筆頭のカリピスト ~変革の物語~   作:三方真白

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第6話 こんなの絶対おいしいよ

 

 狩 ら な い か

 

「キャーーー!!」

「ゥウわッ!! 出た~~~!!」

 

 行ってしまった……。

 出たってなんだ、出たって。

 一緒に狩りに行こうと声かけする事全戦全敗。

 不審者通報される事も十数回。間違いなくギルドや酒場や加工屋の黒い記帳に載っているだろう。

 ここまで来ると、もはや出会ってはいけない類の幽霊のような気分である。

 人を見た目で判断してはいけないって教わらなかったのだろうか。

 

 仲良くなった人とといえば治安を維持するギルドナイトの方々だけ。その方達も同情的に装備の変更を進めてくる。

 

 だが断わる!

 

 今の私が私である、筆頭リコーダーである唯一の証明なのだ。

 と思えるくらいに一応愛着が湧いている。ここタンジアの気候にも合っていて心地よいのだ。

 

 そして肌の露出に慣れた要因として、船乗りという海の漢達との出会いがあった。

 グリーヴの尻部分が丸出しで、中身の食い込んだフンドシが見えるデザインなのだ。

 だからこそ彼らはイイ。そこらのハンターよりも私の装備を理解してくれる。が、タマに同情的な目で見られる。

 防具として考えればそれも仕方ない。ただ、一つだけ言いたい。

 

 ボーンS一式は良くて、何故私の装備はダメなのだ?

 

 あれも顔がほとんど見えないデザインだ。

 肌の露出もそんなに変わらない。

 

 何 故 な の だ !?

 

 と、そんな問答を交す相手もいない状態で数日が経ち、疑問が晴れる事もないまま転機が訪れた。

 

 

 誘われたのである。この私が。

 

 

 ヒャッホーイと飛び上がりたい気持ちを抑えつつ、視線をやった先には、どう見ても付き合って間もないです、と言いたげな男女カップルの初心者ハンター。

 おはようからおやすみまで一緒かい?とイヤミを言いたい気分だったが、そこは黙っておく。

 二人がイチャコラしながら私を誘う様は、さすがに抜刀してスタンプしてやろうかと思わざるを得なかった。

 

 二人だと戦力的に不安だからという事らしいが、このイチャコラを目の前で見せられながらの狩りは誰だって嫌だろう。

 二つ返事で「よろこんで!」と言ってしまった手前、撤回するわけにもいかず同行することになり、雪山でもアツアツっぷりを見せつけられ、ホットドリンクを飲んだはずなのに心は余計に寒くなり、完全なる接待ハントをする羽目になった。

 

 男は狩猟するが傲慢で注文が多く、女は釣りも採掘も虫取りもしないで、草むしりしかせず、武器も使わず文句ばかり。

 内容もガウシカの角の納品とか…。

 しかも、ガウシカ一匹に、

 

 属性攻撃強化

 精霊王の加護

 雷耐性強化&雷やられ無効

 回復速度【小】

 

 の効果付与は不要だと思う…。

 結局の所私は女に手を出しそうにないという偏見の元に誘われた事がわかった。

 彼らからしたらそういう見た目なのだと。

 

 男色系の人に見えるのだと。

 

 断わっておくが私はノンケだ。しかしあえて反論することなくやり過ごし、最後まで接待に徹した。

 何せ初のパーティーハントである。これ以上妙な悪評が立っては元も子もない。

 それに彼らの実力であれば程なくして廃業するだろう。まったくギルドもおおらかである。

 

 で。

 その時の狩猟が功を奏してか、少しずつ色んなハンターに呼ばれるようになった。

 

 口うるさいだけのファッションハンター、恰好が変過ぎてどれくらいの実力か分からない、そもそも怪しくて近寄れない。様々な酷評という名の噂も一緒に頂いたが、そこそこ狩れるハンターであるという噂が追加されるようになった事実は大きい。

 全ハンター人口に対する狩猟笛使用者の人口比率を考えれば、必要とされて当然と言えよう。おかげで沢山のハンターと狩りに出る事ができるようになった。

 

 

 ──が、

 

 心なしか…男色系……つまり同性(男)が好きそうなガチムチハンターの割合が多い気がしてならない。

 

 リピーターも出ている昨今、もはや気のせいではない。

 

 私の噂はどんな一人歩きをしているのだろうかと、恐ろしさを覚える今日この頃であった。

 

 


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