異世界で剣術修行してみた件   作:A i

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今回の異世界で剣術修行してみた剣はエマちゃんと晋介君のイチャイチャに力を注ぎすぎたため出てくる魔女との戦いが後編に回ってしまいました。すみません。
なので今回は気軽にそして温かな目で読んでいただけると幸いです。
エマちゃんはすごく可愛く仕上がっていると思いますのでそちらを楽しんでください。
感想、評価待ってます。


魔女二人 前編

東の国、イーストステイトにもいよいよ冬が来た。

街灯によって照らされて、雪がチラチラと舞い落ちてくるのが見える。

普段は赤っぽいレンガ造りの町並みが一転、雪化粧に包まれている。

通りに面する家のまどからは暖かな光が漏れている。

中を見ることは敵わないが、どの家も穏やかで幸せな一家の団らんを楽しんでいるであろうことは想像に難くない。

そんな、静かで暖かな雰囲気のこの通りを今、向こうから二人の少女が手をつなぎ、スキップしてくる。

――雪を踏みしめるサクサクと小気味の良い音を無邪気に楽しんでいるようである。

少女達の見た目は対照的だ。

一人の少女は全身真っ黒だ。黒いシャツにジャケット。ズボンまで真っ黒である。しかし、そんなスタイリッシュな服装でありながら、緩くカールのかかったセミロングの黒髪やキュッと締まった腰回り、ぱっちりとした大きな紫紺の眼がしっかりとフェミニンな印象を与えている。

それに対してもう一人の少女は全身真っ白だ。白いコートを羽織り、白のトップスに白のズボン。なんと、服装だけでなく、セミショートの髪の毛までも美しい白色である。見た目はふんわりとした雪の妖精のようで、ともすれば甘過ぎコーデになりそうだが、きらりと光る金色の瞳が全体の印象を引き締め、甘くなりすぎていない。

そんな絶世の美女と言っても過言でない二人の少女が雪と戯れる姿はこの美しい町並みに溶け込み、大変絵になっている。

 

しかし、これはどこか奇妙なことではないか?

 

こんな年端もいかない少女がたった二人だけでこんな夜中に何をしに行くのだろう?

まるでお祭りにでも向かうかのようなテンションでどこかに向かっていく。

 

二人は鼻歌交じりに会話を交わす。

 

「ねえ、ギル?楽しみだよね、契約者がどんな人か。私、イケメンが良いなあ・・・。」

 

黒髪の子がどこかうっとりとしながら白髪の子に問いかける。

いつの間にかスキップをやめ、二人とも立ち止まっている。

すると、白髪の子もうっすらと頬を染めながら

 

「そうですわね、ペナ。私もどうせならイケメンが良いですわ・・・。」

 

二人の少女はどちらからとも無く顔を合わせ、にっこりとほほえむ。

お互いの意見が一致したことを喜んでいるようだ。

二人とも年相応の無邪気な笑みを顔に浮かべている。

すると二人は次に口にする言葉は分かっているとでも言うように互いに軽く頷き合い二人同時にこう言い放った。

 

「「殺すならイケメンに限るよね!」」

 

――思っていることがまた一緒だったことがうれしい。

 

そんなことでも話しているのだろうか。

二人とも満面の笑みを浮かべながら会話を続けている。

これ以上無いぐらいほほえましい光景。

しかし、さっきの会話を聞いた今となっては恐ろしくて仕方が無くなっている。

――さっきのは幻だったのか・・・?

自分の耳を疑うがあれは紛れもなく幻聴なんかではなかった。

なんということだ・・・!

 

――狂ってる・・・。あの少女達は・・・。

 

少女二人はまたスキップを再開し出す。

あれほど美しい光景に見えていたものが今はおぞましい光景にしか見えない。

これからなにが起こるのであろうか・・・。

 

こうして少女二人の姿は冬の夜に消えていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

雪が降った日はそれほど寒くない、という話があるがあれは嘘か?

普通に寒い!めっちゃ寒い!

こういうときは布団から出たくなくなるもんだ。

布団にくるまり、もぞもぞと動き、自分の体を温めようとする。

――ぬくぬくだにゃー・・・。

冬における布団のありがたさを存分に感じていると、パタパタ、と足音が近づいてくる。

すると

 

「起きなさい!晋介。今日は町に買い出しに向かうわよ!」

 

エマちゃんが俺の寝室のドアを激しく開け放ち、そういった。

――なんだって・・・?お出かけ・・・。つまり・・・。

 

「エマちゃんとデートってことですか!すぐに着替えて支度します!」

 

こうしちゃいられねー、早く着替えないと・・・。と思いパジャマに手をかけると

エマちゃんが顔を真っ赤にして

 

「なに急に脱いでんのよ!朝ご飯できてるから早く来なさいよ!」

 

そう言って、部屋から逃げるようにして出て行ってしまった。

なんか意外にウブな反応でキュンキュンしてしまった。やっぱりエマちゃんかわいい・・・。

そんなことを思いつつ着替えを済まし朝ご飯へとむかうのだった。

 

朝ご飯も八割方食べ終わり、和やかな雰囲気が流れている。

なんて幸せなんだ・・・。

美少女二人との団らん・・・。

しかも今日はこの後エマちゃんとデート。感動だっ・・・!

あ、そうだった・・。そのことを聞いとかないといけないんだった。

そう思い二人に聞いてみる。

 

「そういえば、今日は何で町に出かけるんだ?買い物?」

 

しかし、買い物はいつもエマちゃんか師匠のどちらかが行ってくれていたので俺はいったことがない。

というよりここに来てからただの一度も出かけたことなんて無かった。

師匠は口に運びかけていた卵サンドを残念そうにテーブルに置く。

なんか、ごめんなさい!食事の邪魔をして!

 

「それはだな、晋介君。君とエマに明日のクリスマス用の買い出しをお願いしたいのさ。」

 

なに!異世界にもクリスマスが存在するなんて・・・。

しかも、これっていよいよ本当にデートじゃん!

クリスマスの買い物なんてリア充の特権だと思ってたぞ。

俺もリア充デビューか・・・。

あんなにリア充を憎んでいたのに、いざ、自分がなると・・・なんというか・・・最高ですね、うん。

まあ、まだエマちゃんは彼女じゃ無いんですけど。

少し恨めしげにエマちゃんを横目で見る。

そこには、師匠と満面の笑みで明日について話すエマちゃんがいて、俺の視線に気づいたのか不思議そうに首をかしげる。

 

「どうしたの?もしかして晋介君は楽しみじゃない?」

 

そう言って少し伏せ目がちに見つめてくる。

 

「そんなわけ無いじゃないか!超楽しみだよ。」

 

エマちゃんのサンタコスとか・・・。やばい、絶対かわいいに決まってる。

そんなイヤラシい妄想をしていたのが顔に出ていたらしい。

 

「晋介君、きもい・・・。」

 

と普通に引かれてしまった。

しかし、エマちゃんのサンタコスは是が非でも見たい!見ずには死ねない!

これは今日の買い物でそれとなく着る流れにして、必ずエマちゃんのサンタ姿をこの目に焼き付けなければ!

俺がやらなきゃ誰がやる!

そんな謎の使命感にひとしきり燃え、自分を落ち着かせたのち

 

「ごめん。でも今日の買い物はもちろんだけど明日のクリスマスも最高に楽しみにしているよ。」

 

努めて平静にこう言った。

するとエマちゃんは顔を紅潮させてすこし照れているように見える。

すこし居心地悪そうに目線を泳がせてから一言

 

「私もその・・・少し、楽しみにしてるの・・・。」

 

と言い、上目遣いで俺を見つめてくる。

頬は赤く上気し目は少し潤んでいる。

何これ、なんかすっごく恥ずかしいんですけど・・・。

だけど、俺はなぜかエマちゃんの顔から目が離せなかった。

数秒、いや数十秒ともしれない長い時間見つめ合っていたと思う。

すると、

 

「お二人さん、熱々ですなー?」

 

声がした方を振り向くと師匠がとんでもないにやけ面でこっちを見ていた。

やばい、マジで恥ずかしくて死にそうなんですけど。

横では俺同様にエマちゃんが恥ずかしさに悶絶しているのが見える。

 

「その様子だと買い物は頼めそうだな。頼んだぞ、ラブラブカップル!」

 

そう言って部屋へ戻っていく師匠。

そして俺たち二人は声をそろえてこういったのだった。

 

「「ラブラブカップルじゃない!!」」

 

 

カランコローン   ありがとうございましたー

 

エマちゃんと買い物に来た俺だったが、正直なめていた・・・エマちゃんの購買意欲高すぎ。

今出てきた店で八軒目。

明日食べる食料はもちろんであるが、ケーキに、装飾品。

その他エマちゃんがほしいと思ったものがあればすべての店に入っている。

荷物持ちを任されている俺だが、すでに両手がふさがりつつある。

しかしこれがすべてサンタコスのためだと思えば安いものに思えてくる。

この辺で思い切ってエマちゃんに提案してみるか。

そう思ってエマちゃんに呼びかけてみた。

 

「エマちゃん。」

 

「ん?なに?晋介君。何か欲しいものでもあるの?日頃の感謝と荷物持ちしてくれているお礼になにか買ってあげなくもないけど?」

 

すっごくうれしそうな顔でそんなこと言われても・・・。このひねくれちゃんめ!

しかしこれは千載一遇のチャンスだ。

利用しない手はない。

 

「俺、ここの店に行きたいんだ。」

 

そう言って右前にあるお店を指さした。

 

「いいわよ・・・。って何よこの店!コスプレ専門店じゃない!」

 

そういって顔を真っ赤にする。

しかし今日の俺はこんなことでは負けない。

絶対に折れないぞ!

 

「良いから良いから。入るよ?」

 

そう言って手を引っ張り店内に連れ込んだ。

後ろから、「手・・・つないじゃった。」などと聞こえた気がするが気にしないでおいた。

いや、意識すると手汗出ちゃうから、ね?

俺も女の子の手を握ったのなんか初めてなんだから小声でそんなこと言われると意識しちゃうでしょうが!

なぜかキレ気味で言い訳をしている・・・。

そんなくだらないことを頭の片隅で考えつつ、サンタコスの売り場に直行した。

サンタコスのブースは明日クリスマスなだけあって一番大きいスペースを占めている。

へー、サンタコスって言ってもいろんな種類があるんだー、などと考えながらいろいろ物色していく。

お、これもいいな。お、あれもいい。

うーんと悩んでいると横に☆おすすめ☆とでかでかと書かれたパネルがある。

それを見るとヘソ出しタイプのサンタコスの様だ。

これいい!これだ!

そう思いエマちゃんの方を向き、満面の笑みで

 

「これ着て!」

 

とお願いした。すると、なんでこんなの・・・。みたいなことを小声で言っている。

ダメか?さすがに・・・。

と思っていると

 

「はあー、仕方ないわね。着てあげるわよ・・・。」

 

そう言って、試着室に向かって行ってしまった。

やばい、サンタコスが見られるとなって緊張してきた・・・。

試着室の前でそわそわしているとエマちゃんから、開けて良いわよ、と聞こえたので前にあるカーテンをゆっくりと開ける。

 

 

そこには女神がいた。

 

 

俺は文字通り絶句していたと思う。

 

短めのショートパンツやトップスの袖から伸びるスラリとした健康的な四肢。

大胆にあいたおへそ周りには無駄な肉など一切無くキュッと引き締まっている。

柔らかな生地を押し上げる、確かな胸の膨らみ。

ぽんぽんの付いた帽子がまだ幼さを残す顔によく似合っている。

 

俺はエマちゃんのすべてに目が釘付けになっていた・・・。

 

あまりにも長い時間エマちゃんを無言で眺めていたせいかエマちゃんは身をよじって

 

「何か言いなさいよ・・・。恥ずかしいでしょ?」

 

と言ってくる。そこでやっと我に返り言葉が口から出てきた。

 

「すげーかわいい。」

 

自然とそう言ってしまった。

やばい、きもいと思われる。

そんな風に思って身構えていると

 

「ありがと・・・。」

 

そう言って赤くなってうつむいてしまった。

それを見て俺も恥ずかしくなる、という負のスパイラル。

いかん、この連鎖たちきらなくては!

そんなことを思い必死に話題を探す。

うーん、と頭をひねっていると

 

「あの、脱ぐからそこ閉めてほしいんだけど・・・。」

 

「すんません!」

 

そう言ってすぐに閉めた俺なのであった・・・。

 

 

 

 

 

コスプレ専門店を後にした俺たちは次の店に向かっている。

何でも師匠のお墨付きらしく、今でもちょくちょくお世話になってるんだそう。

あ、あとあのサンタコスは師匠の分も併せて二着購入しました!

荷物はすでに俺の手にはないのだが、その理由を説明すると、

コスプレ専門店を後にする際、さすがに荷物が多すぎたのでどうしようかと悩んでいると

 

「しょうがないわね、全く。感謝しなさい。」

 

といいつつ、エマちゃんがお得意の魔法で城に転移させた。

いや、あるなら最初から使え!ともう喉まで出かかっていたがこらえた。俺、偉い。

 

なので今や俺は手ぶらとなってエマちゃんと最後の店に向かっている途中なのだ。

何でも町の外れにあるお店らしく先ほどと打って変わって人通りがめっきり減ってきている。

 

「しかし、何屋なの?その店は。」

 

とエマに聞くと、目線をちらりと送って

 

「魔法補助の道具を主に扱っている店よ。これなんか見たことあるでしょ?」

 

そう言って胸ポケットに入った時計のようなものを見せてくる。

たしかあれは転移魔法の安定化を助けてくれるんだったな・・・。

 

「なるほど、そういう便利グッズを取り扱う店か。師匠がちょくちょくお世話になっているのはそういうことね。」

 

「そ。だから、晋介君。くれぐれも機嫌を損ねないでね。売ってくれなくなんかなったらすっごく困るんだから。わかった?」

 

「ああ、分かったよ。」

 

そんな俺そそっかしいかな?

エマちゃんの方が危ない気がする・・・。

一人心の中で首をひねっているとエマちゃんが険しい表情になる。

 

「ここ、魔女が通ってる。しかもかなりの手練れ。魔力の残滓がこんなに濃いなんて・・・」

 

そんなことを口にしつつあたりを見回すエマちゃん。

何だって?この近くに魔女がいるかもしれないのか?

自然、警戒心が上がる。

 

「これ、一応持っておきなさい。」

 

そう言って俺に剣を渡してくる。

鞘から刃をのぞかせてみるとギラリとした刀身が顔をのぞかせる。

 

「どこにこれを?」

 

先ほどまで刀なんかを携帯している様には見えなかったのに・・・。

 

「ここよ。ここに仕舞っていたの。」

 

そう言って手首の内側にある印を見せてくる。

なるほど、お得意の魔法で収納できるのか。

便利すぎだろ!

心の中で全力の突っ込みを入れていると

 

「見えたわ。目的の店。ここよ。」

 

目の前には古びた木造の建物。

至る所が崩れかけておりとても営業しているとは思えないおどろおどろしさである。

周囲には人の気配はない。

 

「お邪魔しまーす。」

 

そう言って扉を開けた。

中はがらんとしている。

どうも店内には誰もいないようだ。

 

「誰かいませんかー?」

 

と呼びかけてみるが返事はない。

どうも休みみたいだな・・・。

そう思ったときだった。

 

すぐ後ろからとてつもない殺気を感じ、慌てて前に転がり、顔を上げる。

 

すると、ドアを閉めながら嗜虐的にほほえむ黒い美女がいた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございました。
いかがでしたかね?
エマちゃんのかわいさにグッと来た方がいれば感想にて語ってくれればうれしいです。
感想、評価お待ちしています。
次話もよろしくお願いします。

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