ルイズさまは、お妃さま!?   作:双月の意思

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遥か宇宙、マール星レピトルボルグ王家は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールをお妃に迎えるための使者をハルケギニアに送った。
ワンダユウは、大使としてトリステインとマール星を行き来し、
チンプイは、ルイズの使い魔兼お世話役として、トリステインに残った。
ワンダユウ「チンプ~イ!頼んだぞ~!」

儀式が終わった翌日のお話です。
チンプイは、マール星にはない、浮遊大陸『アルビオン』に、驚きを隠せないようです。

※今後は、多忙のため、毎日少しずつ書くので、亀更新になるかもしれませんが、ご了承下さい。




『白の国』

 儀式の翌日の昼、チンプイが目を覚ますと、扉がノックされた。

 今日は船が出ないんだからゆっくり寝かせてくれればいいのに、と思いながら扉を開けると、そこには羽帽子をかぶったワルドがチンプイを見下ろしていた。

「こんにちは、使い魔君」

 プ~ンと、ワルドから吐物の臭いがしたので、チンプイは思わず鼻を覆った。

「こんにちは。なんか凄く臭うよ。どれだけ昨日飲んだのか知らないけど・・せめて、その臭いを落としてから来なよ。 そんなイヤな臭いを嗅がせに来たの?貴族にあるまじき行為だよ」

 チンプイの言葉に、ワルドは眉をピクつかせながら、にっこりと無理に笑顔を作って言った。

「だ、誰のせいで・・、まあいい。それに関しては謝るよ。でも、一刻も早く君に訊いておきたくてね。君は伝説の使い魔『ガンダールヴ』なんだろう?」

「え?」

 チンプイがきょとんとして、ワルドを見た。ワルドは、誤魔化すように、首を傾げて言う。

「・・・その、あれだ。フーケの一件で、僕は君に興味を抱いたのだ。君はここよりも遥か東の遠い国からやってきたそうじゃないか。おまけに伝説の使い魔『ガンダールヴ』だそうだね」

「どうしてその事をご存じなのですか、ワルド子爵?・・・あなた、クサいわよ」

 突然、別の方向から声がしたので、ワルドはギョッとして声がした方向を見た。すると、そこには、部屋の奥から鼻を覆いながら出てきて、不機嫌そうにこちらを見つめる金髪の女性がいた。

「エ、エレオノール公爵夫人!? 何故ここに?」

「なぜも何も、昨日部屋を決め直したでしょう? それより、わたし達以外ではオールド・オスマンとミスタ・コルベールしか知らない情報を、どうしてあなたが知っているのかと聞いたのよ! 取り敢えず、その臭いを洗い流してから来なさい。チンプイ君に話があるようだけど・・貴族として、最低限の身だしなみもなっていない人間と話すことなんて何もないわ」

 エレオノールは、そう言ってワルドを追い返した。

 

「くそっ!あの行かず後家め!邪魔しおって! 僕がクサいのは、お前らのせいだろうが!・・・しかし、迂闊だった。部屋を決め直したのをすっかり忘れてた。『ガンダールヴ』の力を確かめなければ、今後の任務に支障をきたすかもしれない・・なんとしても誤魔化さなければ」

 ワルドは、ようやく入れて貰えた貴族の浴場で体を洗いながら、心の中でひとりごちた。

 

 ワルドは、吐物の臭いをきれいに洗い流した後、再びチンプイのいる部屋を訪ねた。そこには、すでに全員集まっており、ワルドはやりにくいなと思いながらも、エレオノールに促されてチンプイのことを知っている理由を話し始めた。

「先程は失礼した。僕は歴史と兵つわものに興味があってね。フーケを尋問した時に、君に興味を抱き、王立図書館で君の事を調べたのさ。その結果、『ガンダールヴ』に辿り着いた。おそらく、フーケは、オールド・オスマンの秘書をしていたから、宝物庫について調べているときにチンプイ君のことを知ったのだろう」

 怪しいと言えば怪しいが、一応、筋は通っている。

「あの『土くれ』を捕まえた腕がどのぐらいのものだか、知りたいんだ。ちょっと手合わせ願いたい」

「手合わせ?」

「つまり、これさ」

 ワルドは腰に差した魔法の杖を引き抜いた。

「やだ」

 チンプイは拒否した。どう考えても『レコン・キスタ』としての敵情視察だ。そんな申し出をを受ける義理はない。

「そうよ。ワルド、そんな馬鹿な事やめて。今はそんな事している時じゃないでしょう?」

 ルイズもチンプイに同調する。

「そうだね。でも、知っているだろう?彼が『ガンダールヴ』だってことを。貴族というヤツは厄介でね。強いか弱いか、それが気になるともう、どうにもならなくなるのさ」

「姉さまにも聞いたけど、信じられないわ。わたしの魔法は失敗ばかりだし・・」

 ルイズは、自分で言ってて少し落ち込んだ。『公爵』の称号を得ても、魔法の実力は変わっていないことを再認識させられたからだ。

 それでも、チンプイのご主人様として、トリステインの貴族として、ワルドの企みを止めなければと思った。

「『ガンダールヴ』なんて誰もが持てる使い魔じゃない。君はそれだけの力を持ったメイジなんだよ」

「だとしても、スクウェアクラスのあなたと戦えば、怪我をするわ。チンプイはわたしの大切な使い魔であると同時に、姫さま公認の異国の大使でもあるのよ。勝手に戦って怪我をさせたら、外交問題になるわよ?」

「ぐっ・・!」

 外交問題と言われて、ワルドは言い返せなくなった。

「う~ん。ぼく、考えたんだけど、条件付きで、外交問題にしないで手合わせを受けてあげるよ」

「チンプイ!」

 ルイズは止めようとしたが、チンプイとエレオノールが目配せをしてきたので、何か考えがあるのだろうと思い、引き下がった。

「それは、ありがたい。条件とやらを聞こう」

「うん。今後、ぼく達を誰一人傷つけない、傷つけさせないことだよ」

「・・・それは、この手合わせも含めるのかね?」

「勿論だよ。いやなら、手合わせはしないよ」

「分かった・・無傷は難しいが、なるべく傷つけないように努力するよ。万が一、君が怪我をした時のために水の魔法薬も大量に買っておこう。

その代わりと言ってはなんだが・・・手合わせの後は、君を含めてルイズ達を誰一人傷つけない、傷つけさせないと、約束しよう」

 その時、『透明キャップ』で隠れているワンダユウが、『約束固めライト』をワルドに浴びせた。

 これで、ワルドは、本人の知らないうちに『ルイズ達を誰一人傷つけること・傷つけさせること』が出来なくなった。仮に、『レコン・キスタ』の協力者がいたとしても、少しは安心だろう。

 

 赤い月が白い月の後ろに隠れ、一つだけになった月が青白く輝く夜。

チンプイとワルドはかつて貴族達が集まり、陛下の閲兵を受けたという練兵場で二十歩ほど離れて向かい合っていた。 練兵場は今ではただの物置き場になっている。樽や空き箱が積まれ、かつての栄華を懐かしむかのように、石でできた旗立台が苔むして佇んでいる。

「昔・・と言っても君は分からんだろうが、かのフィリップ三世の治下、古き良き時代には、ここでよく名誉と誇りをかけて僕達貴族は決闘したものさ。でも、実際はくだらない事で杖を抜きあったものさ。そう、例えば女を取り合ったりね・・今回の介添え人は、ルイズにお願いしよう」

「分かったわ。でも、絶対に怪我させないでね」

「努力するよ・・では、始めるか」

 ワルドは腰から杖を引き抜いた。フェンシングの構えのように、それを前方に突き出す。

 チンプイは、科法『バリヤー』を身に纏うと、デルフリンガーを引き抜いて切りかかった。

 ワルドは杖で、チンプイの剣を受け止めた。ガキーンと、火花が散る。

 そのまま後ろに下がったかと思うと、シュシュと風切音と共に、驚くほどの速さで突いてきた。

 チンプイは、素早くそれらを全て受け流した。

「なんでぇ、あいつ、魔法を使わないのか?」

 デルフリンガーがとぼけた声で言った。

「一応、ああ言った手前、怪我させないようにしてるんじゃない? 別にいいよ。それよりも・・」

 手合わせで使うとしても、攻撃魔法だろう。今後は、『約束固めライト』の効果で自分達に当てることは出来ない。なら、どんな魔法を使うか無理に知る必要はない。

 しかし・・チンプイは、別のことに感心してうなった。ルーンを光らせたチンプイと同じ位、ワルドは素早かったのだ。一回切り結んだだけでギーシュとは格が違うことを悟った。

「君は確かに素早い。さすがは伝説の使い魔だ」

 そう言うと、閃光のような突きを何度も繰り出しながら、ワルドは低く呟いている。

「デル・イル・ソル・ラ・ウィンデ・・・」

「相棒!いけねえ!魔法がくるぜ!」

 デルフリンガーが叫んだ。

 ワルドの呟きが呪文の詠唱だと悟った時・・・ボンッ! 空気が撥ねた。

 見えない巨大な空気のハンマーが、横殴りにチンプイを襲った。

ピキッという音とともに、『バリヤー』は破られ、チンプイは尻餅をつき、負けを宣言した。

「参った」

「・・・? そうか・・勝負あり、だ。 分かったろう、ルイズ。彼では君を守れない」

 ワルドは、思ったよりも”エア・ハンマー”に、チンプイが全然吹き飛ばされなかったことに疑問を感じたが、科法による制限で深く考えることが出来ず、取り敢えず勝ったからいいかと、結論付けた。

「いいのよ。わたしのわがままに付き合って使い魔になってくれたんだし・・。

? よく考えたら、ワルド、あんた、ギーシュの使い魔も吹き飛ばしてたわよね? あんた、そうやって、他人の使い魔より自分が強いって誇示して回ってるの?」

「い、いや、あのときは・・、そうだね。伝説の使い魔に勝てたから、つい調子に乗っちゃったよ。ゴメン」

 ワルドは、水の魔法薬をチンプイに渡すと、逃げるようにその場を立ち去ろうとした・・・

 その時・・ずしん!と、大きな音がした。

 

 月明りをバックに、巨大な影の輪郭が動いた。巨大なゴーレムの肩に、誰かが座っている。その人物は長い髪を、風にたなびかせていた。

「「「「「フーケ!」」」」」

 フーケ討伐時に結成された護衛隊のメンバーとチンプイの五人は同時に叫んだ。

 よく見てみると、フーケの隣には黒マントをまとった貴族が立っていた。恐らくその貴族がフーケを脱獄させたのだろう。黒マントの貴族は喋るのをフーケに任せ、だんまりを決め込んでいる。白い仮面をかぶっているので顔が分からないが、体格からして男性のようだ。

 『ガンダールヴ』のことを知っていたから、こいつはワルドの”偏在”だろうと、エレオノールは当たりを付けていた。 ワルドは風のスクウェアメイジ、カリーヌも得意とするスクウェアスペルの”ユビキタス(偏在)”が使えても不思議じゃない。

「感激だわ。覚えててくれたのね。親切な人が出してくれたから、素敵なバカンスをありがとうって、お礼を言いに来たのよ!」

 フーケは、目が吊り上がり、狂的な笑みを浮かべていた。フーケの巨大ゴーレムの拳が唸り、硬い岩でできたベランダの手すりを粉々に破壊した。どうやら岩でできたゴーレムの破壊力は、以前より強くなっているようだった。

「ここらは岩しかないからね。土がないからって、安心しちゃだめよ!」

 フーケがそう言った直後、いきなり玄関から現れた傭兵の一隊に取り囲まれた。

 エレオノール、ギーシュ、キュルケ、タバサにワルドが魔法で応戦しているが、多勢に無勢、どうやらラ・ロシェール中の歴戦の傭兵たちが束になってかかってきているらしく、手に負えないようだ。

 歴戦の傭兵たちはメイジとの戦いに慣れているらしく、緒戦でキュルケ達の魔法の射程を見極めると、まず魔法の射程外から矢を射かけてきた。暗闇を背に樽や空き箱を盾した傭兵たちに地の利があり、屋外で隠れるところのない一行は分が悪い。

 矢が雨のように飛んで来たが、タバサが”エア・シールド”を張って防いだ。

 さり気なく、”エア・シールド”に合わせて、ワンダユウが科法『バリヤー』を張ったので、しばらくの間は大丈夫だ。しかし、ワルドに”余計な詮索”が出来ない科法をかけているとはいえ、傭兵たちにバレないように科法を使うのは、それ以上は難しかった。

「参ったね」

 ワルドの言葉に、キュルケが頷いた。

「やっぱり、この前の連中はただの物盗りじゃなかったわね」

 ワルドが自分で用意した傭兵だと分かっているが、一応キュルケは話を合わせた。

「あのフーケがいるって事は、アルビオン貴族が後ろにいるという事だな」

 キュルケが杖をいじりながら呟いた。

「・・・奴らはちびちびとこっちに魔法を使わせて、精神力が切れた所を見計らい、一斉に突撃してくるわよ。そしたらどうすんの?」

「僕のゴーレムで防いでやる」

 ギーシュがちょっと青ざめながら言うが、それを淡々と戦力を分析していたキュルケが切り捨てる。

「ギーシュ、あんたのワルキューレじゃ一個小隊が関の山ね。相手は手練れの傭兵達よ?」

「やってみなくちゃ分からない」

「あのね、ギーシュ。あたしは戦の事なら、あなたよりちょっとばっか専門家なの」

「僕はグラモン元帥の息子だぞ。卑しき傭兵ごときに後れを取ってなるものか」

「ったく、トリステインの貴族は口だけは勇ましいんだから。だから戦に弱いのよ」

 それでも、ギーシュは立ち上がって呪文を唱えようとしたが、ワルドがギーシュの口の前に遮るように手をかざしてそれを制した。

「いいか諸君。このような任務は、半数が目的に辿り着ければ、成功とされる」

 ワルドが低い声で言った。おそらく、ルイズ達の戦力を分散させるのが狙いだろう。

「ダメよ!さっきの約束を忘れたの!?」

「でも、ルイズ、他に方法が・・」

 ワルドが言いかけると、デルフリンガーが口を開いた。

「あるぜ。おい、貴族の娘っ子!歌え!歌って皆を鼓舞するんだ!そうすりゃ、あんな奴らに負けねえぜ。なあ、姐さん!」

 デルフリンガーに言われて、はっとしたエレオノールは、デルフリンガーの意図に気が付いて言った。

「そこのボロ剣の言う通りよ。ルイズ、歌いなさい!」

「でも、エレ姉さま。今はそんな場合じゃ・・・。それに・・、姉さま、わたしが音痴だって言ってたじゃない。昨日だって、わたしの歌を聞いて顔色悪そうだったし・・・」

 昨日は、マール星の儀式で、チンプイがあんまりにも喜んでくれたので調子に乗って歌ったが、ルイズは今になって、エレオノールに昔、音痴だから歌うなと言われたことを思い出したのだった。

「・・わたしが間違ってたわ。あなたの歌は素晴らしいのよ。 昨日だって、あなたの歌がいっぱい聴けて、つい嬉しくなっちゃって、飲みすぎちゃったんだもの」

 エレオノールは、内心はルイズの歌を聞きたくないと思い、顔を引きつらせながらも、必死に笑顔を作って言った。

「でも・・」

 エレオノールは、皆に目配せをした。すると、皆もエレオノールとデルフリンガーの意図に気が付いたらしい。

「そうよ。ルイズ、あんな凄い歌、ゲルマニアでも聞いたことがないわ」

 キュルケが褒める。

「そうだぞ、ルイズ。僕も、昨日の歌で完全に君の歌の虜になってしまったよ。今後も、リサイタルを開いて欲しい位だ」

「本当に?」

「本当だとも。皆も心の底からルイズの歌を聴きたがってるんだよ。なあ、諸君」

「「「ほっ、ほんと!!聴きたいな、ぜひぜひ」」」

 キュルケ達は、顔を引きつらせながらも、ギーシュの話に乗っかった。

「そうだったの・・じゃあ、任務が終わったら、時々、リサイタルを開いてあげるわよ。感謝しなさい!」

 ルイズは、ギーシュに煽てられて、すっかりいつもの調子を取り戻した。

 しかし、任務の後に、またルイズの歌を、しかも定期的に聞かされるハメになり、キュルケ達はギーシュを白い目で睨んだ。ギーシュはしまったと思ったが、どんな時でも格好を付けたがるのが彼の性分である。

 ギーシュは、薔薇の杖を高々と掲げて高らかに言った。

「さあ、思いっきり歌ってくれたまえ、ルイズ。 君の歌で、僕たちはどこまでも頑張れるだろう」

 皆は、そんなギーシュの様子にやれやれと呆れながら、杖を取った。

「ボエ~~ーー!!♬!♬」

 ルイズは、いつもより気合を入れて、力いっぱい歌った。

「ゲー!な、何だあの歌は!? 聞くに堪えん」

「オエ~! ぎぼぢわるい(気持ち悪い)」

 傭兵たちは、ルイズの歌を聞いて、一気に体調を崩し、次々に倒れた。

 エレオノール達は、あくまでもルイズの歌で自分達が頑張れたとルイズに思わせるために、なんとか意識を保って、魔法を傭兵たちにぶつけた。

 もっとも、チンプイだけは、元気いっぱいに剣を振り回し、次々と峰打ちにしていたが・・。

「ウェ~~!な、何なんだい、あの歌は!」

 フーケは、倒れそうになったが、気付に短剣を自分の左腕に突き刺して、なんとか意識を保った。

 しかし、ゴーレムはその場で崩れてしまった。

「オエ~~! お、おのれ! 僕の五百エキュー・・」

「僕はゲロ袋じゃない・・、ゲロ袋じゃないんだ・・」

「・・・ウップッ!」

 ワルドの”偏在”は何人かいたようだが、ルイズの歌に耐えかねて、全て消えてしまった。

 ワルド本人も、ルイズの前で吐かないように頑張っているが、その顔色は悪い。

 

 傭兵たちが全滅したのを見届けて、エレオノールは次の作戦に打って出た。

「ワルド、”偏在”を出して。出せるでしょう?スクウェアメイジなら。

フーケがまだよ。あいつをあなたの”偏在”で足止めしている間に、逃走経路を確保しておいて」

 エレオノールの作戦・・それは、ワルドの”偏在”と『レコン・キスタ』の仲間をぶつけて仲間割れさせ、感情的になって言い合いをしている敵が重要なことを口を滑らせるように誘導することであった。ワルドの”偏在”を消せば、ワルド本体に情報が洩れることはない。ワルドの”偏在”の始末は、ワンダユウに手伝って貰えば問題ない。

 エレオノールの意を汲んだキュルケが言った。

「じゃあ、わたし達が囮に残るわ」

「危険よ!わたしが残るわ!」

「いいの。ルイズの近くには、お姉さまがいなくっちゃ・・。それに、ワルド子爵の”偏在”がいれば安心でしょう? 」

 キュルケは、エレオノールにだけ分かるように「ワンダユウさんもいるしね」と小声で伝える。

 エレオノールは、頭を掻きながら、大きなため息をついて言った。

「はあ~。・・分かったわ。でも、無理しちゃダメよ。あとで桟橋で合流しましょう」

「はあい、お姉さま」

「ワルド、お願い」

「分かった」

「ユビキタス・デル・ウィンデ・・」

 ワルドの”偏在”が出現した。キュルケ達をを守るようにして現れた”偏在”は、白い仮面をかぶっていなかった。

 キュルケはルイズに向き直って言った。

「ねえ、ルイズ。勘違いしないでね? あんたのために囮になるんじゃないんだからね」

「わ、分かってるわよ」

 ルイズはそれでも、キュルケ達にぺこりと頭を下げた。

「よし、聞いての通りだ。裏口に回るぞ、桟橋はこっちだ」

 ワルド・チンプイ・エレオノール・ルイズは、桟橋へと向かった。

 

 四人が、長い階段を上ると、丘の上に出た。

 山ほどもある巨大な樹が、四方八方に枝を伸ばしている。樹の枝にはそれぞれ大きな何かがぶら下がっていた。巨大な木の実にも見えるが、それが果たして船なのであった。飛行船のような形状で、枝にぶら下がっていた。

 ワルドは樹の根元へと駆け寄った。樹の根元は巨大なビルの吹き抜けのホールのように空洞になっていた。枯れた大樹の幹を穿って造り上げたものらしい。夜なので人影はなかった。各枝に通じる階段には、鉄でできたプレートが貼ってある。そこには何やら文字が躍っており、まるで駅のホームを知らせるプレートのようである。

 ワルドは目当ての階段を見つけると、その階段を上り始めた。木でできた階段は一段ごとにしなる。手すりがついているものの、ボロくて心もとない。階段の隙間、闇夜の眼下にラ・ロシェールの街の明かりが見えた。

 途中の踊り場で、後ろから追いすがる足音に気が付いた。振り向くと、白い仮面の男が、一番後方にいたルイズを抱え上げようとした。

「きゃあ!」

 悲鳴を上げるルイズに仮面の男の手が伸びる。

バシイン!

 間一髪のところで、チンプイが、仮面の男の手をデルフリンガーで打ち据えた。

 仮面の男は、一歩後ろに下がると、呪文を唱えた。男の周囲から電撃が生成される。

「相棒!構えろ!」

 デルフリンガーが叫ぶが、”ライトニング・クラウド”はあらぬ方向に逸れた。男は胸を押さえて蹲っている(うずくまっている)。

 その後も、男は”エア・ハンマー”など色々な攻撃魔法を放つも、全て空を切った。

「どういうことだ?」

 デルフリンガーが、解せぬという感じで、チンプイに小さい声で尋ねた。

「ワンダユウじいさんの科法の力だよ。ワルドはぼくたちに手出しできないんだ。それは、”偏在”も例外じゃない」

 チンプイが小さい声で答えた。

「すげぇな」

 デルフリンガーは、感心した様子だった。

 しばらくして、男は諦めたのか、階段の手すりを掴んで手すりを飛び越えると、そのまま地面へと落下していった。四人が地面へと目を向けるが、すでに男の姿はどこにも無かった。

「何だったんでしょうね?あのお年を召したメイジは?」

 エレオノールは、白い仮面の男の正体がワルドの”偏在”だと知りながら、すっとぼけて言った。

「お、お年を召し・・さ、さあ? だが、皆無事だったのだ。い、今は一刻も早くアルビオンへと向かおう」

 ワルドは、お年を召したメイジと言われて行き場のない怒りで腕をプルプルと震わせながら、三人に早く先へ進むよう促した。ワルドの言葉に三人は頷き、再び階段を上り始めた。

 

 ところ変わって、練兵場。

フーケは、ルイズ達がこの場を離れたのを見届けると、不敵に笑って言った。

「ふふっ。馬鹿だねえ。わざわざ、戦力分散させるなんて」

「そんなことないわ。おばさんには、ハンデが必要でしょう?なにせ年だしね」

「年ですって? 小娘が! わたしはまだ二十三よッ!」

 フーケはキレた。

「それに・・あたし達には、スクウェアメイジの子爵もいらっしゃいますもの」

 キュルケが取り澄まして言った。

「それが、あんた達の首を絞めてるんだよ。・・・まあ、いいわ。死になさい!」

 フーケが呪文を唱えようとした。

 が・・、”ウインド・ブレイク”でフーケは吹き飛ばされた。

「・・・どういうつもりだい?」

「い、いや、すまない。手が滑った」

 ワルドの”偏在”は、焦ったように答えた。科法による制限で、キュルケ達に攻撃しようと呪文を唱え始めたフーケを見て、咄嗟にフーケを攻撃してしまったのだった。

事情を知るキュルケ達は傍観を決め込んだ。これで、感情的になって、情報を漏らしてくれたら儲けものだ。

 フーケは、眉を吊り上げて問い詰める。

「手が滑っただって!?スクウェアメイジのあんたが? 冗談じゃないよ。標的(ターゲット)と接触する大使の嬢ちゃんはここにはいないじゃないか! いつまで、そいつらの味方ぶるつもりだい? わたしを『レコン・キスタ』に勧誘したワルド子爵?」

「「な、何ですって(何だって)!?」」

 キュルケとギーシュは、驚いたフリをした。傍観を決め込むといっても、ここで驚かなければ不自然だからだ。

 フーケは、キュルケ達の反応を満足そうに見て、言った。

「そうさ!こいつは、『レコン・キスタ』の一員なのさ。ここに、あんたらの味方はいないよ。この間負けたのだって、どうせ『ガンダールヴ』とヴァリエールの長女がやったんだろう? そいつらがいない、今、あんた達はここで死ぬしかないのさ」

 フーケは、ケタケタと笑いながら言った。

「フーケ・・、喋り過ぎだぞ」

「別にいいじゃない? 冥土の土産に教えてやっても」

 ワルドの”偏在”はやれやれと、ため息をつくと、キュルケ達に向き合って言った。

「聞いた通りだ。驚くのも無理はないが、我々のことを知ったからには、生かしておけん。悪いが死んでもらうぞ」

「か、勝手にそっちが喋ったんじゃないか!」

 ギーシュは、上ずった声で反論した。ワルドがギーシュ達を傷つけられないと知っていても、「死んでもらう」と言われては、心から信頼できない。おまけに、フーケがいる。

 ギーシュは、恐怖のあまり、ワンダユウが近くにいることをすっかり忘れていた。

「ねえ? どういった経緯で『レコン・キスタ』に入ったの?良かったら、教えて頂けないかしら?」

「ふん、いいわ。冥土の土産に答えてあげる。わたしは、牢屋から出して貰う代わりに、『聖地』の奪還を夢見る『レコン・キスタ』に誘われたのさ」

「へぇ・・じゃあ、あなたもエルフのいる『聖地』を取り戻したいって思ってるんだ?」

 すると、キュルケの言葉に、フーケはにやりと笑って答えた。

「な訳ないだろう?『聖地』には強力なエルフどもがいるんだ。どんなにメイジを集めたって、勝てると思えないね。 でも・・・そこの男に協力しなきゃ殺すって言われたんだよ」

「へぇ・・じゃあ、ワルドさえいなければ、あんたは自由の身って訳だ」

「そうなるだろうね。幸い、他の『レコン・キスタ』のメンバーには会ってないし。でも、そいつは、怖いからね。無理な話さ」

 フーケは肩をすくめて言った。

 ハルケギニアには写真がない。フーケの顔が『レコン・キスタ』に割れていないのなら、ワルドさえ何とかすれば問題なさそうだと思ったキュルケは、不敵に笑って言い放った。

「ふ~ん。じゃあ、こんなのはどう? 今、ワルドの”偏在”を始末して、あたしがあんたを死んだことにして逃がすっていうのは?」

「調子に乗るなよ、小娘が!」

 ワルドの”偏在”は、キュルケに向かって”エア・ハンマー”を放った。しかし、科法による制限がかかり、やはり逸れてしまう。

「くっ!何故だ!」

 ワルドの”偏在”は、凄まじい痛みに襲われて胸を押さえながら、苦しそうに蹲っていた。

「どう? 貸しひとつで手を打ってあげるけど? ちなみに、余計な詮索はしないでね?」

「はぁ~、ワルドの”偏在”に何をしたのか知らないけど・・出任せって訳じゃあなさそうだね。仕方ないね。分かった。いつか、借りを返してやるよ。あんたらにも手を出さないし、余計な詮索もしないよ。だから、このヒゲをなんとかしとくれ」

 フーケが言った。その瞬間に、『透明キャップ』で隠れているワンダユウが、『約束固めライト』をフーケに浴びせた。

 これで、少なくとも、フーケは敵にならないだろう。

「くっ!なめるなよ!小娘が!」

 ワルドの”偏在”の”ライトニング・クラウド”がキュルケ達に襲い掛かった。

 当然、この電撃魔法も空を切った。

 タバサが前に出る。

「”ライトニング(稲妻)”」

 精神力を込めることなく、ただそうタバサが呟いた。

 しかし――――

 タバサの杖の先から突如、稲妻が発生し、ワルドの”偏在”に直撃し、ワルドの”偏在”は消えた。

 実は、ワンダユウがこっそりと科法『バリバリ』で稲妻をタバサの杖から発生させたように見せかけて攻撃しただけで、決してタバサの力ではない。

 タバサは、効果が分かりやすい名前をワンダユウにさり気なく伝えて、科法で代わりとなる電撃系の攻撃をしてもらったのだ。

 タバサの作戦勝ちである。

「・・・さて、これであなたは自由よ?約束は守ってよね」

 キュルケは悪戯っぽく笑って言った。

「その子、そんなに強かったのかい? まあいい・・。分かったよ」

「ま、待ってくれ!今度デートしてくれないか?」

 ギーシュは、怖くても美人と別れるのが惜しくなり、立ち去ろうとしたフーケを口説き始めた。

 キュルケは、ギーシュのあまりにも見境のない女好きに呆れて笑った。

「ふふっ、ありがとう。 でも、五年早いよ、坊や。あの金髪巻き毛の子と早く仲直りしな。

じゃあね」

 そう言うと、フーケは去っていった。

 キュルケ達は、タバサの使い魔のシルフィードで一気にワルド達に追いつき、桟橋で合流した。

 

 ワルドは、甲板でラム酒を飲んで酔っ払って寝ていた船員を起こし、船長を呼んでこさせた。ワルドは、船長に王室の勅命だから今すぐ出向するよう言った。

 しかし、船の燃料となる『風石』は、ラ・ロシェールに最も近づく明日の朝の最短距離分しかないため、今は出向できないらしい。『風石』が足りない分は、ワルドが自身の魔法力で補うことと、積み荷の硫黄と同額の運賃をワルドが支払うことで話がついた。船長の話では、ニューカッスル付近に陣を配置した王軍は、攻囲されて苦戦中らしい。ルイズ達は、ウェールズ皇太子と道中の自分たちの無事を祈りながら、眠りについた。

 

 船員達の声とまぶしい光で、チンプイは目を覚ました。舷側から下を覗き込むと、白い雲が広がっている。船は雲の上を進んでいた。

「アルビオンが見えたぞー!」

 鐘楼の上に立った見張りの船員が、大声を上げる。チンプイは見張りの船員が見ている方向に視線を向けて、思わず息を呑んだ。

 そこには、まさに巨大としか言いようのない光景が広がっていた。

 雲の切れ間から、黒々と大陸が覗いており、大陸ははるか視界の続く限り延びている。地表には山がそびえ、川が流れていた。こんな景色は、マール星にはない。

「驚いた?」

 いつの間にか隣に立っていたルイズが、楽しそうな笑みを浮かべながらチンプイに尋ねた。

「うん。こんな景色は、マール星でも見たことないな」

「浮遊大陸アルビオン。ああやって、空中を浮遊して、主に大洋の上を彷徨っているわ。でも、月に何度か、ハルケギニアの上にやって来る。大きさはトリステインの国土ほどもあるわ。通称『白の国』」

「どうして『白の国』なの?」

 チンプイが尋ねると、ルイズは大陸を指差した。大河からあふれた水が、空に落ち込んでいる。その際、白い霧となって、大陸の下半分を包んでいた。霧は雲となり、大雨を広範囲に亘って(わたって)ハルケギニアの大陸に降らすのだとルイズは説明した。

 

 ちょうどその時、鐘楼に立った見張りの船員が大声を上げた。

「右舷上方の雲中より、船が接近してきます!」

 チンプイ達が乗り込んできた船よりも一回りは大きい船が一隻近づいてきた。舷側に開いた穴からは、大砲が突き出ている。それを見て、ルイズが眉をひそめた。

「イヤだわ。反乱勢・・・、貴族派の軍艦かしら」

 一方、後甲板でワルドと並んで操船の指揮を取っていた船長は見張りが指差した方角を見上げた。

 黒くタールが塗られた船体は、まさに戦う船を連想させる物だった。こちらにぴたりと二十数門も並んだ砲門を向けている。

「アルビオンの貴族派か? お前達のために荷を運んでいる船だと教えてやれ」

 見張り員は船長の指示通りに手旗を振るが、黒い船からは何の反応もない。

 副長が駆け寄ってきて、青ざめた顔で船長に告げた。

「あの船は旗を掲げておりません!」

 すると、船長の顔が副長と同じようにみるみるうちに青ざめた。

「してみると、く、空賊か?」

「間違いありません! 内乱の混乱に乗じて、活動が活発になっていると聞き及びますから……」

「逃げろ! 取り舵いっぱい!」

 船長は船を空賊から遠ざけようとしたが、時すでに遅し。併走し始めた黒船は脅しの一発を、チンプイ達の乗り込んだ船の針路めがけて放った。

ぼこん! と鈍い音がして、砲弾が雲の彼方へと消えていく。

 黒船のマストに、四色旗流信号がするすると登る。

「停船命令です、船長」

 そう言われた船長は苦渋の決断を強いられた。この船にも武装が無いわけではないが、武装と言っても移動式の大砲が三門ばかり甲板に置いてあるに過ぎない。二十数門も片舷側にずらりと大砲を並べたあの船の火力からすれば、役に立たない飾りのようなものである。

 助けを求めるように、隣に立ったワルドを見つめた。

「魔法はこの船を浮かべるために打ち止めだよ。あの船に従うんだな」

 ワルドは落ち着き払った声で言った。船長は口の中で「これで破産だ」と呟くと、船員達に命令した。

「裏帆を打て。停船だ」

 

「空賊だ! 抵抗するな!」

 黒船から、メガホンを持った男が大声で怒鳴った。

「空賊ですって?」

 ルイズが驚いた声で言った。

 黒船の舷側に弓やフリント・ロック銃を持った男達が並び、こちらに狙いを定めた。鉤のついたロープが放たれ、チンプイ達の乗った船の舷縁に引っかかる。手に斧や曲刀などの得物を持った屈強な男達が船の間に張られたロープを伝ってやってくる。その数、およそ数十人。

 『透明キャップ』を被ったワンダユウは、そっとルイズに耳打ちをした。

「妃殿下、申し訳ありません。わたくしも、大っぴらに科法を使う訳には参りませんので、今はご辛抱下さい」

「あの空賊たちは何なの? ワンダユウ」

「少なくとも貴族派ではないことは確かでしょう。もしそうだったら、今後、硫黄の取引に応じる商人がいなくなってしまいますからな。・・・もしかしたら、王党派が空賊に扮しているのかもしれませぬ。昨夜の船長の話では、アルビオンでは、戦時中の今、硫黄は喉から手が出るほどの必需品のようですし・・なにより、敵の補給路を断つのは戦の基本でございます」

「そうね・・。でも、本当に王党派なのかしら?」

「・・・妃殿下、もしもの時はわたくしがお守り致しますので、空賊たちに鎌をかけてみてはいかがでしょうか? 相手が王党派だとしたら、大使である妃殿下が話した方がよろしいかと存じます」

「・・・そうね。やってみるわ」

 ルイズは意を決して、空賊の頭に声をかけた。

「ねえ?アルビオンの王党派に用があるんだけど、どこにいるか知ってる?」

「さあ? 知らねーな。会ってどうするよ?貴族のお嬢ちゃん」

 答えた空賊頭は、元は白かったらしいが、汗とグリース油で汚れて真っ黒になったシャツの胸をはだけ、そこから赤銅色に日焼けした逞しい胸が覗いていた。ぼさぼさの長い黒髪は赤い布で乱暴に纏められ、無精ひげが顔中に生えており、丁寧に左目に眼帯が巻かれている。

「それは言えないわ」

「なんでだ?」

「密命だもの」

「ル、ルイズ!」

 エレオノールが怒鳴った。

「あっ!・・」

 しまったと、ルイズは思った。密命のことまでわざわざ話す必要はない。

「ぷっ!わっはっは! ひー、可笑しい! もし、嬢ちゃんの言っていることが本当なら、嬢ちゃんは、密命に全く向いてねえなあ。もう少しマシな噓を付いたらどうだ?」

 空賊の頭は笑い転げた。ルイズの顔にサッと赤みが差す。

「おめえらは、もしかしてアルビオンの貴族派かい?」

 頭が尋ねると、ルイズは首を縦に振らずに真っ向から空賊の頭を見据えた。

「誰が薄汚いアルビオンの反乱軍なものですか。馬鹿言っちゃいけないわ。わたしは王党派への使いよ。あんた達、少なくとも貴族派じゃないでしょう? 空賊まがいのことをしたら、商人がアルビオンに寄り付かなくなって、困るのは貴族派だもの。

まだ、貴族派が勝ったわけじゃないんだから、アルビオンは王国だし、正統なる政府はアルビオンの王室ね。わたしはトリステインを代表してそこに向かう貴族なのだから、つまりは大使ね。だから、大使としての扱いをあんた達に要求するわ」

 頭は、歌うような楽しげな声で、ルイズに言った。

「貴族派につく気はないかね? あいつらは、メイジを欲しがっている。たんまり礼金も弾んでくれるだろうさ」

「死んでもイヤよ」

「トリステインの貴族は、気ばかり強くってどうしようもないな。まあ、どこぞの国の恥知らずどもよりは、何百倍もマシだがね」

 頭はそう言って、わっはっはっは、と笑いながら立ち上がった。チンプイ達は、頭の豹変ぶりに戸惑い、顔を見合わせた。

「失礼した。貴族に名乗らせるなら、こちらから名乗らなくてはな」

 周りに控えた空賊たちが、一斉に直立した。

 頭は縮れた黒髪をはいだ。なんと、それはカツラだったのだ。眼帯を取り外し、作り物だったらしいひげをびりっとはがした。現れたのは、凛々しい金髪の美青年、アルビオンの皇太子ウェールズ・テューダーその人であった。

「「「殿下!?」」」

 チンプイとルイズとエレオノールは、驚いて同時に叫んだ。

 




ワルドは、『ルイズ達を誰一人傷つけること・傷つけさせること』が出来なくなりました。
 ルイズを篭絡することも出来ていないワルドですが、何やら秘策があるようです。

次回でゼロの使い魔の二巻の終わりまで行けたらいいなと思ってますが、もしかしたら二回に分けるかもしれません。

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