第4話 錬金も、変態も、あるんだよ
とりあえず私の筆頭ハンターとしての防具は一応なんとかなったが、何故こうなのだ?
これはどういう理屈なのだろうと説明を求めたが、
「アイルーの秘術、ネコのレンキン術の結果だニャ。使う者の特性に合わせてそうなるように作られているニャ」
と返されてしまった。
不本意だが、そうだと言われれば納得せざるを得ない。
にしても、これが私の特性に合っていると? ほとほと疑問だが、これで狩りに出るのか? …出るんだろうな。
「コイツの武器は何スかね?」
ルーキーが言った。
ふと思ったのだが、私の方が新人なのだから、ルーキーは私じゃないか? というツッコミは今は言いっこなしだ。私の方が年上だろうし。
自身の両手を見るが、私はまだ武器らしい物は何も持っていない。まさか、素手じゃないだろうな。
「背中を見るニャ」
ニャァべえに言われて背中に視線を移すと、光の煙がまだそこに漂っていた。
全員の視線が集まるのに合わせるかのように、形を成して重みが加わってくる。
「形からすると狩猟笛、みたいだニャ…」
狩猟笛、要は楽器って事か。私に鳴らせるのか? というか扱えるのか?
「ハハ。装備玉を二つ使わなかったら大剣だったかもしれないな」
そっちの方が良かったかもしれない。ランサーさん、的確過ぎてちょっと後悔しています。
ともあれ。完全に形を成したそれを手に掴み自分の視界にとらえる。
う~ん、ピンク……物凄いピンクだ……。
「マギアチャーム=ベル。女性ハンターに人気の狩猟笛ね……」
「それにしても……」
「ハハ……度合いが増すな…」
「響け、乙女チックサウンド!ッスか? この格好でこれはさすがに怖いッスよ……」
ガンナーさん引いてるのが伝わります。男の私が持つ事に抵抗を感じていますね?
リーダー、言葉が出てこないなら無理に言わないで下さい。
ランサーさん、笑いが渇いてます。何の度合いかはあえて聞きませんとも。
ルーキー、いつか君の背後に気配を消したまま立ってあげよう。
うん。今更だが言っておこう。
これって──
た だ の 変 態 じ ゃ な い か !?
本当に筆頭ハンターになれたのか?
なんか騙されてない?
「大丈夫、騙されてないニャ。格好は変態でもおニャァは立派な筆頭ハンターになったニャ」
フォローになってない。そこは否定する所じゃないのか?
どうやら私は、この格好で筆頭ハンターの一因として生きる事になってしまったようだ。
怪しい宗教団体に騙されて、沢山の人前で下手な踊りを披露するかの如くだ。
せめてもの救いなのが、素顔が隠れている事だろうか。
昔の私を知る人物に出会っても気付かれないというのは大きい。
記憶が無いとはいえ、こういう時に知人にバッタリ出会う事ほど気まずい事は無いだろう。
以前の私がこうだったかはさておき。
そんな私の葛藤を無視してニャァべえが告げる。
「今からおニャァは、筆頭ハンターの一人、
筆 頭 リ コ ー ダ ー
ニャ♪」
記憶を失った私が、ようやく抱けるようになった様々な感情。
彼らと出会って、人と触れ合う事で現れた気持ち。
こんなにも強く感じる事があるなんて。
「世の為、人の為、ギルドの為…」
それはまるで水中から浮かびあがる泡のように──
「筆頭ハンターとして恥じない働きを期待するニャ」
目の前の小動物が、初めて憎らしいと思えた。
十分恥ずかしいわ!!