異世界で剣術修行してみた件   作:A i

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今回の話はサブタイトル通り初詣についてです。
戦闘シーンはありませんのでご了承を。
楽しんで読んでいただければありがたいです。


初詣!

クリスマスパーティーはあの後盛大に行われた。

でっかい鶏肉とかも出てきたりしてみんな楽しんでくれたみたいだ。

まあ、エマちゃんと俺はめっちゃやり玉に挙げられたんだけどな・・・。

師匠なんか最初はにやにやして俺たちのこといじってきてたのに最後は酔ってたこともあるのか「エマ、ホントによかったな・・・」とか言って号泣し出しちゃうし・・・。

ペナとギルは俺とエマちゃんに感謝してくれてるみたいでグデングデンしながら「ありがとう・・・!ありがとう・・・!」と泣きながら伝えてくる。

もう、みんな酔っ払って最後の方なんかみんなで号泣して乾杯してた気がする・・・。

まあ、そんなこんなで楽しいクリスマスパーティーは無事終了したのだった・・・。

 

その後、俺たちはそれぞれの部屋に戻り、体を休めることになったのだが、シャワーを浴び、パジャマに着替えたがなぜか眠りに付くことができない。

布団に入って目を閉じるんだがすぐにエマちゃんの顔が浮かんでくる・・・。

ああ、俺あんなかわいい子とキス、しちゃったんだよなあ・・・。

カアッと顔が熱くなる。

俺のバカ!あほ!ぼけなす!

キスはまだ良いが、何で抱きしめたり耳元で囁いたりしちゃったんだ・・・俺は、恥ずかしい!

自分のキザすぎた振る舞いに対する恥ずかしさで、ベッドの上をのたうち回っていると

トントン

というノックの音が聞こえてきた。

誰だ?こんな夜中に・・・。

師匠が俺を飲みにつきあわせる気かな・・・?

実は、最近師匠は俺を飲みにつきあわせることが多くなってきている。

どうやら、俺が結構酒に強いことがうれしいらしい。

うーん、ちょっと疲れてるけど師匠だったらむげにはできないしな・・・。

 

「はーい、あいてますよ。」

 

とドアに向かって呼びかけてあげると、ドアが開く。

しかし、そこにいたのは師匠なんかでは無く枕を持ったエマちゃんだった。

え!なんでエマちゃんが!?

そんな驚きを隠せないままに

 

「どうしたの!エマちゃん。…もしかして眠れなかったのかな・・・?」

 

そう聞くとエマちゃんは赤く染まった顔を枕に埋め、コクッとうなずく。

かわいい・・・。

 

「晋介・・・、一緒に眠ってくれる・・・?」

 

そう言って気遣わしげにこちらを伺うエマちゃん。

俺もこのままだったら眠れそうに無かったし別にいいかな・・・。

いや!決してやましいことは考えてないぞ・・・うん。

 

「ああ、いいよ・・・。おいで。」

 

それを聞くと、パアっと顔が華やぐエマちゃん。

そして、パタパタと俺の方に駆け寄り、抱きついてきた。

 

「晋介ー・・・」

 

そう言って俺の背中に手を回し、ぐりぐりと頭を押しつけてくる。

めっちゃかわええ・・・。

あまりにもかわいいのでくしゃくしゃっと頭をなで回す。

エマちゃんはムフーとご満悦である。

 

もはや俺には髪の毛をもふっとさせながら必死に抱きついてくるエマちゃんは天使にしか見えない。

 

俺も顔をエマちゃんの髪に埋めて、さらにぎゅっと抱きしめてあげる。

エマちゃんは首筋にかかる吐息をくすぐったそうにするが抵抗はしない。

俺はそのまま鼻孔をくすぐるエマちゃんの香りに包まれて、ゆるゆるとした優しい時間を楽しんだ・・・。

 

 

ある程度落ち着いてきた頃にエマちゃんが上目遣いで

 

「晋介、私眠くなってきちゃった・・・。」

 

とトロンとしたうすら眼で言ってきたのでじゃあ寝よっか?と聞くとコクッと頷く。

抱きついたまま離れないエマちゃん。

うーむ、これはこのまま布団に入るしか無いな。

コテンと二人してベッドに倒れ布団をかぶる。

真冬だけあって部屋の中でもうっすらと寒かったのだが、こうやって二人抱き合って眠るとすごく暖かい・・・。

エマちゃんもあったかい、と小声でつぶやいている。

すぐそこにエマちゃんの顔が見え、なんか安心する・・・。

そんなことを思っていると

 

「しんすけぇ・・・キス、してぇ・・・。」

 

といって目をつぶっておねだりしてくるエマちゃん。

やばい、なんか悪いことしてる気分に・・・。

そう思いながらもゆっくりと優しく唇を触れさせた。

しばし、その柔らかな感触を楽しんで離れると

 

「もういっかい・・・。」

 

といってくるのでもう一度口づけをする。

その後もねだられるたびに口づけを繰り返す。

 

なんか雛に餌付けする親鳥の気分だ・・・。

 

ひとしきりエマちゃんとのキスを楽しんだ後、頭なでて、とお願いしてきたので今は頭をなでてあげている。

ゆっくりゆっくりと頭をなでてあげる・・・。

すると、だんだんとエマちゃんのまぶたが下りていく・・・。

ふふ、もう寝ちゃいそうだ・・・。

 

「おやすみ・・・エマ。」

 

そういって額に口づけをするとエマちゃんは少しほほえみ眠りに落ちていった・・・。

 

 

 

~あれから数日後~

 

「「「「あけましておめでとうございます!」」」」

 

クリスマスの騒動から数日たって新年を迎えた。

師匠、エマちゃん、ギルにペナこの四人と今食卓に並ぶおせちをいただこうとしている。

つーか、こういう時間の流れとかは現実世界と一緒なんだな・・・。

ま、なにはともあれ無事新年を迎えることができたのだからよしとしましょう。

そう納得して数の子に箸を伸ばす。

俺無類の数の子好きなんだよな・・・。

ポリポリポリ

うお!この数の子うめー。

どれどれこのだし巻きは・・・。

これも超うめー!

あまりのおせちのうまさにしゃべることも忘れて食に没頭していると

エマちゃんがうれしげに

 

「晋介君、おいしい?」

 

と聞いてくる。

 

「めちゃくちゃうめーよこれ。エマちゃんが作ったの?」

 

そう聞くと、テーブルの向かいに座るギルとペナの二人がずいっと前に乗り出して興奮気味に

 

「「私たちもお手伝いしたんですよ!」」

 

きらきらとした大きな瞳で見つめてくる。

ほめて!ほめて!と言わんばかりだ。

うん、エマちゃんに聞いてたんだけどね・・・まあ、かわいいから許しちゃうんだけど!

と心の中でサムズアップしてからお礼を二人に伝える。

 

「そうなのか、ありがとう二人とも。すげーおいしいよ。」

 

二人はそれを聞くとうれしそうにニッと笑い、いすに腰掛け二人でなにやら楽しそうに会話しだした。

うむ。仲良きことは美しきかな。

そんなほほえましい光景を眺めていると横からチョイチョイと袖を引っ張られる。

そちらを向くと、むー、と少しむくれた様子のエマちゃんが俺を見つめている。

 

「私もこのおせち作ったんだけど・・・。」

 

なになに?エマちゃんもしかしてヤキモチかなー?

むくれたエマちゃんもかわいいからずっと見ていたいんだけど・・。

 

「エマ・・・ありがとな。」

 

そう言って頭にポンポンと手を乗せてあげる。

すると、先ほどまでのむくれ顔が嘘のように満面の笑みになって

 

「うん!そう言ってくれるの待ってた!どういたしまして!」

 

俺の置かれた手に頭をスリスリしながら目を細めるエマ。

ホントに頭なでられるの好きだよなあ・・・まあ、俺も好きなんだけど、なでるの。

ナデナデ ナデナデ

とまたもや自分たち二人の世界に入っていると

 

「朝っぱらから見せつけるなあ、二人とも?」

 

師匠があきれ顔でちくっと小言を言ってくる。

ちっ、楽しんでたのに・・・。

名残惜しくも手を離す。

すると、エマちゃんも少し寂しげに離れる。

 

「はあ、見せられるこっちの身にもなってくれ・・・。」

 

心底疲れていそうな口調で呆れる師匠。

確かに・・・人のいちゃつく現場見ることほどしんどいもんはないよな・・・。

これからは気をつけよう。

 

「すんません、これからは気をつけます・・・。」

 

「ああ、そうしてくれると助かるよ。でも、エマと仲良くしてくれるのはむしろよろこんでいることは分かってくれ。私が言いたいのは時と場合をわきまえてくれっていうことだ。分かったな・・・?」

 

そう言って優しげな微笑みを浮かべる師匠。

この人はよく俺たちのことを考えてくれているなあ・・・。

こうやって注意してくれる人は大事にしないといけない。

すると師匠は勢いよく立ち上がりながら言う。

 

「すこし場をしらけさせてしまったな!ここらでどうだ?気を取り直して着物に着替えて初詣にでも行くか!」

 

それを聞いて女性三人は色めきだって

 

「「「初詣行きたい!」」」

 

と元気に答える。

よほど初詣が楽しみらしい・・・。

この世界にも初詣とか着物ってあるんだなあ・・・。

 

「そんじゃあ俺は部屋に戻って着替えてきますんで皆さんは着付けがんばってください。」

 

そう言うと三人は、うん!待っててね、見せてあげるからなどと答えてくれる。

そんなうれしい声を背中に受けながら部屋へと戻っていく俺なのであった・・・。

 

――あれから二時間が過ぎようとしている。

さすがに遅すぎじゃね?

着付けは大変なんだと現実世界にいるときに母さんから嫌と言うほど聞かされていたがここまで遅いとは・・・。

もう、遅すぎて素振り二百回やった上にシャワーも浴びて準備満タンなんだけど・・・。

暇だー、などと言いながらベッドをごろごろする俺。

すると、入るわよーというエマちゃんの声。

お、やっときたか。

そう思い、ベッドの上に腰掛けた。

 

「いいぞ、入って。」

 

そう答えると失礼しまーすといいながらぞろぞろと入ってくる着物美人達。

 

「「「「どう?晋介君。」」」」

 

と聞きながらポーズをとる女性陣。

 

あでやかな着物に身を包んだ四人は誰もが言葉を失うぐらいに似合っていた。

 

師匠は黄緑色を基調とした朝顔の着物で、彼女自身のスタイルの良さを存分に引き出している。

 

ギルは紫色の生地にあじさいを描いた着物で、純白の髪の毛とのコントラストが素晴らしい。

 

ペナはどうやらバラをモチーフにした着物で、つややかな黒髪にバラの赤色がよく映える。

 

そして、我らがエマちゃんの着物は彼女の純粋さや明るさをよく表していた。

白色のなめらかな生地に一輪のひまわりが描かれた美しい着物。

だが、普通着物がこれほど魅力的なものと、俺の目には映らないだろう。

きらきらと輝く彼女の存在自体がその白い着物を天上の法衣へと昇華してしまったのだろうか・・・。

いろいろ言ってきたが端的に言えば、彼女は俺と同じ人間には見えなかった。

天使だ・・・。

そう言われても信じてしまうほどの魅力が今の彼女には備わっている。

 

 

「みんな、めちゃくちゃ綺麗だ・・・。一瞬言葉を忘れちゃったよ・・・。」

 

と素直に答えると一同はめいめいうれしそうにしゃべり出す。

 

すると俺はあまりの非現実具合に独りごちる。

 

こんな絶世の美女四人と初詣に行けるなんて・・・。

こんな奇跡が起きることもあるのか・・・。

数ヶ月前の俺からは想像だにしない世界が今、目の前に繰り広げられている。

 

この世の中に確かなものなんか何一つ無い

 

そんな当たり前のことを初めて認識した瞬間だった・・・。

 

 

 

「うわー、すごい!お祭りみたいだ!」

 

そう言って駆け出すペナ。

 

「走っちゃダメよ、こけてしまうわよ、ペナ」

 

と後ろからたしなめるのがギルである。

二人とも幼くはあるがどちらかというとギルの方がお姉ちゃん気質みたいだな。

だが、困ったことに、はつらつとした黒髪の美少女とおしとやかな白髪の美少女はこの屋台立ち並ぶ人だかりの中においても目立ちまくっている。

先ほどから男どもの嫉みや呪詛の入り交じった視線が俺に突き刺さりヒットポイントをがりがり削っていく。

もう、やめて!俺は悪くないの、社会が悪いの。

そう心の中で唱えていないとメンタルがポッキリ折れてしまいそうだ・・・。

少し俺の表情に翳りが見えたのか、エマちゃんが俺の顔を覗き込みながら

「晋介君、大丈夫?来たばっかりなのに疲れたの?それともどっか具合悪い?」

 

心配してくれるのか…エマちゃんホント優しい。

でも、理由が理由だから言えねーよな…。

 

「大丈夫だよ、少し人が多くてうんざりしただけだ。」

 

「何それ?人がいっぱいの方がお祭りっぽくていいじゃない?」

 

笑いながらそういうエマちゃんの横顔はとっても綺麗で、俺には宝石のようにキラキラとして映る。

うん、まあ着物姿のエマちゃん見られてるんだから我慢しよ!

 

「俺は残念ながら少し苦手なんだ。でも、活気があってたのしいとは思うよ。」

 

「そうなんだ・・・。でもしんどくなったらちゃんと言ってね?」

 

本気で心配してくれてるみたいだ。

これ以上は心配掛けたくないな。

 

「よし、さっさとお参りしてかえって宴会の続きをするぞ!」

 

師匠がそんなことを言いながらペナ、ギルの前に行き先陣を切っていく。

 

ペナとギルが屋台の方へフラフラっと寄っていきそうになると首根っこを押さえる。

なにやら文句を言う二人だが言いくるめられて渋々お参りしに行くことに納得したみたいだ。

そうやってなんとか境内にまでたどり着く。

もう社はすぐそこだ。

屋台が出ていないおかげか人手もましである。

あとは参拝するだけだ。

 

「みんな何お願いすんのー?」

 

参拝前にそんなことを聞いてくるペナちゃん。

この子やっぱり少しあほの子なんだよな・・・。

悪い子では無いんだけどな。

でも今それについて突っ込むやつは一人としていない。

師匠なんか「結婚一択だな。いい男が降ってきますよーに!」などと叫びながらガラガラしてる。

ところで、あのガラガラ何なんだろうな。名前さえ知らん・・・。

しかしそんなことはお構いなしという感じで、エマもギルも似たような感じでお願いしている。

うーむ、お願い事をするものじゃ無いんだけどな・・・。

でも、お願いすることがもしも許されるなら俺は・・・。

 

「エマちゃんと幸せな暮らしができますように。」

 

そう言ってガラガラを強く揺さぶるのだった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?
楽しんで貰えましたかね?
最後の方はすこし物足りない感じの終わり方かもしれませんがご容赦を。
感想、評価、お気に入りよろしくです。

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