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「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイト、そしてもう1人の3人体制で見ることになった」
午後の授業であるヒーロー基礎学、担任の相澤の最初の一言がそれだった。
「見ることになった」つまり予定が変わったと言うことだ。シャターが崩壊したときに近くにいた謎の男の話は既にしてある。万が一敵が襲ってきたときの為の対策なのかもしれない。
「はい!何するんですか?」
瀬呂のこの質問に相澤はRESCUEと書かれたカードを見せ、こう答えた。
「災害、水難なんでもござれレスキュー訓練だ!」
クラスメイトたちがざわついていく。ヒーローの活動は敵を倒し捕まえることだけではない。むしろ災害救助などのレスキュー活動もヒーローの立派な仕事だ。
周りの生徒たちに合わせ、人命救助ならおれの独壇場だな、と思っていると相澤の声が響く。
「おい、まだ途中」
途端に静まり返るクラスメイトたち。最初の脅しが未だに聞いている証拠だ。
「今回、コスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を限定するコスチュームもあるだろうからな。訓練場は少し離れた場所にあるから、バスに乗っていく。以上、準備開始!」
クラスメイトたちが動き出す。円も合わせてコスチュームをとって着替えに向かう。円のコスチュームはどんな状況でも同じだけのポテンシャルを発揮する。故に着用しないなんてことはありえないが、他のクラスメイトたちも着用しないやつはいないだろう。
緑谷はこの前の戦闘訓練でボロボロだったのでまだ直っていないかもしれないが。
全員が着替え終わり、バスの近くに集まっていると上鳴が声をかけてくる。
「円城の"個性"だったらレスキュー訓練とか余裕そうだよな」
「確かにな!なんたって全部見えんだもんな!」
上鳴に切島までも乗ってくる。まぁ、2人の言うことはもっともだ。正確には千里眼のように見えるのではなくて、感じ取るといった意味合いが近いのだが、まぁ似たようなものだ。
「だな、レスキュー訓練、とくに人命救助なら誰にも負ける気しないぜ」
この円の言葉に2人は羨ましい、ずるい、すげー、などと反応しそのまま会話を続けていると、ピィーという笛の音が鳴った。
「1A集合!!バスの席順でスムーズにいくよう、番号順で2列に並ぼう!」
笛を吹いたのは案の定、飯田だった。委員長として張り切っているようだ。
だが、バスに乗ってみれば悲しいかな。席の形が2列ずつに並ぶような席ではなかった。
飯田はがっくしとうなだれている。
そんなうな垂れた飯田をよそにバスでの会話は弾んでいく。
「私思ったことはなんでも言っちゃうの。緑谷ちゃんあなたの"個性"オールマイトに似てる」
この梅雨ちゃんの一言に緑谷がかなり慌てた様子を見せ、「待てよ梅雨ちゃん、オールマイトは怪我しねぇぞ。似て非なるあれだろ」という切島の言葉にあからさまに安堵の様子を見せる。
「でも、やっぱ単純な増強型はいいな。派手でできることが多い。俺の硬化はいかんせん地味なんだよなぁ」
切島が自身の腕を硬化させつつ言った一言に、円が声を返した。
「いいだろ、硬化。地味だけど強力な"個性"だ。ゴリ押しができるってのは強みだろ?」
「でもよぉ、言ってもプロって人気商売みたいなとこあるぜ。派手な"個性"の方がやっぱその辺有利だろ。まぁ、派手でつぇって言ったら轟と爆豪、それに円城だな」
「おれのは所詮衝撃波だ。目に見える形がある轟と爆豪のほうが派手だろ」
円の"個性"はこの前の一件でクラスのほぼ全員にバレてしまった。
「爆豪ちゃんはキレてばっかりだから人気出なさそう」
「んだとゴラァッ!!出すわ!!」
梅雨ちゃんの一言に爆豪がキレる。早速梅雨ちゃんの言った通りになってしまっている。隣では耳郎が嫌そうな顔をしている。爆豪の隣に座ってしまったのが運の尽きだ。哀れ耳郎よ。
「この付き合いの浅さで、既にクソを下水で煮込んだような性格って認識されてんのすげえよ」
「てめぇのボキャブラリーはなんだ!コラッ!殺すぞぉ!!」
上鳴の言葉選びのセンスが輝いている。円も思わず吹き出してしまった。
「今、珍しく上鳴すげぇって思った。その言葉選びのセンスは最高だな」
「んだとゴラァッ!!てめぇもぶっ殺すぞクソが!!!」
「なんで俺まで攻撃してくんだよ!ひどくねぇ円城!」
「これから爆豪のニックネームはクソ下水煮込みで決定だな」
「ふざっけんじゃねぇ!!ぶっ殺すぞ!!」
爆豪の顔がやばいことになってきたのでここらで爆豪いじりをやめることにする。飯田が間に入ったこともあるしな。
「おい、お前たちもう着くぞ。いい加減にしとけ」
「「「はい!」」」
相澤の言葉に返事をしてバスは演習場へと到着した。
▽ ▽ ▽
「みなさん待ってましたよ」
演習場の前でA組を待っていたのはスペースヒーロー13号だ。災害救助で目覚ましい活躍を見せる人気ヒーロー。
クラスメイトたちも興奮を隠しきれていない。
「早速中へ入りましょう」
「「「よろしくお願いします!」」」
13号に促され演習場の中へと入る。
そこに広がっていたのは驚きの光景だった。
切島の「すっげーUSJかよ」という言葉に円も同意したい気分だ。演習場の広大な敷地の中には山岳地帯やでかいプールにドーム状の建物と、まさにテーマーパークのような光景だ。
流石雄英、ヒーロー科最難関と言われるだけの設備だ。
「あらゆる事故や災害を想定して僕が作った演習場です。その名も、嘘の災害や事故ルーム!略して、U、S、J!!!」
(((本当にUSJだった!)))
まさかの本当にUSJという名前だったことにA組一同驚きを隠せない。著作権とか権利的な問題は、多分学校内だから大丈夫なんだろう。
「え〜、始める前に小言を一つ、二つ、三つ、四つ、五つ…」
相澤と何事かすこし話した後に、13号が円たちに向けて話をする。
小言がどんどん増えていっているのは置いておこう。
「皆さんご存知のことと思いますが、僕の"個性"はブラックホール。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」
「その"個性"でどんな災害からも人をすくい上げるんですよね!」
13号の言葉に反応したのは緑谷だ。ヒーロー科の生徒なら13号のことを知らない人はいないだろう。ブラックホール、超強力な"個性"だ。円の"個性"よりもよっぽど強力だ。13号はこの"個性"で人をあらゆる災害から助け出す。だが、
「ええ、しかし、簡単に人を殺せる力です」
13号のいう通りだ。強力な"個性"故に、殺そうと思えば簡単に人を殺せてしまう。
「みなさんの中にもそういう"個性"がいるでしょう。超人社会は、"個性"の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているように見えます。しかし、一歩間違えば容易に人を殺せる、いきすぎた"個性"を個々が持っていることを忘れないでください。相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている、可能性を知り、オールマイトの対人戦闘訓練で、それを人に向ける危うさを体験したと思います。この授業では心機一転、人命のために"個性"をどう活用していくか学んでいきましょう。君たちの力は人を傷つけるためにあるのではない。助けるためにあるのだと、心得て帰ってくださいな」
「すげぇ…」と円の口から思わず声が出た。だがそれに注目するやつは誰もいない。みんながそれぞれ、この13号のことばに感銘を受けているからだ。
災害救助の第一線で活躍するプロヒーローからのこの言葉の重みは相当に重い。円はぎゅっ、と拳を握る。
「以上、ご静聴ありがとうございました」
13号が華麗にお辞儀を決めたと同時に歓声が上がる。隣の上鳴が「かっけぇな」と声をかけてきたので円も「そうだな」と返す。
「ようし、そんじゃまずは…」
相澤が言葉を発したときだった。USJ内部の電源が急に落ちる。明かりが消え、USJが暗くなる。
そしてやつらは現れた。
円たちのいる場所から下方、中央にある噴水のすぐそばに黒い霧のようなものが現れる。
「ひとかたまりになって動くな!!13号!生徒を守れ!」
相澤の指示が飛ぶ。クラスメイトたちは何のことかわかっていないようだったが、円にはわかった。あの黒い霧から出てきた男に見覚えがあったからだ。
マスコミが雄英に押しかけたあの日、校門をボロボロに崩壊させたと思われる男が、黒い霧から現れた。
そして、それに続きたくさんの人間が現れる。
「もしかして、あの入試んときみたいなもう始まってるぞパターン?」
切島の声が聞こえてくる。呑気すぎる。あれはそんな生易しいもんじゃない。
「馬鹿言うんじゃねえよ切島」
その後偶然にも相澤と円の声が被った。
「「あれは、敵だ」」
クラスメイトたちが驚愕するが、無理もない。そもそもヒーローたちの巣窟たる雄英に敵が侵入してくるなんて前代未聞だろう。
経験したことのない、途方も無いような悪意が円たちに向けられる。
「相澤先生、あの顔に手がくっついてるやつ。あいつこの前の校門を壊したやつです」
「そうか、あれもやはりクソどもの仕業だったか」
「先生、侵入者用のセンサーは?」
「もちろんありますが…」
八百万の質問に13号が答える。
「現れたのはここだけか、学校全体か、何にせよセンサーが反応しないってことはそうゆうことができる"個性"が向こうにいるってことだ。校舎と離れた隔離空間、そこにクラスが入る時間割、馬鹿だがアホじゃねえ。これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」
13号に続いたのは轟だ。やはり轟は優秀だ。動じた様子が見えず、この状況を冷静に判断できている。問題はやつらの目的が何なのか、だが…。
「13号、避難開始!学校に電話試せ。センサーの対策も頭にある敵だ。電波系のやつが妨害している可能性がある。上鳴、お前も"個性"で連絡試せ」
「っす!」
「円城、大まかにでいい敵の人数把握できるか」
「少し待ってください。…多すぎる、軽く50人は超えてます!噴水の前だけじゃ無い、他のところにもばらけてる…」
「そうか…、恐らくはお前らをバラすつもりだろう。だが、あそこを放っておいていいわけじゃない。任せた13号」
その言葉と同時に相澤が飛び出していく。クラスの何人かは心配をしている様子だが、それは失礼だ。相澤はプロヒーロー、あんなチンピラのような集団なら1人でも確実に切り抜ける。だが、何人かやばそうなやつもいる。それが気がかりだ…。
相澤が前を引きつけてくれている間に13号に従い全員で避難を開始する。
だが、やはりそう簡単に逃げさせてはくれないらしい。
行く手を阻むように出口の前に黒い霧が現れる。
「させませんよ。初めまして、我々は敵連合。僭越ながらこの度、ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは平和の象徴、オールマイトに生き絶えて頂きたいと思ってのことでして。本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるはず、なにか変更があったのでしょうか」
黒い霧が言葉を続けようとしているところに爆豪と切島が飛び出していく。爆豪の爆発の大きい音が響く。
「その前に俺たちにやられることは考えなかったのか!」
「馬鹿野郎!2人とも迂闊すぎる!!」
思わず、円の口から怒鳴り声が上がる。本当に迂闊だ、得体の知れない敵にいきなり殴るかかるなんて…。
「危ない、危ない。そう、生徒といえど優秀な金の卵。ああ、それと目的はもう一つ。正義の敵、最恐の敵と名高いブラッディこと、円城総一、その妻円城楓の忘れ形見。円城円くんを我々の仲間に迎えようと思いまして」
黒い霧から発せられたこの言葉に13号以外が凍りついた。円は隠していたはわけではない。現に雄英の教師たちは全員が知っていることだ。だが積極的に言っていた訳でもない。クラスメイトたちは誰もそのことを知らなかった。
「危ない!2人とも!!」
動きが完全に止まっていた爆豪と切島に、13号からの注意が飛ぶ。
「ですが、私の役目はあなたたちを散らして、嬲り殺す!!」
黒い霧が円たちを覆い隠す。この霧は言葉どおりなら円たちを散らすためのもの。敵たちの人数がばらけていたのはこのためか。
悪意は加速していく。
円はかなり遅くなったが確信した。敵の狙いが円である以上、これから先円はこの敵連合から狙われ続けることを…。
オリジナル要素入れるの難しいし、クラスが違う以上なかなかクラス単位の話だと拳藤さんが出せない…。
円の過去話は必ずどこかでやる予定なので両親のことについては突っ込まないで貰えると…。
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