どうやら俺はテンプレ能力を持って転生したらしい   作:通りすがりの外典マン

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一巻の部分はプロローグに近いです。何か不快になる表現等あるかもしれませんが、暖かい目で見守ってくれたらなと思います。
ちなみに原作知識割りとガバガバです。明らかにおかしい点などがあればご指摘して頂けたらなと。






イグナイト家の無能

 

 

 

 唐突だが、俺は正義と言う言葉が嫌いだ。正義の味方が嫌いだ。これはある種のコンプレックスと言ってもいいのかもしれないし、心的外傷(トラウマ)の一つですらあるのかもしれない。

 

 まあそのような些末なことは置いておくとして、取り敢えず"正義"というものが嫌いだと言っておこう。だが今ここで俺が言っている"正義"とは道徳的、或いは倫理的な良識のことを言っているのではない。ああいったものを正義と呼ぶのは些か堅苦しい。例えるなら、車道に飛び出た子供を咄嗟に引き戻す、その行為は果たして"正義"と声高に叫ばれるものなのだろうか? 大多数の人間は小首を傾げるに違いない。

 では俺が今糾弾している"正義"とは何か。それは自己正当化のために使われる"正義"だ。戦争の肯定に使われる正義だ。殺人の肯定に使われる正義だ。自らの信念をもってして道理に叶っていると判断する、極めて利己的かつ自己中心的な性質を持つ"正義"が──心の底から嫌いだ。

 

 言ってしまえば、そういった人々が口にする"正義"とはただの言い訳に過ぎないのだ。即ち自己正当化のための文句に過ぎず、童話に登場する正義の味方とやらも悪を──主人公が悪と断定する存在を裁く、或いは殺すことを正当化するためのレッテル張りなのである。だからこそ間違っている、と俺は言おう。

 人を殺すのに正義など要らない。そんな自分も信じていないような言い訳をするくらいなら、潔く「殺したいから殺した」と言ってしまえばいいのだ。万人が認める正義(言い訳)など有りはしない。この世界に正義など在るわけがない。

 

 だがそれでも正義はある、と言い張る輩がいるとしたら。仮に正義という概念が存在するのだとしたら、この世界の全てが正義だということになってしまう。道理で納得できることの全てが正義だとすれば、正義とは主観的判断の究極に他ならず、つまり無数の主観はその時点でそれ自身の正義を抱くに足るということなのだから。

 この世界は正義などない──若しくは正義しかない。二者択一、零か無限、ならばそこに正義という言葉の存在意義などありはしない。だからこそ、俺は安易に使われる正義という言葉に「馬鹿馬鹿しい」という反応を返すのだ──。

 

 

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 

 

「……っと、ちょっと! 聞いてるの!?」

「あぁ……?」

 

 聞き慣れた──真に不本意なことに聞き慣れてしまったクソ喧しい声に意識が浮上する。耳に刺さりやすい高音、机を叩く音とともに伝わる震動。

 

「システィ、きっとイグナイト君も疲れてるんだと思うよ? だからそっとしてあげといた方がいいんじゃあ……」

「そうは言ってもね、今日は臨時とはいえ新任の講師の方がいらっしゃるのよ? それを初っぱなから居眠りだなんて、私達まで悪く思われるでしょう!」

 

「……分かった、起きる。だから少し音量を下げろ、フィーベル」

 

 本当に喧しい。そして新たな講師……担任講師が来る、という新しい情報は初耳だ。そんなこと言っていただろうか──いや、寝てたからわかんねぇわ。

 

「ようやくお目覚めってわけ? 本当にいいご身分ね、シェロ=イグナイト」

「ちょ、ちょっとシスティ……」

 

 システィーナ=フィーベル。

 大貴族フィーベル家の令嬢であり、現時点で"学院で彼女にしたくない美少女ランキング"の第一位に燦然と輝く銀髪の少女を見上げ、俺は欠伸を噛み殺す。そろそろ学べばいいものの、毎度の如く説教をかましてくる辺りが"説教女神"の二つ名の所以だろう。見た目こそ悪くないくせして男子からの受けが非常に悪いのもこれが原因だ。

 

 そしてその横で件のフィーベルを諌めている金髪の美少女こそ、"彼女にしたい美少女ランキング"第一位ことルミア=ティンジェルだ。通称大天使ルミア様。いいぞもっと言え。そしてこれからもこの死ぬほど喧しい銀髪を抑えて欲しいものである。

 

「それで、何か言うことはないの?」

「……ふむ。確かに今のは俺が悪かった。授業中に居眠りするのは決して褒められたことじゃあないな、反省しよう」

「何だ、わかってるんじゃない。例えあなたが()()()()()であったとしてもこのクラスの一員であるからには」

 

「ああ。山より深く、海よりも高く反省した。だから寝てもいいか?」

「何もわかってないじゃない──!?」

 

 火に油を注いでしまったらしい。

 

 やっべー、っべーと呟きながら視線を逸らす。その先には苦笑いする大天使の姿があり、更に向こうで友人のカッシュと目が合う──あ、逸らしやがったあんにゃろ。後で追求しよう。

 

……しかし、本当に眠い。昨日少し夜更かしをしたのが祟ったのだろうか。

 

「って、あんた聞いてるの!?」

「聞いてますん」

「どっちよ!?」

 

 声枯れねぇのかなぁ、という感想を抱きつつこっそり欠伸する。だがしっかりバレていたようで、システィーナ=フィーベルはきゅっと唇を噛んで此方を睨み付けた。

 

「……どうして、そんな様になったのよ」

 

 か細く呟かれたその言葉。一瞬俺は言葉につまり、そして無理矢理口角を吊り上げる。

 

「そんなも何も俺は最初からこうだっただろ、"フィーベルさん"」

 

 おどけた風にそう言えば、フィーベルの視線が一層強まり──そして弱々しく目を伏せた。今まで見たことのないその態度に少しばかり驚いていると、そのまま背を向けて自分の席へと戻っていく。

 

……何だかなぁ、と思いながら揺れる銀髪を見つめ、俺は溜め息を吐いた。

 

「落ちこぼれ……落ちこぼれ、ねぇ」

 

 違いない、と一人ごちる。イグナイト公爵家に生まれながら、ろくに基礎的な魔術も扱えない欠陥品。唯一使い物になる錬成も人並みに毛が生えた程度のもの。確かに俺は"落ちこぼれ"だ。

 

 

……ああ、そう言えば自己紹介をしていなかったか。

 

 俺の名前はシェロ=イグナイト。得意なのは居眠り、好きなものも居眠り。

 ついでに言うと──転生者、というやつだ。







テンプレテンプレ。

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