敵の子供のヒーローアカデミア   作:まゆう

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USJまでは入ってません。
文才もなければまとめる才能もなかった…


敵襲撃編 1

 現在、円と一佳は通学路を走っていた。

 

「円!あんたのせいだからね!!」

「だからごめんって!」

 

 このやり取りからもなんとなく察せるかもしれない。急ぐ理由は単純、円が寝坊したせいで遅刻しそうなのだ。

 怒るんだったら置いてけよ、と円は思うのだがこの姉御肌な幼馴染は律儀に円を起こし、待っていてくれていたのだ。

 

 遅刻を回避するため、走っていると雄英の校門が見えてくる。円と一佳はそれなりの距離を走ったはずだが汗はかいていても息はほとんど切れていない。日頃の訓練の賜物だ。円だけでなく一佳もかなりの体力がある。

 

 校門の前は遅刻ギリギリの時間なのに騒がしかった。生徒たちの喧騒ではなくマイクやカメラを持った大勢の大人たち。つまりはマスコミが大量に校門の前に詰めかけている。

 

「なんだあれ…、校門入れねぇじゃん」

「なにあれ?マスコミ?なんであんないっぱい…」

 

 マスコミの方から、オールマイトとかすかに聞こえてくる。恐らくは、いやほぼ確実に教師に就任したオールマイトについてなにか聞き出したいのだろう。No. 1ヒーローも大変だ。

 そして、マスコミも邪魔だか校門には侵入者対策用のシャッターが降りている。あれではどちらにしろ学校へは入れない。

 

「あの中突っ込むのは面倒だな。しかもなんかシャッター降りちゃってるし…」

「だね。塀飛び越える?」

「それが一番かな。んじゃちょいと失礼!」

「きゃっ!ちょっと円!」

「暴れんじゃねぇよ!飛ぶから捕まってろ!」

 

 塀を飛び越えるために一佳をいわゆるお姫様抱っこの形で抱き上げる。暴れ出す一佳は無視して、飛ぶ衝撃を増幅して塀を飛び越える。

 

「ほい、到着。ギリギリセーフだな」

「あんたねぇ…、急にあんなことすんな!びっくりするだろ!!」

 

 お姫様抱っこが不満だったらしい一佳が円に文句を叩きつけてくるが塀を飛び越えるには、円が手伝わなくてはならなかったのだから文句は言うべきではない。恐らく、問題は抱き上げた方法なのだろうが、円はそれを気にしないことにした。

 

「円城、拳藤、遅刻ギリギリだぞ。さっさと教室に行け」

 

「うおっ!びっくりした…。って、相澤先生か…」

「外にマスコミが詰めかけてシャッターが閉まったんだ、塀飛び越えたことはなんも言わん。だから、さっさっと教室行け」

「はーい、すいません」

「すいません!相澤先生!」

 

 相澤に他に何か言われないうちにさっさっと教室に向かう。気の抜けた円の返事に、一佳が肘を入れてくるがそれを受け入れて、2人はそれぞれの教室に向かった。

 

 ▽ ▽ ▽

 

 遅刻ギリギリに教室に滑り込んだ円に対して何かを言ってくるクラスメイトが何人かいたがそれらは軽く無視して席に着けば、すぐにHRが始まった。

 

 最初に昨日の戦闘訓練について、というよりは緑谷と爆豪に対して言い含めていた。

 円は特に関係なかったので肘をついて顎を手に乗せ、ぼーっとしていたのだが何故か円にも飛び火してきた。

 

「円城、今日は仕方ないとして、次同じことやったら反省文書かせるからな」

「…はい…」

 

 恐らくは朝のことを言っているのだろう。相澤のことだ、次に同じようなことが起これば反省文は絶対だろう。寝坊するわけにはいかなくなってしまった。

 

 これでHRで話すことは終わりかと思っていたのだが何やらここからが本題らしい。

 

「HRの本題だ。急に悪いが」

 

 この一言でクラスメイトたちに緊張が走る。相澤ならば何かが起きる気がしているのだろう。初日の個性把握テストことが予想以上に身体に染みついているらしい。

 

「君らには学級委員長を決めてもらう」

 

 ものすごく普通の学校っぽいイベントだった。初日の個性把握テスト、昨日の戦闘訓練と続いて学校っぽさが麻痺してしまっていたのだろう。

 さて、円は特に学級委員長をやるつもりはないが他のクラスメイトたちは違うらしい。俺がやる私がやると挙手合戦だ。

 普通ならめんどくさい役職でも円がいるのはヒーロー科。みんなリーダーになりたいのだろう。

 これじゃあ決まんなそうだ、と円が思っていると「静粛にしたまえ!」という飯田の声が教室に響いた。

 周りが静まり飯田が言葉を続ける。

 

「他を牽引する責任重大な仕事だぞ。やりたいものがやれるものではないだろう。周囲からの信頼あってこそ務まる聖務。民主主義に則り真のリーダーをみんなで決めるというのなら、これは投票で決めるべき議案!」

 

 かなりの説得力を持った言葉だっただろう。もし、飯田の腕が「自分がやりたい!」とばかりにそびえ立っていなければ…。

 

 何故発案したと上鳴が、日も浅いのに信頼もクソもないわと梅雨ちゃんが、そんなんみんな自分に入れられぁと切島が突っ込む。

 

「だからこそ、ここで複数票とったものこそが真にふさわしい人間ということにならないか」

 

 なるほど一理あると円は思う。そして、飯田が続ける。すでに寝袋にくるまった相澤に向け、「どうでしょう先生!」と。

 誰も突っ込んでいないが、教壇に立ちながら寝袋に入るって一体なんなんだ…。

 そんな相澤は「時間内に決めりゃなんでもいいよ」とのことだ。つまりA組の学級委員は投票で、決まることがここに決定した。

 

 ▽ ▽ ▽

 

 投票の結果、緑谷が3票を集め委員長に、八百万が2票で副委員長になった。

 ちなみに飯田は1票。円は飯田に入れたので恐らく飯田は他の誰かに入れたのだろう。1票入ったことに感極まっていた飯田が印象的だった。

 

「A組は委員長緑谷って子になったんだ。3票も集めるなんてすごいね」

 

 今日も円は外のベンチで一佳と昼食を取っている。円は弁当を何度も遠慮しているのだが、一佳の母親は「そんなの関係ない!」とばかりに毎日作ってくれる。

 

「そうだな、確かに3日で3票集められんならすごいな。お前もB組の委員長になったわけだけど」

 

 そう、A組が委員長を決めたなら、B組も当然委員長が決定する。そして、見事B組の委員長の座を得たのが隣に座る少女、拳藤一佳なのである。

 

「私もやるからにはしっかりやるさ。というか、話聞く限りあんたは委員長やる気なかったみたいだけど」

「だって面倒じゃんか。普通科だろうがヒーロー科だろうが、所詮雑用係だろ」

「あんたねぇ…、仮にもヒーロー志望なんだからみんなを率いる立場になりたいとか思わないの?」

「全く思わん!もし、やれって言われたならやってもいいけど、わざわざ自分で面倒背負うのはな。それなら訓練してた方が建設的だ」

 

 面倒ごとを引き受けるくらいなら、強くなるために訓練をしていたい、というのは円の本心だ。委員長になんの価値もないとは思わないが。

 

「まぁ、あんたがそう思ってんなら私はなんも言わないけどさ」

 

 ん、とだけ返事をして弁当を食べ進める。大きめの弁当には昨日と同じように円の好物のおにぎりがたくさん詰まっていた。

 

 会話が止まりお互いに弁当を無心に食べているときだった。

 

 ジリジリジリジリジリ!!

 

「なんだこれ?警報?」

 

 突然警報が鳴り響いた。

 

『セキュリティIIIが突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外に避難してください』

 

「だってさ、一佳」

「私たちは一応外にいるけど…、ていうかセキュリティIIIってなんだ?」

「一佳が知らないならおれが知ってるわけないだろ」

 

 円と一佳は外にいるので関係ないが、校舎内は大パニックだ。全員が迅速に避難しすぎて大変なことになっている。

 

「とりあえず校門の方行ってみようぜ」

「校門?なんで?」

「校門の方でことが起こってるからだ」

「あんた"個性"使ったでしょ」

「気にすんなよ、行くぞ!」

 

 円の"個性"を使えば何が起きたのか把握するのは難しいことではない。つまり、マスコミのせいでこの状況になったこともわかっている。問題はボロボロに崩壊していた校門のシャッターだ。

 

 走っている途中上鳴と切島が人に飲まれるのが見えたので手を振ってついでにウインクまでつけたら一佳から殴られたのは置いておく。

 

「見えた!」

「なにあれ…、ボロボロじゃん!あれをマスコミがやったの?」

「そんな訳ねぇだろ!多分あいつだ!奥にいるやつ!」

 

 マスコミの横を駆け抜ける!後ろの方で相澤とプレゼントマイクの制止の声が聞こえるが無視する。校門のシャッターを崩壊させたやつを追いかける。

 

「ちょっと!円どこまで行くの!」

「もうすぐ追いつく!」

 

 校門を出て追いついた、と思えば謎の男は忽然と姿を消していた。円は"個性"も併用して居場所を完全に突き止めていた。

 まるで突然消えたかのようだ。

 

「円?どうしたの?」

 

 突然動きを止めた円を不審に思ったのだろう。追いついてきた一佳が後ろから声をかけてきた。

 

「…消えた」

「え?」

「突然消えたんだ。おれの知覚範囲から高速で出て行ったんじゃない。消えたんだよ。瞬間移動でもしたみたいに」

 

 ▽ ▽ ▽

 

 その後、警察が到着しマスコミたちは帰っていった。

 だが、円は安心できなかった。今回の騒動はマスコミなんかが問題ではない。問題は1人の人物が意図的に雄英に攻撃を仕掛けた事実だ。

 

「あの、円城くん?えっと反対だったりしたかな?」

 

 考え事をしてたせいで自然と眉間にシワがより緑谷を睨んでいたように見えたらしい。

 

「すまん、考え事してた。なんの話だ?」

 

「おいおい、正面睨んだまま考え事って一体なに考えてたんだよ?」

 

 上鳴のこの茶化しに峰田が「ヤオヨロッパイなのか!」と、とんでもないことを言ってきた。八百万が胸を押さえてまるで汚物を見るかのように峰田を見ている。

おれの方に飛び火してこなくてよかった、と円は本当に安心した。

 

「お前ら揃いも揃って最低だぞ。見ろ、女子引いてる」

 

 上鳴と峰田のゲスい勘ぐりにA組の女子たちは完璧に引いていた。

 

「それで緑谷、なんの話だったんだ?」

 

 話が一向に進む気配がないので円が先を促す。相澤が不機嫌そうな目で睨んでいたので早く進めねばならなかった。

 

 話を聞くにどうやら飯田の方が委員長にふさわしい、ということで飯田が委員長に就任したらしい。そして、前を見ると睨んでいる円がいて反対なのかと、勘違いしたらしい。

 

「すまん、ややこしくした」

「いや、大丈夫だよ!それでどうかな?」

「緑谷がいいならそれでいいだろ。おれから特に言うことはないよ。おれはもともと飯田に投票してたしてたしな」

 

「円城君だったのか!俺に投票してくれたのは!君の期待に応えられるよう!この飯田天哉、誠心誠意勤めさせてもらう!」

 

 円の言葉に反応したのはやはり飯田だった。やる気に満ち溢れているようだ。きっと彼なら十分に委員長としての務めを果たしてくれることだろう。

 

「そ、そうか。頑張ってくれ…」

 

 少し引いてしまったのはどうか許して欲しい。

 




拳藤さんの口調安定しない…。やっぱり漫画読み返さなきゃダメかもしれない…。

よかったら感想、評価お待ちしてます!

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