ステラやエイラの過去なんかにも焦点を当てていこうと思っているのでお楽しみに。
まあ、気張らず楽しんで頂ければ幸いです。
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水神来たる!⑴
右も左も柔らかくて暖かい。
腕には心地良い重み。
ギュッと抱きしめると「ん・・・。」という艶っぽい声が俺の鼓膜を震わせる。
俺はゆっくりとまぶたを上げた。
「え・・・。なんで二人が・・・。」
あーそうか、昨日二人と添い寝したんだっけ・・・。
二人はまだ眠っている。
可愛い寝顔だ。
ツンツンとほっぺをつつくが優しくほほえむだけで起きることはない。
もう一度二人の体をギュッと抱きしめ暖かさとか柔らかさを味わっているとふと違和感を覚えた。
奇妙にも本来あるべき服の感触が全く感じられない。
彼女たちの体に目を向けると驚きの光景がそこには広がっていた。
「なんじゃこれぇぇぇぇええ!」
端的に言うと、二人ともスッポンポン。
生まれたままの姿である。
「おい待て。何でだ。まさかやっちまったのか。俺はついにやっちまったんだろうか?」
俺は一人頭を抱えていると二人とも目を覚ます。
「おはよう、しんすけ。」
「一人で何そんなに騒いでるのよ?」
目をこすりまだ眠たそうにしているペナと心底うっとうしそうなエマちゃん。
「いや。俺が聞きたいよ!なんなの。お前らのその格好。」
「え?裸だよ?」
「裸でしょ?」
「え、えー・・・。なに俺がおかしいのか?俺が変なのか?」
あまりにも平然と返してくるエマとペナに俺は自分の常識がおかしいのかと自分を疑う。
「いや、裸なのは分かるんだけどね。なんで裸なのかが重要でしょ?」
そう!これの理由いかんでは俺の人生が大きく変わる可能性だってあるのだ。
「で、どうなんだ?」
「いやー、昨日暑かったじゃん?だからエマと一緒に脱ぐことに決めたんだよ!私もエマも晋介の事大好きだし、離れるのも嫌だったから吹っ切れちゃってね!」
「そうそう。私もさすがに恥ずかしかったんだけど裸でくっついていると更に気持ちよくてそのまま寝ちゃったの。だから、晋介が想像しているような事にはなってないから安心して!」
なんつー理由じゃ!
「安心できるか!とりあえずお前ら服を着ろ!」
俺は彼女たちのパジャマを拾って投げつける。
「きゃっ!もう。うれしいくせにー。」
「もう!投げないでもいいじゃない。」
シブシブといった感じでパジャマを身につける二人。
「まったく・・・。」
俺はそうつぶやきながらカーテンを開け、窓の外を眺めるとすっかりお天道様は顔を出している。
良い天気だ・・・。
こうして俺の長い一日は始まった。
今日もエイラさん特製のおいしい朝食をいただいている。
いつもなら他愛ない冗談を交したり、俺が女性陣にからかわれたりするだけなのだが、今日はエイラさんから大事な話があるそうだ。
「皆さん。少し傾聴して頂けますか?」
そういって話を始めるエイラさん。
いつになく真剣だ。
「昨日未明、太古の森と呼ばれる、私たち精霊使いにとって最も神聖な森に何者かが侵入した痕跡がある、との報告がありました。」
なに・・・。この前ステラに連れて行ってもらったところじゃねーか!
もしや俺達が入ったことを言っているんじゃ・・・。
俺はそんな恐れのこもった視線をステラに向けるが彼女は首を小さく横に振る。
とりあえず俺達ではないようだ。
しかし、じゃあ、誰なんだ?そもそもなんで侵入する必要なんてある?あそこにあるものなんて湖と森ぐらいだったぞ?
「エイラさん。その侵入者の目的はなんなんだ?あの場所はただの湖が綺麗な場所ってだけじゃないのか?」
率直な疑問をぶつけてみるとチロッと鋭い目線を送ってくるエイラさん。
「ええ。晋介さんは不法侵入しているからご存じかもしれませんが・・・」
ああ、やっぱり気づいていらっしゃったのね・・・。
「あの場所には大きな湖があり、多くの精霊が生息しています。それだけでも本当に貴重なのですが、太古の森はそれだけではありません。」
そこで言葉を句切り、一つ息を吐くエイラさん。
一同に緊張が走る。
「・・・太古の森にはその昔、破壊の限りを尽くす龍がいました。名を『水神』といいます。」
え・・・。龍?
「そして、そこにある湖には水神が封印されています。かつての私のご先祖様が古の封印術を用いてなんとか封印されたんだそうです。」
「おいおい信じられねーな。龍が封印されている、なんて話。」
「いいえ。これは厳然たる事実。私たちエルフは代々この封印を守ることが使命なのですから。」
「おい。まじか。ステラ、お前は知ってたのかこの話。」
「ええ。昔、おとぎ話としてよく聞かされていたから・・・。」
「そうか。」
これは冗談でも何でもなさそうだ。
仮にこれが冗談でないとすると話は相当やっかいな方へと進んでいくだろう。
「ってことはその水神を何者かが狙っているということか?」
「ええ。おそらくはそうでしょう。正確には水神から授かるとされる仙力と呼ばれる力を手に入れることかと・・・。」
「その仙力を手に入れるとパワーアップでもするのか?」
「ええ。力の底上げだけでも相当凄いことなのですが、仙力を手にすると種族すら変わると言われています。」
「え・・・!ただ強くなるだけじゃないのか?」
「そうなのです。そして、仙力を糧とするその種族の名は『竜人』。現在、世界最強を誇る種族です。」
「ほ、ほーん。まあ、そんなことだろうとは思ってたけどよ。」
俺は努めて平静を装っていたが内心は、意味わかんねーよ。世界最強?竜人?なんだそれ?って感じだ。
それでも、今回の犯人の目的はなんとかわかった。
『竜人へのジョブチェンジを果たし、力を手にする。』
これが犯人の目的。
実に分かりやすい目的だ。
「しかし、エイラさん。封印されていたら誰も手出しなんかできないんじゃないのか?」
「ええ。本来はそうです。」
「だったら・・・。」
「でも、水神の力が活性化し封印が弱まってしまう時があります。一説には月の満ち欠けが関係しているとも言われるのですが未だに詳しいことはわかっていない。だが、先週あたりから少しずつ水神の活性化が見られだし、このままいくと早ければ今日の夜にもピークが訪れます。その時に封印の解除が試みられてしまえば手遅れです。」
「そんな・・・。じゃあ、早くその犯人を捕まえないと・・・。」
エマが神妙な顔で言う。
「ええ。封印は解かれ、この辺り一帯は水神によって破壊され尽くしてしまう。」
あれ?変なオプションが付いてない?
森が破壊されるなんて僕、キイテナイヨ?
「え・・・!犯人が力を手に入れておしまいじゃないの!?」
エマも驚いているようだ。
「はい。やっかいなところはそこです。おそらく悠久の時をあの湖に封印されていた水神は怒りのあまりこのあたり一帯を破壊し尽くすでしょう。それだけは私がなんとしても止めなくてはならない。」
堅い決意の色を浮かべるエイラさん。
それだけこの森や家や人が大好きなんだな・・・。
やっぱりエイラさんは女神だぜ!
俺は心の中で盛大に彼女を崇め奉っていたが、彼女の思い詰めたような表情を見ていると少し無理をしていないか心配になった。
「でも、エイラさん。俺達もあなたの味方ですから、遠慮せずにいつでも頼ってくださいよ?一人で背負い込んでも良いことなんて絶対ないですから。」
「そうですよ。私もできることがあれば何でもします。」
「エイラ!勿論私もだよ!」
エマとペナの二人も俺と同じでエイラさんに協力したいように見える。
「晋介。エマ。ペナ。ありがとう。」
大きな瞳を潤ませて笑顔になったエイラさんはやっぱりとんでもなく美しかった・・・。
エイラさんは目尻に浮かんだしずくを指で軽く払い落とし、言葉を紡ぎ出す。
「では、私はこれから太古の森に向かいます。ステラは皆さんの警護をお願いします。」
え?連れていってくれないのか?
今協力に感謝して涙までしていたのに。
「な、なんで。今ありがとう、と言ってくれたじゃないですか?俺達は足手まといということですか?」
「いいえ。それは違います。」
「だったら・・・!」
「でも、これだけは譲れません。貴方たちは合図があるまでここで待機しておいてほしいのです。お願いです。」
頑なに俺達の協力を断るのは何でだ?
なにか、あるのか?
そう勘ぐっているのは俺だけではないようだ。
エマも怪訝な顔になっている。
そりゃそうだ。
今の文脈では意味がわからない。
しかし、この中で一人だけ真意を理解しているやつがいる。
「ステラ。お前は何か知ってるんだろ?」
俺は鋭い目でステラを睨む。
「ええ。だけど教えない。」
「何でだよ・・・。」
「私たち家族の問題でもあるから、あまり言いたくないの・・・。」
俺はハッとした。
まさか、今回の犯人って・・・。
もしそうだとするなら言いたくないわけだ・・・。
「分かった。俺達はここで合図があるまで待機している。だが、ピンチだと思ったらすぐに知らせてくれ。」
「ええ。本当にありがとう。晋介。」
エイラさんが今度こそ本当に涙を流して感謝する。
辛いのだ、彼女も。
俺たちの気持ちを全て理解した上で敢えて俺たちの好意を裏切る形になってしまうのが。
それでも、言えないことのある事が。
人には言えないことの一つや二つ、抱えていることの方が普通だ。
俺自身にもそれは存在するからわかる。
だから、俺は待つしかないのだ。
彼女が打ち明けたくなるその時まで。
たとえ、彼女の身に危険が及ぼうとも、彼女の大切な気持ちだけは守ってやらねばならない。
それを蹂躙することは仲間であってもしてはならないことだろう。
俺は涙をながしすすり泣く彼女の側に寄り、思いっきり抱きしめてやる。
エイラさんは驚いたように体を強張らせたがそれも一瞬のことで、俺に手を回し声をあげて泣き出した。
いくら優しくても、いくら大人びていてもやはり本質はか弱い女の子にすぎないんだ。
俺は彼女の小さすぎる背中にのしかかる重荷を少しでも一緒に持ってやりたい、そう思うようになっていた。
いかがでしたか?
最近、すぐに脱がせてしまう傾向にあるので反省しています。
すみません!
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