泣き叫ぶ声が部屋中に響き渡る
「はぁ…、うるせぇ、なぁ…」
それはか細く弱々しい声だったが、私達の耳にはちゃんと届いた
「りゅうくん!」
「たく、病院では静かにしろっての、そんなことも守れねぇでよくスクールアイドルなんてやってるぜ、まったく」
みんなも駆け寄ってくる
「満生から聞いたんだろ?」
私達は黙って頷く
「ごめんな、今まで、黙ってて。言いたくなかったんだ、もし言えば、お前らに気を遣われそうだから。俺のことを気にせず、練習やラブライブに向けて、そっちに集中してほしかったんだ。」
私達はそのいつ枯れてしまってもおかしくない彼の言葉をしっかりと聞き取る
「俺な、2年前、余命を宣告された時、まず千歌や曜の顔が浮かんだんだ…その時思ったよ、俺、あいつらの為に人生賭けていい。ってさ
何かできたらなと思ったんだ、こんな俺に優しくしてくれて、なのに俺は身勝手に目の前から消えて、それで今度は何もできずにお前らと別れるのなんて嫌だなって思って。ここに帰ってきた」
「そんなこと抱えてるなら言ってよ!そしたらスクールアイドルなんて誘わなかったのに、りゅうくんは自分の為にもっと時間が使えたのに…」
「バカだな、千歌が俺にチャンスをくれたんだ。何が出来るか、俺なんかに何か務まるのか、そんなこと悩んでる時に千歌がスクールアイドルに誘ってくれた。そのおかげで俺は千歌や曜、それから果南や梨子、ルビィ、マルちゃん、善子、それからダイヤとマリー
こんなに素晴らしいメンバーと“aqours”として過ごすことが出来た。
俺にとってこれ以上にない価値ある時間だったよ」
「それならどうして、私たちの前から居なくなっちゃったのさ!りゅうくんと一緒に頑張って、ラブライブに出たかったのに、どうしてあんなことしたのさ!」
口調が鋭くなった
悔しかった、気づかなかった自分が、何もしてあげられなかった自分が
「足手纏いになりたくなかった。俺が支えなくちゃいけないのに、その自分がaqoursの中でお荷物になるのが嫌だった。
俺がこのままaqoursの中にいれば必ずお前らの負担になる
だから、いっそこのまま…」
「そんなことない!」
私は思わず立ち上がった
「迷惑なんて、足手纏いなんて、そんなこと絶対ない、絶対思わない!だって私達は、鞠莉ちゃんがいて、ダイヤさんがいて、果南ちゃんがいて、ルビィちゃんや花丸ちゃん、善子ちゃんがいて。梨子ちゃんがいて。曜ちゃんがいて! 私がいて、そして、りゅうくんがいて!
10人揃って“aqours”なんだもん!りゅうくんはaqoursの
「千歌…」
「私ね、スクールアイドルをいざやるって決めた時、すごく不安だった。でもね、龍が私達の背中を押してくれたからどんな逆境も跳ね除けてこれたんだよ」
「私もそう。龍騎君が居たからここまでやってこれた。私って弱いから、でも、龍騎君が支えてくれたからなんだよ?必要ないわけないじゃない」
「ルビィが本番前でドキドキしてる時、いつも隣にお兄ちゃんがいてくれた。そして、うまくできた時はすごく褒めてくれた。ルビィはそれが嬉しかったよ」
「マルをこの世界に連れ出してくれたのは龍にぃズラ。本の世界ももちろん好きズラ。でも、マルはルビィちゃんやみんなと、aqoursに入って本当に幸せズラ。ありがと、龍にぃ」
「何ふざけたこと言ってんのよ。私を孤独の闇から救い出してくれたのはルシファーじゃない。あなたのおかげでこんなにも素晴らしい人達と出会えた。足手纏いなんて思うわけないじゃない!」
「龍騎さんが居なければ、私達がもう一度スクールアイドルをやることはありませんでした。今考えてみるとそれはそれでありだったかもしれません。ですが、やっぱり、今はもう一度やってみてよかったと思います。
あなたは紛れもなくaqoursのメンバーですよ」
「リュウがいなければ、私はいつまでも自分の身勝手を押し付けていることに気がつかなかった。リュウのおかげで今の私がある」
「最初は驚いたよ、なんで千歌達を手伝うのか、私たちの過去を知ってなお、どうしてまた始まるのか。龍騎、言ったよね?やってみなきゃわからないって、千歌達の輝きに賭けてみたいって。バカだなって思ったよ。
でも、やってみせた。やっぱ君は凄いよ、こんな状態になるまで頑張って、そんな人がaqoursに必要ないわけないでしょ…」
「みんな…」
みんなバカだ。
こんな管が繋がれた状態になっても、満足に動けなくても、そんな奴をaqoursのメンバーだとか、10人目だとか、必要だとか。
ほんと俺の周りにはバカしかいないみたいだ。
でも、
「俺もとんだ馬鹿野郎だな」
『ばかだよ』
病室に今度は笑い声が響き渡る
久しぶりに見る彼女たちの笑顔
やっぱり彼女達にはその顔が1番似合ってる
その顔の時が1番輝いてるから
「これ、よかったら受け取ってほしい」
俺はUSBと封筒を手渡す
「これは?」
「多分俺が出来る最後の仕事だ」
封筒の中には数枚の紙が入っていた
これは…歌詞?
「これ、りゅうくんが書いたの?」
「あぁ、何か最後に残せたらなと思って、予備予選決勝。近いんだろ?
ラブライブは未発表の曲出なきゃいけないんだ、千歌達が良ければその曲使ってくれよ。USBに音源ははいってるから」
りゅうくんが作ってくれた曲。
今まで手伝ってくれたことはあったけど…
これが最初で最後のりゅうくんの曲…
「ありがとう」
「ほら、もう遅いから帰れよ」
「うん」
私達はそのまま病院を後にし、お母さんとりゅうくんのお母さんの車で分かれて帰った
少し短めですが、ここで終わります。
投稿期間が空きましたが、この作品はあと4話で終わります。
その内3話分を連続で出したかったので少し遅れました
したがって今日含め3日間連続で出しますのでよろしくお願いします
コメントを下さった方ありがとうございます
また評価などあったらよろしくお願いします
それではありがとうございました