気付いたら赤木しげるの娘だったんですが、   作:空兎81

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HIRO編の導入
蓮をHERO編に投入しようと思ったらこうなる。
HIRO完結記念に!


〜HERO(IF)〜
あるかもしれない世界の話


199×、9月26日……、ついに運命の日が来た。

 

木々が紅葉して世界が色付く秋晴れの今日、原作の赤木さんは命を落とした。自分が自分であるためにアルツハイマーで失った脳は戻らないといい自殺する。

 

原作ではどう立ち向かおうが変わらない運命だった。東西戦に参加した面々が死力を尽くし時に命を賭け立ち向かったが叶わなかった。

 

赤木しげるは死ぬ。今日自殺する。

 

それが受け入れられなくて今まで足掻いてきた。この自分勝手な神様を捕まえる為に全てを賭してきた。

 

この人を止める為には自分の意思を曲げさせるしかない。そして、赤木しげるが唯一自分以外に従うものがギャンブルの結果だ。

 

だから全てを賭けてきた。尊厳を人生を命を、そういった物を賭けて神様の領域をこじ開ける。

 

死を前にして神様となった赤木しげるを本当の意味で倒すのだ。

 

 

そして、今日9月26日、赤木さんは……

 

 

…………めっちゃ元気だった。

 

 

「蓮は気にしすぎなんだ。別にどうってことなかっただろ?」

 

 

タバコを吸いながら赤木さんがそういう。めんどくさがる赤木さんをなんとか引き摺り出して病院に連れて行き、全身くまなく調べて貰ったのだが結果は白。驚くほどの健康体。アルツハイマーのかけらもなかったのだ。

 

 

『先生、うちのジジイの健康診断をお願いします。特に頭を、アルツハイマー的な何かで頭が欠けてないか見てください』

 

『俺はお前にそんなに頭のことを心配してもらわないといけないのか』

 

 

赤木さんがなんかしょっぱい顔をしていたのだけど無視して頭の検診は入念にしてもらった。が、何もなかった。むしろ『この歳の男性にしては考えられないほど健康体ですね』なんて言われてしまうくらいだ。

 

赤木さんはアルツハイマーにならなかった。原作とは違う展開、赤木さんは自殺しない。

 

ついに私は運命を変えることができたのだ。

 

もうなんて言ったらいいかわからない。赤木さんは死なないのだ。死に向かう赤木さんに対して言いようのない焦燥感と絶望感を味わわなくていいのだ。

 

体の奥底から熱が込み上げてきて視界が潤んだ。それが一筋の滴となって頬を伝うと『は?どうしたんだ蓮』という赤木さんのギョッとした声が聞こえてきた。

 

それでも涙が止まらずにいるとグッと身体を強く引き寄せられる。『まったく、急に病院行けだの、それで泣き出すだの今日のお前は調子が狂うな』といって赤木さんは私を抱え込むように抱き寄せる。

 

赤木さんの胸に顔を寄せながら私は目を閉じる。胸の奥からドクドクと規則正しい鼓動が聞こえその生が感じられる。

 

よかった、この人を失わなくて本当によかった。

 

私はしばらく赤木さんの胸に顔を埋め続けたのだった。

 

 

というわけで赤木さんは助かりました!赤木さんに出会ってこの8年間ずっとそればかり考えて生きていたから本当によかったよ。赤木さんは長生きするだろう。なんかめっちゃハツラツとしてるし私より長生きしそうな気もする。まあいいか。元気でいてねお父さん。

 

で、それは良い。めっちゃ良かった。だけど赤木さんを救う為に私は大切な物を失っていた。

 

平穏な日常。それと最も縁遠い位置に私はいる。今、私は裏社会トップの雀士として君臨してしまっているのである。

 

うん、どうしてこうなったし。いや、自業自得なんだけどね。赤木さんとの勝負の為に強くならねば!って斬った張ったみたいな生活してたから。挑まれた勝負は全部受けたしなんなら自分からヤバそうなところに首を突っ込んでましたから。こいつはひどい。

 

ギャンブルをすると赤木さんは喜んでいたけどね。なんなら自分も突っ込んできて親子戦みたいなこともした。やっぱりそこでも敵ポジなのか。たまには親子仲良く和気あいあいとしたいよ父さん。

 

その結果裏社会にめっちゃ名前が売れてしまった。その辺り歩いていると見知らぬヤーさんに『蓮の姉貴、ご苦労様です!』とか言われるからね。やめて、私一般人。振り返る人々の視線がめっちゃ痛かったわ。

 

裏社会に片足どころか頭からダイブしたみたいな生活を送ってしまったが私は普通に生きることを諦めてはいない。だってまだ21歳!いけるいける、人生やり直せるよ!ヤー公に傅かれる生活からはおさらばするんだ!

 

だけれども全国何処にいっても私の存在は知られてしまっている。北は北海道、南は九州沖縄までばっちり遠征していましたからね。私の生きる場所マジでなくない?もはや人里離れた山奥に籠らなきゃいけないレベルである。

 

でも私は普通に生きたい。21歳の一般的な女性として生きていきたいのだ。就職して結婚して子ども産んで、といったふっつうの女性が送るような人生を生きたいのだ。大丈夫、まだいける。人生の8割以上残っているよ。

 

しかしこのまま日本にいても色んなしがらみがこんがらがって身動きが取れない。というわけで私は海外へ飛び立った。誰も私を知らない場所で生きていこう。

 

『積み上げすぎたから消してくるよ』と赤木さんに言って逃避行する。赤木さんも『おう、じゃあ俺もそうするか』といって何処かへ行ってしまった。まあどこでも生きていける人だしアルツハイマーの件ももう大丈夫だろう。それより自分の人生を大事にする。

 

そんなわけで海外生活が始まった。ギャンブルとは無縁の健やかな生活を送っている。言葉全然わからんけど。まあなんとかなるか。

 

あちらこちらぶらぶらと様々な国を回る。女の1人旅だからスリサギ暴行誘拐、色んな危ない目に遭いかけたけど人生のほとんどを裏社会で生きていたので普通に撃退できた。代打ちに出られないように身柄をさらわれそうになったり再起不能にしようとしたりする輩は結構いたからね。人生何が役に立つのかわからないものだ。

 

そして3年が経った。ネス湖でネッシー探すのにも飽きてきたしそろそろ日本に帰りたい。あとご飯が恋しい。お米と味噌汁は日本のソウルフードだよ。ご飯はやっぱり日本食が1番だった。

 

3年も経てば皆私のことも忘れているだろう、ということで日本に帰還する。久しぶりに日本の地を踏むと懐かしい気持ちが込み上げてくる。うん、やはり私は日本が好きだ。

 

それからぶらりぶらりと日本各地を旅歩き長野県ののどかな町を観光していたときにふとふとひとつの看板が目に止まる。

 

“麻雀ーroof・topー”と書かれた看板を見て懐かしい気持ちが込み上げてくる。

 

よくよく考えたら私は人生の大半を麻雀と共に過ごしているんだよね。蓮として生を受けてほどなくして赤木さんに人生賭けた麻雀勝負させられて、それからすぐ東西戦が始まって麻雀を教え込まれて、その後は赤木さんに追いつく為にずっと勝負を求め続けていた。私は麻雀と共に人生を歩んできたようなものなのだ。

 

私は麻雀のことが嫌いではないのだ。むしろなんというか、自分の一部になっている気がする。

 

でも麻雀はやはりアングラなイメージが強い。勿論暇な学生のお遊びやあくせく働くサラリーマンの日常の慰みという側面、なんなら真剣に純粋に腕を磨くプロという生き様があるのも知ってはいるけれどそれでも私には裏の世界があまりにも強すぎる。

 

まともに生きるなら麻雀から離れた方がいいや。

 

“雀”と書かれた看板に背を向けその場を離れようとした瞬間、わいわいと楽しそうな声が隣を過ぎ去った。

 

5人組の女子高生だ。髪の色が赤桃緑橙茶と中々カラフルな色合いだけど花の女子高生なわけだしそこまで気にならない。それより驚いたのはその5人組がそのまま雀荘に入っていったことだ。

 

え、女子高生が雀荘に行くってどういうこと?

 

放課後に和気あいあいと寄るところではないよね?麻雀はマクドナルドではないのですよ?え、どういうこと?実は彼女達は地下アイドルで不当な奴隷契約を結ばされたから解消する為に闇麻雀でもするの?女子高生が雀荘に行く理由が全く思い当たらないわ。

 

取り敢えず気になってしまったから雀荘の階段を上る。一人称オレの黒髪の女の子がいたらどうしようかなと思いながら中に入ると緑髪の女の子が笑顔で声をかけてくる。

 

 

「いらっしゃいませ!お客さんひとりですか?」

 

 

緑髪の女の子は雀荘のエプロンをつけていた。どうやらここの店員らしい。

 

あ、うん、そういうことか。友達が雀荘でバイトしているから遊びに来たということなのか。だよね、びっくりした。そうじゃないと女子高生が雀荘に来るなんてないよね。バイト先に雀荘選ぶのも中々すごいけど。

 

 

「うん。そうだね」

 

「今空いている卓が無いんでもしよかったら私たちと打ちまへんか?」

 

 

緑髪の子がそういうと卓についていた4人の女の子達がこちらを向きぺこりと頭を下げてきた。え、待って。打たないかって、君たち麻雀できるの?

 

 

「君たちと?」

 

 

「ええ。うちら今度インターハイの全国大会に出場することになったんで雀力鍛えるために色んな人と打ちたいんですよ。よかったら打ってもらえませんか?」

 

 

そういって女子高生達は慣れた手つきで麻雀牌を自動卓の穴の中に流し込んでいく。どうやら準備はばっちりらしい。

 

いやでも待って。インターハイってなに?え、それって陸上とか水泳とかで高校生達が汗と涙を捧げて挑む青春の頂点みたいなやつですよね?麻雀でインターハイってどういうことだってばよ。え、麻雀にインターハイがあるの?

 

詳しく話を聞けばあるらしい。全国高校生麻雀大会、通称インターハイ。各都道府県で予選を行い優勝校のみが全国へと駒を進めることができるらしい。プロの解説付きでテレビでも放映さえ全国の何万人というファンが選手達を応援しているとのことだ。

 

健全だ。すごく健全だ。女子高生5人が団体戦のメンバーとなり地区予選を抜け全国を目指す。青春の1ページである。え、私の知っている麻雀と違いすぎるけど本当に同じ競技?腕一本賭けたりとか負けたら飼い殺しの人生が待っているとかないの?麻雀のアングラな世界観はどこに行ったんだ。

 

しかもこの5人が意味わからんほど強い。東では上がりまくるタコスを食べる子に知識量がずば抜けている眼鏡の子、確率の悪すぎる牌選択を和了しきる部長さんにデジタル打法で揺れない心を持つ巨乳の子、

 

そして強運豪運、嶺上開花で必ず上がる黒髪の女の子。正直この子が1番やばかった。なんで毎回カンできるの?なんで毎回カン材があるの?そしてなんでそれで和了できちゃう?え、イカサマ?いやイカサマはしてないな。もはや超能力を疑うレベルである。

 

なんとか勝って『お姉さん強いです。また対戦して下さいね!』と爽やかに言う女子高生達と別れてから呆然と思う。

 

麻雀って、ただのゲームなんじゃね?

 

いやだってあんな普通の女子高生達が放課後に楽しそうに遊んでいるんだぞ?ただの将棋や囲碁と同じ競技じゃん。全然裏世界の代物じゃなかったわ。そうか。そうなのか。

 

麻雀って、楽しんでいいものなんだ。

 

そう思うと今まで避けていたのが馬鹿らしくなったので普通に雀荘に行くようにする。流石に女子高生はいなかったけど(平日の昼間や夜中にいるわけはない)見知らぬおっさんや授業をサボった不真面目大学生相手にサクサク牌選択をする。

 

勝つ。勝つ。勝つ。うん、めっちゃ勝つ。麻雀って楽しいわ。

 

そんなことしてたらとある雀荘で黒服サングラスの奴らに囲まれた。明らかにカタギじゃないし逃げるか。

 

と思ったらその中に見知った人が1人いた。金髪のオールバックに厳ついサングラス、意外と名前の可愛い暴力団組長、原田克美である。昔は使い道のない大金の送金先として重宝していた人だけど海外に飛んでからは全く交流がない。今更何の用だろう。まさかお金勝手に送っていたの怒っているだろうか。え、出どころのわからないお金を扱うのが得意なお仕事でしょ?別によくない?

 

『やっと見つけたぞ蓮。すでに勝負は始まってしまっているがまあいい。お前には来てもらう』

 

そんなこんなで拉致られてヘリに乗せられる。話を聞くとどうやら東京都知事がポカやらかして作ってしまった多額の負債を台湾マフィアに肩代わりしてもらったせいで、東京でのカジノの利権を賭けて第二次東西戦が始まってしまったらしい。

 

天はこの第二次東西戦を開催する為の人質となり赤木は失踪中、戦力不足の東側の人間として東西戦に出ろと原田さんがいう。

 

逃げ場のないヘリの中でさらに両隣を原田さんとなんかボディーガードっぽい厳ついおっさんに挟まれながらそんな話を聞かされたのだが、私には心当たりがあった。

 

これ、HIRO編始まっているじゃん。

 

原作で赤木さんが死んだ後奮い立ったヒロさんが『赤木さんのように生きる!』と言って始まるスピンオフ作品、HIRO編がこの世界でも始まったのだ。HIRO編って赤木さんが生きていても起こるものなんだ。原作というものは中々変わるものではないらしい。

 

で、天さんはとっ捕まったし赤木さんは相変わらず行方がわからん人だし、たまたま見つけた私を東西戦へ連行しようとのことらしい。え、私まったく役に立たんぞ?第一次東西戦争は原作知ってたからなんとか勝てたけどHIRO編は完結してなかったからオチなんて知らんし展開もわからないところが多い。第一次東西戦争ほどうまく打てないだろう。

 

原田さんが何を期待しているのかは知らないが勝てる保証なんてまったくない。私はHIRO編を知らないのだ。

 

でもまあ麻雀を打つのはいいかもしれない。

 

ガタガタと揺れるヘリコプター内でぼんやりと思考を巡らせる。

 

別に負けたところで命取られるわけじゃないし数千億円の損害が出ようが私には関係ないし、なんならこんなアホみたいな約束する知事を首にすればいいだけのことだし勝敗なんてどうでもない。

 

この戦いに勝とうが負けようがもう赤木さんの運命は変わった。ならば私が第二次東西戦に真剣になる理由はないのだ。

 

なら楽しもう。ただただ麻雀を楽しんで打つ。

 

第二次東西戦に参加すればヒロさんがいるしなんなら天さんにも会えるかもしれない。懐かしい2人に会えるのは素直に嬉しいことだ。原田さんは未だ私が逃げないか警戒しているようだが心は決まった。

 

誰に何を望まれようが関係なく好きに打つ。私は人生で初めて何のしがらみもなく純粋に麻雀をする。

 

心の底から楽しんで麻雀を打とう。

 

ヘリコプターの窓から海の上に浮かぶ豪華客船が見えてきた。

 

 

 

 




赤木さん生存ルートでHIRO編に突入すると蓮は初期の赤木さんみたいな天真爛漫な感じになります。普通に笑う。表情筋めっちゃ仕事する。でも真夜中にフグ刺し食べたいとは言わない。

で、HIRO編は蓮無双ゲー。3対1で岸辺さんの代わりに出場して『そういえば湾凰って原作で割と許せない感じの赤木さんの悪口言ってたな。こいつ嫌いだわ』って感じてフルボッコにして湾凰脱落させてしまう。息子終了。

大湾戦始まる時にたぶん赤木さんもやってくる。よかったね、浦部。リベンジ戦だよ!大湾vs赤木

もちろんヒロ(主人公)も参戦。『僕は他でもない君を超えたいんだ!』とか言われて蓮vsヒロとか始まる。これ誰がどの陣営だ?もはや東西戦とか消え去った。原田さん怒るよ。

まで妄想した。続きはないよ。


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