異世界で剣術修行してみた件   作:A i

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主人公が全然剣の修行をしません。
女の子とイチャイチャばかりしてしまっています。
すみません。
まあ、気軽に楽しんで読んでください。
すこし優柔不断な主人公もご容赦願います。


待ってる

「ふふふっふーん」

 

「えらく上機嫌だな、エマ?」

 

「分かる?師匠。晋介がこんなのくれたんだー。」

 

そう言って昨日俺があげたネックレスを胸元から取り出して見せつけるエマちゃん。

エマちゃんはとってもうれしそうにしていてそれを見る師匠もどこか優しげな目で見つめている。

なんか照れくさいな・・・自分のプレゼントをあんなに喜んでくれるなんて。

あのネックレスは夜中に城を抜け出してこっそり働いて貯めた金で買ったものだ。

エマちゃんや師匠が俺の安全を考えてあまり城の外に連れ出さなかったのは分かっていたがどうしても何か贈り物をしてあげたかったので強硬手段に出てしまった・・・。

まあ、喜んでくれたみたいだから万事オッケーだ。

エマちゃんはネックレスを見てうっとりしている。

あの顔は何か思い出してるな・・・恥ずかしい。

エマちゃんが幸せそうにしている一方で他の二人は激おこだ。

 

「エマばっかりずるい!私もほしい!晋介!」

「エマさんずるいです。晋介くん私もほしい・・・!」

 

真ん前に座る二人は体をずいっと食卓に乗りだしてもの申してくる。

なんかまた修羅場の予感だ・・・。

 

「うーん、また今度な。でもお前達とは海で死ぬほど遊んだろ?エマは一人で留守番だったから少しぐらい大目に見てやってくれ。」

 

「うん、海は楽しかった。また晋介水着見てくれよな!」

「はい、楽しかったので大目に見ます。」

 

渋々了承するギルと謎のテンションの高さを誇るペナはなんとか納得させる事ができたみたいだ。

でも、二人とも本当になじんできたなー、ギルも少し言葉の堅さがなくなってきたしペナは以前にも増して俺にかまってほしがるし。

うれしい限りだ・・・。

隣に座るエマちゃんを見る。

ネックレスを胸元に仕舞いこちらの顔を伺ってくる。

すこし寂しかったのだろうかテーブルの下で俺の手をキュッと握ってくる。

柔らかくて、小さいなあ・・・。

俺もエマちゃんの綺麗な青い目を見つめ返す。

少し瞳が揺れている・・・。

不安?嫉妬?それとも孤独感?

どれも違う気がする・・・もしかして・・・。

二人ともっと打ち解けたいのかな・・・?

そういえば、エマちゃんと二人が仲良くしているところは見たことがない気がする。

これは俺がなんとかしないとな・・・。

 

「エマ、ペナにギル。この後部屋でトランプしない?」

 

そう聞くと、三人とも一瞬驚いた顔をした後笑顔になってこう言った。

 

「「「する!」」」

 

こうして俺の部屋でトランプ大会が開かれることになった・・・。

 

 

 

 

「また負けた!なんで勝てないんだよ!」

 

ムキーとしながらペナちゃんがトランプを地面にたたきつける。

そりゃ、負けるわな。あんなにわかりやすかったら・・・。

ペナちゃんはご存じの通りすべての思っていることが顔に出る。

だからばば抜きをやるとどのカードがババか皆分かってしまうのだ・・・。

 

「それじゃあ、ペナ。罰ゲームね。」

 

めちゃくちゃいい顔なんですけどー、エマちゃん。実はドS?

 

「ペナ決まりは決まりですよ?」

 

「うー・・・。」

 

軽くうなってシュンとしてしまうペナちゃん。

やばい、泣いちゃうんじゃ・・・。

 

「あー!分かったよ!やれば良いんだろ!くじ引いてやる!そりゃ!」

 

なんか吹っ切れたペナちゃんが罰ゲームの書かれたくじをやけくそ気味に引く。

あの罰ゲームは公正を期すために師匠が作ってくれた。

では・・・緊張の罰ゲーム発表だ。

ペナが紙を広げる。そこには・・・

 

 

晋介とキス

 

 

「「「はー?」」」

 

ペナ以外の三人が全力で叫んだ。

なんだこの罰ゲームは!師匠何してんだ!

 

「こんなの無効よ!なしったらなし!」

「そうですわよね。なしです。」

 

二人も俺と同意見だが、一方のペナはめちゃくちゃ満面の笑みを浮かべている・・・。

 

「やったー!晋介とキス!晋介やるよ!」

 

ペナは瞳をこれでもか!と輝かせ俺に迫ってくる。

そして、俺の首に手を巻き付かせ唇を近づけてくる・・・。

早い!ペナちゃん早い!そしていい匂い・・・。

あわや唇を奪われそうになっているとエマちゃんとギルがペナちゃんの腰と首根っこをつかみ、ペイッと向こうに放り投げる。

イテテと言いながらペナちゃんは立ち上がり二人を見据える。

 

「何さ!二人して・・・!キスさせてよ、晋介と!私したいの!」

「ダメに決まってんでしょ!」

「ダメです!」

 

そして三人はさせて!させない!の押し問答を何回か繰り返すとペナが少し泣きそうになりながら

 

「二人とも・・・ひどいよ・・・させてよ・・・!」

 

言い終わる頃にはペナは全開で泣き出してしまった。

あー、こりゃダメだ・・・。

作戦失敗だな。

ここは俺がなんとかするしかないよな・・・。

 

「あー、二人とも少し出て行って貰えるか。ペナと話がしたいんだ・・・。」

 

「「でも!」」

 

「頼む・・・!」

 

そう言うと二人とも俺の真剣さを感じ取ったのか出て行ってくれた。

さあ、これでペナと二人っきりだ。

ペナは鼻をすすりながらこっちを上目遣いで伺っている。

うーん、ほんと悪いことしちゃったな・・・。

 

「ペナ、こっちおいで。お話ししよう?」

 

俺が座るベッドの上をポンポンとたたく。

ゆっくりとこちらに近寄ってきて俺の隣にストンと腰を下ろした。

しばし無言の二人。

ペナのすすり泣く声が聞こえる。

 

「ペナ、なんか悪かったな・・・。嫌な思いさせて。」

 

「うん、晋介のバカ!晋介なんて・・・晋介なんて・・・。」

 

うーん、ペナちゃんが本当に怒ってるな。

 

「ペナ、俺のことは嫌いか?」

 

すると涙を一杯にためた目でこっちを見つめてくる。

 

「嫌いじゃない!嫌いじゃないの。でも晋介にはエマがいて、ギルがいて・・・。なんか寂しいんだ、私・・・。どこにも居場所がないみたいで悲しくなっちゃったの!何でかな・・・?わかんないよ!」

 

髪の毛を振り乱して泣き叫ぶペナちゃん。

ああ、俺はペナちゃんは単純で明るい無邪気な子って勝手に決めつけてた・・・。

彼女自身を全く見てなかったんだ・・・。

何がなじんできてくれてる、だ。

ペナちゃんはただ無理してただけじゃないか・・・!

人一倍感受性が豊かな彼女はもろく、危うい、となんでもっと早く気づけなかったんだ。

不安な訳ない。寂しくないわけ無いのに・・・。

こんな歳で親もなく親戚もなし。

ただ、実験のための道具として扱われてきた彼女の心は俺の思っている以上に繊細な割れ物だったんだ・・・。

俺にはこの子を救うに足る言葉を持ち合わせていない。

だけど、放っとけるわけない。

 

「ペナ!」

 

そう言ってペナの肩を握り彼女の潤んだ瞳を見つめる。

俺の本当の気持ちを・・・心を彼女に伝えるんだ・・・!

俺にはそんなことしかできない、だけどそれでも何かが伝わるはずだ。

 

「俺ペナのことすっごく好きだ・・・嘘じゃない。」

 

「ホントに?」

 

「本当に好きだ。信じてくれ・・・。」

 

「じゃあ、キス・・・して?」

 

そう言って目を閉じてキスをせがむペナ。

俺は引きつけられるように顔を近づけていく。

お互いの吐息が掛かる距離だ。

あと、数センチ近づけばキスができる。

だけど・・・俺は唇ではなくペナのほっぺにキスをした。

すると、ペナが目を開いてこっちを見てくる。

 

「そこじゃ嫌・・・。うれしいけど・・・足りないよ・・・。」

 

うるうるしながらこっちを見てくる、ペナちゃん。

 

「ペナ。今はこれで我慢してくれ・・・。」

 

そう言いながら俺はペナを優しく抱きしめ頭をゆっくりと撫でてあげる。

狡いのは分かってる・・・。

でもこれが今の俺にできる最大限のペナへの愛情表現だ・・・。

ペナ、俺は心の底から愛してる。

ちゃんと君の居場所はここにある。

そう念じながら優しく撫でてあげる。

はじめは少し嫌がっていたが、だんだんと抵抗がなくなり体から力が抜けていく。

 

「そのかわり・・・このままでいて・・・。」

 

ペナは完全に力を抜き俺にもたれかかる。

彼女の目からは依然として涙がこぼれていた・・・。

だけど口元にはうっすらとした笑みが浮かんでいる。

 

俺は腕の中に心地よい重みを感じながら、慈しむように彼女の頭を撫でてあげるのだった・・・。

 

 

 

なにか柔らかくて暖かくていい匂いなものが腕の中にあるぞ・・・。

これのおかげで寝心地よかったんだな・・・。

抱きしめるとギュッと抱きしめ返してくる・・・。

ああ、心地良いなあ・・・。

あれ?ちょっと待て・・・!なんだこれ。腕の中にいるのって・・・。

目を開けるとペナが俺の腕の中で眠っている姿が見える。

なんでこんなことになってんだ・・・?

あの後、ペナちゃんの頭を撫でてあげてたらペナちゃんが眠っちゃったんだよな。

それを見てたらなんか俺も眠たくなってきて・・・寝ちゃったと、あほか俺。

やってしまったな、これ。

まあ、しょうがないよなでも。

ペナちゃんがあんなに取り乱したことなんてなかったし。

うん、緊急事態だ緊急事態。

そう納得してペナちゃんの方を見る。

規則正しい寝息が俺の首元に当たる。

正直くすぐったい。

少し身をよじると、ペナちゃんの目がゆっくりと開く。

起きちゃったか・・・。

 

「すまん、起こしちゃったな・・・。」

 

「ううん、いいよ・・・。よく眠れたよ。初めてこんなにぐっすり眠れた。だからありがとね。晋介。」

 

「そりゃよかった。でもそんなに眠れていないのか?」

 

「うん、実はね。なんかとても怖い夢を見るんだ。自分の周りに誰もいなくなる・・・そんな夢を。」

 

きらきらと光る瞳をまっすぐに俺に投げかけてくるペナ。

俺の体をギュッと抱きしめながら言葉を紡ぐ。

 

「でも、今日はそんな夢見なかった・・・。とっても暖かい気持ちに包まれてて安心できた・・・。だからありがとう・・・晋介。」

 

これほどまでにまっすぐな気持ちを向けられたことがあったろうか。

俺はこいつのようにまっすぐに生きているだろうか。

いつもいつも曖昧な言葉や遠回しな言い方で逃げてきていたんじゃないか?

そんなことで人の心は動かせないだろ?

ペナの言葉はいつだってまっすぐでそれ故に心に突き刺さる。

これはいつまでも逃げてはいられないな・・・。

 

「ペナ、俺もありがとうな。今までの修行で結構つらいときとかあったんだけど、お前のその明るさとか優しさには本当に救われたんだ・・・。だから、ありがとう、ペナ。」

 

「へへへ、うれしいな。私が晋介の役に立ってたなんて。これまで迷惑ばっかり掛けてるって思ってたから・・・。」

 

「迷惑なんて一度も思ったことないぞ、俺。感謝しかしてない。」

 

「うん、伝わってるよ・・・晋介の気持ち。暖かで優しい気持ちが伝わってる。」

 

「俺もだ。こうしてるとペナの優しさが伝わってくる。」

 

「同じだね?」

 

「ああ、同じさ。」

 

「でも、キスはしてくれないの?」

 

「うん、それだけは許してくれ。エマちゃんに怒られちゃう。」

 

「うーん、まあいっか。今日はこれだけしてくれてたら十分だよ。でもいつか私が晋介の中の一番になりたい・・・。そう思ってることは知っといてね!」

 

「ああ、ありがとな。」

 

晋介が笑い掛けるとペナも笑顔で返す。

こうしてると日だまりのように暖かな気持ちになれる・・・。

 

 

そして、二人は互いの存在を確かめ合うようにギュッと抱きしめ、また微睡みの中へと落ちていくのであった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

あれから数日後、ペナはいつもの調子を取り戻し元気になってくれた。

エマちゃんやギルにもペナがどんなことを抱えていたのかをすでに話してある。

それを聞いた二人は少し不満ありげな顔をしていたが、なんとか納得してくれたみたいだ。

 

そして、今はエマちゃんと二人っきりで話している最中だ。

 

 

「晋介、でもあなたって私のこと好きなんだよね?」

 

エマちゃんが不安げな表情を見せる。

ここで「お前しか見てないよ、愛してる。」などと言えたらどれだけ楽だろうか。

でもエマちゃんには正直に答えとかないとそんなの嘘になっちまう。

 

「エマちゃんの事はホントに大好きだ。愛してると言ってもいい。でもペナも同じぐらい大事で好きになってしまってる自分がいることも否定できない・・・。俺にもよく分からなくなってきてるんだ・・・。」

 

こんな優柔不断許されるわけ無いよな・・・。

でも今の俺の素直な気持ちがこれなんだ。

拒絶されるならされたで仕方が無い。

そう覚悟をきめエマちゃんの方を伺う。

すると、エマちゃんは優しいまなざしで俺を見つめていた。

 

「うん、やっぱりね。分かってたよ。私もペナが好きだからなおさら分かる。あの子はホントに良い子で優しい子だよ。だから、私は待つよ・・・。晋介君の気持ちが決まるまで待つ。慌てなくて良い。キッチリと自分の気持ちと向き合って決めた決断なら私には文句はない。だって好きな人の好きな人を私が嫌いになれるわけないもの・・・。」

 

そう言ってほほえんでくれるエマちゃん。

ああ、これは敵わないな・・・。

いつまでもこの子には頭が上がらないよ。

 

「ありがとう、エマちゃん。俺真剣に考えてみる。だからもう少しだけ待っててくれ。」

 

「うん。待ってる。」

 

これは早いとこ決断しないとな・・・。

二人の優しさに助けられていることに改めて気づく晋介だった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございました。
小説の難しさを改めて感じる今日この頃です。
少し恋愛要素が強すぎるので次話は必ず戦闘シーン入れます!
ではまた次話で。

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