というわけでクリア麻雀が始まりました。私は赤木さんとペアらしい。
最強無敵の神域赤木しげるとチームを組めるなんてこれはもう勝ったも同然ですね!期待してますよお父様。きっと何もせずとも赤木さんがあっという間にクリアすべき役を作ってくれるでしょう。
とはいえ、向こうも強敵だ。天の主人公である天さんとHEROの主人公であるひろさんという主人公ズが相手なのだから一筋縄いかないだろう。
この強すぎる相手を倒すためにもクリア麻雀はチーム戦であるし赤木さんとの協力プレイが必要なのだが始まってから大変なことに気付きました。私たちなんの打ち合わせもしてないです。
絶対鳴かせ役と鳴き役が必要なのに何のサインも用意していないぞ?そりゃ東西戦の時にはサインもちゃんと覚えたけど2年も経てば忘れるしそもそも私が使っていたサインは天さんに教えてもらった物だ。そんな手の内が筒抜けになるサインは使えません。これどうやって勝てばいいんだろう。最初からチーム赤木は前途多難です。
まあとにかく手を見ないことには始まらないと牌を積み上げ手牌を開けるとなんと対子が5つあった。おおっ、七対子イーシャンテンじゃん!鳴いて連携出来ない役がいきなり手牌に来たのはついています。これはなんとしてでも和了したいな。
取り敢えずツモった牌をそのまま切って考える。七対子は聴牌までは自力で頑張らなければならないが最後の差し込みを味方にしてもらうことができる。
この戦いは一応ひろさんが私に戦いを挑んだという扱いなので私の左隣には赤木さんが、ひろさんの左隣には天さんが座っている。
ということで赤木さんは私のサポート位置のわけだから援護自体は期待していいのだろうけど何を切って欲しいか伝える手段がないのは致命的だと思う。本当チーム戦だとわかっていたのになんで通し確認しておかなかったんだろうね。まあ麻雀はよくしてたけどスタンドプレーの大好きな赤木家では通しをするっていう発想がないから仕方ないや。日頃の習慣から何も考えずそのまま始めてしまったわ。
七対子を聴牌することを目指しつつ赤木さんに待ちを伝える方法を考えよう。でもそれってあの天さんやひろさんを出し抜くってことだよね。もう普通に和了する方が簡単な気がして来た。自力で七対子ツモれるようがんばろう。
それから8巡、なんとか七対子を聴牌することに成功する。私の待ちは四筒だ。これが赤木さんにあればクリア麻雀のひとつ、七対子が完成する。やっぱりなんとかして私の状況を赤木さんに伝えたい。
まだひろさんも天さんも鳴いてないことから聴牌はしてないだろうけど鳴かせ出したら一瞬で勝負が決まることもある。早いうちに和了りきりたい。
なんとかひろさんや天さんの注意を逸らす方がないだろうか?ともだもだ考えると天さんが切った一萬をひろさんがチーした。うわあああっ、連携プレイが始まった!これ放っておくとマジで決まるぞ!?
いや、まて。でもこれ逆にチャンスじゃね?一度鳴かせ始めたら立て続けに鳴かせるはずだ。鳴いている時はどうしても自分の手元に注意がいく。そこで赤木さんにサインを送ってみるのはどうだろうか?
いくらひろさんや天さんと言えど鳴いている最中に通しをされれば注視できないんじゃないかな?うん、やってみる価値はあるだろう。
次の天さんのツモ番が勝負だ。きっと天さんは次もひろさんを鳴かせにかかるはず、その隙に赤木さんにコンタクトを取ってみよう。
天さんが八萬を捨てた、瞬間赤木さんに視線を送りサインを伝える。“七対子”“四筒”。素早くひろさん達に気付かれる前にサインを送ることができたと思う。
しかし赤木さんからの返答はない。四筒の有無についても手の様子についてもなにも伝わってこない。
え、なんで赤木さんからの返しのサインがないんだ?目がバッチリあっていたから気付いていないってことはないと思うんだけどまさか私がサイン出したと思ってないのか?
そりゃ私からサイン出したことなんてほとんどなかったけどチーム戦となれば私も協力プレイをしようと思いますよ。ああ、これはダメな気がする。赤木さんサインが送られたなんて気づいてないっぽいし全然意思疎通できてないからこの回終わったらちょっと作戦会議でもしましょう。
ひろさんが八萬を鳴いてこれで二副露だ。一二三萬、七八九萬を鳴いたことから恐らく狙っているのは一通だ。もう既に手の中に四五六萬があるのか、それともまだ形付いていないのかはわからないが大して猶予はない。
赤木さんの手番となったがやはり四筒は捨てなかった。持ってない可能性もあるけどこれは伝わってないんだろうな。私の手番になりツモったのは一索、四筒で待つよりは一索の方が出やすいかもしれない。それに四筒ならひろさんに通っている。うん、ここは四筒の方を切ろう。
四筒を河に捨てる。その瞬間ロンと言われ手が倒された。
「タンヤオ一盃口ドラ3、満貫だな」
私は倒された手牌を見て呆然とする。待ちは四筒単騎、明らかに私を狙い打った手だ。
ねえ、待って。理解が追いつかない。なんであなたが和了るんだよ赤木さん。
これはクリア麻雀だからより難易度の高い役を作れるなら和了ってもらうのは構わないけど赤木さんの手牌にはクリア麻雀に必要な役はひとつもない。これはただ私の点棒をさらうだけの手牌だ。
「へー、四筒持っていたんだ。どういうつもり?」
「くっくっ。なに、簡単な話さ。お前を倒したいと思っている男がもう1人いたってだけのことだ」
そういって赤木さんは楽しそうに笑う。私のサインもしっかり赤木さんに伝わっていたのだろう。その上で赤木さんはそれを利用して私を討ち取ったのだ。
ちょっと待って。全く納得できないぞ?これってクリア麻雀なんだよ?チーム戦なんだよ?なにあっさり敵対しているんだクソジジイ。向こうは協力プレイしているんだからこっちだけ不利じゃんかバカ野郎!うわあああっ!赤木さんいるから楽勝ゲーだと思ったのに一気に難易度がベリーハードになりやがったぞ。味方がいなくなったし点棒も減ったし踏んだり蹴ったりすぎる。
チーム戦が2対1対1の戦いになりましたね。これでクリア麻雀をするのか、ハハッ。…無理ゲーですわ。