Emilio   作:つな*

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エミーリオは再び出会う。


Emilioの再会

やっほー、俺はエミーリオ。

さっき金髪の青年が店に入って来た。

学校はどうしたんだろうと思ったけど、外国から旅行?で来たみたい。

前髪長すぎて目が覆われてるけど、これちゃんと前見えるのかな。

あと頭にティアラみたいなの付けてるけどファッションかな?

どうやらイタリアから来たようだ。

酒ないの?って言われたから身分確認した。

本当は昼から居酒屋はやってないけど、折角イタリアから来てもらったし、一番奥の席でならと酒を出すことに。

オススメって言うからジンをベースにしたオレンジ・ブロッサムを作って出してみた。

ふふふ、聞いて驚け、俺の店で扱っているジンはなんと…俺がわざわざ原料から作り上げたものなんだ!

大麦・ライ麦・ジャガイモ・トウモロコシを日本ではなくイタリアの方で収穫して、そのまま知り合いの所で蒸留作業する。

ここから草や根、実で香りをつけていく作業であるスピーティングは全て俺の自己流だ。

まぁこんなこと言っても知ってる人あんまいないから、もう自慢はしてないけどな。

その努力の結晶であるジンをベースにしたオレンジ・ブロッサム…オレンジの方はアメリカから輸入したネーブルオレンジを使用してる。

その青年がカクテルを口に含んだ瞬間、唖然とした表情に俺はいつみてもこの反応は嬉しいなぁと思った。

凄い勢いでカクテルを飲み干しちゃったけど、大丈夫かね…

え?君の使用人に?

違う?君の仕事場の使用人にしたい?

ああ、ゴメンネ、そういうのお断りなんだ。

凄く拗ねてるけどそんなへそ曲げないでよ、ほらもう一杯飲んで機嫌直して。

また別のカクテル与えたらそれをぐびぐび飲んでいく青年。

自分のこと王子って言いだしたけど、痛い子かな?

本当に貴族だったら申し訳ないけど。

なんかおつまみのメニュー欄覗き込んで、全部って言いだした。

これ全部食べる?絶対無理。

なので仕方なく食べれる分だけ作ることに。

料金はその分だけ請求すればいいし。

サーモンとアボガトのサラダやツナとトマトのクレープを作って出す。

凄く喜んでる…ていうか、頭の周りに花が散ってる気もする。

んー…ここまで露骨に喜ばれると、凄く、嬉しいです。

他のつまみも次々と出していくと、あれよあれよと夜に。

他のお客さんもいる中、その青年は昼からずっと飲んでるせいで今じゃベロンベロンである。

二日酔いなると可哀そうなので、薬をつまみと一緒に出す。

何の抵抗もなく飲むくらいには酔っぱらっていたとだけ言っておこう。

いきなり眠り出すもんだから仕方なく、厨房の横にある俺の部屋のベッドで寝かせる。

寝かせた後はまだ店に来る客を相手にする。

深夜2時頃に漸くお客さんが全員帰り、店仕舞いをしようとした時に部屋の方から物音がした。

バタバタと音がすると、勢いよく扉が開いて青年は焦ったように今何時って聞いてきた。

正直に時計を指差して2時って答えたらうわーって焦った顔されたけど大丈夫かな?

門限でもあるの?

あ、二日酔い大丈夫?なんともない?

なんか不貞腐れてまた飲み始めようとしてたけど、やんわり止めて帰らせた。

翌日また来た。

でも今夜大事な用事あるからって言ってアルコール度数の低いものを飲んでた。

おつまみを大層気に入った王子君は、何度も俺の職場の専属シェフならない?って言ってくる。

だからならないって。

もう専属シェフなんぞこりごりだ。

でも王子君が俺を強制的に連れて行くって言いだした。

この店買い取る気か。

どんだけ積まれても売らねーぞ。

いやだから…あのね……

ナイフ出して脅したって俺にとっちゃそれまち針みたいなもんだからね。

世界にはトンファーや銃口を向けてくる奴いるからね?

そんなごねられても…

いつまで日本に滞在するの?ん?一週間くらい?

なら一週間だけならいいよ。うん。

勿論日本にいる間だけね。

最近近場で謎の爆発事件あったせいで、テロとか噂されて来客数減ってるし。

なんとか納得してもらった後、夜までちょくちょく話し相手になってあげた。

夜の10時半頃に店を出て行った。

翌日も来た。

それも至る所に包帯と松葉杖をしてだ。

ビックリした。

門限破って親に怒られたのかな?

いやこれ怒られたってレベルじゃねぇよ絶対に。

事故にあったのかな…

まぁ本人は機嫌良さそうだからいいけどさ…でもけが人に酒はダメだと思う。

のでノンアルコールを出した。

ぶーぶー言ってるけど、チーズリゾットを出すと静かになった。

病人に良さそうなもの作ってみたけど気に入ったみたいで良かった。

え?デザートまで?

あー…ケーキの残りがあったからそれ出すか。

決して余ってて処理が面倒だったわけじゃないからな。

ケーキもお気に召したらしい。

にしても怪我大丈夫かね…

って心配してた矢先、立ち上がる拍子に松場杖が滑ってテーブルに思い切り額ぶつけてるし。

あーあ…血が出てる。

額の怪我って小さい傷でも出血量が多いんだよなぁ。

でもこれ多分頭の傷口開いたな。

ポケットにあるハンカチをそのまま額に押し付ける。

あ?王子の血が何?おい暴れるな、止血出来ないだろ。

えーっと…取り合えず押さえつけとくか?

って、ん?急に静かになった。

情緒不安定かよ。

まぁいいや応急処置しとこ。

ちゃんと後で病院行って来いよと念を押すのも忘れない。

水飲ませて落ち着いたらそのまま途中まで送っていった。

次の日、不良少年が全身包帯塗れで俺の店に来た。

君何でそんな怪我負いながら俺の店来てんの!?

療養しろよアホ。

王子君といい君といい最近けが人多すぎない!?

溜息しか出ない、違う、溜息すら出ない。

なんだか店の入り口で立ったままなんだけど、座れば?

他の客もビックリしてるよ⁉

ととと取り合えず、これはアカン。

こんな奴普通に客席に案内したらそれこそ他のお客さんに迷惑だわ。

色んな意味で。

仕方ないので俺の部屋に案内する。

ちゃんとクローズの看板を掛ける。

既に中にいるお客さんには注文の品は出してるから、会計の時にカウンターの鈴を鳴らしてくれと頼んだ。

あわばばばば、それよか不良少年だ。

何でそんなふらふらの状態で来るのかな?

馬鹿なの?

部屋に入れてベッドに座らせた。

悪いね、俺の部屋は椅子とベッドが一つずつしかないんだよ。

これ病院から抜け出したパターンじゃないよね?

何だろう、物凄く落ち込んでるっていうか、我慢してる様子なんだが。

え?修行?負けた?

ああ、そういえば君この前まで修行してくるからって俺に弁当頼んでたよね。

決闘の為の修行だったけどその決闘に負けたと。

そんな傷負うまでやる決闘って…不良の間だと当たり前なのかな?

殴り合いで負けたから慰めろってのも可笑しい気がする。

でも多感な年頃だし無下にも出来ない。

頭撫でて次頑張れー的なこと言って放置した。

すっごい部屋の中から鼻を啜る音するんだけど、シーツに鼻水つけてないよね?

お客さんの追加注文がないか待機してると、10分ほどで客は皆食べ終わり勘定していった。

これ絶対気を遣われたね。

そろそろ泣き止んでるだろと思って部屋に戻ったらこいつ寝てやがるし何なのもう…

俺の店っていつから駆け込み寺になったんだろうと思うこの頃。

不良少年は深夜になる前に起こして帰した。

スッキリしてるから、多分愚痴りたかっただけかと思われ。

とっても意外だったが、不良少年が礼を言って来た。

ぐぬぬ、営業妨害だが許してやる。

次の日に、眼帯してる少女が来た。

二度見してしまった。

あれ?この子あれじゃね?この前の人生詰まってた子だよね?

あるぇ?なんか眼帯してる…髪がナッポーになってる…丈が短いスカート穿いてる…お腹が若干見えてる…

何だか間違った方向にはっちゃけてるんですがこれ如何に。

あ、でも態度とかそういうのは前と同じか。

これで中指立てられて金せびられたら本気で泣く自信しかなかった。

割と本気で。

俺の店出た後に事故にあったとかなんとか。

うっわ、じゃあその右目は失明したの?

可哀そうに。

あ、でもそれで少女を必要としてくれる人が見つかったとか何とか。

騙されちゃいないだろうなぁ…そんな奴いたらぶっ飛ばしたる。

あーでも、君が本気でその人が好きなら俺は何も言わないけどさ。

何かあったらちゃんと周りに頼りなよ?うん、俺のとこ来てもいいよ。

ココア飲む?

あ、名前教えてなかった。

漸く少女の名前教えてもらったけど、なんかもう一つの名前も教えてもらった。

そんな不良のような名前にしちゃって…とは思う。

あとその髪やめない?

ナッポー思い出すんだけど。

あの子が笑顔で帰っていったけど、ぶっちゃけ衝撃的過ぎた。

まぁ内面があまり変わってないことに心底安心した。

 

 

 

よぉ、俺はエミーリオ。

また王子君が来た。

専属シェフの話を本気にしてたのか、めちゃくちゃ要求してくるよこの青年。

ホテルの飯よりこっちがいい、って言いだして朝から来る始末。

鍵掛けてたはずなのに何故か中にいるという。

もう苦笑いするしかないよね。

ちゃんと給料払えよーって言ったら経費で落とすから大丈夫って言いだした。

ダメだろ普通に。

今日も夜の10時半に出るらしい。

これから何かあるのかな?

ん?ボス?えーと職場の上司のことかな…の対決があると。

対決って一体何するのさ…取引的な?

楽しいことになるとかなんとか…見に来い?いやダメじゃね?

俺無関係の人だし、店とかあるから出れないよ。

ぇー…我侭言わないでよ王子君。

んー…んー…ぶっちゃけめんどい。

上司に俺を紹介したい?

それ絶対に俺のこと雇う算段なんでしょ。

夜の11時に並盛中に来いと念を押されて言われたけど何で?

いや行かないよ⁉

普通に営業真っただ中だから!

え?そんな必要はない?いやお前が決めることじゃないからね?

いやそんな期待しながら帰らないで…って聞いてねぇ

王子君帰っちゃったけど、俺行かないからな。

と、思ってた時期が俺にもありました。

仮面被ってる男の人達が数名押しかけて来た。

客がいなかったから良かったけど、軽く悲鳴ものな気がする。

え?並盛中に連れてこいって命令された?

王子君に?嘘だろ、あいつ…

このままいられても困るし、行って直ぐ見て帰ろう。

二秒ぐらい見て帰ろう。

服を着替えて、男たちの後をついて行く。

正直並盛中学校なんて俺の店から目と鼻の先だ。

もうすぐ着くと言う頃に、いきなり何か降って来た。

なにあれ。

もう一度言う、なにあれ。

右頬に傷のある眼つき悪い男が鉄球振り回してきてんだけど。

最近の不良ってあんな感じなの?

あれもろに当たったら痛いヤツですよね⁉

周りにいた奴等が次々と飛ばされていくんだけど、これ警察に通報した方がいいよね。

ってなわけで通報します。

あ…

鉄球男の投げた鉄球が携帯に当たってぶっ壊れた。

これ包帯君からの貰い物なんですけど。

ちょっと弁償して貰いたいのでその鉄球仕舞ってくれない?

割と怒ってるのよ?俺。

拳骨と蹴りお見舞いした。

若干強めに蹴ったので数m飛ばされていったけどあんな大きな鉄球振り回すんだし体も頑丈だろ。

おいおい、仮面の男たちも全員伸びてるじゃねぇか。

でも誰も重症らしい奴いないし、救急車呼ぶ程じゃねぇな。

そこら辺に並べて放置しておこう。

これ帰っていいかな…店…

帰って店開けたけど、明日絶対に王子君怒ってそう。

朝になってやっぱり来た王子君。

ん?あまり何も言われない、っていうか意気消沈してるみたい…何があったんだよ。

それよりも上司が入院したから飯作れと?

え?怪我で入院?肉沢山?

いいけど、金払えよ。

待ってろ今作るから、は?先行っとく?

いやいや持って行ってくれないと困るんだけど。

俺が持って行けと?

お前それ絶対に上司に紹介する気満々じゃん!

って人の話聞けよぉぉぉぉお。

マジで帰りやがった。

しかもちゃんと病院名と病室の番号書いた紙置いていきやがって。

くそー…ちゃんと金払っていきやがったし………後で拳骨喰らわしてやる。

今、冷蔵庫にラム肉と…フィレ…くらいだな。他は店で使うし。

肉ばっかじゃダメだから野菜も入れねば。

作ったはいいけど、どうやって会えばいいんだ?

出前のフリっていうか、出前だよねコレ。

んで病室前なう。

開けようとしたら後ろから声が掛けられた。

あ、王子君、丁度良かった。

はいこれ、じゃあ俺帰るわ、ていうか帰らせてくれ。

あああああ、紹介しなくていいからぁ!

無遠慮に上司の個室の扉開いちゃ失礼だろ!って………ん?

んんんんん?眉毛君じゃね?

え?上司……王子君の上司って眉毛君!?

あっちも驚いてるんですけど、でもって王子君も驚いてるんですけど、俺も驚いてるんですけど。

あ、眉毛君俺の名前覚えてたのね、若干嬉しい。

にしてもお前全然成長してないな、何で?

いや俺が言える立場じゃないけどね。

眉毛君が王子君外に出しちゃったけど、これ二人で何を話せと?

つかお前何で日本いるの?あと怪我したって聞いたけど大丈夫なの?

銃口を人に向ける癖は治ったかな…

ま、いいや、取り合えず飯作って来たから食え。

食べながら話せばいいし、お前ラム肉好きだったろ。

それでお前あの後何してたんだ?元気にやってたか?

何か辛気臭い顔してるけど、何かあったかのかな。

ん?血が繋がってなかった?

わー、やっぱそうだったんだ、似てなかったもんねお前ら。

んで親父殺そうと…ごめん何て?

え、血が繋がってないことを隠されてただけで殺したくなるほど嫌いになったの?

いやまぁお前ら親子って凄く距離間遠かったけどな。

へぇ…マジかー…

曰く、ちゃんと血の繋がった奴がいるからそいつを後継者にするつもりだった、と。

うわーそれはショックですな。

んーお前の怒りは分かる。

もう話し合えばいいんじゃないかな。

嫌だ?これは相当根に持ってらっしゃる。

眉毛君は結構長い間見てきたこともあって、凄く贔屓したくなる。

でも実力行使はどうかと思うけどな!

つい癖で頭撫でるけど、睨むだけで払いのけないあたり精神的にかなり参ってるのかな?

あ、おい野菜は食え。

毎日お前に言ってただろ!野菜食えって。

怪我人だから拳骨するわけにもいかないので、軽く頭を叩いた。

一応渋々野菜食べ始めたけど、あれからまた野菜食べなくなったとか言わねーよな。

何か複雑そうにしてるけど、食べる元気あったら大丈夫だな。

イタリアに帰る前に一度店に来いとだけ言って、病室を出た。

あー開店準備終わってねー。

子供の相談って酒飲ませて吐かせること出来ないから、面倒だったけど、眉毛君もう成人だからじゃんじゃん飲ませてやる。

あわよくば色恋沙汰聞き出してみよう。

何だか店の前で人だかりが…んんん?

野球少年やマグロ君、不良少年じゃないか。

え?打ち上げしたい?ここで?

いいけどあんまりはしゃぎすぎるなよー。

あ、黄色のおしゃぶりの赤ちゃんじゃん。

え、今度は青色のおしゃぶりの子まで連れてきたんだ。

まぁいいや、どーぞどーぞ入ってね、まだ準備前だけど。

あ、トンファー君も?

珍しい、誰かと一緒にいるなんて…え?俺の店に来ただけでこの集団とは偶然鉢合わせしただけ?

デスヨネー。

凄くわいわいやっててとても微笑ましいです。

にしても何だか昔こんな光景見たことあるような。

ああ、そうだ。

確かあれは150年くらい昔だよな。

友人やプロチナブロンドのお兄さんに神父やらが集まってよく酒盛りしてたなー

ああ、懐かしいこと思い出したわ。

んでもってよく店の至る所壊してたな。

待って、おい不良少年その右手に持っている爆弾はなんだ。

トンファー君、どうしてトンファーを構えてるの⁉

おい誰か止めろってあああ、もう!

この後むちゃくちゃ拳骨した。

 

 

 

 




ナイフ:≒まち針
ランチア:とばっちりにあった被害者、携帯の弁償代を財布から抜き取られた


ヴァリアー編で進行を物凄く悩んでたので遅くなりました。
ぶっちゃけ大空戦で乱入させるのが難しすぎた。

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