Emilio   作:つな*

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ユニチームルート 白蘭視点


Emilio IF√1 part2

白蘭side

 

 

「代理戦争…?」

「そう、僕たちがこれからするゲームを一緒にやらないかい?」

 

目の前のエミーリオは訝し気に僕を見ていたけど、僕はそれ以上に期待に胸を躍らしていた。

それは少し時間を遡る。

僕はユニちゃんのお陰でエミーリオの居場所が分かり、エミーリオとの再会を終えて後日、代理戦争のルールが分かるとすぐにエミーリオを勧誘した。

ハッキリ言って、僕はエミーリオと一緒じゃないとモチベーションが上がらないんだ。

仕方ないよね。

 

「ユニちゃんの代理で戦うだけのゲームだよ」

「戦う?また物騒なことしてんのか?お前は…」

「大丈夫、エミーリオはずっとユニちゃんの隣で座っているだけでいいんだ」

「いやそれ完璧な戦力外じゃん」

「ゲームの内容は簡単だよ、この時計を守り抜くだけ」

 

そう言って僕は昨日ユニちゃんから送られてきたバトラーウォッチをエミーリオに見せた。

 

「へぇ…でも危なくないか?そのゲーム」

「ま、少し流血沙汰あると思うけど、僕がエミーリオを守るから安心してよ」

「いや安心出来ねぇよ、ユニ守れよ」

「うーん…そこまで言うならもう誘わないよ」

「おう、そうしてくれ」

「その代わりに僕らのいる別荘でゲーム中の間料理作ってくれない?」

「は?」

 

それから渋るエミーリオをなんとか頷かせて、僕はエミーリオと一緒にユニちゃんの用意した別荘へと向かった。

別荘ではブルーベルと桔梗が出迎えてくれて、エミーリオを見るなり目を見開いていた。

 

「白蘭様、その隣の御仁は…」

「エミーリオだよ、僕の大切な人だから失礼がないようにね」

「は、わかりました」

「にゅにゅー、白蘭はブルーベルとそいつどっちが好きなのー?」

「はは、エミーリオに決まってるじゃないか」

「おい白蘭…お前な……」

 

ブルーベルの質問に僕が笑顔で即答すれば、エミーリオが呆れて、ブルーベルが目を見開いて驚愕しているのが分かった。

ブルーベルが何かを言おうとする前に桔梗がブルーベルの口を塞いぐ。

 

「では客室へとご案内しますので、少々お待ちください」

 

事前に桔梗にはエミーリオのことを少しだけ教えてあった。

大切な恩人に会いに行くためにユニちゃんの代理になったこと、何を置いても彼よりも優先するものはないこと。

だから僕にとってどれだけエミーリオが大事なのかを一番知っている。

あとは未来での記憶で、僕の最期を桔梗だけが知っているってのもあったからかな。

エミーリオは頭を掻きながら桔梗の後ろへ着いていく。

僕は不満げなブルーベルの相手をしてあげた。

 

「むー、白蘭にとってあいつ何なの…」

「んー…少し難しいなぁ…ブルーベルにとって僕って何?」

「にゅ?」

 

ブルーベルが僕の言葉に目を丸くした後、さも当たり前のように胸を張って言い放った。

 

「全てよ!私にとって白蘭が大好きな気持ちは世界一だもん!」

「そっか……僕にとっての世界一はエミーリオなんだ」

「え…」

「今の僕があるのはエミーリオのお陰だし、これから何があろうとそれは変わらないよ」

 

初めて僕の本心をエミーリオ以外に喋ったな、って思った。

誰にも言わなかった僕の宝物。

 

「そっか…白蘭にとってあの男が…」

 

ブルーベルは少し頬を膨らませるだけで何か文句をたらたらと言うことはなかった。

それが少し意外でもう少し不満を言うかと思っていたと正直に言ってみると、ブルーベルは眉を顰めて僕に抱き着いてきた。

 

「不満たらたらよ…でも一番大切な存在の悪口って…一番傷つくって分かってるから……」

 

少し驚いたけど、僕はブルーベルの頭を撫でる。

 

「ねぇ白蘭…」

「うん?」

 

「白蘭は…今幸せ?」

 

「…うん、とっても」

「そっか…ならいい」

 

エミーリオにとって僕が何よりも大事ってわけじゃないこと知ってる。

だから、今のブルーベルの感情も理解出来る。

でも、それでも…本当に大切な人なら…幸せそうな顔を見るだけで十分なんだ。

 

「あ」

「「え」」

 

声がする方へ振り向けば、エミーリオがいた。

 

「白蘭…お前、まさかロリコ「違うよ!」」

 

変な方向へ勘違いしたエミーリオに弁解すると、エミーリオは腑に落ちたような顔して僕の肩に手を置いた。

何か嫌な予感がする…

 

「恋愛は人それぞれだ…だがな、相手が18歳超えるまで手は出すなよ」

「だからブルーベルはそういうのじゃないって!エミーリオ!」

「え、マジ?」

「ブルーベルも何か言ってよ」

「…あんたに白蘭は渡さないんだから!」

「ブルーベル!?」

「アツアツじゃねーか」

「違うってば!」

 

桔梗の助けもあり漸くエミーリオの変な勘違いが解けたのは、既に日が傾いていた頃だった。

ユニちゃんが空港からこちらへ移動しているという連絡が来て、そろそろ着くだろうなと思っているとチャイムが鳴る。

僕が扉を開けようと手を伸ばす前にエミーリオが開けてしまう。

 

「エミーリオ!」

「ああ、ユニか…久しぶり」

「やぁユニちゃん」

 

ユニちゃんはエミーリオがここにいることに首を傾げていたが、僕が説明した。

 

「ってなわけで、エミーリオは代理戦争が終わるまでここに泊まらせるよ」

「なるほど…ですが、エミーリオは一般人です…出来る限り巻き込まないようお願いします」

「エミーリオを巻き込むのは本意じゃない、安心してよ」

「そうですか」

 

まぁ正直巻き込む気満々なんだけどね。

巻き込んで、もう戻れないところまでマフィアに関われば、ミルフィオーレに勧誘しようかと思ってたし。

専属シェフとしてだけど。

ユニちゃんにそれを言えば直ぐに反対しそうだし、黙ってるけど。

γ君が若干エミーリオを睨んでいたけど、今の彼、何言っても聞かなさそうだし放置でもいいかな。

 

翌日、代理戦争一日目を迎えた。

朝からブルーベルとエミーリオは厨房で何か作っていて、僕は代理戦争のこれからの作戦内容を考えていた。

そして夕方頃、皆の付けているウォッチが鳴り始めた。

 

『バトル開始1分前です』

 

僕は直ぐに厨房へ行き、エミーリオとブルーベルに声をかける。

 

「エミーリオ」

「ん?どうした」

「少し用事が出来たから数十分くらい出かけてくるよ、ブルーベルとユニちゃん見ててくれるかい?」

「おう、任せな」

「頑張ってね白蘭!」

「じゃあ行ってくるね」

 

僕は直ぐに別荘を出て、戦いやすい開けた場所で敵チームが現れるのを待つ。

そして目の前に現れたのは六道骸のいるヴェルデチーム。

 

『バトル開始です 制限時間は10分』

 

僕は目の前の敵に向かって炎を放ち出した。

結果を言えば、予想以上に敗退者が出た。

こちらのチームからは3人の敗退者が出て、ヴェルデチームから一人敗退させることが出来た。

総合的に僕らのチームが不利になった。

まああまり気にしてないけれど。

怪我人も出たし応急処置をして帰路に就く。

帰るとエミーリオ達が顔を出して出迎えてくれて僕は機嫌が良くなった。

どうやら夕飯を一緒に作っていたらしい。

夕食を準備するまでの間で僕らはヴェルデチームのことを考えていた。

まさかあんな装置があるだなんてね、流石は天才の科学者ってことか。

ヴェルデチームは先にやっちゃった方がいいね。

その方向で進み、日が完全に落ちた頃に夕飯になった。

やっぱりエミーリオの料理は美味しいや。

ユニちゃんもエミーリオが隣にいるといつもより落ち着いている…というより嬉しそう?

ていうかブルーベルがエミーリオに懐いてるんだけど、意外だな。

今日もブルーベルとユニちゃんがエミーリオを説得して泊まってもらうことにした。

もう寝ようかなーって時間帯にエミーリオが僕に声を掛けてきた。

 

「白蘭」

「ん?」

「お前もう寝るのか?」

「うん、少し眠いしね」

「そうか」

「何かあったの?」

「いや……お前らのやってるゲーム…代理戦争だっけか」

「うん」

「あれって優勝したら何かあるのか?」

「ああ…ユニちゃんの家系って元々短命なんだけど、今回のゲームはそれの解決の糸口みたいなものなんだ」

「え、ユニって短命なのか?」

「そうだね、つい最近彼女の母親が亡くなったばかりだし…このゲームに負ければ、まあ何も変わらずユニちゃんが短命のままってだけかな」

「母親?アリアだったか…髪の長い」

「アリアを知ってるの?」

「少し前にイタリアで会ったことがあるだけだ…そっか、彼女は亡くなったのか」

「ふぅん、にしてもいきなりゲームのこと聞き出して…参加したくなった?」

「いやそういうわけじゃないんだが…まぁお前らがわざわざ日本まで来てやるからにはどんな理由があるんだろうって思ってただけだ」

「そう」

「いざという時には手助けしてやるから、まぁ最善尽くして頑張れよ、おやすみ」

「それは有難いや、おやすみ」

 

知り合いが死んだときの反応が薄いのが少し意外だったけど、まぁ一回会っただけの人間なら誰しもそんな反応かな?

僕はその日はそのまま眠った。

 

代理戦争二日目は、夕方に綱吉君達が来ることになっていた。

エミーリオにそれを言えば少し人数多めに夕飯を作り出すと言っていた。

そんなこと別にしなくてもいいんだけどなぁ…

夕方になれば綱吉君達が訪れて、昨日戦ったヴェルデチームの情報を共有した。

綱吉君達はエミーリオがいることに心底驚いていたけれど、未来での僕の様子を見ていたからか納得するような仕草すらあった。

 

「そういえばエミーリオさんは俺達が何してるか知ってるのか?」

「うん、代理戦争のルールとか大まかにはね…でもアルコバレーノのことは教えてないよ」

「そっか…あんまエミーリオさん巻き込むなよ白蘭」

「未来に連れて行った君が言うことかい?まぁ僕としては有難かったけど」

「う"っ」

 

綱吉君もユニちゃんと同じでエミーリオを巻き込むことに難色を示していた。

でも何だろう、ユニちゃんとは違うことを懸念してるみたいに見えるなぁ。

少し気になるけど後で聞けばいいかな…

そんなこと考えてると、正ちゃんとスパナ君が到着して、ユニちゃんが予知した未来を述べた。

 

「次の戦いで2つのチームが脱落します」

 

それ以上の正確なことは分からないと首を横に振るユニちゃんを眺める。

やっぱり未来よりも今の方が予知出来るのかな…

ユニちゃんの言葉を念頭に入れて、これからの作戦会議が始まる。

ウォッチが鳴り出したのは夕飯を食べ終えた頃だった。

 

『バトル開始1分前です』

 

全員の顔に緊張が走ったのが分かる。

視界の内にいたエミーリオもこれから起こることを悟ったようで、ゆっくりとユニちゃんの隣に座りだす。

 

『バトル開始 今回の制限時間は30分です』

 

僕らは綱吉君達と共に外で待ち伏せをしていて、バトル開始の合図が鳴り奇襲をかけられる。

相手はヴェルデチームだ。

昨日のお礼に全員倒してあげようと思って幻術を使う骸君ともう一人の子供を警戒しながら他へと攻撃を繰り出す。

そして中盤にそれは起こった。

予期せぬ方向からの遠距離攻撃での奇襲。

その場にいた人たちの中でユニ・ヴェルデチームを標的とした狙いに、リボーンチームは困惑していた。

綱吉君がなにやら無線機で口論していて、相手はコロネロチームの沢田家光だと分かった。

そして綱吉君はコロネロチームとの同盟を破棄し、コロネロによって射撃の的にされる。

だがそれを僕が身を挺して庇い、綱吉君はコロネロのいるであろう場所へと向かう。

ユニちゃんには恩が…あるからね…今回だけだよ、君を守るのは。

次々と来る射撃に段々避け遅れる。

 

「白蘭様!」

 

桔梗の声に反応して、僕は後ろを振り向けば直ぐ側まで攻撃が迫って来ていた。

躱せないと分かり、少しでも急所を外そうと体をズラそうとした時だった。

急な浮遊感に襲われて、気づけば先ほど僕がいた場所がずっと下の方に見えた。

そして直ぐに小さな衝撃と共に地面に膝からゆっくりと落ちる。

 

「派手に怪我したなお前…大丈夫か?」

 

煙が晴れる

 

「な…んで……」

 

額から流れる血で視界の半分が赤く染まる中、半分の視界で鮮明に映る目の前の男に問いかける。

 

「何でここにいるの……」

 

戦場の真っただ中だというのに、どこか余裕そうな表情をしながら僕の問いに困ったように笑う。

 

「エミーリオ」

 

危ないから、と手を引いて直ぐに安全な場所に行きたかったけれど、驚愕のあまり固まる体は1㎜とも動いてはくれなかった。

エミーリオの掌が僕の頭に軽く静かに乗せられる。

 

「いざという時には助けてやる…って言ったろ」

 

彼の言葉に、心のどこかで安堵した僕がいたんだ。 

 

「ボスウォッチを壊さないようにすればいいってことは、取りあえずお前を守ればいいんだろ」

 

エミーリオの言葉に僕は我に返り、痛む体を無理やり起こす。

 

 

「エミーリオ!君は危ないから中にっ」

「あーはいはい、心配はいらねーよ。ちゃんとγ君から壊れてないバトラーウォッチくすねてきたからちゃんと戦闘には参加出来る」

「はぁ⁉なにやって…じゃなくてっ」

「これでも少し、腕に覚えがあるから」

 

一般人の力量じゃこの場にいる者誰も倒せるはずなんかない。

誰もがそう思うだろう言葉に、僕は気が遠くなるが一刻も早くエミーリオを移動させようとする。

だがその前にコロネロの攻撃が僕たちへと放たれてしまった。

僕はエミーリオへと手を伸ばそうとしたが、その手がエミーリオに届くことはなかった。

一瞬の静寂の後、暴風が襲う。

咄嗟に顔を腕で守り、目を細めながら状況を確認しようとして、今度こそ僕は自身の目を疑った。

エミーリオは右腕を前に突き出したまま微動だにせず立っていた。

そして右手の拳をゆっくりと開くと、カランと金属が落ちる音がして僕は何かが落ちた地面を見る。

そこには弾丸が数発落ちていた。

 

「なんせ、紛争地帯じゃ銃弾が飛び交ってんのなんて当たり前だしな」

 

数発と続いて銃弾が飛んでくるが、全てエミーリオへ届く前に地面に落ちていく。

弾速なんて捉えれるわけもなく、僕は速すぎる目の前の出来事を、脳が処理することで一杯だった。

エミーリオが戦えるという事実に固まる思考回路を必死に動かした。

 

「白蘭様、大丈夫ですか!?」

 

後ろから桔梗が僕を庇いながら移動させようとする。

 

「あ、桔梗君!目が届かない場所にいられると守りにくいからそこで白蘭の周り警戒しててくんない!?」

「は…?」

 

着弾音で声が聞き取りづらいと思ったのか声を大きくしてそう叫んだ彼の声に戦場と化したその場の誰もが視線を移した。

そしてエミーリオが参戦しているという事実に何人が目を見張っただろう。

目の前のエミーリオはただ黙々と飛び交う銃弾を掴むは、叩き落とすは、軌道を変えるはで目まぐるしく動いている。

その顔に焦りはない。

むしろ単純作業かのように涼し気な顔さえしている。

今思い出してみれば、この攻撃は呪いを解除したコロネロの本来の攻撃力を伴う銃弾だ。

素手で捌いていて無事なわけがないハズ…なのに………

誰もがエミーリオの所業に目を見開いている。

数十秒経つと漸く弾丸が止む。

 

「弾切れかな…そら白蘭、今のうちに移動すんぞ」

「え、あ、うん」

 

有無を言わさぬ様子に思わず返事をしてしまい、エミーリオに担がれる。

そしていきなり走り出したかと思えば森に突っ込んでいき、僕は目を見開く。

 

「ちょ、どこにいくつもり!?」

「あ?敵さんのとこだろ」

「は?」

「ったく、銃弾撃ちまくりやがって…お前も血塗れじゃねーか、俺は少し怒ってんだぞ」

「え……」

「いくらゲームといえど限度があんだろ…ちょっとどついてやる」

 

あくまでもいつも通りのエミーリオに僕は唖然とする。

何か突っ込みたくてもエミーリオの走る速さに驚くばかりで全く口が開かない。

まるでバイク並みの速さで森の木々が視界の端を流れていく。

30秒もしないだろう内に、コロネロ達が見える。

そのそばでは綱吉君が沢田家光と戦闘をしていた。

だが双方ともエミーリオを視認すると、動作を止め目を見開く。

エミーリオが崖の上にたどり着き、すぐそばに僕を下す。

 

「エミーリオ、白蘭!?何故お前たちがここに」

 

綱吉君の言葉は最もであるが僕はそれに返事らしい返事も出来ずにいた。

僕も状況をあまり把握していないし、理解すらしていない。

 

「おい家光、エミーリオとかいう男を警戒しろ、あいつは俺の弾を全て叩き落した」

「なっ」

 

解呪時間が終り小さくなっていたコロネロが頬に冷や汗を流し、エミーリオを睨みながら沢田家光にそう告げる。

コロネロの言葉に沢田家光も驚き、警戒し出す。

 

「おい、銃ぶっ放してたやつは誰だ」

「……俺だ、コラ」

「………」

 

エミーリオが静かに言い放った問いにコロネロが緊張気味の顔で答えると、エミーリオが黙り込んだ。

どうしたのかと思い僕はエミーリオの顔を覗き込もうとすれば、エミーリオは重い溜息を吐き出した。

 

「あー…本当は殴るつもりだったけど、んなちっせーガキ殴る程人間落ちてねーよ」

 

困ったように頭を掻きながらそう言い放つエミーリオの言葉を理解したコロネロが怒りだした。

 

「ふざけんな!俺はこれでもイタリアの軍人だったんだぞ!見た目で下に見てんじゃねーぞコラ!」

「あ?あー、そういえばおしゃぶり持ってる奴って本当は大人なんだっけか…」

 

何でエミーリオがそれを知っているのかと不思議に思うが、問いただす雰囲気でもなく僕は口を噤む。

思い出したかのような顔をしたエミーリオが何やら考え事をし出して、数秒後に顔を上げる。

 

「いやでもお前が本当は大人だったとしても見た目がガキの奴を殴んのは抵抗あるし」

「まだ言うかコラ!」

 

コロネロがエミーリオの言葉にキレると、銃を構えだす。

沢田家光がそれを止めようと動く前に、重くゆっくりと言い放ったエミーリオの声がその場に静かに広がった。

 

「まぁ、敗退してもらうけどな」

 

一瞬何が起こったのかなんて僕には分からなくて、側にいたハズのエミーリオが少し離れた場所である沢田家光のすぐ近くに片足を若干浮かべて、蹴り上げる構えをしていた。

パリン、と何かが割れる音が響いた。

 

「な…」

「は、や……」

 

それに反応出来た者はいなかったようで、側にいた綱吉君やリボーン君も驚愕していた。

上空から何かが落ちてきて、目を細めてそれを見る。

落ちてきたのはボスウォッチだと分かると、僕は自分の腕を見やる。

僕のウォッチじゃない…綱吉君でもない…じゃあ、

視線を上げ、目を見開いたまま動かない沢田家光とコロネロを見て漸く理解した。

コロネロチームのボスウォッチを破壊したのだと。

直後、『戦闘終了です』と合図が鳴り響き僕は息を吐く。

 

「え、戦闘って時間制限あんの?」

 

緊張の欠片もないエミーリオの言葉に時間制限あること教えてなかったなーと思いながら心の底から安堵した。

エミーリオが怪我しなくて本当によかった……

後でエミーリオには問い詰めなきゃと思いながら、痛む身体を起こして立ち上がった。

 

「ありがとうエミーリオ、助かったよ」

「おう、それよりも止血しに戻んぞ」

「待って、歩くから担がないで、恥ずかしいから」

「恥ずかしがってる場合か、ほれ、行くぞ」

「あー…はは……綱吉君見ないでくれるかい…」

 

僕の言葉を無視して担ぎ出すエミーリオに、綱吉君が超死ぬ気モードを解きながら近寄ってきて、僕は思わず両手で顔を隠す。

 

「エ、エミーリオさん!何で参加してるんですか!?」

「何でって…白蘭負けそうだったし、つーか怪我してんなら助けんの当たり前だろ」

「そんな理由でー!?で、でもエミーリオさんらしいや…」

「んじゃ話はまず戻ってからな、こいつの応急処置からだ」

「は、はい…」

 

いきなりの敗退のショックから立ち直っていないコロネロチームを綱吉君が横目で見て、気まずそうにしていたが振り向くことはなく別荘の方へ戻っていった。

勿論エミーリオが綱吉君をもう片方の脇に担ぎあげて、だけど。

あまりの速度に綱吉君は始終悲鳴をあげていた。

戻ってきた時は、傷だらけの僕を見て真・6弔花がとても心配そうに駆け寄ってきた。

綱吉君達が帰っていった後に正ちゃんに怪我を治してもらって、皆疲労感がピークで休み出す。

僕らがコロネロと戦闘をしている間にヴェルデチームは撤退していたようだ。

何よりも、今回の二戦目で戦力を大幅に失った。

既に僕らの戦力は、僕の持っているボスウォッチと、エミーリオの付けてるバトラーウォッチだけだ。

γ君がバトラーウォッチを返せと喚いていたけれど、彼の怪我は重症で多分三戦目には間に合わないだろうという理由でエミーリオのままだった。

ユニちゃんは複雑そうに顔を歪めて、エミーリオの参入を快くは思っていない様子だった。

 

「エミーリオ…やはりあなたの参加は賛成しかねます…」

「んなこと言ったってこれ以上ユニのチームが傷付くだけだぞ」

「…」

「んな顔するな、俺が参加したのは白蘭とお前を助けたかったからだ…積極的に戦うわけじゃねーよ」

「約束して下さい…危なくなったら絶対に逃げると」

「分かった、約束する」

 

ユニちゃんは渋々エミーリオの参戦を承諾した。

だけれど、この判断を死ぬほど後悔するのは直ぐ後のことだった。

アルコバレーノであるスカルが重症を負ったという知らせを受けたユニちゃんが病院の方へ出かけた後だった。

 

 

「何で君たちがいきなり来るのかな…復讐者!」

 

突然の復讐者の奇襲に会った。

復讐者はウォッチを持っておらず、ルールの裏をかいたような行為に舌打ちをする。

それならばとウォッチを持っていない桔梗やザクロ、ブルーベルが僕の前で戦闘を始めるが、直ぐに倒される。

真・6弔花があっさりと倒されたことに僕の警戒はMaxになる。

だが、ただでさえ疲れていた僕は復讐者の攻撃に反応することが出来ずに鎖の先についた鋭利な(おもり)が僕の頭を貫こうとした時だった。

 

「白蘭!」

 

エミーリオの声がすぐ側で聞こえた。

 

「え…」

 

僕の頬に飛び散った液体が伝う。

それが血と分かるまでに時間はかからなかった。

ズシリ、と重さのある温かいものが僕の体に寄りかかる。

 

「あ…」

 

僕は身体を痛いほど締め付けられ、それが彼の腕であることに気付く。

 

「な…で……」

 

段々と服が血を吸って重くなっていく。

 

「エ、ミー……リオ…」

「げほっ……」

 

復讐者がすぐそばにいることさえ忘れて、エミーリオの背中に手を回せば、そこにはポッカリと穴が開いていた。

目の前が暗くなっていくような錯覚に襲われ、ただその穴を押さえることしか出来なくて、目から溢れる涙を拭う暇なんてなかった。

 

「エミーリオっ……嫌だ、死なないで……嫌だ…」

「びゃくら…」

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」

「聞け、白ら、ん……俺はだ、いじょうぶ…だから…げほっ、落ち着け」

「死なないで、やだ……」

 

急に腹部に激痛が走り、意識が遠くなった。

 

やだ…いやだ、エミーリオっ、死なな…で…

 

 

必死の抵抗も虚しく、僕の意識は途切れた。

 

 

 

 

 




白蘭:SAN値直葬。泣いていい。
ブルーベル:エミーリオへの嫉妬は大体初日でなくなった。
桔梗:ハハン
エミーリオ:心臓に穴空いてるけどわりかし無事。どっちかっていうと白蘭が傷口を押さえていた時が一番痛かった。

コロネロ狙撃地点まで約5000mで、エミーリオの全力疾走は秒速約200m…約25秒で着く計算…ですよね?
エミーリオって痛覚が人よりも鈍い気がする。
とまぁユニチームルートIFです。
続きは今のとこ考えてないです。


【挿絵表示】

ブルーベルって可愛いですよね。

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