異世界で剣術修行してみた件   作:A i

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えーと、サブタイトルの付け方を少し変えていきます。
ぱっと見でどんな話か分かるように。

前話まででどんな戦況かは大体書き終わったので、こっからは各戦場における細かい戦闘シーンを書いていこうかなあ、と思っておりますのでヨロシクお願いします。

お読みいただいている皆さん、いつも本当にありがとうございます。
これからもできる限り早く上げていくので次話も読んでね?

では、マリー編始動です。


水神来たる! 対マリー編 前編

――強い。

 

マリーと剣を交す中で感じた率直な感想だ。

彼女のあどけない仕草や魅力的な体つきのせいで、自分としては彼女のことをできるだけ傷つけたくないと思ってしまうのだが、今回ばかりはそうも言っていられない。

そんな甘いことを考えていてはこちらがやられてしまう。

 

――互いの実力はおそらく拮抗している。

 

数回、剣を交えた感触で分かる。

自分もまだ手の内をすべて出しているわけではないが、それは相手も同じで、まだまだ底が見えず、この熾烈な戦いの中で、余裕さえ感じる。

 

彼女の隠し種の一つだった剣から鞭への形態変化。

これはただ単にこちらの虚を衝く奇策にあらず。

むしろ、彼女の実力を十二分に発揮するための最善の形態だった。

 

彼女の反射神経は異常なほどに早く、俺の剣先が描く軌道を初動のモーションによってすぐさまはじき出しているらしい。

どれだけ、俺の剣が早く動いてもすべて予測され、彼女の的確な鞭操作によってはじき返される。

はじき返されるだけならまだしも、そのまま剣を絡め取られ、鞭全体におびただしく張り巡らされたギザギザの刃によって肉をそぎ落とそうと迫ってきた。

身をよじりなんとか躱していたがやはりすべてを躱しきることはできずに腕やら頬、太ももなんかにざっくりとおおきな傷を負ってしまった。

 

それにたいして彼女の方はまだ一毫も傷を負っていない。

汗すらかかず、いたって余裕然とした彼女の様子に俺はさすがに苦笑した。

 

――これはもうそろそろこっちも奥の手を出さないとな・・・。

 

彼女は鞭を強くしならせて俺に向かって連撃を繰り入れてきていたので、俺は彼女の動きを牽制するべく魔装を施した威力重視の攻撃を彼女の懐めがけて放つ。

もちろん、剣先は彼女には届かず、鞭に弾かれるが、今までとは比べものにならないほどの威力を込めた一撃に彼女の体は後方へと吹きとんだ。

俺も反動で後ろに軽くたたらを踏んだがすぐに体勢を整える。

彼女も空中で一つ体を回転させうまく威力をいなし着地した。

 

俺は彼女がすぐにこちらへ攻撃してこないか警戒していたが彼女にその気はないらしい。

今の攻撃で舞い上がった砂埃が体に衝いたのか、おしりやおなかに付いた砂を払う動作をしながら不満そうな口ぶりで言う。

 

「んもうー。やめてくださいよお。汚れちゃうじゃないですかあ。」

 

「汚れなんか気にしてちゃ戦えないだろ?それに俺なんかお前のせいですでに血みどろだぞ。」

 

「あははは。満身創痍ってやつですかあ?でも、その割には余裕ありげなんですけど。」

 

「まあ、余裕ではないが奥の手はあるぞ。」

 

「へえー。なら、早く見せてください。そのために、この準備時間あげてるんですから。」

 

「あ、やっぱりばれてるのね?」

 

「うふふ、当たり前じゃないですかあ?ばれてるに決まってます。私を誰だと思ってるんですかねえ?」

 

「うーん、めちゃくちゃエロ可愛い女の子?」

 

「あはははは。もう!照れますねえ。」

 

頬をポッと赤く染めて両手で顔を押さえる彼女。

本当に照れているように見える。

 

――素直ではあるんだよなあ、この子。まあ、殺意も純粋きわまりないけど・・・。

 

ポリポリと剣を握っていない左手で俺は頭を掻き、彼女の笑顔を見つめていると、彼女は俺の視線に気づいたのか不思議そうな顔でこちらを見つめ返し首をひねる。

 

「・・・?どうしました?」

 

「いやあ、なんというか複雑で・・・。君みたいな可愛い子がなんでこんなことしてんのか。」

 

「うーん、まあジャバ様に命令されてるんで・・・。」

 

「逆らえないのか?」

 

「いーえ。逆らおうと思えば逆らえますよ?私もフリュネさんも服従の術式は埋め込まれていませんし。」

 

「なら・・・。」

 

「でも!私ってばこの今の生活が気に入っているんです。」

 

彼女は俺の言葉を待たずに言った。

俺は彼女の言葉の真意を問う。

 

「気に入っている・・・・?」

 

「ええ、気に入っています。」

 

「なんで・・・?」

 

そう聞くと、彼女は少しアンニュイな表情になりしっとりとした目つきで俺を射貫いた。

あまりに彼女の瞳が美しく、俺は息をのむ。

 

風のさざめき 揺らめく陽炎 赤い空

そこにたたずむ少女が一人

 

戦闘をしていることも忘れるほど、穏やかに時間が流れる。

何もかもが緩やかに変化していく。

瞬きさえもとろりとしたモノになっている気がする。

 

そんなゆったりとした時間の流れの中で放たれた彼女の言葉に俺は耳を傾けた・・・。

 

「私は空っぽなんです・・・。何にもない。何もかもが灰色に見えています。なんの意味も価値も、色彩もない世界。それが私の生きている世界です・・・・。」

 

濡れた瞳を哀しげに伏せていた彼女だが次の瞬間には強い意志を込めた視線を俺に向けた。

 

「でも、そんな空っぽな私でも唯一、ジャバ様の命令を実行しているときだけは、なぜかこの世界に少し色彩が生まれます。そしてその色彩がなんだかとても自分には魅力的で心引かれてしまうのです。その色彩のために私は今まで生きてきたんだ、そう思えるほどに・・・・。だけど、その色彩はいつもすぐに消えてしまう。消えてしまってはもう元の灰色。なんの意味も魅力もない灰色になるんです。そして、私はそれがたまらなくつらい。だって、知ってしまったから。世界が色彩を持つととてつもなく美しいのだと私は知ってるから、私はそれをどうしようもなく求めてしまう。たとえそれを得るためには非人道的な事に手を染めなくてはならなくても、それすらどうでもよくなるぐらいに私の心はあの美しさに震えたんです。今も依然としてその色彩を求めているんです。あの心に訪れた暖かで甘美な震えを手にできるのなら私はこの命すらも捧げるのです。だって、私は空っぽ、だから・・・・。」

 

――消え入るような声。

 

空っぽ、と言うときの彼女は酷く哀しげで、見ているこっちがつらくなってしまうものだ。

こんなにも幼くて、こんなにもけなげな彼女に今の今まで救済がなかったこの世界の理不尽を憎んだ。

 

だけど、俺はあえて、彼女に向かってニッコリと笑いかける。

 

「なんで・・・そんなうれしそうに笑うんですか?」

 

彼女は眉根を潜め、困惑気味だ。

 

まあ、分からないだろう。

普通なら同情を寄せる場面だろうしな・・・。

 

でも、俺にとってはさっきの彼女の告白は僥倖だった。

服従の術式もなく、彼女自身が求めているモノの正体も俺には分かっている。

彼女を救えるかもしれない。

 

――この子は俺が助ける。

 

そう決意して俺は優しく笑いながら言った。

 

「うん。笑うよ。だって・・・・俺なら君の世界を更にカラフルにできると確信したから。」

 

「・・・・っ!」

 

目を見開くマリー。

信じられないのだろうか、それとも、図星を衝かれて驚いているのだろうか。

 

でも、どちらにしても俺にとってはどうでもよかった。

 

もう、俺はこの女の子を助けることしか頭にない。

抵抗しても無理矢理でも連れ帰る。

そう決めた。

 

俺はピシッと剣先を彼女に突きつけ、勝気に笑う。

 

「さあて、そんじゃあ、お持帰りさせてもらうからな。マリー、君のことを。」

 

「・・・私はジャバ様の命令をこなすだけです・・・。」

 

「ああ、それでいい。でも、俺はもう手加減しない。本気の本気で戦う。」

 

「あはっ。やっと奥の手を出すんですねえ?私楽しみです。」

 

「そう言ってられるのも今のうちだけだ。」

 

俺は左手で左眼を押さえ、精霊術を詠唱する。

 

「我が 独白の精霊 我に力を 与え給え」

 

詠唱を終えると、手のひらにほのかな暖かみを感じた。

ゆっくりと、手を左眼から離す。

すると、ポッと音を立てて青い炎が灯った。

 

「わーお。なんですかそれ?かっこいいですねえ。私もほしいです!」

 

キャッキャと喜ぶ彼女は跳びはねる。

やっぱり、スゴイ揺れ方だ・・・ゴクリ。

 

どうにか彼女の大きな二つの果実から視線を外し、不敵に笑う。

 

「ふっふっふ。どうだ。これが俺の精霊『独白』だ。」

 

「どや顔決めてますけど私の胸ガン見してましたよね?さっきまで。」

 

「な・・・ばれてたのか。」

 

「当たり前ですよ?女の子はここへの視線に敏感なんですから。」

 

「マジかよ・・・。」

 

「ふふふ。気を付けてくださいね?あなたの周りにいる巨乳さん達はたぶんあなたのイヤラシい視線に気づいてますから。」

 

「うそ・・・。マジでやばい。」

 

「あはははは。」

 

俺は今までの自分を振り返って、かなり切実な不安を感じた。

ヤバい・・・今まで師匠とかエイラさんの胸ガン見してたぞ、俺。

ばれているのか?でも気づいたそぶりはなかったし・・・うーん。

 

俺は深刻な表情で考えていたが、快活に笑うマリーを見ているとなんだかどうでもよくなり、吹っ切れる。

 

「うん、まあ仕方ない。見ちゃうもんは見ちゃうでしょ?だって、俺無類のおっぱい好きだし。」

 

「あー。なんか吹っ切れて変なこと言い出してるんですけど。」

 

「うむ。まあ事実だしな。ごまかしても仕方ないだろ?」

 

「うん、そうだね。あなたらしくていいかも。」

 

「だろ?」

 

そう言って二人してケラケラと声を上げて笑った。

彼女はひとしきり笑うと楽しそうに聞いてくる。

 

「あなたの名前ってなんなの?」

 

「俺か?俺は晋介。高村晋介だ。」

 

「ふーん、晋介、ね。覚えとく。」

 

「ああ、覚えとけ。連れ帰ったらさんざん呼ぶことになるだろうしな。」

 

「いーえ、私があなたを連れ帰る。」

 

ニッと笑う彼女。

彼女にはやっぱり笑顔が一番似合うな。

 

これ以上の押し問答は不要だろう。

 

俺は両の脚に力を込め、いつでも踏み込んで斬りかかれる準備をした。

 

今度は俺の方がニッと彼女に笑いかけ、こう言ってやった。

 

「さあ、最終ラウンドと行こうぜ。お嬢様よ。」

 

「ええ、いきましょう。晋介。」

 

――こうして、俺達の戦いは佳境を迎えた。

 

 




いかがでしたか?
マリーのあざと可愛い感じを感じていただければ良いなあ、と思います。

次話もヨロシクお願いします。

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