異世界で剣術修行してみた件   作:A i

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今回は少しシリアスよりになっています。
晋作君の心の内を少しでも伝えられていればな、と思います。
魔法の修行をしながら成長していく晋作君をどうぞお楽しみください。
感想、評価、どしどしください。待ってます。


修行編
ダメ人間


俺、高村晋作は現実世界じゃあどうしようもないダメ人間だった。

小、中、高、と何の目的もなく公立の学校へ通い、一年の浪人時代を経てそこそこの国立文系大学へと進学。今まで勉強なんて好きでやってきたわけでもないので、大学で学びたいことも特にない。ただただ卒業するために必要な単位を稼ぎに行く。下宿先と学校を往復する毎日。入学して数ヶ月はまじめに出席していたが最近は必要最低限の出席しかせずに、毎日家でぐーたらする。

こんな生活が正しいわけがない、ということぐらい分かっていた。

でも、これまでの惰性の自分を打ち破るだけに足る理由、情熱、勇気、これら諸々が備わってはいなかったのだ。

変化を恐れ、言い訳を探し、停滞する。

かといって、自らの停滞を肯定することもできない。自らの決断に自分で納得することもできない。

俺はそんなどうしようもないダメ人間だった・・・。

 

チュンチュン チュンチュン

「はっ!今何時だ!?」ガバッ

そう言って布団から飛び起きた。時計を見るとなんと十時を指している。最悪だ。一限寝坊した。くっそー、あの教授成績厳しーんだよな。単位落としたかもなー。などと考えていると、

「何言ってんのさ、あんた。寝ぼけてんの?寝言は寝て言え!」ボフッ

と金髪美少女が満面の笑みで枕を顔面に投げつけてきた。美少女にののしられながらの起床。なんかいいね!

あー、そっか俺異世界転移したんだっけか。現実世界の夢を見てたせいか忘れてたわ。それにしても全身がクソいてえ。昨日の修行のせいで筋肉痛だぞ、これ。

そう、俺とエマはあの後、時空間転移をしてこの城にやってきたのだった。

この城にはエマの師匠が住んでいるらしい。このとんでも魔法使いエマの師匠ってどんだけすごい魔女なんだ?

急に会いに行ったらぶっ殺されるんじゃ・・・。などと考えていたが幸か不幸か師匠は今出かけているらしい。ふー、なんか彼女のお父さんに挨拶に来た彼氏の気持ちが分かった気がしたぜ。まあさすがに現実世界では張り倒されるぐらいだろうけどこっちは下手したら塵にされるかも知んねーからな。

というわけで、師匠にはまだ会っていないが、エマと二人で早速昨日からトレーニングを始めたのだった。

「晋介君、昨日教えた、魔力の取り出し方は覚えているわよね?」

「おう、覚えてる」

「今やってみなさい。」

「分かった。」

ベッドから立ち上がり右手を前に突き出す。この角度が上すぎても下すぎてもダメで適切な角度があるのだ。この角度を体に覚え込ますのに昨日一時間かかった。

手のひらを上に向け、ボールを持つように指を曲げる。そして術式を唱えるのだ。

「charge!」

そう唱えると手の中に赤く光る閃光が生まれ出す。お手玉ぐらいの大きさで安定しだした。

「うん、上出来ね!思っていた以上に飲み込みが早いわね。見直したわ!」

「まあな。飲み込みは早いほうなんだよ。」

discharge!こう唱えると先ほどまでの光が霧散した。昨日の修行で魔力を出したり、消したりすることができるようになった。この調子ならすぐに剣聖倒せるんじゃねの?そうしたらエマちゃんも俺にメロメロになって本当に結婚できたりして。グヘヘヘ

と怪しい笑みをたたえていると

「なにきもい顔してんの?早く朝ご飯食べに行くわよ」

きもい顔って・・・。まあきもかったですね、はい。次からは見られないように気をつけよっ。

「もしかして手作りですか?」

「そうよ!」

「マジですかー!!!それは楽しみです!」

「あんたってほんと自分に素直ね・・・。」ヤレヤレ

テンションマックスだぜ。こんな美少女に手料理をごちそうになれる日が訪れるなんて。信じらんねー。

これだけで、筋肉痛にも耐えれるってもんよ!

こうして、美少女が作った朝ご飯を楽しんだ後、修行開始である。

「次にやってもらうのは、さっきの魔力を足にまとわせて、筋力をブーストすることよ。」

「筋力をブースト・・・。」

「そう、ブースト。この世界の戦闘はこれができなきゃお話になんないの。いくらすごい剣術を身につけても当たらなかったら意味ないでしょ?それにこの技は応用が利きやすいから、最初に習得してほしいのよ。分かった?」

「おう、わかった。」

そりゃ、俊敏性は大事だよな。それにこれの応用はぱっと思いつくだけでも相当あるし、便利なのは間違いない。なんとしても早いことマスターしなければ。

「じゃあ、まずは見本見せるわね。」

そう言って、右手を前に突き出す。

「charge!]

さすがエマちゃん。かなりの魔力を右手にためている。それをどうすんだ?と思い見ていると。

その右手で両ふとももに触れる。すると足がかすかに光を帯びた。あれ?そんだけ?楽勝じゃない?

「これだけよ、簡単に見えるでしょ?でも、これが結構難しいんだから。あ、そうだ一応この魔法の効果を見せてあげる。」

そう言って二十メートルほど距離をとった。そんなに遠くに行って何をするつもりだ?

「じゃあ、行くわよー?」

そう言ってエマが右足を踏み出した、と思った瞬間にはエマの吐息が触れるほどの距離にエマの顔があった。

うそだろ?早すぎて全く見えなかった。そしてエマちゃんやっぱり肌綺麗だな。あといい匂い。

エマがにっこり笑って

「どう?すごいでしょ。本気出したらもっと早いんだけど。今のが晋介君の到達目標の速さね?分かった?」

「いや、目で追うことすらできなかったんだけど・・・。」

「ま、やり方も見本も見せたんだしあとはがんばってー。」

そう言い残して部屋に戻って言ってしまった。なんか寂しい。つーか、できんのかよ、あんなの。

「あー、もうっ!やるしかねーか。」

覚悟を決めてとことんやる。それしか俺に残された選択肢はない。

エマを守り、自分も生き抜いて行くには剣聖よりも強くなるしかないのだ。

やってやる!そう、肝を据えると修行に取りかかったのだった。

 

それから数時間がたち、すっかりあたりは暗闇に包まれている。

「よっしゃ!できたぞっ!」

思わず叫んでしまった。ようやく、本当にようやく、成功したんだから少々叫ぶくらいは許されるだろう。ああ、うれしすぎて目から汗が噴き出しそうだ。

こんなにうれしかったの、いつぶりだろうか。もう、何年も、いや、生まれてこの方一度も、こんなにうれしかったことなんかなかったんじゃないか。

努力に努力を重ねてやっとの事で達成できたこの喜び。ずっと求めていた生きている、という実感。

それらが一体となって俺の体に、心に、しみこんでいく。

「ふー、疲れた。何時間集中してやってたんだ?」

その場に座り込みながら、誰に聞くでもなくくちにだすと

「かれこれ十時間ぐらいね。いつまでやってんのよ、全く。あまりに集中しているから声かけられなかったじゃない。晩ご飯私まで遅れちゃった。」

エマが口をとがらせながら文句を言う。

やっぱりかわいいな。怒ってる顔も。

「ごめん、待っててくれたんだ。ありがとな。」

そう伝えると、すこし赤くなりながら

「いいわよっ、別にそれぐらい。たいしたことじゃないわっ。」

と言う。照れ隠しってバレバレだけど口にはしないでおこう。怒られそうだし。それにしても照れた顔もまた乙ですな。惚れ直しちゃったぜ!

「ところで、ほんとにできたんでしょうね?少しやってみなさい。」

「ああ、いいぜ。見せてやんよ。」

そう答えて二十メートルほど離れる。

右手を前に差し出し詠唱開始。

「charge!」

魔力を右手に集める。ここでポイントになってくるのは指先だ。魔力をこぼさないように少しずつ力を加えていく。そうして指先に魔力を集めてから両足に触れると魔力を帯びさせることができるのだ。成功の証にうっすらと両足が光っている。

「じゃあ、いくぞー!」

と合図を出してから、右足を踏み込んだ。すると周りの景色がコマ送りのように後ろへとぶっ飛んでいく。すげえ、これがエマたちがみている世界。時間の流れもゆっくりに感じるんだな。エマがどんどん近づいてくる。しかしエマは俺の動きを完全にとらえているようだ。本当にあいつ何もんなんだ?この速度でも見切るなんて?

ビュンッ!ズザッ!

「どうだ、俺のブースト具合は?」

「ええ、ま及第点ね。おめでとう、合格よ。めざましい成長ね。」

「よっしゃ、合格だぜ!ご褒美のチューは?」

「チューはないけど、晩ご飯があるわよ?」

「まあ、エマちゃんの手料理が食えるならチューは我慢するぜ!」

「はいはい。じゃあ、行こっか。」

「おう!」

そう言っておいしいエマちゃんの晩ご飯を食べに食卓へと向かった。

 

 

おいしいご飯をエマちゃんと二人で楽しみ、部屋に戻ろうと廊下を歩いているときだった。中庭に人影がある。

誰だ?あれ。エマちゃんじゃないよな。暗くてよく見えねー。

目をこらしてジーとみていると、その女の人と目が合った。と思った瞬間にはもう女の人は見当たらない。

「あれ?どこいった?」

中庭のどこにも見当たらない。気のせいなんかじゃない。確かにあそこにいたはずだ。そうおもって、手すりに乗り出して人影を探していると

チャキッ

という金属音が後ろで聞こえた。飛び退こうとしたが

「動くな、動くとこいつで首をはねる。」

刃物が首筋に当てられ動くことができなくなってしまった。やばい、こいつ。相当なやり手だ。殺気がすごすぎる。

「お前何者だ?」

謎の女がそう聞いてきたので

「ここの城主に剣術を習いに来た。」

そう答えると、刃物が首筋から離れた。

「お前が、エマの契約者か、失礼したな。私がこの城の主、ヴァン・エヴェレック・カーティスだ。よろしく。」

そう言って握手を求めてきた。この人が俺の師匠になる人か。

エマの師匠だけあってただ者じゃないなこの人。そして巨乳美人。ただ者じゃない。ゴクリ

「こちらこそよろしくお願いします。高村晋作です。」

「ふむ、君少し変わっているな・・・」

「え、何がです?」

「いや・・・。何でもない。こちらの話だ。気にしないでくれ。」

「はあ。」

「見たところ疲れているようだな。早く部屋に戻って休みなさい。明日の朝から稽古をつけてあげよう。

「ありがとうございます。お休みなさい。」

「お休み。」

そう言ってカーティスさんは歩いて行った。

やったぞ、ようやく本格的に剣術を教われるようだ。一刻も早く強くなるためにも明日からの稽古はがんばらないとな。そのためにも今日はしっかり睡眠をとって明日に備えるとするか。

部屋に戻った俺は軽くシャワーを浴びて速攻眠りについたのだった。

「今日はいい夢、見れそうだ。」

そうつぶやいて眠りにつくのであった。




いかがでしたか?
少しずつ強くなる晋作君の内面は当てはまったりしてますかね。
共感してもらえていればうれしいです。
次話もよろしくです。
感想、評価よろしくお願いします。

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