ちわっす、俺はエミーリオ。
まだイタリアにいる。
本当は日本へ飛ぼうとしたんだが、イタリアの別の場所に飛ばされた。
いやまだそれだけなら、また飛んで日本に着くまで飛びまくればいいだけなんだが。
今回はなんていうか、…飛んだ先で一般人にぶつかってしまったのだ。
しかも子供。
思い切りぶつかったので、お互い痛みで悶えた後、俺はぶつかった子供に謝った。
ここまでは良かったんだ。
謝ってそのまま別れて俺は日本へ行けると思ってたんだが、ぶつかった子供が足を挫いたらしく俺がその子供を家まで送ることになったんだ。
まぁ俺の過失だったから、その子には申し訳ないと思っている。
その子の親はどうやら放任主義のようで、親はたまに帰ってくるくらいでいないときはヘルパーを呼んでいたらしい。
俺は少し可哀そうに思えてきて、その子の足が治るまで飯は作ってやることにした。
本当はこんな得体のしれないおっさんを家に入れちゃダメなんだがな!
でも白いウニみたいな髪形をした少年は喋れる相手が出来て大層喜んでいたので、気にしないことにした。
流石長年腕を磨いた俺の料理だけあって、白髪君は大層お気に召したようだ。
甘いものを出してみると、思いのほか気に入ったようなので他にもスイーツを作ってあげた。
プリンアラモードやモンブラン、クレープ、マカロンと何から何まで作ってあげると、目を輝かせていてめっちゃ可愛かった。
でも最終的に気に入ったのは何故かマシュマロというね。
オーブンに160℃で20分焼いて、15分放置した後に冷蔵庫に寝かせて作ったマシュマロクッキーをいたく気に入ってくれたらしい。
それから3日間、マシュマロ君の足が治るまで一緒に過ごしていた。
いつ親が帰ってくるか分からずハラハラしたけど、無事親とは出会わなあったので良かった。
じゃあなーと別れを告げるとすごい勢いでしがみ付いてきた。
なんてこった、そんなにマシュマロが気に入ったのか。
仕方なくマシュマロを箱詰めで買ってあげて本人に渡した。
ん?違う?
どうやら親も帰ってこなくてとても寂しようだ。
仕方ないので親の帰る頃を確認してもらい、それまではマシュマロ君の家に居候することに。
マシュマロ君は頭が賢過ぎて、周りの同世代とは少し話が合わないのだと。
ふむふむ、羨ましい悩みだなぁおい。
ゴーイングマイウェイを勧めてみると何か納得してくれたみたい。よかったね。
世界は広いんだし、いつか楽しいこと見つかるよと言えば理解してくれたような?
それから数週間ほど、マシュマロ君と過ごしたけど、親が帰って来るらしいので退散する。
最後に僕の将来の夢みたいなことを語っていたので、とりあえず応援してみた。
また会おうねと言われたので、会えたらなとだけ返しておく。
どうせ俺世界中回ってるから見つからないと思うけどねー。
手を振って見送ってくれるマシュマロ君に俺も手を振り返す。
いい子だったな、うん。
よし今度こそ日本行くか!
ちゃお、俺はエミーリオ。
途中で無人島にいったりしたけど何とか日本に辿り着いたよ。
日本来て直ぐに変なジジイに会ったりした。
本当に道端を歩いていただけなのに急に話しかけられてジジイの家に連れてかれるという。
どっかの民族の衣装を着たモヒカンジジイは俺に何か言って来ていたけどあまり頭に入っていない。
ぶっちゃけ目に布巻き付けてて前が見えるのは何故だろうか。
それと体に巻き付けてる布からすごいガッチャガッチャなってるんだけど、一体何が入ってると言うの。
色々な謎仕様に首を傾げるもここは考えたら負けだと思ってる。
俺の血が欲しいとかなんとか、お前プリーモのなんとかかんとか…
いやいやプリーモって誰だよ。
プリンアラモードの略かと思ったよ一瞬…
取り合えず宗教勧誘みたいなことを言いだしたのでお暇することにした。
最後まで何か言っていたけどこういう人種には耳を貸さないことが一番だな。
ジジイ、あなた年じゃないかな。
とまぁやっと自由に動けるようになり、店を出すことにした。
戸籍からなんやらは俺は持ち合わせていない。
なんせ大昔の人だからな。
鼻炎の赤ちゃんから教えてもらったマジックで戸籍と印鑑を出して、不動産屋に向かう。
目についた不動産に入り、物件を出してもらう。
人当たりの良さそうなおばあさんが出てきて物件を一つずつ見せてくれたので、手ごろな金額の物件を選んだ。
少し中学校に近いけど、昼から夕方にかけてランチやスイーツ、サンドイッチを出すのも考えてみようかな。
まぁメインは居酒屋だけど。
ってなわけで、店をオープンした。
一か月で繁盛した。
結構色んな人が来てくれて嬉しい。
中には近くの寿司屋さんの店主とか来てくれて、魚を持ってきてくれる。
毎度その魚を捌いて酒のつまみにして一杯やってるのが最近の楽しみである。
たまに子供を連れてきてはソフトドリンクを飲ませてる。
野球が好きらしいので、少し前にどっかの国で貰った誰かのサイン入りの野球ボールをあげた。
すごく喜んでくれてたので良かった。
ぶっちゃけ俺野球のルールとか知らんから持ってても邪魔だったんだよね。
それから野球少年は昼頃に店に顔を出すことが多くなった。
可愛いけど営業妨害しないか少し不安である。
とある日に寿司屋の店主が泥酔するほど飲みまくっていた時があって、俺が店主を家まで運んであげた。
グレた消炎龍とかなんとか意味わからないことばっかり言ってて、めちゃくちゃ絡んできたのでこれから泥酔する前に注意しようと思った。
どうやら寿司屋は息子に継がせる気満々らしい。
ちゃんと息子の意見も聞かないと喧嘩になるぞと忠告してあげた。
そういえば子供といえば、何かトンファー持った男の子がよく来るんだが。
群れがどうのこうのって…ぶつぶつ文句言いながらスイーツを頼んでくる姿は何気に可愛い。
ランチで出されるハンバーグがいたく気に入ったようで結構な頻度で来ているんだが、一体その金はどこから来るんだよ…
何か他人がいる空間が嫌いなようだったので、端っこの若干孤立してた席に案内させたらご満悦の様だった。
だが客がお喋りしているのを、うるさいからとクレームをつけるのは頂けない。
やめるように言い聞かせたが一向に直してくれないので、他の客を威圧する度に軽く拳骨を下している。
トンファーで威嚇ってお前……
それも咬み殺すってお前…
すみませんね、この子コミュ障なんです。
正直この子の将来が心配だ。
よぉ、俺はエミーリオ。
開店してから約2年半が過ぎた。
売上は上々、これならあと10年ちょいは日本にいられるかな。
この前包帯君が来てくれた。
今度は店を出す国を言っていなかったなと思い、それを謝る前に頭を叩かれた。
解せぬ。
果実酒ばっかり飲んでるから別のものを飲ませてみた。
美味しいと言ってくれて、原料は何かと問われたのでハブと答えると吹き出していた。
面白い反応もするんだなぁ。
殴られた。解せぬ。
俺の顔の広さを見込んでだろうか、顔に仮面被ってる全体的にチェック柄が目立つ男を見たら教えてくれと言われた。
なにその変人。
取り合えず首を縦に振ると包帯君は帰っていった。
また別の日に丸眼鏡をかけた和服の青年が店に来た。
何か初対面名前を言われたけど、どうやら口コミや広告から来たようだ。
メニュー表を読んで、そばか酢鶏で悩んでいたのに結局ラーメンを頼むという謎の行動をしてきた。
まぁ頼んでくれさえすれば俺はそれでいいんだけどね。
それからだろうか、めっちゃくちゃ来る。
しかもラーメンしか頼まない。
何故かラーメン君は俺のことを聞いてくるんだが、あっち系の人じゃないだろうな…
悪いが俺はノーマルだ。
よく酒も飲んでくれる人で、お得意様だから面には出さないけど、気色悪い。
でもこの前鬼殺しを勧めたら見事に酔っぱらってくれた。
鳥の設定が…とかおしゃぶりさえ…とかぶつぶつ言ってるけど大丈夫かな?
おしゃぶりって赤ちゃんの中で流行ってるアレじゃないよな………
取り合えず慰めた。
元はと言えばお前がうんたらと意味の分からない逆切れしてきたので、酒を継ぎ足して泥酔させて沈めた。
この人絡み酒かぁ…、酒を飲ませたのはアカンかった。
その二日後、再び店に訪れて、ラーメン食べに来ていた。
どうやらこの前酔っぱらっていたことはスッカリ忘れている様で…左様か。
因みにあまりにもラーメン君の来訪数が多いので、ラーメンの種類を一品増やした。
まぁ最近の出来事はこれくらいかなぁ。
やっほー、俺はエミーリオ。
あれから2年経った。
多分2年。
あの野球少年は今もよく俺の店に来てくれている。
最近出た新商品のランチメニューがお気に入りらしい。
ただ、遊びすぎて勉強を疎かにしているようで俺の店に溜まった宿題持ってきて、ドリンク頼みながら処理している姿をちらほら見ている。
たまに教えてくれと言われてて困る。
でも俺は学ないし、何か教えろと言われても…
日本の歴史は全く覚えてないしなぁ。
ただイタリアとの貿易情報ならまだ記憶に残ってると思うよ、って言ったらそれは要らないと言われてションボリ沈殿丸だった。
一応算数や理科は教えたけどそれ以外は無理。
あーあー俺も学校行ってみようかなぁと思うけどまず小学校からやり直さないと無理な気がしてきた。
虚しい。
トンファー君は学ランを着ていたので、中学生だと思う。
腕に風紀って書かれてる腕章のついた学ラン着てたけど、あの学校は学ランじゃなかった気がするのは俺だけか。
まぁまぁ結構な不良に育ってくれちゃって…
今も尚トンファーでお喋りしている客を威嚇しようとするので、拳骨を下す。
たまに説教をする俺にイラついたのかトンファーで殴ろうとするけど、正直眉毛君の方がやんちゃだと思った。
勿論躱して拳骨をお見舞いする。
ヒートアップして営業妨害になりそうだったので、意識狩りとってトンファー君の友達に回収させてる。
トンファー君の友達は強面のいかにも年齢詐欺してそうなリーゼントの奴だった。
お前中学生なの?って本気で問いただしたかった。
とりまリーゼント君にトンファー君を預けていつも呼んじゃってごめんねーって言っておく。
何故かリーゼント君の顔は引き攣ってるんだけど何でかな?
あ、やっぱ迷惑だったかな…
でもこっちもトンファー君の横暴っぷりには迷惑してるのでお相子だな。
あの子見てると眉毛君を思い出す。
元気にやっているだろうか、あの不良児は。
ってなわけで営業に戻る。
そうだ、この間買い出しの時にチワワに追われていた男の子を助けたんだ。
チワワに対して異常に怯えていたので少しの間眺めてたけど、ちゃんと助けてあげた。
チワワにビビっている小学生を見れて少し面白かったと思った。
その子は俺の顔を覚えていたのか、俺の店に一度だけ親を連れて昼を食べに来ていたことがあった。
まぁそれだけならいいんだけど、親の方に見覚えがあるような…
イタリアの眉毛君とこで働いていた時にチラっとどこかで見たことあるかも?
ダメだ、俺は人の顔を覚えるのが得意じゃねぇから思い出せない。
そういえば最近とてもビックリすることがあった。
また炎が変色した。
水・黄緑・紅・桃・淡黄・山吹・氷色の炎に変色した。
今度はなんだよ…既に投げやりな気分で炎を点けたり消したりする。
結果、店が潰れた。
何でだ!
待てよ、おい、俺の店ぇぇぇぇええええ!
何これ、重力でも操ってんの?
1㎜とも要らない、本当に要らない、切実に。
あああ、それよりも俺の店ぇぇ。
ダメだ、また作り直してもあの炎が灯ったら潰れる恐れがある…
ってことで、数年店を閉める。
そしてまた炎を扱えるよう修行をしに森へ行くことに。
それから3年を要した。
ほんと、この炎不便だなぁ…
周りの木を重力でばったんばったん倒していっちゃうんだもん…
あと夏場に森中を凍らせてしまうという事態に。
あれは焦った。
頑張って橙色の炎で溶かしたけど、途中で黒い炎が出てしまってトルコに飛ばされた。
チクショー…本当にストレス溜まるなぁ…
猛特訓のお陰で漸く炎の出し消しが出来た。
二度と出すかあんな炎…
俺の店ぶっ壊しやがって。
はぁ…
街に戻って店を再び作る。
寿司屋のおっさんが一時なくなってたけど、どうしたのと驚きながら聞いてきた。
潰れたんだよ、物理的に。とは言えなくて、ちょっと遠出してましたーと言い訳をする。
遠出する為に店を壊すことないだろう、心配したんだぞと言われた。
仰る通りです、ええ。
三年ぶりに開いた俺の店には色んな客が寄ってきてくれた。
トンファー君に野球少年、ラーメン君、包帯君、色々顔馴染みが俺の店を覚えていてくれて嬉しかった。
因みに包帯君からは殴られた。解せぬ。
もうこれ以上面倒事に関わるものかと炎は暫く使わないことにした。
これ以上語ることもないので、もう少し時間を進めよう。
よ!俺はエミーリオ。
あれから1年経った。
多分1年。
野球少年は中学生になってる。
何故かトンファー君は未だ中学生だ。
何でだ。
待て、お前もう高校生に上がる頃だろ。
何でまだ中学生なの?
しかも俺お前がこの前リーゼント集団から敬礼されてたの見たからな。
完全にグレちゃってるよ、これ。
てか何よ、リーゼントって流行ってんの?
お前の友達も確かリーゼントだよな。
あとお前流石にトンファーで遊ぶのやめなさい。
いい年にもなってトンファーなんぞ振り回して恥ずかしい。
それを本人に言ってみると、何か思案顔してた。
これを機にトンファーを持ち歩くのをやめてくれればと思う、切実に。
あと俺をストレス発散代わりに殴ろうとするのやめろ。
意識のないお前を家まで運ぶの誰だと思ってんだ。
俺じゃねぇよ、リーゼント君だよ。
可哀そうに完全にパシリじゃねぇか…
そういえば最近久々に包帯君に会った。
酒をいつもより暴飲していたので機嫌が悪そうだった。
何か言ってるけどあんま聞き取れなくて相槌だけ打つこと数時間、まさかの包帯君が潰れた。
俺も長年の顔馴染みではあるけれど、包帯君の家とか知らんがな。
どうしようと考えていると、ふいに店の扉が開いて、顔に包帯巻いて黒いコート来てる人が入って来た。
俺は直感したね。
こいつが包帯君の親だ。
俺はそりゃもう、助かったとその親に包帯君を預ける。
何か鎖とか手に巻いてるけど、ファッションにしては少しダサいと思ったのは内緒である。
ある日、チワワに追いかけられて泣いていた少年が店に入って来た。
とても落ち込んでいたので、事情を聴いてみた。
え、上半身全裸で好きな子に告白した?
それはおま、ただの変態だろ…
え?死ぬ気で告白しようとしたって?
何故それで上半身全裸に思い切ったのか。
これイタリアでやったらビンタものだよね。
えーと、これから挽回しとけばいいじゃんとだけ言って励ましてあげた。
絶対に嫌われたと落ち込んでいる。
まぁ確実に嫌われているだろうなぁ…
取り合えずその子からしたら、いきなり同じクラスの男の子が上半身全裸で詰め寄って来たようなもんだろ。
恐いわ。
同情の余地はない。
水だけ置いて、俺は厨房に戻る。
世の中広いなぁ…
俺は窓から見える夕焼けを眺めながら切実に思った。
わーい、日間ランキング1位だったー。
まさか衝動的に書いたのがこんなに人気出ると思わなかった(震え声)
ようやく原作スタートですな。