ルイズさまは、お妃さま!?   作:双月の意思

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遥か宇宙、マール星レピトルボルグ王家は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールをお妃に迎えるための使者をハルケギニアに送った。
ワンダユウ「チンプ~イ!頼んだぞ~!」



ルイズさま、おめでとう

 遥か宇宙、マール星レピトルボルグ王家は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールをお妃に迎えるための使者をハルケギニアに送った。

「この星?」

「そう、この星だ」

「どこ、どこ、どこ~?」

「まあ、待ちなさい」

 宇宙船には、チンプイとワンダユウが乗っており、今まさにあと少しで、ルイズのいるトリステイン魔法学院に到着するところであった。

「あっ、あの子だね!」

「これっ、あの方と言いなさい。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールさま、16歳」

「うん。なかなか可愛い~!」

「なかなかお元気でいらっしゃる」

ドカン!

「いささかおドジな面も・・・」

「ホント」

「しかし、失敗を苦にしない強さもお持ちのようだ」

「うん」

 宇宙船には、チンプイとワンダユウが乗っており、今まさにあと少しで、ルイズのいる魔法学院に到着するところであった。

 

 その頃、トリステイン魔法学院では・・・

爽やかな青色の空に、ドォン!! という轟音が鳴り響いていた。

 そこでは、二年生に進級するための試験、春の使い魔召喚の儀式が行われていた。

生徒達はこの儀式を行う事で自分の属性に合う使い魔を召喚し、自分の魔法属性と専門課程を決めるのだ。この使い魔は呼び出した人間の属性によって異なり、モグラやカエルなどを召喚した人間もいれば、サラマンダーやウィンドドラゴンの幼生など非常に珍しい生き物を召喚した者もいる。

 しかし、今、使い魔召喚を試みている少女がいた。この少女は、桃色がかったブロンドの髪と鳶色の目が特徴的な美少女であったが、魔法は不得手なのか、まだ何も召喚できないでいた。

 悔しそうに奥歯を噛み締める少女に、あちこちから罵詈雑言が投げかけられる。

「さすがゼロのルイズだな! 召喚もまともにできないなんて!」

「どうでも良いけど、早くしてくれよ!」

「さっきから爆発ばっかりじゃないか! もう諦めた方が良いんじゃないか!」

 それに少女――――ルイズは観衆達に黙れと言いたくなったが、どうにかしてその言葉を呑み込んで歯を食いしばる。

「ミス・ヴァリエール」

 自分の名前を呼ぶ声に振り返ると、そこには頭が見事に禿げ上がった中年の男性が立っていた。使い魔召喚の監督を行っている教師、『炎蛇』のコルベールだ。

「だいぶ時間が押してしまっているし、続きは明日にしましょう」

「お、お願いします! あと一回だけ召喚させてください!!」

叫びながら、ルイズはコルベールに向かって頭を下げた。

さっきから何回もやっても爆発ばっかりで、一向に成功する兆しが無い。もしかしたらこれ以後も爆発するだけかもしれないが、このまま諦めて明日に回すのはルイズのプライドが許さなかった。

 すると、ルイズの気持ちを察したのか、コルベールは少し考え込んだ後優しい声でルイズに言う。

「・・分かりました。じゃあ、あと一回だけですよ。これでだめだったら、明日にします」

「っ! ありがとうございます!」

 ルイズは再びぺこりと頭を下げると、深呼吸した後に息をついて心を落ち着かせる。

「何だよ、またやるのかよ!」

「もう明日にしようよ」

うるさい黙れ、とルイズは心の中で言い返してから杖を握る。

「宇宙のどこかにいるわたしの僕しもべよ!」

自分のありったけの力を込めて、ルイズは叫ぶ。

 ここまで失敗したのだ。もうドラゴンやグリフォンなどの贅沢は言わない。せめて。せめて犬や猫、最悪自分の大嫌いなカエルでも構わない。

(お願い・・お願いだから、成功して!!)

「神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! わたしは心よりも訴え、求めるわ! 我が導きに答えよ!!」

 そして杖を振り下ろすと、今日一番の爆発が起こった。

爆風が辺りに吹き渡り、灰色の煙で周囲が見えなくなる。

「おい! また爆発したぞ!!」

「もう勘弁してくれよ、ゼロのルイズ!」

 だが、ルイズは周りの言葉に耳を貸さずに、徐々に薄れていく灰色の煙をじっと見つめる。

煙が晴れるとそこには、光を放つ大きな鏡が浮かんでいた。

「早く! 早く出てきなさいよ! わたしの使い魔!」

「焦ってはいけませんよ、ミス・ヴァリエール。このゲートを潜るかどうかは向こう次第ですからね」

 焦るルイズに、コルベールは優しく声をかける。

 

 すると・・

ヒューンという音とともに見たこともないフネ?のようなものが、ゲートの近くに着陸した。

 そして、声だけが聞こえてきた。

「見つけたよ。ルイズがいるよ」

「ルイズさまとお呼びしなさい!口のきき方を知らん奴だ。では、そそそろ行くか」

「誰?」

 ルイズがそう言うと、

パン!パン!パンパカパカパンパーン

と、音がしたと思ったら「「バンザーイ」」という声とともに

ルイズに大量の紙ふぶきと紙テープが降りかかった。

「「おめでとうございます~!」」

 そこに、ネズミのような生き物と犬のような生き物が現れた。

「全宇宙えりすぐり数万人候補者の中から厳正審査の結果、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールさまが、マール星レピトルボルグ王家第一王子ルルロフ殿下の・・・、お妃に選ばれました~!!」

 犬のような生物、ワンダユウが胸を張り、高らかに告げた。

「マー・・、レピ・・王家?お妃・・お妃!?わたしが!?」

 ルイズは何のことだか分からなかったが、なぜか自分がどこぞの王族のお妃に選ばれたと聞かされ、頭を殴られたようなショックを受けた。

 周囲も突然のことで唖然としている。

「おい、あの生き物、喋ってるぞ?」

「使い魔召喚はどうなったんだ?」

「どこの王族だって?」

「どこでもいいじゃない!王族になれば、進級も関係ないし。ズル~イ!」

「お妃だって!いいな~。ゼロのルイズのくせに生意気よ」

 色々な声が飛び交う中、どこかのガキ大将のようなヤジまで飛んできた。

「「おめでとうございます。おめでとうございます」」

 そう言いながら、二匹の喋る不思議生物がルイズの周りを跳ね回っていた。

 そんな二匹の様子を呆気に取られてみていたルイズであったが、ネズミのような生物の近くに、自分の目の前にある光の鏡と同じものが付きまとっていることに気が付いた。

「ねえ、あんたの近くのそれって・・」

 ルイズが尋ねる。

「ああ、これ、ルイズさまの使い魔を召喚する魔法のようですね」

 何でもないことのように、ワンダユウは答えた。

「ちょっと!あんた!なんでゲートを潜らないのよ!」

 ルイズはそう言いながら、チンプイに突進するが、チンプイはヒラリとかわして宙に浮かび上がった。

「だって、さっき、そこの頭ピカピカのおじさんが言ってたじゃない。このゲートを潜るかどうかは、ぼく次第だって」

「ぐっ!」

 ルイズは、もっともなことを言われて言葉に詰まった。

「それじゃあ、こうしましょう。チンプイをルイズさまの使い魔に致しますので、ルルロフ殿下とご婚約なさって下さい」

 いかにも、ワンダユウらしい物言いである。

「なっ・・」

 言葉に詰まるルイズの返事を聞かず、ワンダユウは話を進めようとする。

「早速、ご案内致します。ワンダユウ!」

 そう言うと、ルイズの体が浮き上がった。

「わっ、わっ!」

 ルイズは、足をバタバタさせた。

「あれって”レビテーション”?あの犬がやってるの?呪文聞こえた?」

「いや、何も」

「先住魔法?」

 ルイズの心配よりも目の前の”レビテーション”?のようなものの正体について、生徒たちは話を始めていた。

「お待ちください!」

 コルベールは焦って、二人に声をかけた。先ほど生徒の誰かが言っていたように先住魔法の可能性もあるので、コルベールは内心ひやひやしていた。

「なにか」

「お待ちください。そのご様子だと我々が何をしているのかご存知の様子ですが・・今、神聖な使い魔召喚の儀式の真っ最中なのです。そちらの・・」

「ぼく、チンプイ」

「・・チンプイ殿が使い魔になられるかなられないかは、確かにチンプイ殿の自由ですが・・私もこの儀式の監督責任があります。先約があるのかもしれませんが、いきなりミス・ヴァリエールをこのまま連れて行かれたら、ヴァリエール公爵家にも申し訳が立たない。どうか、お待ちください」

 コルベールは、相手を刺激しないように言葉を選びながら、二匹を説得しようとしていた。

「先約なんてないわよ!」

 ルイズが口を挟むが、コルベールにジロッと睨まれて、口をつぐんだ。

「ややっ!大変失礼致しました。ルイズさまをお迎えに上がるのが、わたくしどもの悲願でしたので、つい気が焦ってしまいました。申し遅れました。わたくし、ワンダユウと申します、以後お見知りおきを。突然のことで驚かれるのはごもっとも。今すぐおいでをとは申しません。時間はたっぷりございます。妃殿下のお心の準備ができるまでお待しましょう」

 ワンダユウは、トリステインの貴族に則った見事な一礼をした。

「あなた・・それをどこで」

 この犬のような生き物が、貴族らしい見事な一礼をしてみせたことに驚きを隠せなかった。

「ルイズさま。わたくしどもはお妃候補をお選びする際に、ルイズさまの身辺調査はもちろんのこと、その国の文化などについても調べさせて頂いております。ルイズさまに恥をかかせないように、このワンダユウ、一生懸命練習をした次第でございます」

 ワンダユウが答えた。

「ふっ、ふ~ん。いい心掛けね」

 先ほど先住魔法?と思われる”レビテーション”をかけられ、動揺は隠せなかったが、ルイズは精一杯虚勢を張ってみせた。

「ご協力感謝致します。・・・ところで、使い魔召喚の儀の途中だったのですが、チンプイ殿、そのゲートを潜り、ミス・ヴァリエールの使い魔になって頂けないでしょうか?」

「やだ」

 ルイズを指しながらコルベールは言ったが、チンプイは拒絶した。

「なっ、何で嫌なのよ!」

 ルイズが叫んだ。

「だって、まだルイズちゃんからルルロフ殿下と婚約OKって言葉聞いてないもん」

 チンプイが答えた。

「これっ、口のきき方に気を付けないか!」

 そして、チンプイを注意したワンダユウはルイズに向き合い言った。

「ご無礼をお許しください。チンプイは、まだ子供なのです。しかし、恐れながら、チンプイの言うことももっともです。チンプイはマール星で暮らしているのです。ルイズさまがルルロフ殿下とご婚約なさってマール星に来て頂かないと困ります」

「あのね!わたしは、見たことも聞いたこともない国のお妃になんてならなわよ!」

「じゃあ、ぼくも使い魔にならないよ」

 チンプイとルイズの意見が平行線になりそうだったので、コルベールが助け舟を出した。

「使い魔を持たなければ、彼女は進級できないのです。これは彼女の一生に関わる問題なのです。チンプイ殿、どうかミス・ヴァリエールと契約して頂けませんか」

「だから、ルイズちゃんがルルロフ殿下と婚約するならいいよ」

「言っときますけどね!わたしは見たこともない殿下のお嫁になんかならないの!!」

 コルベールの助け舟は全く意味をなさなかった。相変わらず、二人?の意見は平行線だ。

「ううむ・・・仕方がありませんね。学院長と相談してみることにします。ミス・ヴァリエールの進級については後々考えることにしましょう。婚約については・・家庭の事情に一介の教師が口を挟むわけにもいかないので・・、取り敢えず、ヴァリエール家に連絡しましょう。ひとまず、ワンダユウ殿、チンプイ殿、我々と一緒に来て頂けますか?勿論、ミス・ヴァリエールもですよ」

「了解しました」

「うん、いいよ」

「はい・・・」

 三人?がそれぞれ答えた。

他の生徒は自習ということで解散させ、二人と二匹は、学院長室へと向かった。

 




藤子・F・不二雄作品とゼロの使い魔のクロスオーバーが書きたかったので、今回は、チンプイで書いてみました。
 ルイズがいつもサイトを振り回しているので、今回はルイズが振り回される話を書いてみました。

※先ほどワンダユウが使った先住魔法?は、『科法』といって、名前を言うだけで、魔法みたいなことが色々できます。

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