怪物、竜は一般的にモンスターと言い、ハンターは正式にはモンスターハンターと言うらしい。
今の私はそれすら分からなくなっているとは…、記憶喪失とは面倒なものだ。
その中でも彼ら筆頭ハンターは特別な存在であって、黒い竜と出会って生きていた私は一応の実力者とみなされたらしい。
…その時の事はまったく記憶にないが。
それにしてもこのアイルーだ。
鮮やかなリンゴの様な赤い目に吸い込まれそうになってしまう。
たしか『ニャァべえ』と言ったか…。
アイルーは人間と変わらない知性を持ち、言葉を話す事ができるのだが、コイツはどうだろう? 人間と同じに扱うにしても、こいつには何か欠落している印象がある。
事実だけを正確に述べ、良しも悪しも無いかのような。
「記憶が無いのが不安なのかニャ? 大丈夫、筆頭ハンターになればその願いは叶うニャ」
どういう事だ?
「彼らはみんな、とある願いを叶える為に力を得て、筆頭ハンターになったニャ。
おニャァもその願いを叶える為に力を得ると良いニャ。
記憶も無いままいつまでも生身じゃ、この世界を生きるのは危ないニャ。
さぁ、このレンキン装備玉を使えば筆頭ハンターになれるニャ。願いを口にするニャ」
良いのだろうか。コイツを、彼らを信じても。
言う事はもっともで、その通りだ。
今の私には何もない。自分すら失っている状態だ。なら、たった一つを得るための願いを口にしても良いのではないか。
それを求めても良いのではないか。
これ以上の下が無いのなら最初の一歩にしても良いのではないか。
私は……、
──自分を取り戻す為に力が欲しい。
レンキン装備玉をニャァべえから受け取った。
「契約成立ニャ」
その瞬間、光の奔流のような煙が真っ白に私を包みこむ……。
これが新しい私の始まりだ。
「おお……」
「眩しいッス~~」
やがて世界に色が戻るとスッキリした晴れやかな気持ちとなっていた。
筆頭ハンターとやらになったせいか?
で、実際の所私はどうなった? 何か変わったのか?
「やあ……これは……」
「あら……」
まず思ったのはかなり風通しが良いという事だ。
そして、4人の視線が何となく気まずそうな雰囲気を醸し出していた。
そう、言葉にして良いのかという顔で。
「稀有な素質を持っていると思ってはいたけどここまでとは思わなかったニャ」
そこにニャァべえが口を挟む。果たしてそれはどういう意味かと視線を自分の身体に落とす。
…。
なんだこれは。
素肌にベスト、アーム、グリーヴ、それと申し訳程度の下着。
……肌色面積8割だ。
「大分……変わったな……」
口調は真面目だがリーダーがあっけにとられている。
いや、全員か。
そしてガンナーはちょっと顔をそむけている。えぇ、そうなりますとも。
私を見ないで下さい。
「これは……マズイな」
「まずいス。はみ出るス」
この格好でモンスターを狩りに行け、と?
さすがに無理があり過ぎる。ポロリも含め色々な意味で。
「追加装備をレンキンしようニャ。この姿は流石に目に毒ニャ」
表情は変わらないがニャァべえにとっても予想外の事だったらしく、即座に言った。
できれば、頭もお願いしたい。顔が隠れるタイプの奴。
この格好のまま狩りに出るのは遠慮せざるを得ない。
「わかったニャ。うん、もしかしたらその方が色々と都合が良いかもしれないしニャ」
そうして正式に私の筆頭ハンターとしての姿が出来上がった。
ベッコXキャップ(←追加分)
三眼の首飾り
ボーンSアーム
ナルガXフォールド(←追加分)
ボーンSグリーヴ
「……、怪しさ大爆発……ニャ」
感情があまり動かない印象のニャァべえだったが、さすがに何か思う所があるらしい。
レンキン装備玉を二つ使ってこれか…、とでも言いたげな感じだ。
三つ目はさすがに手持ちが無いらしいので我慢するしかない。一応ハンター用の防具との事なので、そこそこの防御力は持っているようだった。
多少レアなものも含まれるがそこまで特別な装備でなく、一般のハンターにも流通している物とニャァべえに説明されたが、私にはさっぱり分からなかった。
ただ一つ安心したのは股間周辺の防具が下着と褌の二重構造になったせいか、締め付けフィット感と安心感が増したという事だ。
うむ、これならポロリは無いだろうな。