気付いたら赤木しげるの娘だったんですが、   作:空兎81

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6/8 誤字直しました。ご指摘ありがとうございますm(_ _)m


ハワイにて

 

「蓮、ハワイに行くぞ」

 

 

「いやだけど?」

 

 

部屋でレシピ本読みながら今夜の料理について考えているといきなりバタンとドアが開き赤木さんが入ってきた。

 

突然のことで驚いたが身体を壁にうまく手元を隠しさりげなくレシピ本を机の下に押し込む。大丈夫、カムフラージュに机の上に少年ジャンプが置いてあるから私が料理の勉強してたことはバレないはず。なんかエロ本隠す中学生みたいな行動しているけど、仕方ない。だって赤木さんのためにレシピ覚えていたとかバレたくないじゃん。

 

まあ私の料理本のことは取り敢えず置いといて赤木さんが突然いいだしたハワイの件についてだ。うん、なんで急にハワイ?確かにアロハシャツが似合いそうなオーラはあるけど急に海外と唐突過ぎませんか?海外どころか関東からも出たことない私にはいきなりハワイはハードル高いな。それより旅行行くなら大阪行ってたこ焼き食べたい。

 

 

「そういうなよ。若いうちに見聞広めとくのも悪いことじゃないぜ?」

 

 

「興味ない。それに学校があるだろ」

 

 

この家に引き取られてから私は地元の中学校に通うようになった。小学生だと思っていたこの身体は実は13歳でちょうど中学一年生になったところだった。中学生にしてはこの身体小さいし細すぎるよな。料理は自分のためにもしっかりしないといけないわ。

 

小学校に行っていない私が中学生になるには色々と問題があったが一応保護者がいることと学力的に問題がないため許された。まあそりゃ小学校レベルの問題ならいくらなんでもできますからね。テストは全て満点でした。

 

別に休んだところで勉強についていけないということはないが将来のことを考えると学校には行っときたい。私は代打ちとか裏世界の住人になるつもりは全くないんです。真っ当な道を進みたい。

 

 

「学校行きたいなんて俺の娘とは思えねえな。俺がお前さんくらいの時はやんちゃばっかりしてたぜ?」

 

 

「ふーん、そう」

 

 

ああ、知ってます。チキンランとかチキンランとかチキンランとかヤクザ相手に麻雀打ったり拳銃ぶっ放してたりしてたんだよね。13歳で何やっているんだよこの人、生き急ぎすぎだろ。それが赤木しげるといえばそれまでだが私はそんなデンジャラスな人生はごめんである。

 

興味ないとばかりにジャンプをめくる。この時代の漫画は知らないものだらけだな。あ、でもドラゴンボールとジョジョがあるぞ。リアルタイムでこれ読めるのってすごいよな。

 

ジャンプをペラペラめくっているとふと腹のあたりが圧迫されて身体が宙に浮く。ジロリと後ろを見ると赤木さんが楽しそうに私を抱き上げていた。

 

 

「わりぃがもう決まっていることなんだよ。行くぞ」

 

 

そういうと赤木さんは私を抱きかかえたまま家を出て表に停めてあった黒い車に乗る。黒服が運転するそれは赤木さんがドアを閉めるのと同時に走りだした。

 

うん、ちょっと待って。流れるような展開に全然ついていけてなかったけどまさか今から行くのか?え、ちょ、私何も持ってないぞ?マジで着の身着のままだぞ?せめて荷物くらい纏めさせてよ。

 

 

「必要なものは向こうで買うから心配するなよ」

 

 

「このくそじじいが」

 

 

言葉遣いが汚くなったが私は悪くない。というわけで急遽ハワイにいくことになった。

 

 

ハワイにはなんか知らないおっさんが2人付いてきた。ふたりとも赤木さんが私を自分の娘だと紹介すると目を飛び出さんばかりに驚いていた。

 

そんなわけでハワイ旅行がスタートしたのだが基本的に私は無言で赤木さんたちの後ろについていく。ふたりのおっさんが時折話しかけてくれるのだが対人スキルと表情筋が死んでいる私はうまく受け答えができず素っ気ない態度を取ってしまっている。ポーカーフェイスがギャンブル以外では役に立たないことが証明されましたね。うん、つらい。

 

ハワイでは海に行ったりゴルフいったりとバカンスを楽しんだ。赤木さんはどこいってもめっちゃモテていた。ただの四十代のアロハシャツ着たおっさんだというのに、いやまあモテるのわかるけれども。だってこの人、色気の化け物だし。

 

そんな感じでハワイを満喫しホテルに帰ろうとした瞬間1人の日本人に声をかけられる。

 

 

「すいません、赤木さんですよね。お願いがあるんですが」

 

 

「そうだが、お前さんは、」

 

 

「井川ひろゆきです。以前天さんの後ろでふたりの対決を見ていました」

 

 

黒髪童顔の男性がそう名乗った。ひろゆき?ああ、この人がひろさんか。東西戦では最後まで天さんとともに戦い赤木さんの死後は覚醒しいち作品の主人公にまでなっちゃうHIROさんではないですか。ということはこれはアレだな、東西戦の参戦に口きいてもらうためにきた展開ですね。

 

立ち話はなんだということでホテルの部屋に入って話を聞く。予想通りひろさんの目的は東西戦に参戦するための口利きだった。赤木さんはその話を聞いてタバコを一本取り出し火をつけた。

 

 

「ほう、日本じゃそんなおもしれぇもんが起こっているんだな」

 

 

「ええ、西と雌雄を決する戦いです。僕はその戦いになんとしても参加したいんです。赤木さんの頼みなら天さんも断りません。お願いします」

 

 

そういって頭を下げるひろに赤木さんは少し考え込むと煙を吐き出した。

 

 

「そうはいってもお前さんの実力が分からなければどうしようもねえな。今から卓を囲みにいくか。どこか場所あるか?」

 

 

「それなら赤木さん、どうやらこのホテルは牌を貸し出してくれるみてえだぜ」

 

 

「そいつはいいな。早速借りてきてくれ」

 

 

というわけでひろの腕前を見るために麻雀をすることになった。麻雀に必要な面子は4人、そしてここにいるのは5人。うん、私が打つ必要は無さそうだな。赤木さんのゴルフに付き合わされて身体ガタガタだし先に寝るか。まだお子様だもの、寝る時間は早いんです。

 

鷲尾さんが麻雀牌を借りてきてくれたので部屋の中央に机にセッティングした。点棒も用意してじゃあ始めるかという雰囲気の時に赤木さんが私の肩を叩く。なんですか?私はおねむなんですけど?

 

 

「俺はいいからお前が打て。場慣れしておくのも大事だぜ?」

 

 

「赤木さん、その子は?」

 

 

赤木さんからまさかのバトンが回ってきたぞ。え、麻雀打てる人4人いるんだから4人で楽しく麻雀しとけばいいじゃん。場慣れとかも必要ないだろ。これから先麻雀するつもりは全くありませんよ?

 

 

「ああ、ひろにはいってなかったな。こいつは俺の娘の蓮だ」

 

 

「え、赤木さんに娘がいたんですか!?」

 

 

「おう、びっくりだろ?俺も一ヶ月前に知ったんだ」

 

 

「えええええーーっ!!?」

 

 

ひろの驚いた声が辺りに響く。うん、そりゃ常識的に考えて娘がいるのが一ヶ月前にわかりましたとか意味わからない展開だもんな。本当にこの人自由に生きているんだな。まあおかげで私が存在できたんだが。

 

麻雀なんか打ちたくないけど赤木さんにそう言われれば場の雰囲気的に断れない。しぶしぶ席について牌を取っていく。えっと、確か横の2人は関東でも指折りの実力者でひろは将来の主人公だろ?ルールも怪しい私が勝てる相手ではありませんね。まあ適当に頑張りましょうか。

 

 

「乗り気じゃねえのか、蓮」

 

 

「別に」

 

 

「クックッ、まあなんも賭けてねえ麻雀なんかつまんねえもんな。じゃあこうしよう、お前とひろのさし勝負で先に3回トップ取った方が勝ちだ。ひろが負けたら東西戦の口利きはなし、蓮が負ければこれを破く」

 

 

そういって赤木さんは細長い封筒をヒラヒラ揺らす。なんだろう?と思って見ているの赤木さんは中から飛行機のチケットを取り出す。え、ちょ、それ、

 

 

「蓮が負けたら帰りのチケットはなしだぜ?」

 

 

赤木さんはニヤリと笑った。って、ええええっ!?負けたら帰りのチケット破かれるの!?私無一文だし新しいチケットとか取れないぞ?というかコレ負けたらそのままハワイに取り残されるってことだよね?そんなことされたら確実に野垂れ死ぬんだけど!

 

ゆるゆるの麻雀から一気に生死をかけた緊迫感のある麻雀に変わる。後ろで赤木さんが狂気に身を委ねた麻雀ほど心踊るものはないだろう?とカラカラ笑っていっているけど何も面白くないんですが?やっぱりこの人、人間としてどこかネジが吹っ飛んでいるわ。ううっ、負けられない。

 

そんなわけで将来の主人公ひろとの戦いが始まった。

 

 

 


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