後日談の時間   作:神鳥ガルーダ

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茅野カエデの事情

 私の名前は雪村あかり。

 小さい頃『磨瀬榛名(ませはるな)』という名で子役をしていて、現在、同名で女優業に復帰し売り出し中。

 そして、私にはもう一つ名前がある。

 

 “茅野カエデ”

 

 中学3年生の時、正体を隠す為に名乗った偽名。

 でも、皆からそう呼ばれている内にすっかり気に入り、中学3年のクラスメートたちからは今もそう呼ばれている。

 理由は、お姉ちゃんを殺した(と思い込んでいた)超生物『殺せんせー』を殺す為、あの人に正体がバレない様にする為。

 お姉ちゃんの仇を討つ為なら自分がどうなっても構わず、『触手』を移植し、茅野カエデを演じて殺せんせーを殺す機会を待っていた。

 でも半年以上、殺せんせーと付き合って疑問が生じた。

 

 この人が本当にお姉ちゃんを殺したの?

 私の知らない別の事情があるのかもしれない。

 

 殺意に自信が持てなくなった私は、殺す前に真相を確めるべきなんじゃないかと思った。

 でも、移植した『触手』に宿った殺意はそれを許さず、私は暴走し、殺せんせーを殺しにかかった。

 そんな私を殺せんせーは救ってくれた。

 殺せんせーは自分を殺そうとした私を命を賭けて助けてくれた。

 殺せんせーからお姉ちゃんの死の真相を聞き、私は復讐から解放された。

 そして、殺せんせーと共に私を救ってくれたもう1人の恩人『潮田渚』。

 渚は私にとって初恋の相手だ。

 最初は、クラスで席が隣で初めて仲良くなった友達だと思っていた。

 だけど一緒に過している内に、私は渚を異性として好きになっていた。

 移植した『触手』の痛みに耐えている時は気付かなかったけど、暴走した私の殺意を弱める為に……その……キ…キス…された……時に……気付いちゃった。

 私は渚の事が好きなんだって…。

 それから私は渚の友達『役』を演じていた。

 最も、渚以外の人たちには気付かれていたけど…。

 バレンタインの時にチョコを渡そうとした時、私は渚を好きになった理由に気付いた。

 私は真っ直ぐ目標(ターゲット)に向かっている渚の顔を好きになったんだという事。

 お姉ちゃんと復讐を無くした私が空っぽにならずに済んだのは渚のお陰。

 渚が復讐に狂って暴走した“私”を殺してくれて、私の心を満たしてくれたから。

 だから、殺せんせーみたいな教師(せんせい)になるという渚の目標に余所見をさせちゃいけないと思って、今まで友達『役』を演じてきた。

 

 

 

 

 

 あの殺意渦巻く暗殺教室から約7年。

 明日、渚と会う約束をしている。

 そして、友達『役』を演じる最後となる日だった。


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